2023年2月28日火曜日

アヴィニョンでの暴行事件 襲われた57歳の女性 暴行証拠として男の舌を提出

  


 先週末、アビニョンのサンジャン地区で犬の散歩中の女性が性的暴行を受けたという事件がありました。怖い話ではありますが、残念ながら、これだけなら、そんなに珍しい話ではありません。

 しかし、その後の女性の勇敢?な行動が話題になっています。

 犬を散歩させていた57歳の女性を30代の男性が彼女を追いかけはじめ、男は隙を見て、彼女にとびかかり、彼女をつかみこんで、力づくで彼女にキスをし始め、同時に彼女の下半身に手を伸ばし始めていました。

 ところが、この女性、無理やりにキスをされている間に、もがきながら、男の舌を噛み切ったのです。

 思いがけない反撃に男が彼女を放した隙に、彼女は男の舌を口に含んだまま帰宅したのです。その後、彼女は家に帰って口の中にある噛み切った舌を吐き出して保管し、息子に事の始終を打ち明け、息子に付き添ってもらって警察に行き、暴行被害を訴え、証拠として噛み切った舌を提出したのです。

 すぐに現場にかけつけた警察は、口を血まみれにしている男を発見して逮捕しました。

 男は、彼女の方が自分の魅力の虜になり、自分に馬乗りになってきたと言い訳をしたようですが、彼女の証言と証拠により、あっさり却下されてしまったようです。

 私は、幸いにも暴行事件にあったり、襲われたりしたことがないのでわかりませんが、もしも、男性に襲われたら、相手の舌を噛み切るような勇敢?な行動に踏み切れるのか?(無理だと思うけど・・)と思いますが、彼女は、以前にも暴行被害に遭っており、その際に警察に被害を届け出たところ、証拠がないからといって、却下された経験があったのです。

 そのため、彼女は過去に悔しい思いをしたこともあって、もしも、再びそんな目に遭うことがあったら・・と考えることがあったのかもしれません。

 しかし、フランス人女性・・強い・・激しい。泣き寝入りなんてしない!。

 性的暴行ではありませんが、以前、パリで日本人が塩酸を顔にかけられる事件が発生したことがありましたが、被害者は軽傷で済んだために、ことを荒げたくないと被害届さえも出さなかったということがありました。

 気持ちはわからないでもありませんが、かたや舌を噛み切ってまで届け出るフランス人からは、塩酸をかけられてもなお、泣き寝入りをする日本人は理解されないかもしれませんし、性的暴行にせよ、塩酸による暴行事件にせよ、凶悪な犯罪者は野放しにすべきではありません。

 逮捕された男は、30代の住居不定、職業不定のチュニジア人で、フランス領からの強制退去命令が発令される見込みとなっているようです。

 それにしても、襲われた57歳の女性、どんな女性かわかりませんが、そうたびたび襲われるのは、気の毒でもありますが、不謹慎な言い方をすれば、よほど魅力的な女性なのかもしれない・・などと思うのでありました。

 年齢の話をするのは、この女性には失礼かもしれませんが、30代の男性が57歳の女性を襲うとは・・と、正直なところ、私はそこのところもちょっと驚かされたのです。

 しかし、考えてみれば、マクロン大統領夫妻の年齢差もそんな感じなので、そんな年齢差は全然、タブーではないのかも・・とも思ったのです。

 それにしても、女性は襲われた場合には、なんらかの証拠を提出しなければならないということを初めて知りました。


アヴィニョン57歳女性暴行事件 舌かみ切り証拠提出


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2023年2月27日月曜日

パリのバラバラ殺人事件 真犯人は被害者の夫だった・・

  


 パリ19区のビュット ショーモン公園でビニール袋に入れられた女性のバラバラ死体の一部が発見されたのは、2月半ばのことでした。発見したのは、公園職員で、公園内の植木などの廃棄物置き場の下に隠されていたのは、ビニール袋に入った切断された女性の骨盤部分と太ももでした。

 人間のバラバラ遺体の発見で、これは、直ちに殺人事件としてパリ司法警察の捜査が開始されました。遺体発見と同時に公園は立ち入り禁止で閉鎖され、死体の残りの部分の捜索が行われ、公園の池の中まで探した結果、残りの遺体は同じ公園内で発見されました。

 遺体の指紋から、身元が確認され、その遺体は2月の初旬に夫によりモントルイユ (セーヌ サン ドニ) にあるアパートから妻が行方不明になったと捜索願いが提出されている女性のものであることが判明しました。

 その後も捜査が続けられていたのでしょうが、犯人が確定された報道もないまま、他の事件に紛れて、忘れかけていたところ、昨日になって、あのバラバラ事件の犯人は夫だったことが発表されました。

 この男性、妻の行方不明をSNSで発信しており、その後、行方不明の妻の捜索がすでに別に行われていました。遺体の指紋とこの行方不明の妻の照合が可能であったのもこのためだと思われます。

 結果としては、彼が出した捜索願いを出したことは、彼にとっては墓穴をほったことになりますが、その後、今度はバラバラ遺体の殺人事件の被害者の夫としての証言があまりに支離滅裂であったことから、警察の疑惑を引き起こしたと言われています。

 最も決定的であったのは、この男が1月30日から31日かけて妻が外出したという証言に反して、アパートの監視カメラにこの女性の姿が写っていなかったこと、また、妻の捜索願いを出しながら、この男が全く妻の消息を探していなかったことなどが挙げられています。

 この女性の遺体は2月半ばに発見されていますが、すでに彼女は1月の段階で夫によって殺されていたのです。

 結局、身柄を拘束されたこの男は、すぐに妻を絞殺して、キッチンで妻の体を切り刻み、バラバラにした遺体をゴミ袋に入れ、ショッピング カートに入れ、バスでパリに行き、パリ19区のビュット ショーモン公園に捨てたと自白しています。

 理由は数年間にわたる夫婦間の恨みの感情と発表されていますが、これが計画的なものであったのかはわかっていませんが、突発的に激情にかられての殺人だったとしても、その後、遺体を切り刻むというのも猟奇的だし、その間、捜索願いを出して妻を探すふりをしたり、また、簡単に見つかりそうなパリ市内の公園に遺体を捨てるなど、不可解なことも多いです。

 暴かれてしまえば、あまりに稚屈なアリバイで推理小説にもならないような話です。

 フランスでは、女性殺害の事件が前年度比で20%も増加しており、そのうち配偶者または、元配偶者による殺人事件も少なくないようです。

 配偶者殺人は単なる殺人事件とは異なるカテゴリーの罪に問われるようで、この男、「配偶者殺人罪」「死体損壊」「死体遺棄」で裁かれるようです。

 そして、フランスで、バラバラ事件、猟奇的な事件が発生するたびに過去の例として登場するのは、いまだに日本人留学生が起こした「佐川くん事件」なのです。


パリ19区バラバラ殺人事件


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2023年2月26日日曜日

国際農業見本市に訪れたマクロン大統領に物申す人が続出

  


 毎年、パリで行われる国際農業見本市は、毎年、多くの人を集める一大イベントの一つです。今年は2月25日から3月5日までポルト・ド・ヴェルサイユの大きな会場で行われています。結構、地味に人気のあるイベントで、今年は50万人の人出が見込まれています。

 フランスは自国の食糧に誇り高きプライドを持つ農業大国でもあり、フランス各地から見事な牛、馬、豚、羊などとともに、地方名産のチーズやバター、またハムやサラミなどの肉製品など、様々な食料品も集結し、農業にまつわるアクティビティなども用意され、子供連れで訪れる人も少なくありません。

 私は、行ったことがないのですが、近くなってくると、牛が全面に載せられたポスターなどの広告が出てきて、いつか、このポスターの牛を見て、「美味しそうな牛だ・・」という夫のつぶやきにギョッとして、「この人は肉ではなく、牛を見て、美味しそうだ・・牛が美味しそう?と思うのだろうか?」とびっくりしていると、「日本人だって、魚を見て、美味しそうだって思うでしょうに・・」と言われて、フランス人というのは、こういうものか?と誤解しそうになりましたが、これは、一般的なフランス人の話ではありません。

 昨日は、この国際農業見本市が初日ということで、マクロン大統領が見本市の様子を見て歩き、生産者たちと触れ合い、対話の時間を持ったのでした。


 

 ただでさえ、人が多く集まるところに、グングンと入っていき、ごくごく近くで生産者たちや、来場客などと気軽に話をする様子は、一見、すごくオープンな感じで親しみが持てる感じもするのですが、今回は特に、年金問題などで政府が国民の反感を買っている時期でもあり、大統領を捕まえて、物申す人が続出し、かなり過激な言い合いになっている場面や、乱暴を働こうとしたのか、その場で取り押さえられる人まで出たりして、ちょっと話題になっています。

 わりとよく見かける光景ですが、マクロン大統領は、大勢の国民のいる場所にグングン歩いていき、危険はないのか?と思いますが、いざ、危険な場面に直面して、その場に居合わせた人がSNSにアップして(今どきな感じ)、その時の様子を見ることになるのですが、一人でグングン歩いているように見えるマクロン大統領の周囲には、イカつい男性のSPがびっしり固めており、いざ、暴漢が・・などという話を聞いて映像を見ると、どちらがSPなのか暴漢なのかよくわからないようなガードの仕方でフランスのSP怖い~~(日本のSPもよく知りませんが・・)と思います。


 

 このような場面で思い出すのは、やはり安倍元首相が襲われた事件での警護の問題ですが、現職ではなかったにせよ、あれだけの大物にSPらしき人がいたのか?いなかったのか?いたのに、事件が起こったとしたら、まことにお粗末な話でもあります。

 しかし、この映像で見るSPは、暴漢?の髪をひっつかんで、なんかすごいですよね・・まじまじと見なければ、髪の毛をひっつかんでいる人の方が暴漢なのかと思ってしまいました。

 きっと、これが日本だったら、このような場所に首相が入っていく場合は、あらかじめ道があけられ、一般の人は近寄れないような体制を作ってしまうのでしょうが、こんなふうに、国民と直に対話する場所を作って見せるということもあってもいいのではないか?とも思います。

 まぁやったにしても、ポーズだけで、本当の対話とはなりそうもありませんが・・。


SALON INTERNATIONAL de l'AGRICULTURE

Porte de Versaille 75015 Paris


パリ国際農業見本市


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2023年2月25日土曜日

「赤い3月」3月にはさらに値上げ 2月のうちに買い物をしていた方がよいのか?

