私は、映画というものを見に行くということがほとんどなくて、映画館に行ったのは、もう何年ぶり?という感じでした。そもそも閉鎖された空間に大勢の人がいる場所というのがあんまり好きではないこともあるのですが、まあ、映画を見に行く習慣がないということかもしれません。
今回の映画が私の重い腰を上げたのは、日本の映画なのに日本非公開だということで、しかも、海外ではけっこう評価されていると評判で、ドキュメンタリー映画のため、見る前からおおよその内容は知っていたものの、やはり、実際に見てみると、けっこうインパクトがあり、また、実際のやりとりなどが繋ぎ合わされているので、リアリティがあります。
おそらく海外での上映は、どこも同じもので、主人公の彼女は英語で話している部分も多く、その他は日本語で、フランスでは当然、フランス語の字幕がつけられています。
ただし、字幕の場合はどんな映画にもあることだと思いますが、微妙な日本語の表現をこう訳す?というところもあったりしました。
まず、この映画を見たいな・・と思って、パリ市内の映画館を探したのですが、思っていたよりも上映しているところは多く、私が行ったのは平日の昼間だったので、満員とまではいかないまでも、けっこう人がいるんだな・・という印象でした。
日本で非公開になっている理由は、裁判用に提出された映像を無許可で使用しているためということでしたが、これは、該当部分を修正してでも、ぜひ、日本でこそ公開すべき作品だと思いました。
彼女が2015年に性被害に遭って以来、警察が被害を受け付けてくれなかった様子やそこから周囲の人々の力もあって、ようやく逮捕状が出たにもかかわらず、それが逮捕直前に取り下げられたこと、多くの人のバッシングに遭って、隠れるように生活している様子、にもかかわらず、自分たちで証言を取りに奔走する様子、刑事裁判に敗れたとき、民事裁判に勝訴したとき、また、加害者と言われる男性の会見の様子などなどが織り込まれています。
中でも最後に登場する事件発生日にホテルのドアマンをしていた男性の思いやりに満ちた言葉とその言葉を受けて彼女が号泣する様子には、涙しました。
証言をしていただくことで御迷惑をかけることになってしまうかもしれないと案ずる彼女に対して、このドアマンの男性は、「だいたい、この種の犯罪に対しては罪が軽すぎるし、あなたの苦しみに比べたら、私が証言をすることで被るかもしれない被害は大したことない、私が事件当日、勤務していてよかった・・」と話しているのです。
この映画は性加害問題のみならず、簡単には被害届さえも受け付けてもらえなかった状態から、ようやく警察が逮捕状を取ったにもかかわらず、逮捕直前に取り消されるという権力によって犯罪が握りつぶされてしまうという恐ろしい現代の日本の状況を訴えている作品でもあります。映画の中にたしか、女性の方だったと思いますが、「逮捕状が出たからといって、全て逮捕されるというわけではありません」という全然、納得いかない説明がありました。
犯罪が権力によって握りつぶされる・・そんなことがあっていいわけありません。
この作品が多くの国で公開され、評価されていることは、素晴らしいことではありますが、この作品は、日本でこそ、上映されるべきものだと思います。
この映画の中で、あるジャーナリストが、「ジャーナリズムというものは権力を監視しなければならない!そのために存在する!」と言っている部分があったと思いますが、まさに、私もそう思います。
現在、映像を修正中とのことですが、一日も早く修正すべきところは修正して、日本で公開され、権力が犯罪をねじ伏せるようなことがない国になってほしいです。
Black Box Diaries
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