学校でのいじめ問題が深刻化し、新年度が始まる前に、「いじめ問題が確認された場合には、いじめられた被害者ではなく、加害者を退学、あるいは、転校させる」という措置をとるという国家レベルの法律を制定したフランスですが、事は、そんなに簡単に解決するわけもなく、新年度早々に、いじめを苦に自殺してしまった少年がいたことが報じられていました。
実際には、いじめられている、嫌がらせを受けている側の子の方が学校から遠ざかる傾向があるのは、当然のこと、しかし、現在は、学校に来る来ないだけでは、いじめや嫌がらせがやむことはなく、SNS上での嫌がらせを続けて拡散する手段は、被害者をさらに追い詰めることになっているのが現状のようです。
この新しい法律は、学校側の取るべき態度としての確固とした基準という意味では、有効ではありますが、実際に、9月早々に自殺してしまった子供の両親からの話では、何度も学校と話し合いを続けたが、充分な対策をとってはくれず、警察に訴えても、訴えを受け付けてもらえなかったなどという実情が暴かれ、この問題の道のりの長さを物語っているような気がしていました。
ところが、今度は、パリ近郊の中学校で、いじめ、嫌がらせをしていたとされる少年が授業中に逮捕されたという衝撃的な事件が浮上してきています。
この少年は、インスタグラム上でトランスジェンダーの少女にトランスフォビア的な発言や殺害の脅迫(かなり過激な内容)などを繰り返していた容疑で、いじめの被害者の少女の父親が通報し、かなり強く訴え出たことから、警察が動き出したと言われています。
警察への拘留後、この少年は、容疑の事実を認めていますが、問題になっているのは、この警察が授業中に学校に押し寄せ、授業中に少年を逮捕するという、かなり強引なやり方です。
この学校の責任者は、警察が介入することに同意していたとされていますが、授業中に突然、大勢の警察官が侵入してきて、容疑者の名前を呼び、「深刻な嫌がらせと殺害の脅迫で逮捕する」と述べ、少年の腕を掴み、手錠をかけたとクラスメイトの学生が証言しています。
想像するだけでも、かなりの衝撃的な場面にその後は授業にならなかったと言われていますが、これは、ある種の見せしめ的な意味があったのではないか?と思うのです。この少年に対する容疑を考えれば、何も学校で、しかも授業中に逮捕する必要はなく、家におしかけてもよかったわけだし、また、登校時、下校時などのタイミングでもよかったはずなのです。
それをわざわざ、授業中におしかけて、他の生徒の目の前で手錠をかけるようなことをするのは、多分に、嫌がらせをすれば、このような目に遭うという警告の意味があったとしか思えないのです。
警察が学校に介入することに同意していたとはいえ、授業中に手錠をかけて逮捕するという具体的なことまでは把握していなかった模様で、学校側は警察に対し状況の説明を求めていると言われていますが、これには、なんと政府報道官が説明に応じており、「この逮捕は検察と教育チームの合意のもとに行われたものであり、これが私たちが嫌がらせの惨状に対処する方法であり、これが私たちが子供たちを守る方法でもある」と毅然とした態度で回答しています。
いじめには、直接関与していないにしても、それを容認するという集団心理も加わる性質が多分にあると思われるため、かなり荒療治ではあるものの、これくらいの対応が必要なのではないかと思ってしまいます。
また、今回のケースもそうですが、最近は、いじめの対象となるのは、同時にLGBT問題であるケースも多く、問題をさらに複雑にしています。
いじめ加害者少年 授業中に逮捕
<関連記事>
「フランスの学校でのいじめ問題 被害者ではなく、加害者を転校させる法律発令」
「13歳 LGBTの少年の自殺でクラスメイトが身柄拘束・裁判へ」
「嫉妬による嫌がらせから起こった14歳の殺人事件 セーヌ川に捨てられた少女」
「フランスの職場でのイジメと嫌がらせから、悲惨な結果になったリンダちゃんの話」
0 コメント:
コメントを投稿