2025年3月11日火曜日

10年間で86%増加したフランスの公共交通機関内での性的暴力

  


 私がフランスに住むようになってから、もう20年以上というか、四半世紀近く経ってしまったので、ちょっと今の状況とは違うのかもしれませんが、当初、私は、フランスの電車やメトロには、日本のような痴漢はいないのだな・・と思っていたくらいでした。

 当初は、私たちは、パリ郊外に住んでいたので、郊外線を利用していて、今よりもずっと電車に乗っている時間が長かった(とはいえ、正味30分から40分程度)こともあってだったのだと思いますが、夫が服装などに対して、とにかく厳しくて、絶対に華美な服装や持ち物を持たないようにとか、少しでも挑発的に見えるような服装などは、絶対にしてはいけないと口うるさいほどだったので、心配性なのはわかっても、少々うるさいなぁ~と思っていました。

 夫は東京に住んでいたこともあったので、東京で生まれ育って、通勤していた私に対して、東京のようなつもりでいたら、絶対に危ない!という気持ちがあったのでしょう。

 私は、夫の言うように、比較的おとなしい服装で、だいたいまだ子どもが小さいこともあって、スケジュール的にもキツキツだったので、独身の時のように自分がおしゃれをするという時間もなかったのですが、おかげ様で、通勤のための車内はたいてい座って行けていたので、読書をしたり、手紙を書いたりと、それなりに有意義な時間を過ごしており、危ない目に遭ったことは一度もありませんでした。

 今から考えれば、パリ市内のメトロなども今よりもずっと空いていたような気がするし、フランスには、日本のような痴漢はいないんだな・・きっとフランスだったら、簡単な痴漢などの段階ではすまずに、もっと酷い事態に発展してしまうのかもしれないな・・などと勝手に思っていました。

 ところが最近、公共交通機関における性的暴力がここ10年間で86%も増加し、その半数がイル・ド・フランスで発生しているという報道がされており、ビックリしました。

 この性的暴力というのは、いわゆる痴漢行為というのが具体的にどのような行為であるかについては、記されていないものの、39%が性的虐待や性差別的虐待、19%がセクハラ、13%がわいせつ行為、6%が強姦または強姦未遂の被害を受けていると説明しています。しかし、このあたりの境界線がよくわかりません。

 Miprof(女性保護のための省庁間ミッション監視団)の発表によれば、2024年に報告された公共交通機関内での性的暴力の被害者は3,374人ということではありますが、この数字は、法執行機関により記録された件数であり、実際の数字は、恐らくそれを大きく上回るものであると推測されます。

 RATP(パリ交通公団)の調査によれば、調査対象となった女性の70%がなんらかの性的暴行被害に遭った経験があると答えています。

 また、被害者の3分の2(75%)が30代未満の女性であり、36%が未成年であるそうです。

 他の報告では、フランスはすでにフランスはこの現象についての警戒し、公共交通機関における性的嫌がらせに対処するための国家計画として、電話による警告サービス、啓発キャンペーン、職員の研修、迷惑な乗客への取り締まりなど、2014年に政府によって導入されていましたが、この現状を見れば、この国家計画は充分ではないようです。

 このプランの中にあるヘルプライン(3117および31117)やプラットフォーム上のコールポイントについても、実際に存在はしているものの、利用したことがある女性はわずか12%ということで、さらなる周知の必用と実際に被害に遭ったときに、利用しやすいものであるのか?という面もあるのではないか?と思われます。

 しかし、いずれにしても、10年間で86%増というのは、ちょっと驚くべき数字。私などは、幸いにも被害に遭ったこともなければ、被害に遭っている女性を見かけたこともないのですが、今、娘が若い女性に成長していることを考えると、この現状は見逃せない、見過ごしてほしくないと思っています。

 ただ、フランスらしいと思ったのは、この公共交通機関内での性的暴行事件の増加について、その暴行そのものに加えて、「女性がこのために、時間や行先を変更しなければならない事態に陥ることは、女性が自由に移動、旅行する権利を奪われているということ」という言い方もしていることで、フランスらしいと感じると同時に、なんか少し「ん?」と思ってしまうところもありました。

 フランス、特にイル・ド・フランス地域、パリの公共交通機関は、他にもスリやひったくりなど、他にも危険がいっぱいで、あらためて、日本の治安の良さはあたりまえのものではないのだな・・と思うのでした。


フランス公共交通機関内の性的暴力


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