  


 今年に入って、すでに2ヶ月が過ぎようとしていますが、今、フランスでは、来たる3月を「mois de mars rouge」レッドマーチ(赤い3月)などと名付けられ、これまで続いてきたインフレがさらに悪化すると見る向きが多く、「2月のうちに買い物をしておいた方がよいのか?」などという話題が上がってきています。

 これに対し、財務相は、このレッドマーチ(赤い3月)のリスク(特にスーパーマーケットなどでの食料品や日用品に関して)を否定する心強い言葉を表明してくれてはいますが、彼が否定しようとしまいと、すでに、もう2月の段階で価格はかなり上昇しています。

 これまでに、食料品に関しては、この1年で平均13.2%の値上がりしていることが明らかにされていますが、これも、品物によって、かなり差も大きく、大きいものだと、小麦は40%、砂糖45%、ステーキ肉33%となっており、特に小麦を原料とするパンやパスタなどは、そこまで値上がりしているかというと、現在のところそこまでの印象はないものの、今後もこのままで据え置きになることは考え難く、徐々に値上がりすることはやむを得ないかもしれません。

 大手スーパーマーケットチェーンなどは、おおよその年間の仕入れ価格をできるだけ抑えるように交渉を進めるとしているものの、それ以上の努力は難しく、当然のことながら、仕入れ価格に見合った値上げは致し方ないものと半ば開き直っている感じで、品物により、10%~30%の値上げが予想されているようです。

 すでに、かなりの値上げに直面している国民は、4人に1人が食料品の買い物を抑えていると言われており(特に若い世代)、また、価格を抑えるために、これまでよりも食品のランクを下げて買い物しているために、必然的に身体によくないものを摂取する傾向にあり、健康問題にまで発展することが懸念されています。

 私も昨日、たまたまスーパーマーケットに買い物に行って、あまりの値上がりぶりにびっくり! これまで1ユーロで売っていたサラダ(レタス)が1.5ユーロになっていました。そもそも、そんなに高いものではないとはいえ、非常にわかりやすい1ユーロから1.5ユーロという1.5倍の値段に、せこいと思いつつも、なんとなくバカらしい気がして、手を引っ込めてしまったのでした。

 それで注意深く、他の野菜をチェックすると、どれも似たり寄ったりの値上がりぶりで、思わず、ため息が出てしまいました。

 野菜の値段は、これまでもシーズンに左右されることもあったものの、サラダとか、じゃがいも、玉ねぎ、にんじんなどの、比較的、あまり季節感がなく、いつでもお手頃価格なイメージの野菜がこんなに値上がりしているし、(私が今まで気が付かなかっただけで、いつからこの値段になっていたのかはわかりません)これよりさらに、赤い3月などと値上げが続くのかと思うと、この値段の上昇に気持ちもお財布も慣れていくのは大変かもしれません。

 気付いてみれば、コマーシャルセンター全体が低迷していて、テナントの店舗が次々と撤退して、空きスペースも目立っていたところ、さすがに食料品や生活必需品を扱うスーパーマーケットはかろうじて生き残っているものの、こうインフレが進んでは、厳しい状況になっていくかもしれません。実際、価格が上昇しているために売上高は増加しているものの、販売量は減少しているということで、これがインフレによる買い控え、消費低迷ということなのだと身をもって感じています。

 そんなインフレの影響からか、コマーシャルセンター内の撤退した店舗の空きスペースに新たにオープンするのは、2ユーロショップとか、Action(アクション)などのハードディスカウントショップなどの日本でいう100均のようなお店(100円ではないけど・・)で、これが、さすがに安いだけあって、けっこう人も入っていて、結構、売れているのです。

 とはいえ、このようなお店では、さすがに食料品もスナック類やお菓子、せいぜいジャムや乾物のインスタント食品で、生鮮食料品は扱っていません。

 長いこと、日本の100均のようなお店がフランスにも出来たらいいなぁと思っていた私ではありますが、こう続々と登場し、パリらしいお店が消えていくことはそれはそれで、寂しくもあり、まったく常にないものねだりなのかも?とも思うのでした。


mois de mars rouge レッドマーチ 赤い3月 インフレ


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2023年2月24日金曜日

16歳の高校生が授業中に教師を刺殺する異常な事件

  


 サン・ジャン・ド・リュズ(バスク地方)の高校で、授業中に16歳の少年が教師を刺し殺すという衝撃的な事件が起こりました。

 事件は、まじめで穏やかな校風で知られる静かな私立のカトリックの高校のスペイン語の授業中に起こったことで、事件を起こした少年は、授業中、突如として席を立ち、おもむろに出入口であるドアを塞いだのち、無言で教師に近付き、紙に包んで用意していた刃渡り20㎝ほどの大きなナイフを胸に突き刺したと言われています。

 現場にいたクラスメイトの証言によると、事件を起こした本人は、ひどく落ち着いていたものの、教室内はパニック状態になり、悲鳴が響き渡り、この少年がドアを開けるまでは、どうしたらいいかわからず、凍りついていたものの、彼がドアを開けるとともに、みんなが我先にと逃げ出し、慌てて、窓から飛び降りて逃げようとする生徒までいた模様です。

 彼は警察に身柄を拘束される前に学校で、「何ものかに憑依され、とりつかれて犯行に及んだ」というようなことをつぶやいていたそうですが、同時に、「これで人生がめちゃくちゃになってしまった」というようなことも話していたと言われています。

 少なくとも、これまでに、このスペイン語の授業の間にこの教師と生徒の間に問題が起こったことは一度もなかったと言われているため、ますます不可解な事件であるとも言えます。

 この少年は、明らかに知的で勤勉な少年で成績もよく(スペイン語以外)、いわゆる警察や学校からマークされるような不良少年ではなく、ビデオゲームや友人との外出など、同年代の若者として典型的な行動をしていたとクラスメイトは証言しています。

 しかし、一面では、他人との関係がぎこちなく、精神的に不安定な傾向にあり、うつ病の病歴があり、昨年10月に薬物による自殺未遂の、抗うつ剤を服用していたようです。

 このような、未成年、異常な行動による犯行の場合は、精神鑑定により、その責任能力が問われることになりますが、身柄拘束後の検察による1回目の精神鑑定によると「統合失調症型の精神疾患は認められず」、「急性精神疾患による脱力感も認められない」と診断されているものの、1年前からうつ病の要素があることも判明しています。

 どちらにしても、彼が自分自身で用意して、犯行に及んでいることは、明らかなことで、計画的な殺人事件として、捜査が進められていきます。

 この少年がいわゆる常日頃から素行の悪いいわゆる不良少年ではないことは、かえって事件を複雑にしているようなところがあり、犯行動機というものは、成績優秀な彼が唯一苦手な教科がスペイン語であったということくらいしか見当たらないのですが、まさか苦手な教科の教師だから殺すということも考え難いことでもあります。

 しかし、多くの人の目の前で行われた殺人は、冷静に、なんのためらいもなく、ひと突きのみで確実に致命傷をおわせたものであることはなおさら、恐ろしく感じられます。

 こうなると、被害者の53歳のスペイン語の教師の人となりが注目されるのですが、これまたちょっと聞いたことのないような評判のよい先生で、「並外れて献身的な人・・」、 「とても穏やかで親切でとても良い人で、誰からも愛されていた・・」、「彼女は休暇中であっても、少なくとも 80 ~ 90% の時間を学校での仕事に費やしていました・・」というおそらくフランスの学校ではなかなか耳にしない評判のいい先生だったようです。

家族関係も良好で、夫婦や家族も、とても仲が良かったとのことで、彼女の周囲の人々は、やるせない気持ちのやり場に苦しんでいるのではないかと思われます。

 いずれにせよ、これが公の場で行われたもので、事件の捜査は、この少年の精神障害についてが、掘り下げて行われることになります。

 この現場に居合わせたクラスメイトをはじめ、同校の生徒たちのショックは大きく、そのケアのための心理的サポートのためのユニットが設置されました。

 パンデミック後、パンデミックのためにうつ病が急激に増加した(特に若い世代)と言われていましたが、まさかこんな事件が起こるとは・・。彼が単なるうつ病だけであったとは、思えないのですが、彼の善悪の識別能力を妨げるものが病気として判断されるのか?それとも彼の人格として判断されるのか? 今後の捜査で少しずつ解明されていくと思います。

 しかし、私にとって、少なからずショッキングだったのは、この事件が起こったのが私立のカトリックの学校だったということで、娘の学校選びに際して、知人や先輩方から、「フランスではクズは限りなくクズ・・学校は絶対、私立にするべき!」と言われて、私も、たしかにそう感じて、娘は、小・中・高校と私立のカトリックの学校に通わせていました。

 この事件の起こった学校のように、静かで穏やかに見える学校で子供たちの顔つきも違っているような気がしたものですが、実際には、かなり進学校で、高校生の頃は、試験が終わるたびに、生徒たちは、慌てて成績の順位をチェックするために携帯に釘付けになると異様な話も聞いていて、うつ病で学校に来なくなっちゃった子がいる・・などという話もそういえば、聞いたことがあったのでした。

 とりあえず、私立の学校の方が安心と思っていた私にとって、この事件は、私立とて、例外ではない・・と思わされる事件でした。

 殺された教師やその家族はもちろんのこと、この少年の家族とて、どれだけ打ちひしがれているかと思うとやるせなくなります。


16歳の高校生 授業中に教師を刺殺


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2023年2月23日木曜日

ギャラリー・ラファイエット 26の店舗にセーフガード手続き申請 デパートに未来はあるか?

  



 ここのところ、中規模の服飾品メーカーが相次いで、管財人の管理下におかれ、事実上の倒産状態になったり、経営危機が露わになってきていますが、フランス最大手百貨店もその中に含まれているようです。

 競合他社であるプランタンが国内の7店舗を閉鎖する発表をしたのは、2020年11月のことで、パンデミックが始まった年でもありました。

 この時、すでにギャラリーラファイエットは大丈夫なんだろうか?という思いが、ふと頭をよぎったのですが、どちらにしても、パリの店舗はさすがに同社全体の象徴的な存在でもあり、影響は及ばなかったために、フランス国内の地方の店舗の事情もピンと来なくて、あまり深く考えることもありませんでした。

 今回のギャラリー・ラファイエットのセーフガード手続きというものは、こういう申請の仕方もあるのか?と思ったものの、経営が上手くいっていないことに違いはありません。

 財務省の説明によると、セーフガード手続きの目的は、経営難に陥った企業が負債を清算しながら活動や雇用を維持するために、組織再編を促進することとされており、キャッシュフローが債務を決済するのに十分ではなくなったものの、まだ支払いを停止していない企業を対象に、経済活動や雇用を維持し、確実に債務を返済できるようにするためのものだそうです。

 これにより、債務の利息(法定利息、遅延利息、延滞利息)および課徴金の支払いが停止されます。

 このセーフガード申請の対象には、アジャン、アミアン、アングレーム、バイヨンヌ、ボーヴェ、ベルフォール、ブザンソン、カーン、カンヌなどの店舗が挙げられています。

 どちらにしても、プランタンといい、ギャラリーラファイエットといい、各段に観光客の多いパリの店舗はすっかり復活した観光客に支えられえていると思われますが、どちらにしてもこのデパート、百貨店という営業形態がもはや成り立たなくなりつつあることも事実です。

 私自身、そもそも買い物をあまりしなくなったうえに、ギャラリーラファイエットへ行くのは、ノエルのデコレーションを見に行く時だけで、それ以外は、ごくごくたまに行く、ラファイエットグルメだけ。

 考えてみれば、何か探して買い物に行く際には、「まぁとりあえずデパートに行けばみつかるだろう・・」と思っていたのは遠い昔の話で、今でも広範囲の色々なブランドのものが、置いてあることには違いがないのでしょうが、どうにも、見づらく、また、中途半端に高いという始末の悪さに、デパートで買い物をしようとは思わないのです。

 今は何か欲しい商品があれば、ネットで調べて、ネットで買ってしまう方が簡単なうえに、実物を見て、自分の手で触れてみてから選びたいという場合でも、お店もそれぞれに、簡単に調べて出向くことができるので、わざわざ不特定多数のある程度の商品数がおいてあるデパートに行く必要はないのです。

 ラファイエットグルメなどは、美味しいものがたくさん厳選されておいてあり、たしかに、よくこれだけ集めているなぁと感心するものの、やっぱりお値段は、それぞれのお店よりも若干高めに設定されており、短時間に一度に美味しいものを手に入れるには便利なところではあるのですが、このインフレで商品の価格には、今まで以上に敏感になっている消費者にとっては、敷居が高くなっているかもしれません。

 しかし、パリの店舗を見る限り、店舗はいつもにぎわっている様子なので、大きな問題ではないのかもしれませんが、購買力の弱い地方の店舗にとっては、ギャラリーラファイエットとはいえ、デパートという存在自体が、生き残りが難しくなっているものなのかもしれません。


ギャラリーラファイエット セーフガード手続き申請


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2023年2月22日水曜日

パリに日本人観光客がちょっとだけ戻ってきた・・

  


 パリは今、学校が冬休みのバカンス中で、パリの街を歩いていても、いつもよりも子供連れの人が多い気がします。

 かねてから、ノエルで年末年始がお休みなうえに、また冬休み!と思うこのバカンス期間ではありますが、今年はここのところ、冬休みというよりも春休みのようなポカポカした気候です。

 暖かい日差しの中を歩いていると、まことにのどかに見えるパリです。

 この間、ランチをしていたら、どうやら地方からやってきたフランス人家族連れ4人が隣席で食事をしており、それぞれ子供達が食べたいものや行きたいところが折り合いがつかずに、それぞれ意見を通そうと話しつつも、なごやかな感じが微笑ましく、また、両親用のアントレが運ばれてくると、子供たちはなぜかパパのお皿には手を出すのにママは独り占めで食べ続けるという家庭内のチカラ関係が垣間見えるようで面白いな・・と思いながら、眺めていました。

