2023年2月5日日曜日

国連人権理事会、日本に死刑制度廃止を勧告とフランスの死刑制度廃止

   


 国連人権理事会が日本に死刑制度廃止を勧告しました。これは、国連加盟国に対して定期的な審査を行うもので、この勧告には法的拘束力はありません。

 今回、6年ぶりに100ヵ国以上から寄せられた300の提言の中で、日本に対しては「死刑制度の廃止」と「国際基準を満たす独立した人権擁護機関の設立」を要求しています。また、「外国人が収容される入国管理センターでの医療体制を改善し、長期間の拘束を避けるように」助言しています。

 この外国人を収容する入国管理センターでの外国人に対する不当な扱いなどは、かなり頻繁に目にした気がするので、おそらくかなり目立ってしまった問題なのかもしれません。

 特に注目されるのは、やはり、「死刑制度廃止」についての問題で、これについては、フランス(やドイツ)が特に大きな声を上げているようなので、フランスの死刑制度廃止の経緯から、フランスがなぜ死刑制度廃止することになったのかを見てみることにしました。

 今では「死刑制度廃止」を世界に向けて訴え、旗を振っている感のあるフランスではありますが、フランスが死刑制度を廃止したのは、そんなに大昔のことでもありません。

 フランスが死刑制度を廃止したのは、1981年のことで、これは遡って1972年に執行された死刑に端を発したものであり、これが冤罪であった可能性があり、フランスの死刑制度廃止に導いたと言われるロバート・バデンタール氏(弁護士)が「人を殺してもいない人間が法によって殺される可能性があるという事実は、古代の報復の法さえ超えている!」とそれまでの死刑制度に反旗を翻し、「死刑制度廃止」に向けて動き始めたのです。

 その後、バデンタール氏はこれを単なる議論だけには、留まらせずに、フランソワ・ミッテランの2度の大統領選挙キャンペーンに積極的に参加し、彼は法務大臣にまで上り詰め、1981年彼の国会での大演説により、フランスは「死刑制度の廃止」の道を選択し、フランスは世界で35番目に死刑制度を廃止した国となりました。

 フランスは、これは、フランスが人間の尊厳を守り、強化していくために重大な決断であったとしています。

 フランスが「死刑制度廃止」を絶対的に支持するのは、これが「最も基本的な人権を尊重するシンボリックなことである」と同時に、「死刑は犯罪との闘いにおいて有用な手段ではない」としており、「死刑がもたらす人命の損失は回復不可能であり、どんな法制度も正義の誤謬(ごびゅう)を逃れることはできない死刑の執行は単なる刑罰政策の手段ではなく、人権侵害である」としています。

 また、フランスでは死刑になるような国に人を送還することも禁じられています。

 一昨年、フランスの死刑制度廃止から40周年を迎えた式典では、当時、この死刑廃止運動を推進したバデンタール氏(現在94歳)も招かれ、記念講演会が行われ、「死刑は人類の恥である!」「未だ約50ヵ国が死刑制度についてモラトリアム状態を続け、2020年には、483件の国家による殺人が行われた」と、死刑制度を続ける国をかなり厳しく非難しています。

 私自身は、冤罪の可能性がある限り、死刑は執行するべきではないと考えますし、犯罪抑止を考えるなら、終身刑にして、その事件の背景や状況などを徹底的に究明し、今後の犯罪抑止に役立てるべきだと思っています。

 特に私には、当時、世界を震撼とさせた社会問題であったとも言われるオウム真理教事件などについては、犯罪に関わった人から、失敗したからこそわかるどうしたら新興宗教に騙されないかなどという考察はもっと得られたのではないか?と思っています。

 日本国民の世論の多くは「死刑制度は致し方ない」というもののようですが、その実、あまりこのことについて、考えていないのだと思います。

 日本の死刑についての情報は伏せられたままで、死刑執行後に「死刑を執行しました」という報告のみで、議論にも至らない状況であることは、国民を考えることから遠ざけているように思います。

 生き地獄という言葉もあるのです。一生、外の世界に出ることなく、償い続ければよいのです。家族を殺された遺族には、やるせない思いは残るでしょうが、だからといって、殺されたからといって、人を殺してはならないのです。

 ましてや冤罪であったりしたら、取り返しのつかないことです。

 人を殺してはいけないということは、国家とて同じことだと思うのです。


死刑制度廃止


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