本来ならば、今年3月に予定されていたイギリス国王のフランス公式訪問は、年金改革問題のデモのために、繰り返し延期されていました。
あの時点でも、本当にギリギリまで、最大限の警備体制をとっているので、問題ないと言っていたものの、チャールズ国王の公式訪問の際に訪問予定にされていたボルドー市庁舎の大扉が燃やされるという事態にまで発展し、マクロン大統領がチャールズ国王と直接電話会談し、ほぼドタキャンに近いかたちで、延期されたのでした。
今回のチャールズ国王のフランス公式訪問は、即位後の初の海外公式訪問として、また、ブレグジット後、初のフランス訪問として、イギリスとフランスの外交の象徴として、位置付けられていたものが、フランスの社会情勢のために延期という、まことに縁起の悪い感じもしたものです。
フランス人はイギリス王室の話題が大好きで、自国の王室は崩壊しているためもあるのか?なにかにつけて、スキャンダラスな話題も多いイギリス王室に、フランスのマスコミもまるで自国のことのように大騒ぎするのも不思議な感じがします。
しかし、フランスでは、やはりエリザベス女王やダイアナ妃人気が高く、チャールズ国王がフランスを訪問したとて、そこまで盛り上がるものなのか?と思っていましたが、やはり、マスコミは熱狂的に報道し、また、フランス側の盛大な歓迎ぶりも手伝ってか、大きく扱われています。
フランスに到着したチャールズ国王夫妻は、レッドカーペットで迎えられ、マクロン大統領夫妻がエスコートしながら、初日は凱旋門の無名戦士の墓を訪れ、シャンゼリゼを下り、150人以上の著名人が招かれたヴェルサイユ宮殿の鏡の間での晩餐会に出席しました。
このような晩餐会には、比類ない抜群の美しい舞台となるヴェルサイユ宮殿、しかも鏡の間は、華麗なる晩餐会そのもので、この類の晩餐会の中でも、群を抜いて煌びやかな豪華さを演出します。晩餐会には、フランスのVIPだけでなく、ミックジャガーや俳優のヒュー・グラント、作家のケン・フォレットなども招かれていました。
気になる晩餐会のメニューは、スターター、メインともに、ミシュランの三ツ星シェフの二人が担当し、ブルーロブスター、ブレス鶏の他、デザートにはピエールエルメが腕を振るい、イギリス国王にちなんだ30ヶ月もののコンテを含む3種類のチーズが選ばれ、ワインは1本800ユーロ以上という噂まで飛び交っています。
このチャールズ国王の遇し方を見ていると、フランスがイギリスをどのように位置づけているのかが見えるような気がしますが、この豪華な晩餐会と同時に、訪問先で、親しくフランスの一般市民とも触れ合う姿が見られたり、上院議会でスピーチを含め、少なからず政治的と思われる発言をしたりと、開かれた新しい王室を演出しようとしている向きも見られました。
このチャールズ国王のフランス訪問の日程は、イギリス王室とフランス側が当初に予定していたものと、大きくは変更がなかったそうですが、フランスは、超VIP待遇でお迎えすると同時に親しみのある王室アピールの意を汲んで、訪問先を選び、その場を盛り上げることに協力していたのだということがわかります。
お二人ともがご高齢にもかかわらず、日程はぎっしりで、それこそピンからキリまで・・、シャネルの工房から、サンドニでフランスのオリンピック選手と、そしてブリジットマクロンとピンポンをするなど、概ね暖かい雰囲気を醸し出していました。
マクロン大統領は晩餐会のスピーチで「チャールズ国王のフランス訪問は我が国の過去への賛辞であり、未来への保証であり、私たちはこれからも私たちの大陸の未来の一部を一緒に描き続ける」と述べ、チャールズ国王は、「21世紀の課題に対処できるよう、友好関係を再活性化するのは我々次第だ」とフランス語でスピーチしました。
このチャールズ国王のフランス訪問が他の諸外国でどのように報道されているのかは、わかりませんが、ここぞとばかりに華やかなフランスをアピールしていると思われる向きもあり、また、同時に懸命にエリザベス女王とは違う王室アピールをしようとしているチャールズ国王に、お互いの親しい友好関係を示しつつも、それぞれの目的を遂行しているような感じも受けました。
この豪華すぎる晩餐会には、一部、生活に貧窮している学生なども多いのに、こんなことが必要なのか?などという声がないではありませんが、多くのジャーナリストなどは、そこまで言う?と思うほど、チャールズ国王のフランス語を褒めちぎったり、大いに持ち上げるような発言に、微妙な気もしました。
チャールズ国王フランス訪問
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