 しかし、それにしても、家族4人でパリに来て、何日滞在して、どこへ行くのかわかりませんが、結構、高くつくんだろうな・・などと考えていました。

 こういったフランス国内からやアメリカやヨーロッパからの観光客はすでに、昨年の夏頃から、もうかなり戻ってきた感じで、いわゆる観光地っぽいところに行くと、ガイドさんが旗をもって、解説していたりする一団を見かけたりもするし、セーヌ川を渡るバトームーシュ(遊覧船)などは、遠目から見るにも、けっこう満員です。




 それでも、昨年には、「世界からの観光客は完全に復活した!」と言われつつも、どうにも、日本人の観光客を見かけることはほとんどなく、日本人の私としては、どうにも寂しい気がしていました。

 それが、昨日、出かけようとしたら、まずバス停で日本語が聞こえてきて、「えっ?」と思って振り返ると、若い日本人のカップルでどう見ても観光客。日本人の場合、そのたたずまいというか、服装や雰囲気で、こちらに住んでいる人なのか?観光客なのかはすぐにわかります。

 そういえば、パンデミック前までは、2月のこの時期は比較的、航空券が安いこともあってか、卒業旅行や研修旅行などで、日本人観光客が意外と多い時期でもありました。

 我が家の近くのホテルの中には、日本のツアー客が使っているホテルがあって、時には、知り合いのガイドさんなどに偶然、お会いすることもあったのに、ここの数年は、日本人どころか、ガラガラだったホテル。そんなホテルにも最近、お客さんが入りだしたな・・と思ってはいたのですが、日本人までとは・・。

 パリ市内のメトロは路線によって、フランス語、英語などに混ざって日本語のアナウンスが入る路線が何本かあるのですが、パンデミックのこの3年間、観光客が来ないからといって、アナウンスのテープをわざわざ変えないということもあってなのか、日本人なんて、誰一人として乗っていないのに日本語のアナウンスが流れるメトロを「これって私だけのためになっちゃってるのね・・」と虚しい気持ちで聞き続けていました。

 それが、今日1日で、最初のバス停に続いて、2ヶ所で2組の日本人観光客らしき人々を見かけて、「あ~ようやく、日本人もパリに来てくれるようになってきたんだ・・」となぜか、なんとなく嬉しくなりました。

 長らく日本で生活していないので、日本で今、お休みを取りやすい時期なのか?よくわかりませんが、個人の観光客が気安い時期なのでしょうか?

 パンデミックの前の段階にはすでに、昔のような日本のグループの団体客というのは、めっきり減っていましたが、個人で観光に来ている日本人を見かけたりすると、大丈夫かな?なにか、力になれることがあれば・・と声をかけたくもなります。

 そこは、まだまだフランス人のおばちゃんたちのように、気軽に知らない人に声をかける勇気もなく、また、特に日本人に対しては、いきなり見ず知らずの日本人のおばちゃんに声をかけられたら、不審に思われてしまうかな?などと、臆してしまうのであります。

 今日、通りかかったノートルダム大聖堂は、未だ絶賛工事中で、ごくごく近くには近寄れないようにはなっていますが、その囲いには工事中の様子の写真と、その状況を解説するようなパネルが何枚もかけられていて、工事中は工事中なりの観光を楽しめるようになっています。

 



 考えようによっては、工事中のノートルダム大聖堂もこれまた、今しか見れないものなので、これはこれで貴重かもしれません。

 来年には、パリオリンピックで、またまた普通にパリに来るのが大変になりそうでもあるので、パリに行ってみたいと思っていらっしゃる方には、2023年はよい機会かもしれません。

 これから、日も長くなり、同じ日数でも、これまでの季節よりも、もっともっと楽しむことができるようになってきます。

 日本人のみなさん、パリに来てください。


パリ 日本人観光客


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2023年2月21日火曜日

フランスのポップな色合いの可愛い雑貨のお店 ピローヌ(PYLONES)

  


 パリと言えば、可愛い雑貨が溢れているようなイメージもあるかと思いますが、これがそんなに気の利いたものがなかなか見つかるわけでもありません。

 そんな中、ピローヌ(PYLONES)は、カラフルでポップな可愛い雑貨を扱う雑貨屋さんとして、わかりやすい可愛さにあふれるお店で現在、パリ市内には13店舗あります。

 このお店は正真正銘のパリ発祥のお店で、人間、動物、花のシルエットにカラフルなパターンを施した日用品やアクセサリーを中心にした作品を発表し続け、その独特なポップな色合いと華やかさ、便利さやちょっとしたいたずら心を兼ね備えた商品を前面にして、1987年にパリ・サンルイ島に1号店をオープンしたのが始まりです。

 このお店を最初に見つけたのは、もうかなり前のことになりますが、この手のお店にありがちな、可愛くて、ついつい欲しくなって買ってしまったものが家にも数点あります。

 でも、可愛いし、日本へのおみやげにもいいかな?と一瞬、思ったのですが、日本に行った時に、偶然、このお店を見つけて、「なんだ・・日本にもあるんだ・・」と思って調べたら、日本にも、10店舗ほどあるようです。しかし、パリにおいてあるものと、全く同じものが置いてあるのかどうかはわかりません。

 すでに、最近では断捨離もどきのことを始めているため、この手のお店はできるだけスキップして見ないようにしてきたのですが、先日、たまたま通りかかって、なんだか久しぶりに覗いてみようか?という気になり、久しぶりに店内に足を踏み入れました。

 こういうお店は見ているだけでも楽しいもので、なんだか私の場合、中高生くらいの頃に意味もなく、友達とぶらぶらとソニープラザ(今でもあるのかなぁ?)などを眺めて歩いた時のことを思い出します。

 

可愛いふくろうの眼鏡置き

 

てんとう虫のテーブルクリーナーと猫のキッチンタイマー

 

パズルのような鍋敷き

 

折りたたみ傘

 ここの商品は可愛いだけでなく、ちょっと便利ということも、つい手がのびてしまうのですが、この折り畳み傘などは、ちゃんと傘を畳めないフランス人の習性?をうまく利用しているようなところも笑えます。

 

犬や猫のスポンジホルダー

 

 

瓶の栓 ハメるとおぼれている人の足が・・

  

エッフェル塔のチーズおろし

 
猫のバターナイフとちょっとどうかと思う鍋敷き

 

手足が下り曲がる携帯ホルダー

 見ているうちに、なんだか年甲斐もなく一人ではしゃいでいる気分になってしまい、猫好きの私はついつい猫ものに、いちいち過剰に反応してしまいます。

 別に見るだけのつもりが、ついつい買ってしまったのがこちら・・


猫の携帯ホルダー

 しかし、携帯を置いてしまうと猫は見えず、あんまり猫の感じはしないのですが、まぁ、なんとなく、生活の中でにっこりしてしまう物があるのも、楽しいな・・と久しぶりに雑貨屋さんに入って、思ったのでした。

 パリ市内だと1号店のサンルイ島をはじめ、マレ地区やルーブル美術館の地下にもあり、また、東駅、サンラザール駅、モンパルナス駅の駅ビル内にもあります。

ピローヌ(PYLONES)

 ちょっと、楽しいお買い物、ウィンドーショッピングをしたい方には、ちょっと覗いてみたらいいかもしれません。


ピローヌ(PYLONES) パリの雑貨屋さん


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2023年2月20日月曜日

エルメス絶好調で特別ボーナス4000ユーロ 笑いが止まらないフランスの高級品業界

  


 決算発表の時期ということもあり、その明暗の分かれ目が顕著に見える時期でもあります。

 カマイユ、Kookaï(クーカイ)、Pimkie(ピンキー)、Go Sportなどが次々と管財人管理下に置かれるなどのニュースが相次ぎ、ついには、ギャラリーラファイエットの26店舗までがセーフガード手続き申請など、不景気な話ばかりが次々と流れる中、びっくりするほどの絶好調なのは、ハイブランドといわれる高級品業界です。

 先日は、LVMHグループの時価総額過去最高を記録したなどという話が出たばかりのところ、今回は、エルメスも絶好調という話で、昨年の売上高から29.2%増の116億ユーロを記録し、世界中の全従業員19,700人に対して4,000ユーロ(約56万8千円)の特別ボーナス、株主に対しては1株当たり13ユーロの配当を支払うことを発表しています。

 この中でも、最も注目されるのは、売上高の約半分を占める皮革製品・馬具部門で、供給問題の影響を受けた2021年よりも21.3%増、約8,000ユーロで販売されるバーキンは入手するのに平均10ヶ月待ちという状態を少々改善したこともこの増収に繋がっていると見られています。

 強気なエルメスは昨年の4%値上げに引き続き、今年も7%値上げすることも同時に発表しています。

 エルメスのマネージングディレクターは、「独自の、特に強固なビジネスモデルによって強化され、自信を持って2023年に臨んでいる」、「2022年は、あらゆる不確実性にもかかわらず、すべての国で好まれているおかげで非常に好調であった」と述べています。

 競合のLVMHやケリングが年次決算発表時に、第4四半期の中国での売上がパンデミックの影響で落ち込んだことを指摘されたのに対し、エルメスはアジア太平洋地域(日本を除く)の売上が30.7%増となりました。

 たしかにエルメスは最近のルイヴィトンなどのド派手なデコレーションや広告などとは、全く違うビジネスモデルで突き進んでいる感じはします。

 滅多にこの手のお店には行かない私が昨年、日本に一時帰国をした際に従妹に頼まれたものを探しにエルメスの本店に行ったのですが、当然のごとく、その商品は売り切れで、今後、入荷の予定はいつ頃なのかと尋ねたところ、現在作っているのかどうかもいつ入荷するかもわかないと言われて、あんまり売る気ないんだな・・と思いつつも、あまのじゃくな私のようなものにとったら、ぜんぜんやる気ないというか、ガツガツ稼ごうとしていない感じには、かえって好感を持てる気がしたりして、また、そのうち覗いてみようかと思ったまま、結局、あれ以来、行ってはいません。

 そのエルメスが好きな従妹の話によると、とにかくまず商品が入らないのがエルメスで、エルメスの商品を扱っているサイトなどでは、とにかく出せば、即売れてしまうのだそうで、日本は貧乏になった・・などと言われる反面、こういうものを超高価格でも買うという人はいるのだな・・とビックリしたりもしました。

 こんな生産が間に合わない状態を改善するために、エルメスは2023年にウール県(ノルマンディ)ルーヴィエとアルデンヌ県ラ・ソルモンヌに2つの皮革製品工場を開設する予定だそうで、今後、品不足は少しだけ改善されるかもしれません。

 しかし、一方では、簡単に手に入らないということも、価格上昇をもいとわない購買意欲を掻き立てていることも事実なので、エルメスに行って、欲しいものがすぐに買えるようになる(2つ工場が増えたくらいでは、すぐにそうはならないと思うけど・・)のも、なんだか、逆に肩透かしをくう気分がするかもしれません。

 このガツガツしていない感じは(私の個人的な印象ではありますが・・)、以前、前述の従妹に頼まれて、まだ小学校低学年くらいだった娘を連れて、手帳を買いに行ったときのこと、その時は、あっさり希望の品物は買えたのですが、その時に応対してくれたフランス人のお姉さんが、買った商品とともに、「大きくなったら、中身を買いにきてね!」とエルメスの小さなオレンジの箱を持ってきて娘に渡してくれたのは、私のエルメスのイメージをなんとなくほっこりとさせてくれた良い思い出です。

 残念ながら、大きくなった娘は、エルメスには全く興味がないのですが・・。


エルメス大幅増益 特別ボーナス


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2023年2月19日日曜日

昨年、フランスで最も盗まれた車はトヨタだった!

