2023年7月9日日曜日

フランス国家安全保障名目でTikTok停止の危機 6ヶ月間の最後通告

  


 「フランスでTikTok廃止?」というニュースを聞いて、ようやくおさまりつつある今回の暴動劇にもTikTokが利用されていたせいなのか? それにしても、リアクションが早いな・・と思っていたら、この話は、もっと前から調査が続けられていたものでした。

 フランス上院調査委員会は、4ヶ月間にわたる調査と専門家、研究者、学者、政治指導者、TikTok側のフランスの代表らとの約30回の公聴会を経て、ソーシャルネットワークの利用と個人データの利用に関する報告書の結論を発表しました。

 この報告書によると、現在、フランスでのTikTokのユーザーは特に低年齢層に爆発的に浸透しており、11歳~13歳の45%がTikTokに登録していると言われています。SNSは大変、便利なツールであると同時に、多くの時間を人々から奪います。

 「なかでもTikTokは、非常に中毒性が高いアルゴリズムを有しており、ユーザー、主に子供や十代の若者たちを何時間も画面上に留めておく」と報告されています。

 また、中国で誕生したこのサービスは、中国当局との強力な連携の上に成り立つものであり、ユーザーに関する情報がアルゴリズムファイリングを通じて全て中国当局に収集されていることに対する懸念も報告されています。

 もう 1 つの非常に懸念すべき観察結果は、危険なコンテンツや過度に性的なコンテンツが強調されていることです。 TikTokのアルゴリズムは、ユーザーを時には危険なフィルターバブルに閉じ込めることにつながると調査委員会は警告しています。 

 デジタルヘイト対策センターによる2022年12月の調査によると、このアプリケーションは「弱い立場にある人々により危険なコンテンツを提供する傾向があり、標準的なプロフィールと比較して、メンタルヘルス問題に関心を示しているユーザーには12倍の自殺関連動画が提供される」と報告されています。

 個人的には、今の時代、携帯なしというものは、考えられないのも事実ではあり、全面的に否定するつもりはありませんが、特に低年齢の子供には、せめて時間制限があってよいと思っています。1日24時間をSNSにその大半を侵略されて過ごすのは、その年齢にしかできない体験が削られるということで、心身ともに不健康だと思うのです。

 このフランス上院調査委員会は、これまでTikTokに対して、年齢制限、時間制限、危険なコンテンツについて扱いなどについて、少なくとも21項目に関して、再三、要請を行ってきましたが、回答があったのは、その20%ほどで、残りの80%に対しては、なんら対策がとられていない状態ということで、今回は、6か月間の猶予期間を設け、2024年1月までに、これが改善されない場合は停止措置をとると発表しています。

 また、1500万人以上のフランス人が利用するサービスの停止の可能性は、欧州の新たな規制であるデジタルサービス法(DSA)に基づき、引き続き政府、さらには欧州委員会の主導で行われることになります。

 フランス政府の要請に対して、80%が無回答というのは、あまりに不透明で、反論するよりもたちが悪く、フランス側にしてみれば、今回の暴動などのツールとしても使用されていたことがわかっていることから、「弱い立場にある人々により危険なコンテンツを提供する傾向がある」などという調査結果が上がってきている、ということもあり、もう待ったなしの状態に来ているのかもしれません。

 SNSを利用しているつもりが、これに支配され、先導されかねない状況、そのうえ、情報までが吸い取られているとなれば、それこそ国家安全保障に関わる大問題です。

 これをTikTok側が海外の声をどこまで受け入れるか? 一部ではTikTokはファーウェイの二の舞になるのではないか?との声も上がり始めています。いずれにしても、ものすごい速さで浸透していくSNSの世界、野放しにしているわけにはいかない時が来ています。


TikTok フランス国家安全保障名目で停止の危機


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