2025年10月3日金曜日

子どもを性的虐待から守る新システム正式稼働開始 子どもに関わる仕事に携わる人が提示しなければならない証明書

  


 すでに政府により、2024年9月から6つの県で試験運用され、2025年3月からは他の23県でも運用が開始されている「児童との就労に危険とみなされるプロファイルの特定」により、子どもを性犯罪者から守るシステムが10月1日から正式にスタートしました。

 これにより、幼児・児童に関わる仕事に就労する(ボランティア等も含む)ためには、採用時および、その後、定期的にこの「優良証明書(Attestations d'honorabilité)」の提示が義務付けられます。

 具体的には、この証明書は、当該者に犯罪歴がなく、性暴力犯罪加害者自動登録簿(FIJAIS)に登録されていないことを証明するもので故意に就労を妨げるものではなく、子どもを犯罪・特に性加害、性暴力から守ることを目的としています。

 フランスでの求人に応募する場合、児童に関わる仕事ではなく、一般の企業であっても、犯罪歴がないことを証明する証明書の提出を求められる(これもオンラインで簡単に取得できるようになっています)ことがありますが、今回のシステムでは、児童施設等の子どもと関わりのある仕事に就労する場合には、この証明書(子どもと共に過ごすことが不適切と考えられるような犯罪歴等がないこと)の提示が義務付けられるようになるということです。

 この証明書発行のためのオンラインプラットフォームが既に稼働を始めており、試験運用も含めて、これまでに34万2000件の証明書を発行しているということで、このうち、1,700人以上の申請者が証明書の発行を拒否されており、そのうちの80%が児童保護の仕事に従事していたという恐ろしい事実も明らかになっています。

 DGSC(児童社会サービス総局)は、この証明書の発行が拒否された就労者に関しては、雇用主は、「個人的な理由による解雇手続き」を行わなければならないとしています。

 このシステムは、児童保護サービス(ホームスタッフ・ファミリーアシスタント)および幼児ケアサービス(保育士・チャイルドマインダー)に勤務する専門家とボランティアもスクリーニングを受けることになります。

 この制度は教育者、家族介護者、保育士だけを対象としているわけではなく、性暴力のかなりの割合が未成年者によって行われることもあるため、家族介護者の家庭で暮らす13歳以上の青少年もスクリーニングの対象になっています。

 また、児童性的虐待画像を所持していたことにより、有罪判決を受けた者も多く、これは、特にこの類の画像を所持している者が実際の虐待行為に及ぶ確率が高いためと説明されています。

 このシステムで全ての性暴力から子どもを守り切れるものではないとは思いますが、特に再犯率が高いと言われる性暴力に関する犯罪から子どもを守るには、必用なスクリーニングではないかと思われます。

 また、児童養護施設などに関しては、家庭環境に恵まれない子どもが集まっているために、擁護施設であると同時に、悪質な人物からターゲットにされやすい場所にもなりやすい場所でもあるため、そのような場所での就労者のスクリーニングは慎重に慎重を期すべきであるのではないかとも思われます。

 国立児童保護庁もこの制度は、とても有意義であると説明しています。

 

児童に関わる仕事に携わるための証明書

 

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2025年10月2日木曜日

自分への判決に対して司法を批判したサルコジ元大統領を約20人の弁護士が告訴

  


 「2007年の大統領選挙運動資金をリビアから調達することに関する共謀罪」で懲役5年の実刑判決を受けた二コラ・サルコジ元大統領は、この判決直後から、この判決に対する批判意見を表明してきました。

 元大統領という立場の者が懲役5年の実刑判決という衝撃に世間は大いに注目し、また、彼の発言に同調する者も多く存在し、彼の発言がフランスの司法制度への反発の動きを盛り上げてしまうことに繋がってもいるようです。

 サルコジ氏としては、自分は無実だ!こんな判決は承服しかねると、反論を表明するのは、ある意味、理解できることではあるものの、実際には、この一部の世論の盛り上がりが、この裁判における裁判長への殺害予告などの脅迫などに繋がっていることも見逃せない事実でもあります。彼の発言は裁判官に対する憎悪を増長させているところがあるのです。