  


 フランスでデモが暴徒化したりする場合に車が燃やされる光景というのは、珍しくはないことですが、それよりも地味に、しかし、着実に起こっているのは車の盗難事件なようで、特に昨年は車の盗難件数が急増し、2021年の127,700件に対し、合計134,000件と9%も急増しています。

 つまり、フランスでは、1日367台(1時間に15台)の車が盗難に遭っているということなのです。その中でも昨年、最も盗まれた車はトヨタRAV4なのだそうで、しかも、それは昨年のトヨタプリウスに続いて、トヨタは2年連続の堂々1位のタイトルを獲得しています。

 これは、喜ぶべきか、嘆くべきか、考えてしまうところでもあるのですが、そもそもそれだけ、フランス国内でトヨタの車がかなり出回っているという証でもあり、人気があるという証でもあるかもしれません。

 たしかに、やはりなんといってもフランスの車が多いフランス(ちなみにフランスで一番売れている新車はプジョー208だそうです)で、特にここ数年、なんだかトヨタの車を目にする機会が増えたような気がするのです。

 特に警察車両(パトカー)などがトヨタだったりするのには(もちろん全部ではありませんが)、フランスの国の機関である警察の車両くらい、なんでフランスの車にしないのかなぁ?と、不思議に思ったりもします。

 先日、ゼレンスキー大統領がパリに来た時に彼をエリゼ宮に運んで行ったのもトヨタの車でした。

 現在の車のキーは、昔のキーと違って、鍵師が巧なテクニックを使って開けるわけではなく、なんと、今はコンピュータ化された電子システムが使用されているために、ネットで解除装置を買えば、誰でも簡単に車を盗むことができるのだそうで、この高度化?されたツールによって、車を3分以内、(車種によっては40秒以内)に簡単に盗むことができてしまうのだそうです。

 内務省のデータを編集している保険の専門機関の統計によると、1000を超える車種の盗難頻度を算出したことにより、トヨタRAV4は保険加入車1万台中240台も盗難に遭っていることが判明したのです。

 これは主に日本企業の特定のモデル専用のハッキングキットをネット上で数千ユーロで販売している車窃盗システムが発覚し、昨年10月、警察はついにこの車窃盗のためのハッキングキットを輸入していた犯罪ネットワークを摘発したようです。

 しかし、これはイタチごっこの始まりということで、一つの犯罪ネットワークを摘発しても、また別のネットワークが登場するだろうし、自動車メーカーがこれらのハッキングキットに対応したセキュリティを開発しても、また、それを解除することができるハッキングキットが再開発されるのだと思います。

 フランスに来たばかりの頃に、夫がうるさいくらい、車の中には、決して物をおいておかないで出先でも荷物は必ずトランクに入れるように言っていて、ラジオ・CDのプレーヤーなども外して乗り降りしていて、「そこまでするの??」と思ったのですが、これは、当時も多かった車上荒らし対策だったのだと思いますが、今や車もろとも簡単に盗まれてしまうのでは、もうお手上げ状態です。

 しかし、「これには対策があります!」と推奨されているのは、「壊れやすい車や窃盗団に人気のある車をお持ちの場合、理想的な解決策は閉鎖された駐車場に車を駐車すること。それができない場合は、ハンドルに棒をつけるなど昔ながらの方法をとれば、コンピューターでは、それを取り除くことができないため、窃盗犯はそれを見て立ち去ります!」とのことで、この電子ロック解除に対抗する方法がハンドルに棒をつけるという原始的な方法が推奨されていることに、どうにも拍子抜けさせられる気がします。

 


フランスで一番盗まれる車 トヨタ


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2023年2月18日土曜日

パリにも広がりつつある日本のお菓子

  


 私がフランスに来たばかりの頃は、パリでみかける日本のお菓子は、日本のポッキー(POCKY)が、なぜかMIKADOという名前で売られているくらいで、日本の食料品を扱うお店に行けば、それなりに少しは日本のお菓子もあるにはありましたが、他の場所では、滅多に見かけることもありませんでした。

 何より、なにも日本のお菓子を探さなくても、まぁ、そこそこのお菓子はこちらにもあるし・・別にお菓子は、いいかな?とも思っていました。

 もともと、私は日本にいた頃は、圧倒的な辛党で、お菓子を食べていたのは、子供の頃のことの話で、あまり日本のお菓子というものには詳しいわけではありませんでしたが、それでも、普通に出回っていたメジャーなお菓子くらいはそんなに頻繁ではないにせよ、あっ知ってる、食べたことある!くらいの認識はありました。

 もうかなり前のことになりますが、日本に行く外国人が増え始めてから、外国人が日本から買って帰るお菓子で最も人気のあるのは、「コアラのマーチ」という噂を聞き始めてまもなく、コアラのマーチは日本食料品店だけでなく、アジア食材を置いているスーパーなどにも登場するようになっていました。

 それが最近、日本食ブームなども手伝ってか、中華系のチェーン展開もどきの日本食レストランや、ラーメン屋さんなどには、かなりの頻度でラムネ(ドリンク)が登場するようになり、オペラ界隈には、日本の駄菓子屋さんのようなお店までが登場しました。

 お菓子に限ったことではありませんが、日本の商品は常に商品開発が続けられていて、同じメーカーの同じお菓子でも常に新しいフレーバーや季節限定商品などの新商品が出てきて、楽しませてくれるものであることをそんなお店を見ていると思い出します。

 日本に比べれば、フランス人は、本当にいつもいつも同じものを食べていて、よく飽きないな・・と思うほど、代わり映えがしない感じです。それでも、以前に比べれば、新商品や新しいフレーバーなども出るようになりましたが、まだまだ日本の比ではありません。

 一つには、かなりフランス人の味覚が保守的であることもあるし、「伝統的なものこそ王道である」というような考え方もあるかもしれません。

 一時、フランスで、抹茶味がプチブームになった時には、抹茶味のキットカットを見たことがありましたが、それもあっという間に消え去ってしまいました。

 それが、昨日、たまたまNormal(ノーマル)という若者向けの比較的低価格のコスメやお菓子類、小物などを扱っているチェーン展開のお店(現在、急激に店舗数を拡大中)に行ったら、お菓子の山があって、「いつでも新商品入荷!」などと書いてあり、まず、目に入ってきたのは、チョコレート味とイチゴ味の「コアラのマーチ」でした。

 コアラのマーチもこんなところにまで、登場するようになったんだ・・と、なんとなく満足気な気持ちで、ふと、そのまわりを眺めると、MIKADOではなく、POCKYがあり、しかも、つぶつぶイチゴやアーモンドクランキー、それに加えて、ホワイトチョコレートやショコラオレンジのキットカットがありました。

 たまたま、それを珍しそうに手に取っていたフランス人が「キットカットなのに、これ何??パッケージからして、オレンジの味なんじゃない・・へえ~~」と言っていて、ショコラオレンジってフランス語っぽくは書いてあるんだけどね・・カタカナ書きだもんんな・・と、惜しい!と思って、クスッとしました。

 それに加えて、なぜかブルーベリー味のラムネ、そして、日本のグミがゴソゴソとおいてありました。なるほど、グミとはフランス人が好きそうなもの(フランスには国民食といってもいいほど人気のHARIBOというグミのようなお菓子があります)を選んで入れているんだな・・と思いつつ、これまた、きっと、なんだかわからないんじゃないかなぁ~?とちょっと残念にも思いました。

 日本のものがフランスで広まってくれることは、日本人としては嬉しい限りですが、考えてみれば、日本の食料品には、優れものがたくさんあります。

 お寿司、ラーメン、餃子、日本の食パンなど、かなりフランスに広まったと思う食べ物はたくさんありますが、今度は日本のお菓子が来ているのかもしれません。


パリで買える日本のお菓子


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2023年2月17日金曜日

世界の美味しいチーズランキング フランスはトップ10にも入らず

   


 World Food Atlasが様々な食品、料理などについて、世界ランキングを毎年、発表していますが、今年の「世界で最もおいしいチーズランキング」が発表され、フランス産のチーズはトップ10にも入っていないことにフランス人は憤慨している・・というより、半ば呆れているようです。


 2023年のランキングによると上位4位までがイタリアのチーズで占められ、栄えある1位はパルミジャーノ・レッジャーノ、次いでゴルゴンゾーラ、ブッラータ、グラナパダーノと続き5位には、メキシコのオアハカチーズをはさんで、6位、7位、9位、10位とイタリアのチーズが占領し、トップ10のうち8つはイタリアのチーズという快挙を果たしています。

 そして、気になるフランスはといえば、ようやく13位にルブロション、14位にコンテ、26位にモンドールという非常に残念な結果になっています。

 チーズといえば、自国産のものに、壮大な誇りを抱いているフランスとしては、イタリアのチーズが美味しいことは認めざるを得ないとはいえ、この結果には多いに不満なようです。

 しかし、これに対して、正面から怒るのではなく、皮肉めいた、今で言うところの冷笑系?のコメントが多々寄せられているのは、フランスらしいところでもあります。

 そもそも、このランキングはどのような調査のもとに行われているのかは、明記されてはいないもので、この類のランキングに対して、毎回、多くの反発の声を受けとっているということは、World Food Atlas自身も認めているところなようです。

 「「ルブロション」の前にブラジルのチーズがあるが、何の問題もない・・」とか、

 「カンタル、モルビエ、サン・ネクテール、クロタン、サンマルセラン、カマンベール、ブリー、ロックフォール、レベロション、グリュイエール、ロカマドゥールなどなど、忘れ去られたものが多すぎる・・」

 などとも書かれていますが、極めつけは、「2022年のWorld Food Atlasは「世界で一番美味しい国ランキングでフランスをアメリカの後ろに位置付ける度胸の持ち主である」という言い方にいかにもフランスらしさがにじみ出ていてシビれます。

 この時もやはり、イタリアが1位で、アメリカが8位、フランスが9位でしたが(ちなみに日本は4位)、このランキングについてだけでなく、同時にアメリカも腐しておきながら、それを発表することに対して「度胸がある」と言いのけるあたり、風刺というか、嫌みというか、バッサリ切り落としている感じに、美食の国?フランスのプライドの高さが垣間見えます。

 ちなみに、2022年の同社の「世界一美味しい料理ランキング」では、日本のカレーが堂々1位に選ばれています。この時のランキング(ベスト50)に日本は7品目でランクインしており、1位のカレーに続いて、21位にとんこつラーメン、その他、かつ丼、そしてカレーライス(だぶってないか?)、醤油ラーメン、餃子、鮭にぎりずしが入っています。

 これを見るにつけ、やっぱりちょっとおかしいのかも?と思わないでもありませんが、まぁお遊びと思えば、これを見て、ああでもない、こうでもない・・といって楽しむものなのかと思います。


世界の美味しいチーズランキング


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2023年2月16日木曜日

花粉症は治ったと思っていたら、どうやらマスクのおかげだったらしい・・

 



 私は、長いこと花粉症に悩まされてきました。このアレルギー体質は、どうやら母型の遺伝が大きいようで、母をはじめ、母の兄弟姉妹、そして母型の祖母までが、みんなこの時期は特にひどいもので、みんなこの時期になると、涙目になり、ティッシュが手放せず、鼻を真っ赤にして、「もうこの鼻捨てたい!」などと口にしていました。

 ずいぶん前に春先に日本に行く機会があったのですが、どうにもこの花粉症がひどすぎて、しまいには、呼吸困難に陥るくらい苦しい思いをしたので、もうこの時期に日本に行くのは絶対にやめよう!と思っていたくらいでした。

 しかし、ここ数年、すっかり花粉症の症状もおさまり、そんな苦しい思いをしたことも忘れて、昨年の今頃、用事があって日本へ行ったのですが、花粉症のことなど全く思い出しもしないほど、全く大丈夫だったのです。

 母は歳をとるにつれて解放され、「どうやら年齢とともにアレルギー反応の出方も弱まるみたいだから、あなたも歳をとってきたら、自然に治まっていくわよ・・」と言っていたので、私も歳をとったということか・・よかったよかった・・と妙に自分で納得していました。

 ところが、今年になって、どうやらまた、花粉症が復活した模様で、目はかゆいし、鼻はグシュグシュで、もうティッシュが手放せずに、四六時中、鼻をかんでいる状態が復活してしまいました。

 特に今年は酷いようで、今朝などは、朝早くにそのために目が覚めてしまい、落ち着くまで鼻をかみつづけ、少し落ち着いたところで、「ふ~っやれやれ・・」とため息をつき、朝からがっくり・・。

 思うに私の場合は、年齢のためにアレルギー反応が弱まったわけではなく、ここ数年、コロナウィルスのために、ずっとマスクをし続けていたのに、今年はすっかり屋外でのマスクは外してしまっていたためでした。

 幸いにもこれまで私はコロナウィルスには一度も感染せずに済んできたのですが、コロナウィルスのために否応なしにし続けてきたマスクのおかげで花粉症も防ぐことができていたことに、今年は実感しているのです。

