残念なことにパリのメトロは安全ではありません。スリやひったくりなどは、日常的なことで、置き引きに至っては、もう自分から、荷物から手を放してしまったのですから、もうこれは、彼らからすると、どうぞ持って行ってくださいと言っているようなもので、自分で手離してしまった方が悪いといわざるを得ないようなところがあります。
ましてや落とし物や忘れ物などをしても、まず、見つかることはなく、以前に知人のフランス人が日本に旅行した際にタクシーにお財布を忘れたら、お財布が見つかっただけでなく、ご丁寧にタクシーの運転手さんがホテルまで届けてくれたと「日本というのは、なんという国(よい意味で)だ? どうなってるの?この国は?」と仰天していたことがありました。
ご丁寧にといえば、パリのメトロでは、路線にもよりますが、スリがいますので、注意してくださいというアナウンスがご丁寧にも入る路線もあります。
なので、私も普段は、充分に警戒して、大金は決して持ち歩かないだけでなく、お財布は大きなバッグの底の方に沈ませて持っています。
ところが、最近、パリのメトロには、スリやひったくりだけでなく、詐欺師が登場しているというので、驚いています。
これは主に20代から30代くらいの若い女性を狙った詐欺師のようなのですが、一見、人のよさそうな、ちょっと小太りで、メガネをかけ、口ひげをはやしたおじいちゃんだそうで、彼は、地方からパリに出てきて、お財布も携帯も盗られてしまった被害者を装って近づいてきます。
多数の被害者女性がネット上で被害を訴えていることから、このおじいちゃん詐欺が一人であるのか?または、複数人存在しているのかは不明ですが、このおじいちゃん詐欺のシナリオは、最初は被害者を装って若い女性に近付くという点で共通しています。
最初は、メトロの切符を失くしてしまったので、一緒に改札を通らせてほしいなどと近付き、様子をうかがって、身の上話を始めて、自分が困っている状況であると懇々と説明していきます。
彼女たちが共通して言っているのは、とてもほっこりしてしまうような、誠実そうなおじいちゃんで、いつもなら、立ち止まりもしないのに、どこか安心させられてしまう雰囲気を持っている人なのだそうです。
また、彼は、他のパリジャンに話しても、彼らは冷たいとパリジャン叩きも付け加えます。地方にある家に帰るためのチケット代として、250ユーロを貸してほしい、家に帰ったら、すぐに返すから・・。連絡できずに家族が心配している・・あなたにも家族がいるなら、家族を心配する気持ちはわかるだろう・・と言葉巧みに説得を続けます。
今どきの若い子たちは、現金をあまり持ち歩かないので、わざわざお金をおろさせるのですが、また、彼は誠実そうな様子を崩すことなく、彼女がお金をおろしている暗証番号を打つ様子などはのぞき込まず、最後の最後まで「私が信用できないなら、お金は渡さないでください」とまで言います。
そして、彼は、自分はちゃんと仕事をしていて月6000ユーロは稼いでいる人間なので、すぐにお金を返すことができると言い、彼女の連絡先を聞き出し、また、自分の偽の名前と連絡先を渡します。
こうして、やり取りを振り返れば、つっこみどころ満載なのですが、言葉巧みにこの詐欺師は、彼女たちから、現金を奪っています。
相手はプロなので、それは騙しやすそうな女の子を物色して声をかけているのでしょうが、それにしても、こんなに騙される人が多いのかと逆にびっくりもします。
パリのメトロでのこのような詐欺被害がネット上で報告されはじめ、我も我もと被害を訴える人がでてきて、このおじいちゃん詐欺師は有名になりつつありますが、どうやら、この手口は、最近だけでなく、以前から存在していたものでもあるようです。
そして、もう一つの驚きは、この被害届を警察に提出しようとしても、「自分の自由意思でお金を渡したのだから・・」と受け付けてもらえない場合が多いということで、「警察はこのような事件を把握しているにも関わらず、真剣には受け止めてもらえない」と、被害にあった女性たちはこの顛末を含めてネット上で訴えています。
現在、話題に上っている人物と同一人物かどうかは不明ですが、この手口で詐欺行為を続けている者の中には、20年間もこの商売?を続けている人物がおり、彼はギャンブル依存症の年金生活者だそうで、過去に逮捕され、懲役2年の判決を受けているものの、再審の結果、この行為が詐欺ではなく、投資?として再認定され釈放されています。
この行為が詐欺ではなく投資とは?これでは裁判所が詐欺に遭っているようなものです。彼は一応、司法監督下におかれているそうですが、彼は活動を停止してはいないようで、ここのところの騒ぎによって、再び、捜査が再開されたようです。
パリ・・ほんとに、油断なりません・・・。
パリメトロ おじいちゃん詐欺
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