2025年10月15日水曜日

新?首相 セバスチャン・ルコルニュⅡ 年金改革の停止を提案

  

 

 すったもんだの挙句にフランスの首相は、在任期間の最短記録を更新したと言われたセバスチャン・ルコルニュ首相が再任し、そんな経緯から、彼の新政権はルコルニュⅡ(ルコルニュⅡ世)などと呼ばれています。

 今回は、一応、組閣も終了し、各大臣の任命も行われています。

 とはいえ、来年度の予算審議を控えて開催される16日に開催される国民議会をまえに、ルコルニュ首相は、先制攻撃というか、防御というか、議員に対し今後のロードマップを説明しました。

 なにしろ、怒りに湧き上がっていた議員たちが予算を決めるよりも何よりも、そのまえに政府を倒す気満々で、国民連合(右派)と一部の左派は、首相の不信任動議の採決を行おうと手ぐすねを引いて待っている状態です。

 今回の彼の首相再任にあたっては、一度は自ら首相を辞任し、それが受理され、公にも首相再任は考えていないと宣言したうえでの、まさか・・いや、やっぱり・・の再任。生半可なことでは彼はこの火中の栗どころではない厳しい要職を受けるにあたって、マクロン大統領は、彼に全権を与えているという噂もあります。

 この期に及んでも、絶対に他党派に首相の席を与えなかったマクロン大統領もなかなかな根性だとも思いますが、首相の再任命の前日、各党派のトップを大統領官邸に呼ぶメールが夜中の2時くらいの時間に届いたと各リーダーが明かしており、さすがのマクロン大統領も相当、悩みに悩んだ末の選択だったと思われます。

 とはいえ、今回のルコルニュⅡの先制攻撃ともいえるスピーチは、とりあえずの政権転覆をなんとかして回避するためなのは、明白で、彼は自らの再任について、「フランスには予算が必用だからこそ、私は大統領の任命を引き受けた」と説明しました。

 生半可なことでは納得しそうもない議員たちを前に、彼はなんと、暴動騒ぎまで起こして決定した「年金改革の停止」を提案。これは、社会党が長いこと求め続けてきたことです。

 そして同時に、年金改革をごり押しして通した憲法49条3項を放棄することを約束。つまり禁じ手はもう使いませんという宣言です。

 年金改革に関しては、具体的には2023年の年金改革を2027年の大統領選挙まで停止、2028年の退職年齢の引き上げは2028年1月までは行わず、保健期間についても据え置きの2028年まで170四半期のままとなります。

 この年金改革の停止により、「2026年に4億ユーロ、2027年に18億ユーロ」の費用がかかることを付け加えたうえで、これにかかる費用は、貯蓄によって補填される必要があるため、「社会パートナーとの合意に基づく年金と労働に関する会議」の場を設けると発表しました。

 そもそも各党派はもちろんのこと、国民の最も関心の高い年金改革問題について、大きく譲った提案に世間も驚いています。

 また、難しいと言われている予算案(特に赤字削減問題)については、支出削減を継続することは急務であるとしつつも、「本質的に改善可能」であると断言。社会保障や税務における不正行為への対策を強化することで他の節約も実現するとし、また、中小企業への減税に加え、一部の超大企業を対象とした的を絞った例外的な増税を実施。税の最適化を規制する措置を提案することを発表しました。

 その他、もろもろ、細かいこともあるのですが、それはここでは省略させていただきますが、彼は、ここでちょっとしびれることを宣言しています。

 それは、「国家予算と社会保障予算に関する討論はここ(国民議会)で行い、ここで決めるものであり、決して財務省が決めるものではない!私自身が規範を示す!」と、「日本の国会でも言ってよ!」と思うようなことを堂々と宣言しています。

 そして、「会議が終結すれば、政府は合意を法律化する」と明言。

 たしかに、ハッキリさせなければ、この混乱は繰り返され続けることになります。

 それでも、まだ、この彼の提案が受け入れられるかどうかは、まだ定かではないだけでなく、彼自身の不信任動議の行方もまだ、わかりません。

 しかし、年金改革の停止を提案した時点では、社会党からは拍手が沸き起こったというのですから、一筋の光が見えてきた気もしないではありません。

 若干39歳の首相ですが、個人的には、思っていたよりもずっと頼もしい感じがしてきました。


年金改革停止


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