 マスクがここまで花粉症に有効だとは、思ってもいなかったので、逆に以前も花粉症だからといって、マスクをすることがなかった私、今からマスクをしたところで、花粉症がおさまるかどうかはわかりませんが、とりあえず、しばらく屋外でも、いや屋外だからこそマスクをしなければならないと思い直すのでした。

 おかげさまでマスクは買い置きのものに加えて、何度もフランス政府が送ってくれたマスクが大量にあり、あらためてマスクを買い足す必要もありません。

 まだまだ、私はアレルギー反応が弱まるほど歳をとっていなかったと思えば、悪くはないな・・とも思うのですが、体力の衰えはしっかり感じていて、アレルギー反応だけ据え置きとは、本当にトホホです。

 昨年、マスクの義務化が撤廃されたばかりの頃に、スーパーマーケットの中でマスクをしている人に向かって、「おまえ、いつまでマスクなんかしてるんだ!」といちゃもんをつけていたおじさんに、「私は、花粉症なので・・」と言い訳している女性がいて、「なるほど、花粉症とは、上手い言い訳だな・・」と思ったことがあったのですが、考えてみたら、あの女性は本当に花粉症だったのかもしれない・・と今になって思うのでした。


花粉症 マスク


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2023年2月15日水曜日

欧州議会 2035年から内燃機関搭載の新車販売禁止を採択 100%電気自動車を目指す

  


 欧州議会は2035年から内燃機関搭載の新車販売を禁止にする規制案を採択しました。つまり、EU圏内のガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車の新車販売を事実上停止し、欧州全体で、本格的に電気自動車に切り替えていくという方向に大きく舵を切ったことになります。

 2035年というと、12年後、つまり次のウサギ年が回ってくる頃まで、自動車業界には、激動の12年間となりそうです。

 欧州議会・運輸議会議長は、この決定を「我々は、自動車と気候という敵対する2つの兄弟を和解させる歴史的な合意に達した」と誇らしく語っています。

 賛成340票、反対279票、棄権21票で採択されたこの規制案は、欧州における新車のCO2排出量を2035年からゼロにすることを定めたものです。

 この票数を見れば、これに反対する票もかなりあったことがわかります。

 これまでにもフランスでは、すでに、かなり排ガス規制が厳しくなり、特にパリ市内は規制がややこしく、私が時々、お世話になっている運転手さんによると、「車の車検は年々、厳しくなり、結局は、今までよりも、かなり頻繁に車を買い替えなければならないようにできている・・」とのことで、彼曰く、車は自分で持たないのが一番だそうで、私自身もあまり必要性を感じることもなく、車は手放してしまっています。

 また、この中間地点の2030年以降に販売される新車のCO2排出量を2021年比で55%削減することが定められており、現在の目標値37.5%を大きく上回っています。それだけ環境対策が急がれていることは、ここ近年の異常気象などからも理解できるのですが、言うほど簡単なことではありません。

 現在、トータルエナジーズのストライキなどで、ガソリン供給がままならなくなって、ガソリンスタンドに行列している車なども劇的に減少するということにはなりますが、新車の販売を中止したところで、フランス人が乗る車(買う車、探す車)は、ほぼ中古車で、正確な数字はわかりませんが、フランスの中古車率はかなり高いと思われるため、2035年に、ガソリン車の販売がストップしたところで、すぐにすべてが電気自動車になるわけではありません。

 ただし、新車の販売がストップするということは、部品などの生産もストップするわけで、修理などが不可能になっていく可能性もあります。

 また、これにより、現在1250万人の雇用を生み出している欧州の自動車産業に大変な影響を及ぼすであろうことも危惧されています。雇用問題までが関わってくれば、その過程でまた大変な騒動が起こることが予想されます。

 そして、同時に、電気自動車充電のための電力供給と電力生産の方法なども問題が積み重なります。そして、この規制案に反対するグループによれば、電気自動車の生産は、これまでの内燃機関搭載車に比べて生産自体が公害を排出するものであるという声もあり、また、電気自動車の寿命はこれまでの車よりも3~4倍寿命が短いという調査結果も提出されています。

 これに対抗して、電気自動車の電池リサイクルも検討されていますが、現在のところ、電池リサイクルはわずか5%にとどまっている状態だそうで、これからさらなる開発が求められるところです。

 また、この種の規制案にはつきものの、付け加えられている例外条項についてですが、年間生産台数1万台未満のメーカーには、他の業界より1年長い2035年末まで内燃機関を搭載することを認める猶予が与えられています。この条項は、時に「フェラーリ修正条項」とも呼ばれ、特に高級ブランドに恩恵をもたらすもののようです。

 また、富裕層優遇??とちょっとイラっとしないでもありませんが、このくらいの高級ブランドとなれば、ただでさえ、減価償却しないイメージのある車、かえって今後、生産されなくなるとすれば、コレクターにとっては、まさに価値は激上がりしそうで、また別のマーケットが生まれそうな気もしています。

 いずれにせよ、色々なもの、色々なことがどんどん変わっていく世界。変化を柔軟に受け入れる姿勢を持ち続けなければならないのかもしれません。


欧州議会2035年内燃機関搭載の新車販売禁止


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2023年2月14日火曜日

父親がファストフード店の前に子供を置き去りにした事件で我が家に起こった事件を思い出しました・・

 



 日曜日に4歳と5歳の子供をファストフード店の前に置き去りにした58歳の男性が身柄を拘束されたという、ちょっと奇妙と言えば奇妙な事件が起こりました。

 2人の子供が放置されていることに気付いたファストフード店の従業員が警察に通報したことから、この事件が公になりました。

 子供たちは、自分の住所を言うことができなかったために、さらにこのことが大事になったような気もするのですが、本気で子供を置き去りにする、捨てようとしたにしては、あまりに発見されやすい場所でもあります。

 その後、父親は子供を放置したファストフード店に戻ってきましたが、その時はすでに子供は警察に保護された後のことで、彼は警察に子供を迎えに出向きました。

 子供を取り戻すために警察に出向いたのだから、ほどなくして子供とともに解放されると思いきや、この男性は、この無責任な行動について説明することができなかったため、「未成年者遺棄」の罪で身柄を拘束されることになりました。

 子供たちは食事をしていない様子だったため、警察へ向かう途中でクロワッサンを買ってもらったそうですが、この子供たちがどれだけ事情をわかっていたのか?実際の家族関係はどのようであったのかはわかりませんが、子供の母親は妊娠中で、そんなことが起こっていたとはまるで知らなかったようです。

 フランスでは、この年頃はもちろんのこと、小学生の間は、学校の送り迎えも必要で、子供だけで外に出るということは考えられないため、娘がこの年頃の頃に住所を言えるように教えたどうか、記憶にはありませんが、字を書く練習で自分の名前や住所は書けるようにしていたかもしれません。

 しかし、この事件を聞いて、思い出したのは、昔、シャンゼリゼで農業祭があった時に、シャンゼリゼの全面が歩行者天国になり、お花畑ができていたり、動物たちがやってきた時のことでした。

 シャンゼリゼでこんなことは、滅多にない!と、娘を連れて出かけたときに、それはけっこうな人出で、そんな中、娘とはぐれてしまい、もうシャンゼリゼを下りたり上ったり、何往復もして探し回ったことがあり、本当に焦ったことがありました。

 シャンゼリゼって、上から下まで歩くとけっこうな距離です。

 当時、私は携帯は持っていたものの(しかも、まだガラ携だったし・・)、娘は持っておらず、今回の事件と違って娘は10歳くらいだったと思いましたが、とはいえ、まだまだ子供。

 彼女は携帯を持っていなかったので、携帯で連絡をとるということもできずに、私は血眼で娘を探し回っている間も携帯を見る・・どこかに電話するということも考えなかったため、私の携帯はバッグの底に沈んだままで、その存在さえ忘れていたくらいでした。

 もう途方に暮れて、まさか、一人で家に帰っているかも?(彼女も自分のNavigo(定期券)を持っていたため)と思って、家に電話してみようか?と携帯を開けたところ、警察官からのメッセージが入っており、「はぐれてしまったと思われるお嬢さんと一緒にルイヴィトンの近くにいますからすぐに来てください」と。

 どうやら、娘は、近くにいた警察官に頼んで、私に電話をしてもらったようで、幸い娘を見つけることができました。

 娘と再会して、「どこにいたの??不安だったでしょ??」と叫ぶ私に、案外、娘は冷静で、「ママがメッセージに気が付かなかったら、そのうちおなかがすいて、何か食べさせてもらえるだろうから、何を食べさせてもらおうか?考えてた・・」と拍子抜けの答えが返ってきました。

 しかし、今回の事件の話を聞いて、私の場合は、娘を置き去りにしたわけではありませんが、結果的に子供を放置状態にしてしまったことには違いなく、警察に拘束される・・なんてこともあり得ないではなかったかもしれない・・と、今さらながら、ヤバいことだったな・・と思い知らされたのです。

 フランスは児童保護に関しては非常に厳しいので、(実際に、酷い親もいるからなのでしょうが・・)その保護団体などの保護や監視が的外れな場合もないこともないので、私の場合どちらかといえば、この保護団体の過剰な監視の方を警戒していたところもあります。

 日本だと、パチンコに夢中になって、子供を車の中に置き去りにしてしまったなどという話は聞いたことがありますが、この父親、一体、何のために子供を置き去りにしていたのか?はたまた本当に捨てようとしていたのか?は、まだ明らかにされていません。


子供置き去り事件


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2023年2月13日月曜日

2023年国際ソムリエコンクール 30年ぶりにパリで開催 ワインとフランス

  



 若い頃は、とにかくお酒が大好きで、日本では、とにかくビールが好きで1日2リットル近く飲んでいた時期もあり、また、ウィスキー、日本酒、焼酎、ジンなどなんでもいける感じでした。

 そんな中でも最も飲んでいなかったのは、ワインで、一度開けてしまうと始末に悪い気がしていたこともあり、またワインは選ぶのが難しいうえに、決まった銘柄をどこででも気軽に買えるという感じでもなかったので、一番、飲む機会も少なかったのです。

 しかし、フランスに来てからは、気候のせいもあるのか? なぜかビールを飲みたい感じは消え去り、飲みやすい?ウォッカを友にしていた時期もあるのですが、結局のところは、ワインが一番コスパもよく、また季節ごとにワインフェアなどをやっていて、箱詰めのワインが山積みにされたりするので、少々、煽られているところもあるのか、断然、ワインを飲むことが多くなりました。

 あんまりお酒を飲まなくなっている今でも、もう身体に染みついている酒瓶をみるとワクワクして嬉しくなってしまう感情はなくなっておらず、ついつい箱買いしてしまったりするのです。

 ちなみに、そんなに有名ではない、安いのに美味しいワインを探し出すことに、最近の私は喜びを見出しています。

 そんなフランスで、30年ぶりにパリで国際ソムリエコンクールが開催されるというニュースがちょっとだけニュースに出ていて、「へ??ワインのソムリエコンクールなのに?あんまり注目されていないんだな・・」と意外に思いました。

 「ワインといえばフランス、フランスといえばワイン」をイメージする人は多いと思いますが、意外にもフランスでは、このソムリエという職業は、単なるウェイターと大して変わらないような(とはちょっと言い過ぎですが・・)、あまり正当に評価されていないという声もあるほど、あまり光があたっていない職業でもあるのです。

 今回、このコンクールに参加したフランスで最優秀ソムリエと最優秀職人の称号を持つフランス代表のソムリエもニューヨーク勤務ということで、現在、フランスで活躍しているわけではありません。

 彼女自身もソムリエがスターとして輝けるのはアメリカやアジアだと語っています。日本では、たしか、以前にソムリエにスポットをあてたテレビドラマなどもありましたね。

 とはいえ、コンビニのような小さいスーパーマーケットは別として、フランスなら大抵、どこのスーパーマーケットに行っても、カーブ(ワイン貯蔵スペース)があり、前述したように季節になるとワインフェアなどが行われたりする裾野の広い土壌があるのですが、このカーブも年々スペースが縮小され、代わりにビールのスペースが広くなっていたりもして、特に若者のワイン離れは、ワイン愛好家から嘆かれたりもしています。

