2023年7月16日日曜日

RER B線でホームから突き落とされた女性死亡

 


 もともと、RER B線(パリ市内も通るパリ郊外線)は、あまり治安のよいイメージではありませんでしたが、今年に入って同じ路線で、2回目の死亡事故が起こったというので、ちょっと、ウンザリしています。

 この路線は、CDG(シャルルドゴール空港)に行く際に利用する路線で、以前は早朝や夜遅かったりすると、列車内で襲われて荷物を奪われたりする危険があるので、空いている場合は、できるだけ、孤立しないように人のいる車両に乗った方がいいとかいう話は、よく聞いた気がします。

 ところが、今回の事件は、祝日の朝、9時半頃、パリ14区のシテ・ユニヴェルシテール駅のホームに立って、電車を待っていた52歳の女性がいきなりすごい勢いで線路に突き落とされ、駅に入ってきた電車にはねられて死亡するという恐怖の事故が起こりました。

 検察によると、ホームに突き落とされた女性は、一度、立ち上がったものの、電車の急停車が間に合わずに、轢かれてしまったという残酷なもので、被害者の恐怖はもちろんのこと、現場を目撃してしまった人にとっても、かなり衝撃的な場面であったに違いありません。

 犯人の男は、その場からはすぐに逃走しましたが、その日の午後3時40分頃に、ヴィトリー・シュル・セーヌ(ヴァル・ド・マルヌ県)のスーパーマーケットで万引きをして捕まっており、その際に朝、RER B線での事件を起こしたことを自白したそうで、RER B線の監視カメラとの照合の結果、彼の犯行であったことが確認されたそうです。

 容疑者は1981年生まれ42歳のギニア国籍の男性で、警察に対し、「自分は神であり、弱い人々をターゲットにして、人を殺して、地球上で善行をつまなければならなかった・・」と話しており、また「子供や高齢者を殺すつもりで、ヴィトリー・シュル・セーヌの路面電車の近くにナイフが詰まったバッグを隠している」とも供述をしているそうです。

 明らかに正気を疑う供述が続いたために、この男は、精神鑑定を受け、通常の警察拘留ではなく、警察病院の精神科に搬送されました。

 しかし、驚くことに、この男性は、2011年にもホームから線路に人を突き落としており(その時は、電車の急停車が間に合い、死亡事故には至らなかったが、精神鑑定の結果、責任能力なしと判断されたらしい)、同様の事件を起こしたのが、これで2回目ということが判明しています。

 彼は最初の事件から5年間、精神病院に入院していたようですが、その後、再び、世に放たれていたようです。

 今回の被害者は死亡してしまっているため、被害者の証言は得ることができませんが、前回の被害者は、「男が近づいてくるのを気付かずに、彼は一言も言わずに、いきなり腕を強く掴まれて、かなり強めに線路に投げつけられた」と証言しています。

 容疑者の、「自分は神で、弱い人々を攻撃しなければならない」という供述ですが、今回の犠牲者は、さほど高齢でも障がい者でもありません。女性という意味では弱い人々に分類されるのかもしれませんが、なぜ、彼女がターゲットになってしまったのかは、不明です。

 今回の事件が起こったRER B線は、今年の4月にも乗客が線路に落ちて死亡する事故が起こっており、事故後、何の対策もとられていないことには、疑問を感じないでもありません。

 この容疑者は精神障害者という括りで片付けられてしまえば、それで終わりなのですが、最近の犯罪の傾向として、ただの治安の悪さ、金品強奪のための犯行だけでなく、明白な目的なしに、不特定の対象を狙ったより暴力的な犯罪が増えている気がするのは、恐ろしいことです。


RER B線 死亡事故


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