先月、新年度を前にフランス政府(文部科学省)は、増大していく、いじめ問題に関して、「学校を去るべきなのは、被害者ではなく加害者である」と、いじめの加害者を転校あるいは、退学にさせることができる新しい法律を発令したばかりでした。
しかし、新年度が始まって早々に、いじめを苦に15歳の少年が自宅で首を吊って自殺してしまうという悲劇的な事件が起こってしまいました。
この被害者の少年は、長い間、いじめのターゲットとなっており、昨年12月には、この少年に対するいじめが報告され、今年3月には、学校側が、複数の加害者とその保護者、そして、この被害者の両親を呼び出し、話し合いが行われていました。
4月には、学校と被害者の両親との間で数度にわたる手紙のやりとりが行われていた模様ですが、この被害者側は、学校側からの対応は満足のいくものではなかったと語っています。
業を煮やしたこの父親は、警察に訴状を提出したものの、受け付けてもらえなかったと話しています。
結局、年度末(夏のバカンス前)まで、学校との話し合いは続けられ、学校側は、この被害者の少年のいじめ状況を、CPE(Conseilleur principale d'educaation 教育アドバイザー)が、定期的に監視するという措置をとっていたと言います。
結局、この被害者の両親は、学校側の対応に不安が拭いきれずに、この少年は、9月からは、別の学校に転校することになっていました。
文部科学省の出した法令は、結局、この少年に対しては適用されなかったようで、(タイミング的に遅かったこともあるが、)被害者の両親の言い分では、このいじめの事実認定が正確になされていなかったと話しています。
とはいえ、この少年にとって、新年度からは新しい学校で心機一転というわけにはいかなかったということは、このいじめや嫌がらせが、校内だけでなく、SNS上などにも及んでいた可能性があることが指摘されています。
しかし、まだまだこれから長い人生が待っているはずの15歳の少年が、自らの命を絶ってしまったという事実、夜、自分の家で首を吊っていたところを発見した両親の気持ちを考えるといたたまれない気持ちです。しかも、さんざん心配な状況をなんとかしなければならないと奔走していただけに、許せない気持ちだと思います。
この加害者になっている子供たちとて、こんな行為に及ぶということは病んでいる状態であることは明白ですが、やはり、あらためて、いじめの問題は、ことさら早く、厳しい対応が必要であることを痛感します。
納得する対応をしてくれない学校、訴えを受け付けてくれない警察。さんざんいじめに遭っていた少年の心は弱っており、SNSで無限に拡散されるいじめもあったとしたら、もう耐えられないと思ってしまったかもしれません。
未成年ということで、厳罰化ができないという側面もあるかもしれませんが、最近の未成年の犯罪(いじめも犯罪)は、目に余るものがあり、未成年とて、厳しい措置をもって、早急に対応することが必要なのかもしれません。
フランスでの未成年の事件では珍しいことではありませんが、この被害者の両親は、前日に息子が自ら命を絶ってしまったというのに、気丈にもテレビのインタビューに答え、「今、すぐになんとかしなければいけないのは、アバヤの問題などではなく、いじめの問題に対する確固とした対応です」と訴えていました。
フランスのいじめ問題
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