 身近なところでは、我が家のアパートのゴミ捨て場などからも、以前に比べてワインの瓶がずいぶん減ったな・・などと思います。(ゴミの分別をあまりきっちりしないフランス人もさすがに瓶だけは、別に捨てます)

 ワインを飲む人が減ったとはいえ、ソムリエとなる人にとっては、ワイン文化が根付いている土地で生まれ育っているということは優位だとは思うのです。

 しかし、ワインにかかわらず、現在はアルコールは控えましょう、アルコールは健康を害するもの・・という流れで、フランスでは、アルコール飲料のテレビコマーシャルなどは、NG。広告もそんなに多くはありません。(なので、日本政府がサケビバ・・など若者を対象にお酒の広告を募ったりするのにはびっくりしました)

 少なくとも、私自身は、レストランに行っても、ソムリエが各テーブルに登場するような高級レストランには行かないので、レストランでワインを頼んだ際に、ウェイターの人が、すっとワインオープナーをポケットから出して、キュッキュッと器用に素早くコルクを開けてくれるのを見て、カッコいい技だ・・と思うくらいで、あれこれ、ワインについて、解説されたところで、あまりよくわからないのが、正直なところです。

 パリで開催されたというのに、今回、出場したフランス人ソムリエは4位にとどまり、決勝に進出できなかったようです。

 ちなみに1995年に東京でこの大会が行われた時には、日本人が優勝したそうで、そういえば、その頃から日本では、ソムリエという職業に光があたりはじめ、今やソムリエという言葉はワインだけではなく、日本のサイトを見たら、「フランス人ソムリエが厳選した日本酒」なるものまであって、ちょっとビックリしたと同時に、「なぜ?フランス人ソムリエ?」とそのワインとソムリエとフランスのイメージの変化球をおもしろいな・・と思いました。

 今回の優勝者は、ラトビア人のライモンズ・トムソン氏ということで、彼もまた、優勝の喜びを「パリ・フランスほどこのタイトルにふさわしい街・国はない」と語っています。

 この多くの人が抱くワイン・フランスのイメージは、世界的に刻み付けられているものなのかもしれません。


2023年国際ソムリエコンクール パリ


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2023年2月12日日曜日

赤ちゃんを抱っこしてメトロに乗る女性

  


 メトロの中で小さい子供を抱きかかえて、愛おしそうに我が子をのぞき込んでいる女性を見て、なんとなく、ふんわりとした気持ちと、大変だろうな・・という気持ちと、懐かしいような気持ちになりました。

 しかし、よく考えてみれば、懐かしい気持ちがしたというのは、ほぼ私の勘違いで、私はメトロにこのように子供を抱きかかえて乗ったことはありませんでした。

 娘が生まれたのは西アフリカのコートジボアールという国でしたが、娘が生まれて3ヶ月後には、フランスに引っ越してきたので、私の子育て期間はほぼフランスでのことでした。

 考えてみれば、娘をこのように抱きかかえて乗り物に乗ったのは、コートジボアールからパリに来るときの飛行機だけで、飛行機に搭乗前にベビーカーを預けてしまったために、生後3ヶ月だった娘は抱っこして、乗らざるを得なかったのです。

 娘はようやくお座りができるようになったばかりの頃で娘の席は、中央部分の壁のある部分に取り付けてくれるバスケットだったのですが、夜間フライトなので、おとなしく寝てくれるかと思いきや、フライトの間中、バスケットの上に座り込んで、周囲に愛想をふりまきながら、ちっとも寝てくれずにこちらも全然、眠れなかったのを覚えています。

 夫は、家探しのために一足先にパリに行っていたので、初めての一人での子連れの長旅でした。直行便が取れずに、ブリュッセル経由の飛行機で、ブリュッセルまでの飛行機の到着が遅れたために、パリ行きの飛行機の乗り換え時間がギリギリになり、ベビーカーもなしに、荷物と娘を抱えて、ブリュッセルの空港を必死の思いで走ったのを覚えています。

 ブリュッセルからパリまでのフライトはそんなに長くありませんから、そのまま娘を抱っこしていた気がします。

 しかし、後にも先にも、私は他にこのように娘を抱っこして乗り物に乗った記憶はなく、夫が比類の車好きということもあって、家族での移動はたいてい車だったので、(もちろん、通勤には、電車やメトロを使っていましたが・・)娘は2歳くらいまでは、ほとんど電車もメトロも乗ったことがありませんでした。

 考えてみれば、このように小さい子供を連れてメトロに乗っている人はあまり見かけることはなく、だからこそ、私もなんとなく、珍しく眺めてしまったのですが、時々、ベビーカーを押して乗ってくる人はいるものの、子供を抱っこして、乗っている人はあまり見かけないような気がします。

 娘が歩けるようになってからは、エネルギー有り余る娘になんとか疲れてもらうために、私は、ほとんどベビーカーというものを使うことがなく、ベビーカーを使うときは、あちこち歩き回ってほしくない場合や、買い物をしたときに、荷物をベビーカーの手すりにぶら下げる際の重しとして乗せていたくらいでした。

 考えてみれば、娘は、このように出先で寝てしまうということも一度もなかったので、このように抱っこして歩いたという経験は一度もなかったのです。

 今から考えれば、子供を抱っこして歩くなどという愛おしい行為を少しはやっておけばよかったと、ちょっと残念に思うくらいなのですが、あの頃は、娘は出先で寝てしまうどころか、昼寝というものでさえも、一度もしたことがなく、たまの私のお休みの日などに一緒にお昼寝をさせようと思って横になっていても、寝てしまうのは私だけで、「寝ないで~~起きて~~」と揺り起こされる地獄のような拷問に耐えながら、なんとか娘のエネルギーを消費させることばかりを考えていたのです。

 おそらく、メトロで小さい子供を連れている人をあまりみかけないのは、ほとんどの場合、お母さんも働いているので、自宅の近くの保育園に子供を預けて、仕事に行くのが普通で、それこそ休みの日には、車で出かけるか、自宅近辺で過ごすというのがスタンダードなのかもしれません。

 日本だと、それこそママチャリに子供を乗せて移動している人をよく見かけますが、いくらフランスで自転車が増えたとはいえ、まだ子供を乗せて走るほどにはなってはいません。

 それにしても、小さい子供を育てるということは、つくづく大変だなぁ・・と赤ちゃんを抱っこしてメトロの座席に座っていた女性にエールを送りたくなったのでした。


メトロ 赤ちゃん 子供


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2023年2月11日土曜日

ダイナミックプライシング 日曜日には商品価格が値上げされていた⁉


 「スーパーマーケットチェーン カジノCasinoは、日曜日の値上げを廃止する1」という見出しを見て、逆に「えっ??日曜日は値上げされてたの?」とビックリしました。

 これによると、スーパーマーケットチェーン・カジノは「1月末をもって日曜日のダイナミックプライシングを適用しないことを決定した」と同社広報が発表しています。

 そもそも、日曜日には、ほとんどの商店が営業していないフランスでは、パンデミック以降、日曜日も営業するスーパーマーケットなどが少し増えて、我が家の近所のカーフールなども、午前中だけではありますが、日曜日も営業するようになりました。

 しかし、今回、話題に上っているカジノブランドのスーパーマーケット(特にハイバーマーケット)では、2018年12月以来、消費者に安心感を与えるサービスとして日曜日の全日営業を行っていましたが、この実験的?な試みには、日曜日限定で、商品の価格を少し変えるという試みも加えられていました。

 消費者に安心感を与えるサービスと同時に日曜日に商品の値上げをするというのは、どうにも矛盾する気もしますが、同社は、このダイナミックプライシングを航空運賃などの変動価格にヒントを得て導入したと言われています。

 ある調査機関の調査によると、同系列のハイパーマーケット5店の価格調査を公開し、調査対象の約半数が土曜日の午後と比べて日曜日には値上げされている事実が浮上しています。

 大きなものでは36%の値上げで、全体的には約15%の値上げが認められたと言われています。(全商品が値上げされているわけではない)

 商品一つ一つに値札がつけられているわけではない現在、価格変更の原理は簡単で、電光掲示板によって店内に表示する商品の価格を1日ごとに、あるいは1時間ごとに変更することができ、連動してバーコードの価格が変更されるのです。

 カジノチェーンは、日曜日の値上げを、店を一日中開けておくための「コスト」として正当化しており、「店の運営費、警備員の人件費、日曜に空いた店を月曜の朝から片付けるための追加シフトなど、これらのことから、一部の製品を値上げせざるを得なくなった」と経営陣は説明していました。

 年中無休が珍しくない日本では、このような休日出勤の雇用契約がどのようになっているのかわかりませんが、フランスの場合、一般的に、日曜営業をするには、特別な許可を申請する必要があり、そのうえ、従業員に対して、休日出勤手当として、ドゥーブルペイエと言われる割り増し料金を支払わなければならず、同じ商品を同じ価格で売るためには、人件費だけでも余分なコストがかかるため、割の悪い商売になるのです。

 私自身は、フランスに来た当初、ほとんどの店舗が日曜日には閉店してしまうことに、ちょっと驚き、平日、子育てをしながら平日は仕事をしている身としては、「なんで?みんなが買い物に出られる日に休みなの~~?」とウンザリしていましたが、土曜日には、子供のお稽古事の送り迎えのハシゴをしながら、その合間に買い物をするという超忙しい土曜日にも慣れ、日曜日には、ぐったりして一日休息の日、あるいは、まったくの余暇の一日となることにも慣れ、たまに日本に行ったりして、日曜日にもお店が開いていることに、「えっ?そうか・・日本は日曜日もお店、やっているんだった・・」となんとなく、買い物の予定を日曜日を避けて日程を組んでしまっていたりして、逆に、「なんか曜日の感覚が崩れるなぁ・・」などと思ったりしたものです。

 今では場所によっては、日曜日も開店しているお店が増えたとはいえ、なんとなく、未だに私の中では、日曜日はお休みの日という刷り込みが消えず、日曜日に買い物をするということはないのですが、まさか値段が変えられていたということは、全く知りませんでした。

 このダイナミックプライシングをなぜ、やめると発表したのかはわかりませんが、インフレが続いているこのご時世、消費者が値段の変動に敏感になったことが原因なのかもしれません。

 今のところ、他のスーパーマーケットチェーン等は、この件に関して、あまり積極的にはコメントを出していないし、カーフールなどは「この手法は使っておらず、ダイナミックプライシングの原則はない」と述べています。

 いちいち、細かい商品価格のチェックを日替わりで行う趣味はないものの、日曜日に値上げされていた・・などという話を聞けば、一応、値上げする理由などは、理解できるものの、あまり気分のいいものではなく、やっぱり日曜日には買い物しない方がいいのだな・・と思ってしまうのです。


ダイナミックプライシング カジノ Casino


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2023年2月10日金曜日

トータルエナジーズ2年連続過去最高利益更新から見える勝者がますます富む図式

   


 昨年末にロシア大手ガスプロムからのガス供給が停止した直後から始まったフランスのガソリン供給会社トータルエナジーズの全国規模でのストライキは国民を大混乱に陥れました。

 当初は、ガソリンスタンドからガソリンがなくなりはじめたことで、もはやフランスにガソリンがなくなってしまうのだろうか?とパニックをおこしかけた人も少なくありませんでした。

 しかし、同社広報はすぐに、「在庫は十分にあるので、フランスでガソリンが不足しているわけではありません」と発表し、その後、このガス欠状態は、同社組合によるストライキが原因であるということがわかってきました。

 日常生活に車が必要な人々にとっては死活問題で、ガソリンが入荷されたガソリンスタンドには、長蛇の列ができ、給油するために、長時間並ぶ、あるいは、ガソリンのあるガソリンスタンド検索アプリなどまで登場し、我が家の近所にもこのための大渋滞ができているのを目撃したりもしていました。

 ガソリン価格が高騰し始めた時点で、同社は1リットルあたり20セントの値下げを導入したため、(政府が導入している1リットルあたりの値下げを併せると1リットルあたり50セントの恩恵を受けることができる)消費者が30%増加したと言われていました。