 この殺害予告に関しては、すでにパリ検察庁が2件の捜査を開始しています。

 今回の約20人の弁護士によるサルコジ氏に対する告訴状は、特に先週の日曜日のJDD誌に掲載された彼の発言に対してのもので、主には、「自身の有罪判決が法の支配のあらゆる限界を侵害している」と述べている部分、また、「自身に対する訴訟を法の支配に著しく反する行為」としている部分、そして、「嘘、陰謀、侮辱(判事からの侮辱)に屈しない」としている部分について問題にしています。

 原告側は、「これらの発言は、二コラ・サルコジ氏が控訴を表明している裁判所の判決に対する単なる批判と見なすことはできない。司法制度の信用を故意に失墜させる行為であり、司法の公平性と独立性に対する国民の信頼を弱める可能性が高い」とし、サルコジ氏を法廷侮辱罪と司法の権威を毀損した罪で告訴しています。

 誰もが裁判所の判決を批判する権利を持っており、サルコジ氏にも自己弁護の権利があります。しかし、限界がある。彼の司法制度に対する露骨な攻撃を放置することはできないと告訴した弁護士は語っています。

 訴状には、「二コラ・サルコジ氏の言語道断かつ危険な発言は、私たちの業務とイメージに物質的にも精神的にもダメージを与えている」とあります。

 また、サルコジ氏は元大統領という立場であるとともに弁護士でもあり、自身の発言の重大性とそれが世論に及ぼす直接的な影響がいかばかりであるかということは、自身が承知していることは、言うまでもありません。

 すでに懲役5年の実刑判決を受け、その他にも複数の裁判を抱えているサルコジ氏、またひとつ裁判が増えたところで・・というところなのかもしれませんが、現在70歳の彼の残りの人生は、裁判に明け暮れることになるのかもしれません。


20人の弁護士がサルコジ氏を告訴


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2025年10月1日水曜日

フランスでは医師に対する暴力が急増している・・

  


 全国医師会協議会(CNOM)の報告書によると、2024年には、約2,000件の医師に対する暴力事件が報告されており、これは、1年で26%増加という数字、特に2021年以降の3年間を見ると、95%増となっており、確実に懸念されるべき増加の傾向を顕著に示しています。

 これらの暴力事件の影響を最も受けているのは、一般開業医で事件報告数の約4分の3(63%)を占めています。しかし、実際に被害を訴える医師は少ないのが現状となっているようです。ということは、実際の暴力事件の数は、これを遥かに上回る数字であるということで、これは深刻な状況であると言えます。

 暴力は現在、都市部、地方都市にかかわらず、多くの専門分野とあらゆる診療現場にも影響を及ぼしています。

 この患者(あるいはその家族などの同伴者)の暴力行為の原因は、「治療に関する非難(32%)」、「処方箋の拒否(17%)」、「待ち時間や予約時間の長さについて(8%)」などが挙げられていますが、近年は特に処方箋や証明書などの偽造が著しく増加しており、事例の4分の1を占める結果となっています。

 また、医師に対する暴力には、様々な形態があり、最も多く見られるのは個人的な暴行であり、暴言や脅迫(61%)、窃盗または、窃盗未遂(8%)、身体的暴行(5%)などが挙げられています。

 医師に対する暴力が急増している背景には、特にパンデミック後に急増している背景から考えるに、このパンデミックという時期を境に、社会的にも経済的にも精神的にも鬱屈したものが沸々と湧き出している感があり、医師が不満の受け皿になっていると見ることもできます。

 ただでさえ、医師不足が叫ばれている世の中で、こんな暴力事件に巻き込まれるとなれば、さらに医師は不足し、医師が不足する事態は、さらに事件を増加させる原因になりかねない負のループを辿ることに繋がっていきます。

 私個人の立場から考えると、かかりつけのお医者さんはもちろんのこと、ここ数年で、今まで行ったこともなかった専門医にも診てもらう機会が増え、なかば自分の命を預けているような存在の人々で、このような人々に対して、暴力行為など思いも拠らぬことで、また、私がお世話になっているお医者さんたちがこのような目に少しでもあっているとしたら、絶対に許せない思いでいっぱいです。

 しかし、世の中におきている事件や現象などを見るにつけ、明らかに、不安定で奥底には怒りが潜んでいるようなことが多い気がするのは、辛いことです。

 また、この全国医師会協議会(CNOM)の報告書では、「この医師に対する暴力事件の増加は一時的なものではなく、永続的な現象になりつつあり、このような現象は、医師業界全体にとって構造的な問題となっている」と指摘しています。


医師への暴力事件急増


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