2020年7月4日土曜日

フランス内閣総辞職 フィリップ首相の退任 引き際の美学


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新任のジャン・カステックス氏を迎えるエドワール・フィリップ元首相


 フランスは、7月3日、エドワール・フィリップ首相率いる内閣総辞職を発表しました。フィリップ首相の後任として、官僚出身のジャン・カステックス氏が新首相として任命されました。

 フィリップ首相は、2017年、マクロン大統領就任時より、黄色いベスト運動や、コロナウィルスのパンデミックなどの危機的状況の対応に、国の屋台骨として当たってきており、特に、今回のコロナウィルス対応に関しては、より厳しい状況に陥ってきた段階からは、マクロン大統領は、登場しなくなり、フィリップ首相が矢面に立ち、苦しい状況の中でも、真摯に対応してきた結果、最近の世論調査では、マクロン大統領の支持率が35%なのに比べてフィリップ首相の支持率は43%で、彼の支持率の方がかなり高いことが報道されていました。

 ロックダウン解除には、消極的で慎重であったフィリップ首相は、経済回復を急いでいたマクロン大統領との間に確執があったとも言われていますが、実際にその段階では、国民も学校再開には、疑念を持っている中で、国会での質疑応答で、「あなたの子供も学校へ行かせるのですか?」などと、詰め寄られ、苦しそうに、しかし、誠実に回答していたのが、とても印象的でした。

 言わば、あくまでマクロン大統領は、上から一方的な声明の発表の仕方で、困難な状況には、彼が前に押し出されて、直に説明するという苦しい立場に立たされてきました。しかし、そんな彼の態度が逆に国民には、評価されるという、マクロン大統領にとっては、皮肉な結果となっていました。

 先週末の統一地方選挙で、フィリップ首相は、ル・アーブル市長選に勝利しており、首相を辞任することは、決まっていたわけで、今回の首相交代については、彼の覚悟の上の決断であったのです。

 新首相を迎えるフィリップ首相は、むしろこれまで以上に頼もしさを感じられる悠然としたにこやかで晴れやかな表情で、彼の退任の挨拶には、さらに賞賛の声も上がり、彼の退任を惜しむ声も多く聞かれます。

 マクロン大統領は、2年後に控える大統領選の再選に向けて、内閣を一新して、まき直しにかかったとも言われていますが、コロナウィルスの感染も続いている中、経済も停滞し、毎週のようにおこるデモやストライキから、国民が混乱状態であることは、明らかな中、これを機に国の気運を一新することも必要なのかもしれません。

 しかしながら、国民に支持されているフィリップ首相を失うことは、リスクでもあり、(57%の国民が彼の首相継続を望んでいました)、新首相カステック氏がどのような人なのかは、現時点では、多くのフランス人もあまりよく知らない状況で、カステック氏の手腕が注目されています。

 今の段階では、彼がかなりのエリートであることは、わかっていますが、ちょっと見には、キツい南仏訛りのフランス語にどこか冴えないスーツ姿、彼が首相となって、これから洗練されていくのを見届けるのも楽しいかもしれません。

 それにしても、フィリップ首相の引き際?は、なかなか見事でした。もしかしたら、ル・アーブル市長に就任して、2年後には、大統領選挙に立候補するのでは?という声もありますが、ひとまず、現段階での首相退任に際して、特にここ数ヶ月間の彼の発言などを振り返ってみると、なかなか人間味の感じられる人であったと、そして、首相としての引き際もなかなか見事なものであったと、改めて、私も世論と同じように、彼の人間味あるところを好意的に感じています。

 引き際というのは、難しいものですが、やはり、なかなか大事なものだと彼の退任を見て、改めて思い知らされた気持ちです。

 しかし、もしかしたら、彼が2年後の大統領選に立候補すると考えるならば、これは、彼の新たなスタートであったのかもしれません。


<関連>「5月11日のロックダウン解除についてのフィリップ首相の演説 弱者が滅び、強者が生き残る社会」






















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