 そのうえ、ガソリンがないとなると、値段があがろうが、とにかくガソリンがある時には、先を争ってでも入れておこうとするのは追い詰められた人にとっては、当然のなりゆきで、弱い人々をさらに痛めつけるようなシナリオが遂行されてしまったのです。

 同社の組合のストライキは前年の収益増加に見合う昇給がなされていないというのが、理由の一つではあったものの、そもそもこの会社の給与は十分に平均水準を超えた富裕層で、たしかにこの利益の平等な分配に対して、不満があったとしても、実際に被害を被る一般市民には、到底理解できない別世界の次元での話です。

 しかし、この騒動も会社側の一定の歩み寄りによって、年末にはおさまり、ストライキも終わったのですが、今回、年間決算の発表があり、過去最高を記録した前年の利益160億ユーロ(2021年)をさらに上回り、今年は190億ユーロ(2022年)に達し、再び過去最高益を記録したことにより、同グループの利益配分をめぐる議論が再燃しています。

 現在の状況では燃料費の高騰は抑えようもないことは事実ではありながら、あまりの高騰に、政府からの補助金が出たりして、価格高騰にもかかわらず、生活必需品でもあることから、消費がさほど落ちることはなく、1リットルあたり20セントの値下げとこの会社の収益から考えたら、カスのような割引のために一般市民が集まり収益をさらに上げるという「危機感を煽りつつ、善人顔で割引をしてさらに儲ける」という仕組み。

 ビジネスとすれば、巧妙なやり方ではあるものの、これに踊らされて、挙句の果てにガソリンを求めて疲弊した上に、安い給料で高い燃料費を払わされている一般市民にしてみれば、怒り心頭なのもわかります。

 左翼系野党や環境保護団体は、この危機に乗じて気候や従業員を犠牲にして利益を上げていると非難しており、「私たちは働き、税金を納め、それで生活に困っている。一方、そこから逃れ、共謀して利益を得ている大物たちが上にいる」と「国家を食い物にする行為」を糾弾しています。

 政府の援助などが介入する事態になると、それを食い物にする行為と、共謀して利益を得ている大物が背景にいる・・などと言う話は、どこかの国でもよく聞く話でもあります。

 この決算発表の直後に、トータルエナジーズは、貧因層に対して100ユーロのガスチケットを提供することを発表していますが、その実、利益の大半は株主への配当に回されているようで、2022年のトタルエナジーの26億株の報酬は1株当たり2.81ユーロで、1株当たり1ユーロの例外的ボーナスがすでに支払われ、つまりほぼ100億ユーロの報酬が支払われる予定です。

 しかし、一部の経済学者によれば、トータルエナジーズがこの金額を減らせば、株主は株式を売却し、株価は低迷し、アメリカやイギリスに低価格で買収される危険性があるとも言われています。

 一方、労働組合員や政治家は、特に超利益に対する例外的な税の導入を通じて、従業員と国家のためにさらなる要求を出しています。

 どちらにしても、どのようなカタチにせよ、この機に乗じて増収増益を遂げている人々がいることには違いなく、このような企業に追加に課税して、将来の新しいエネルギー開発などに使われる資金の一部でも調達されれば、少しは飲み込むこともできるものの、税金の問題は、国が決定することです。

 しかし、そもそも、ここまで収益があがっているなら、そんなに値上げが必要だったのか?と堂々巡りの議論となり、裏にはどうにも生臭いものがあるような気がしてしまいます。

 同社はすでに昨年の増収の見返りとして、社員には、昇給とボーナスを支払っており、そのうえ、同社の従業員の65%が株主であるという驚きの数字からも彼らは配当としてもかなりの収益を得ているのです。

 こうなると、もはやインフレに喘ぐ一般市民とは別次元の話で、この「富むものたちがますます富む図式」は変わらないのです。

 

トータルエナジーズ2年連続過去最高利益更新


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2023年2月9日木曜日

パリ北駅に潜む「人命に対する大きなリスク」

 


 2月2日に行政裁判所に提出された報告書によると、パリ北駅は、「構造上の問題の巣窟」であり、「人命に対する大きなリスク」があることが指摘されています。

 パリ北駅はヨーロッパ最大の駅だそうで、大きな駅だからこそ、危険があれば、リスクも大きく、見逃せない問題です。

 「パリ北駅が危ない!」とかいうので、私はまたてっきり治安上の問題かと思っていましたが、駅の構造上の問題なのだそうです。

 この報告書は、駅の建設に関する数々の問題について警告しているもので、現在のパリ北駅に特に倒壊と火災の観点から3つの大きな危険があることを指摘しており、乗客とSNCF(フランス国鉄)職員の安全を脅かすものです。

 1つ目は、「チェーン崩壊の危険性」で、もし列車が駅に入るときに転倒した場合、33番線と34番線の間のコンクリートの支柱はレールに近すぎて事故に耐えることができないと指摘しており、これはすでに弱っている構造に加え、拡張が考慮されていないという重大な建設上の欠陥があると言っているのです。

 具体的には、列車事故のリスクは駅全体が一般市民の上に崩れ落ちることに繋がると指摘しているもので、これが連鎖反応を起こし、バス停留所からRER中2階も崩壊させることになるとのことで、ピーク時のパリ北駅の交通量は3万人を超えるため、大惨事に繋がりかねないというのです。

 すでに、このような事故は実際に他の場所でも発生していることで、昨年11月にカルカッソンヌ駅で貨物列車が脱線し、400メートルもの線路がすっ飛ばされて大惨事となっています。

 また、駅敷地内のSNCFの建築物に倒壊の危険性があることも指摘しています。これはこの建築物の壁面で、重さ3~4トンのプレハブコンクリート部材が、留め具の広範囲な腐食のため建物から外れてしまっており、いつ落下してもおかしくない状態であるとのこと。

 この指摘箇所は駅の2番線、ユーロスター専用線路にも近く、実際に事故が起これば被害は計り知れません。

 2021年夏に鉄道グループは暫定的な安全対策を行ったものの、それはあくまで暫定的なものにとどまり、追加的かつ決定的な工事は行われていません。

 この報告書を作成した専門家はこれらのリスクに加えて、地表の地盤が突然崩壊する危険性も指摘しています。

 2017年の段階で線路に35ミリ~60ミリの沈下が確認されており、常に電車の振動にさらされている場所の地盤は常にこれを悪化させる要因を抱えており、地盤が突然崩壊する危険性があることを指摘しています。

 最後にこの報告書が指摘している3つ目の大きな脅威は火災のリスクで、2階部分の床が「人の安全に必要な防火安定性・防火度」を有していないものがあるというものです。

 これもまた、悪化した状況がさらに状況を悪化させているという悪循環で、火災が起こった場合に、すぐ下のSNCF事務所に床が落ち、その床が1階にある駅の売店に倒れ込むというものです。

 もともとこの報告書はパリ北駅の近代化を引き受ける役割を担っていたStatioNord社から受けた専門家が作成したもので、この北駅近代化のプロジェクトは2021年にSNCFが放棄して以来、宙に浮いたものが報告書が提出されたことで、現在、両社の間で再び紛争の火種となっています。

 SNCF(フランス国鉄)はこの報告書に対し、「不正確で偏ったレポートであり、悪意がある報告である」と意義を唱え、「法廷の場で真実を再確立することを保証する」と弁明しており、「お客様とスタッフの安全を完璧に確保するために必要な措置は当然とっている」としています。

 現在、パリオリンピックに向けてなのか、どうにも工事が多く、メトロの駅なども夜間閉鎖、あるいは、週末閉鎖などが多く、別にそんなに手を加えなくてもいいのに・・とも思うのですが、こんなに危険がある場所ならば、そちらを優先した方がよいのでは・・と思ってしまいます。

 ましてや、オリンピックのためならば、オリンピックのメインスタジアムは、パリ北部、ここで、何か事故が起これば、世界中に失態を晒すことになりかねないのでは・・と疑心暗鬼になってしまいます。

 私はあまり北駅を利用することはないのですが、パリ北駅はユーロスターの発着駅でもあり、ロンドンに行ったりする場合はここからです。しかし、ユーロスターに乗って、ロンドンに行って帰ってくると、近代的できれいなロンドンのユーロスターの駅とパリ北駅に戻ってきたときのギャップがあまりに激しく、誇り高いフランス人が恥ずかしくないのだろうか・・と思っていました。

 さすがに倒壊の危険まであるなどとは思ってもみませんでしたが、逆にあちこちをいじっているのに、なぜ、そんな状態の駅を放置し続けるのかは疑問です。


パリ北駅 崩壊の危険性


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2023年2月8日水曜日

インフレにつれてスーパーマーケットでの万引きが急増

   


 セルフレジがフランスで広がり始めたときに、正直、私は「フランスでこれをやって大丈夫なんだろうか?」と思いました。

 今、パリのスーパーマーケットでは、セルフレジとお店の人が対応してくれるレジが混在している状態で、あまりに買い物の量が多い場合はセルフレジでは無理なのですが、そうでない場合は、セルフレジの方が待ち時間が少なくて済むので、私はもっぱらセルフレジを利用しています。

 待ち時間が少ないということは、そもそもの買い物が比較的少ない人が利用することもあり、また、まだまだセルフレジに慣れなくて敬遠している人も少なくないのかもしれないな・・簡単なのに、なんでこっちを使わないんだろう?と思ったりもします。

 私がセルフレジがフランスでも大丈夫なんだろうか?と思ったのは、商品のバーコードなどに通さずに容易に持ち帰れてしまいそうで、しっかり代金を回収できるのだろうか?と思ったからです。

 そもそもセルフレジなるものができる前から、フランスのスーパーマーケットでは、料金を支払う前にパッケージを開けて、お菓子やパンなどを店内で子供に与えていたりする親もいて、子供だけでなく、自分も平気で食べていたりします。

 それでも善良な人は空になったパッケージをレジに通して支払っていたりするので、それはそれでOKという認識なんだな・・とビックリしたりしますが、そうでない人もいて、食べかけのパンやお菓子などのパッケージが店内に置き去りにされていたりもするので、そのへんのところは、よく言えば、ずいぶん、自由というか、おおらかというか、悪く言えば、ルーズというか、お行儀が悪いというか・・まぁ・・こういう国なんだなぁ・・と思っていたのです。

 しかし、昨年からのインフレで、食料品もものすごい勢いでの値上がりで、このインフレについていけずに生活に貧窮している人々が、インフレで値上がりしている分を万引きして帳尻を合わせているというケースが急増しているのだそうです。

 物価の上昇は主に食料品に影響し、1年で10%程度が値上がりしています。パスタや米などの生活必需品は、1年で20%、30%、あるいは130%も値上がりしているものさえあります。

 私など、わりとざっくりしているので、正確な金額をチェックしているわけではありませんが、このくらいの買い物をしたら、だいたいこのくらいの金額になるだろうというような、なんとなくの感覚があったのですが、最近では少し慣れてきましたが、「えっ?これだけでこの値段??」と思うのですから、家族の多い人や食べ盛りの子供を抱える家庭ではさぞかし大変だろうな・・と思うのです。

 買い物のすべてを支払わないわけではなく、一部は支払いをして、一部はレジに通さずに持ち帰るというケースが増えたらしいのですが、なるほど、それは、セルフレジなどではけっこう簡単にできてしまうかもしれません。

 普通のレジにせよ、セルフレジにせよ、すべてのお客さんの荷物のチェックができるわけではなく、またすべてチェックをしていたら、セルフレジにする以上の人手が必要なわけで、私のよく行くスーパーマーケットでは、会計をしたレシートのバーコードを通すと出口のゲートが開くようになっているのですが、それがちゃんと機能しないことも多く、結局、違う場所から出てくださいと言われることも少なくありません。

 一応、セキュリティの人が出口にいて、たまに、レシートと出てきたお客さんの持っている買い物した商品をチェックしていたりするのですが、それもそんなに頻繁に見かけることではありません。

 しかし、一度だけ、私がセルフレジに商品をピッピッと通している最中に、一度、外に出たお客さんが持ち出した商品の中に支払われていない商品があったのを見つかった(つまり、買い物の一部を万引きしていた)人がセキュリティの人に連れられて、セルフレジに戻ってきた人がいて、「ちゃんと支払いをしてください」と支払いをさせられているのを見かけたことがあって、「ダメだよ!ちゃんと支払わなくちゃ!」と言われて帰されている場面に遭遇したことがありました。

 私は逆に「えっ?それで終わり?」とそのことにもビックリしたのですが、こんなちょっとの万引き程度で警察を呼ぶほど、フランスの警察は暇ではないんだろうな・・と、妙に納得したような気にもなりました。

 日本で万引きしたりした場合は、どのような扱いになるのかはわかりませんが、少なくとも、「ちょっとこちらへ・・」とか、なるんではないか?と勝手に思っていたのですが、どうなのでしょうか?

