2023年7月28日金曜日

頭蓋骨の一部除去の青年の登場で暴動後、再浮上する警察の暴力行為

  


 警察官の発砲事件による未成年が死亡した事件を機に起こった暴動は、瞬く間に全国に広まり、一時、手がつけられない状況で、全くどうなることかと思いましたが、その後、かなり時間がかかったものの、どうにか鎮静化して、落ち着きを取り戻しています。

 しかし、一方では、今回の暴動を沈静化するために動員されていた警察官による狂暴な行為が露見し始めており、マルセイユで警察官にLBD(Lanceur de balles de défense)(防御ボールランサー)発射隊による襲撃を受けて、重症を負った22歳の青年が脳に損傷を受けて襲撃から数回の手術を受けたのちに、頭蓋骨を一部除去された姿でマスコミの前に登場しました。

 頭の一部が歪な状態になった彼の姿は、衝撃的で、ショッキングでもあり、そのメッセージにもインパクトがあります。

 この事件であらためて注目されたLBDは、「電気パルスピストル」(PIE) や「包囲解除手榴弾」(GMD/DBD/DMP) と同様に、「中間兵器」(AFI) として定義されているものの一つで、暴力的または危険な人物を抑止または無力化するために合法的な武力行使が必要であることが判明した場合に、法律および規制に従い、危険な状況に応じた段階的かつ適切な対応として使われる警察や憲兵隊などが使用している武器と定義されているもので、LBD の使用は短距離に外傷性の影響を与える可能性があり、その重症度は不可逆的または致命的になる可能性のある重篤な損傷を引き起こす要注意の武器だと言われています。

 ところが、この犠牲者となった青年の話によると、彼は暴動には参加していなかったと言い、振り向きざまに急に頭に衝撃を受け、彼はそれが何なのかわからないままに、地面に倒れ込み、立ち上がろうとすると彼らに掴まれて、真っ暗な小路の隅に引きずられ、一人が馬乗りになって彼を抑えつけていたために、かれは動くことができない中、彼は拳や警棒で殴られ続け、彼はそのまま放置されたといいます。


 おそらく、最初に頭(こめかみ)に受けた衝撃がLBD砲であったのだと思われますが、たとえ、暴動の中の混乱状態であったにせよ、その後の警察官の行為は防御というよりもリンチのような暴力で、警察官の任務とはかけ離れています。

 この暴力行為にかかわった数名の警察官は逮捕・拘留されましたが、この警察官の拘留に対して、警察官の組合が猛烈に抗議の意を示し、ニースの警察署の前に100人以上が集結する大騒ぎになりました。

 警察官には、ストライキの権利が認められていないために、休暇を申し出たり、病気休暇を申請したりとただでさえ、不足している警察官の10%は仕事を休んでいる状態であると言われています。

 この大変な情勢の中での警察官の任務は激務であることは間違いないことで、警察官側にも大勢の負傷者が出ていることもたしかで、気持ちはわからないでもありませんが、こういったときの警察官同士の連帯というのもすさまじいもので、今回の暴動のきっかけとなった少年を射殺してしまい逮捕された警察官の家族には、クラウドファンディングで150万ユーロが集まるという(被害者ではなく加害者家族への募金)ちょっと、すんなり飲み込めないようなことも起こっています。

 まだ、暴動の火種がすっかり沈静化しきったかどうかはわからない状態で、さらなる警察官の暴力行為が表沙汰になり、警察官がそれを正当化するような動きを見せている現在の状況は、また暴動を再燃させる危険も孕んでおり、政府はその対応を図りかねている状態で、非常に不安定な状況でもあります。

 どっちもどっち・・というのは、大変、雑な言い方かもしれませんが、暴動行為にしても、それを抑えるはずの警察官の暴力行為も許されるものではなく、今回は特に狂暴であった暴動であったとしても、今回の警察官の暴力は、度を越えているうえに、お門違いであった疑いもあり、双方ともに、裁かれるものはきっちり裁かれなければなりません。

 しかし、政府としても、警察官を怒らせるわけにも行かずに、きっぱりした態度をとりかねているのが正直なところで、現在、ニューカレドニアに滞在中のマクロン大統領もこの件に関するきっぱりしたコメントは控えている状態です。

 フランス全体の治安が悪化していることは、もはや明白なのですが、警察官の増員だけでは片付く問題ではなく、国民の(特に底辺の)怒りがいつ、何をきっかけに爆発するかわからない状況には、すぐには、解決策がみつからないような気がしています。

 しかし、そもそもの今回の暴動のきっかけとなったのも警察官の発砲事件で、さらに今回の警察官のLBD発砲とリンチも警察官が起こしているもので、暴動を抑えるはずの警察がそのもととなり、また、さらなる騒動を引き起こしていることを考えれば、警察の在り方も見直す必要があるのかもしれません。


警察官の暴力 LBD


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