 インフレの為に万引きが増加している・・といいつつ、これに対するけっこう軽い扱いに、この盗まれる分の商品の価格が普通の商品の価格に上乗せされるのではないか?と妙な気を回したりするのでした。


インフレでスーパーマーケットの万引き急増


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2023年2月7日火曜日

やっぱりエッフェル塔近辺は治安が悪い シャン・ド・マルスでの観光客レイプ事件

  


 私は近所に住んでいるわけでもないし、特に行きたいお店が近くにあったりするわけではないので、滅多にエッフェル塔近辺に行くことはありません。

 昨年、たまたま近くに行ってみたいお店を見つけて、せっかく近くまで来たのだから、たまには行ってみようか?と、おそらく10年ぶりくらいにエッフェル塔に行って(といっても、ふもとまで行って、その近辺やシャン・ド・マルス公園を少し歩いた程度でしたが・・)、ずいぶんと、以前の印象よりもきれいになって、まだ工事中の部分もあったりして、「ここも工事中か・・」と思ったり、トゥクトゥクが走っていたり、そして、何より、パトロールしている警察官の多さに逆に、ちょっと怖くなったりしたのを思い出します。

 エッフェル塔近辺での事件は、昨年も、「一挙に12人が逮捕されたという観光客狙いの暴力を伴う強奪事件」や、この近辺を走っている「トゥクトゥクには、ぼったくり事件が続発している」とか、どうにも、いい話を聞くことはありません。

 そして、また今回は、外国人女性観光客のレイプ事件です。

 被害者は若いブラジル人の姉妹で、バーで出会った男2人との間に起こった事件で、お酒に酔って、外に出て、シャン・ド・マルス公園を歩いていた時に起こったようです。

 男性2人は故意に二人を引き離して、別々に歩きだし、それぞれに暴行を加えようとしたのですが、姉は必死に抵抗して逃れ、離れたところに連れていかれた妹を探した結果、妹はレイプされてしまった後で、男はズボンをおろした状態で寝転がっているところを姉に発見されたことに気付いて、慌てて逃走したということです。

 姉の方は、男が逃げていく様子を目撃しており、彼らが黒い車で逃走していったと語っており、近くに車を停めていることから、ある程度、逃走する用意があったのではないかとも考えられます。

 いずれにせよ、彼女たちにも大いに隙があったことは否めないところもあるのですが、観光客ならば、泣き寝入りする確率が高いとか、警察には訴え出る可能性が低いとか、地理的にも不慣れであったり、言葉がままならなかったりすることもあり、場所がら、観光客狙いの犯行であった可能性も大いに考えられます。

 昨年、私がエッフェル塔に行ったのは昼日中のことで、昼間は昼間でスリや置き引き、怪しげな物売りなどが多く、それにしてもこんなに警察官がいるの?とびっくりするほどでしたが、夜中を通して、そこまでの警察官の数を常駐させておくことも困難なことで、やはり、夜に出歩くことは、こう事件が多いと、特にエッフェル塔近辺は、危険だと考えざるを得ません。

 2024年、来年に迫ったパリオリンピックに向けて、フランスはパリの治安改善を叫んではいますが、一向に治安がよくなったとは思い難く、オリンピック開催期間中は特別な警戒態勢が敷かれるとは思いますが、それ以上にちょっと驚異的な量の人が集まるわけで、それにつれて、犯罪も爆発的に増えることは間違いなく、近隣諸国からもこのオリンピックで集まる人を狙っての犯罪目的の人も集まることと思います。

 パリは、そのインパクトとはうらはらに、東京などとは比較にならないほど小さい街で、一体、どうなっちゃうんだろうか?と、ちょっと恐ろしくもあります。

 パリにいらっしゃる場合は、残念なことではありますが、大変、治安の悪い場所であるということを忘れずに、特に夜間の外出などには、十分に警戒してください。

 この被害者姉妹は、被害届を提出し、司法警察が捜査を開始しています。


エッフェル塔 観光客レイプ事件 シャン・ド・マルス 


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2023年2月6日月曜日

ユーロの偽札が一番、流通しているのはフランス

ムービーマネーと言われる偽札

  

 通貨がユーロに代わった直後は、偽札がけっこう出回っている話を聞き、50ユーロ紙幣は受け付けないとか(今から考えれば、物価もずいぶん安かったんだな・・と思います)、ましてや100ユーロ以上の紙幣など受け付けてくれるお店もほとんどなく、それ以上の200ユーロ紙幣とか、500ユーロ紙幣など、なんで作ったのだろうか?と思ったものです。

 あれから20年以上が経ち、いつのまにか、私はほとんど紙幣というものを使わなくなって、ごくごくたまに、少額でカードを受け付けてくれないお店もあるため、そんな時のためにほんの少しだけ、たまに現金をおろしてお財布に入れてはいますが、さすがに銀行のATMから引き出すお札が偽札ということは考えづらく、しかも、少額なので、久しく偽札の心配というものを忘れていました。

 しかし、欧州中央銀行(ECB)によると、再び、この偽札の押収枚数が増加しはじめ、昨年は37万6000枚の偽造紙幣が欧州され、1年間で約8.4%増加しているということで、ポジティブに考えれば、それだけ経済活動が活発になったということの表れでもありますが、しかし、依然として、この偽札製造にチカラを注いでいる人がいることも見逃すことはできません。

 しかも、この偽札として押収された約3分の1がフランスで発見されたということで、約13万枚に相当すると言われています。その大部分は、50ユーロ紙幣と20ユーロ紙幣で占められているそうです。

 苦労して偽札を作っても、100ユーロ以上だと受け取る側もリスクが高いために入念にチェックするか、断ることが多いため、使いにくく、かといってせっかく作るのに10ユーロ以下だとベネフィットが少なく、最も流通の多い20ユーロ、50ユーロ紙幣になるのだと思われます。

 司法警察OCRFMによると、現在、SNSを通じて流通する紙幣が増加しており、これまでも偽札を輸入して流通させる大規模なネットワークがいくつかありましたが、テレグラムやスナップチャットで偽札を購入する人が出現しはじめ、今では全国に広がっているということです。

 これらの偽札の約3分の1は、中国からの「ムービーマネー」と呼ばれる偽札で、偽札の中でもセキュリティ機能を持たない、大変レベルの低いものではあるようですが、インターネット上で100枚あたり10ユーロという低価格で売っているそうで、小規模な商店やファストフード店などで使われてしまうことが多いそうです。

 しかし、この「ムービーマネー」に関しては、注意深く見れば、回避することも可能なようで、ムービーマネーには、正規のユーロ紙幣には、欧州中央銀行総裁のサインが、欧州の国旗の下、左上にありますが、その代わりに「movie money」という文字が書かれています。

 また、ギリシャ語のユーロ(ΕΥΡΩ)は、アクセサリー("PRΩP")という言葉に置き換えられているそうです。

 フランスが最も偽札の流通が多い国であるということは、残念なことですが、それだけ観光客も多く、通貨のハブ(中心)でもあり、ヨーロッパで偽札を生産する第一人者であるイタリアに近いためだなどと、またイタリアを怒らせるようなことまで言う人もいます。

 観光でヨーロッパを訪れる際には、やはり、いくらかのユーロ紙幣の現金を両替してお持ちになると思いますが、銀行や正規の両替所で両替した場合には、偽札である可能性も少ないと思いますが、下手なところで買い物をすると、おつりが偽札なんてことも無きにしも非ずなので、この手のトラブルを避けるには、やはりカードを使用する方が賢明のように思います。


ユーロ紙幣の偽札


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2023年2月5日日曜日

国連人権理事会、日本に死刑制度廃止を勧告とフランスの死刑制度廃止

   


 国連人権理事会が日本に死刑制度廃止を勧告しました。これは、国連加盟国に対して定期的な審査を行うもので、この勧告には法的拘束力はありません。

 今回、6年ぶりに100ヵ国以上から寄せられた300の提言の中で、日本に対しては「死刑制度の廃止」と「国際基準を満たす独立した人権擁護機関の設立」を要求しています。また、「外国人が収容される入国管理センターでの医療体制を改善し、長期間の拘束を避けるように」助言しています。

 この外国人を収容する入国管理センターでの外国人に対する不当な扱いなどは、かなり頻繁に目にした気がするので、おそらくかなり目立ってしまった問題なのかもしれません。

 特に注目されるのは、やはり、「死刑制度廃止」についての問題で、これについては、フランス(やドイツ)が特に大きな声を上げているようなので、フランスの死刑制度廃止の経緯から、フランスがなぜ死刑制度廃止することになったのかを見てみることにしました。

 今では「死刑制度廃止」を世界に向けて訴え、旗を振っている感のあるフランスではありますが、フランスが死刑制度を廃止したのは、そんなに大昔のことでもありません。

 フランスが死刑制度を廃止したのは、1981年のことで、これは遡って1972年に執行された死刑に端を発したものであり、これが冤罪であった可能性があり、フランスの死刑制度廃止に導いたと言われるロバート・バデンタール氏(弁護士)が「人を殺してもいない人間が法によって殺される可能性があるという事実は、古代の報復の法さえ超えている!」とそれまでの死刑制度に反旗を翻し、「死刑制度廃止」に向けて動き始めたのです。

 その後、バデンタール氏はこれを単なる議論だけには、留まらせずに、フランソワ・ミッテランの2度の大統領選挙キャンペーンに積極的に参加し、彼は法務大臣にまで上り詰め、1981年彼の国会での大演説により、フランスは「死刑制度の廃止」の道を選択し、フランスは世界で35番目に死刑制度を廃止した国となりました。

 フランスは、これは、フランスが人間の尊厳を守り、強化していくために重大な決断であったとしています。

 フランスが「死刑制度廃止」を絶対的に支持するのは、これが「最も基本的な人権を尊重するシンボリックなことである」と同時に、「死刑は犯罪との闘いにおいて有用な手段ではない」としており、「死刑がもたらす人命の損失は回復不可能であり、どんな法制度も正義の誤謬(ごびゅう)を逃れることはできない死刑の執行は単なる刑罰政策の手段ではなく、人権侵害である」としています。

 また、フランスでは死刑になるような国に人を送還することも禁じられています。

 一昨年、フランスの死刑制度廃止から40周年を迎えた式典では、当時、この死刑廃止運動を推進したバデンタール氏(現在94歳)も招かれ、記念講演会が行われ、「死刑は人類の恥である!」「未だ約50ヵ国が死刑制度についてモラトリアム状態を続け、2020年には、483件の国家による殺人が行われた」と、死刑制度を続ける国をかなり厳しく非難しています。

 私自身は、冤罪の可能性がある限り、死刑は執行するべきではないと考えますし、犯罪抑止を考えるなら、終身刑にして、その事件の背景や状況などを徹底的に究明し、今後の犯罪抑止に役立てるべきだと思っています。

 特に私には、当時、世界を震撼とさせた社会問題であったとも言われるオウム真理教事件などについては、犯罪に関わった人から、失敗したからこそわかるどうしたら新興宗教に騙されないかなどという考察はもっと得られたのではないか?と思っています。

 日本国民の世論の多くは「死刑制度は致し方ない」というもののようですが、その実、あまりこのことについて、考えていないのだと思います。

 日本の死刑についての情報は伏せられたままで、死刑執行後に「死刑を執行しました」という報告のみで、議論にも至らない状況であることは、国民を考えることから遠ざけているように思います。

 生き地獄という言葉もあるのです。一生、外の世界に出ることなく、償い続ければよいのです。家族を殺された遺族には、やるせない思いは残るでしょうが、だからといって、殺されたからといって、人を殺してはならないのです。

 ましてや冤罪であったりしたら、取り返しのつかないことです。

 人を殺してはいけないということは、国家とて同じことだと思うのです。


死刑制度廃止


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