2022年1月31日月曜日

3日に1人の割合で起こっているフランスの警察官の自殺


 24日にマルセイユで、22歳の警察官が自殺したというニュースで、俄にフランスでの警察官の自殺問題が取り上げられています。

 マルセイユ北支部に駐在する22歳の警察官の自殺は、警察長官が前週、組合や協会と面会した数日後に起きたもので、彼は勤務中に携帯していた銃を用いて自殺(警察官の場合は、この勤務中に携帯している武器(銃など)によるものが多い)しています。

 そして、彼の自殺により、フランスでは、24日の段階で、警察官の自殺が今年に入ってから9人目であることが表沙汰になり、警察組合は、「これは、3日に1人の割合で自殺者が出ている計算になり、非常に憂慮すべき問題であり、優先的に取り組む問題である」と声明を発表しています。

 これらの事件は、リール、ストラスブール、ブザンソン、シャロン・シュル・ソーヌ(ソーヌ・エ・ロワール)、ノワジール(セーヌ・エ・マルヌ)、マルセイユと次々に起こっており、この自殺の波は、危機感を持っている同僚に不安を与えており、周囲の警察官からのSNSによる発信なども相次ぎ、問題視されています。

 これまで、自殺は、「個人的な問題」として説明され、特に警察内では、問題を追求するのは、どちらかといえばタブー視され、見過ごされてきた問題を単に個人的な問題だけでなく、多様な原因が関わっていることを公にして、解決すべき問題があることを浮き彫りにしています。

 悪化する治安、度重なる暴力事件や犯罪が絶えることのないフランスで、警察官(少なくとも一般的な警察官に関する限り)は、依然として低賃金であり、たやすくはない勤務体系、頻繁な暴力への対応、時には有害な物の管理などを伴う緊張感が絶えないこの職業においては、自殺と関連すると思われる多くの困難な問題を抱えるものであることは、容易に想像がつきます。

 特にマルセイユの警察官の年齢が22歳であったということにも、メンタルヘルスを含めた警察学校での訓練で十分な武装ができているかどうかが問われています。現場の警察官であれ、捜査官であれ、彼らの肩には大きなプレッシャーがかかっており、現代の社会は、非常に複雑でもあります。

 それに加えて、警察内の上下関係の圧力は、悩める警察官をさらに苦しめています。

 2021年には、35人の警察官が自らの命を絶ったと言われていますが、まだ1月で9人とは、今年は、すごい勢いであることは、言うまでもありません。しかも、警察官の場合は、常に武器を携帯しており、それを自分に向けて使うことも容易で、昨年の警察官の自殺の半分は、この武器が使用されたものでした。



 日頃、フランスの治安の悪さを嘆いてばかりいますが、その治安を守ってくれている警察官には、常にストレスのかかる介入が繰り返されており、彼らの自殺の一因は、事件介入の心的外傷後ストレスでもあると言われています。

 日常では、人生を思い切り楽しみ、やっぱりこの人たち、ラテン系だ・・と思わされる場面が多いフランス人も警察官だけではなく、自殺は決して少なくなく、むしろ、一般的には、孤独に絶えられず、メンタル弱めの人も多く、特にこのパンデミック禍中、ストレスに絶えかねている人は少なくないのです。

 フランスでは、今年に入ってから、すでに778人が自らの命を絶っています。毎日29人が自殺し、550人が自殺を試みているという数字も出ています。これは、毎年10,500人の自殺と200,000人の自殺未遂に相当します。フランスの自殺率は人口10万人あたり14.7人で、欧州平均を大きく上回っています。


フランスの警察官の自殺問題


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2022年1月30日日曜日

クラック(CRACK)ドラッグ常用者溜まり場 パリ12区への移転計画

   


 ヨーロッパ最大の大麻消費国であるフランスにとって、最近、頻繁に問題視されているのは、クラック(CRACK)と呼ばれるコカインの一種のドラッグ(比較的安価なことから、貧乏人の薬などと呼ばれています)の急速な拡大で、当初はパリ北部(19区近辺)のスターリング広場がいつの間にか、クラックの聖地となり、クラックの売人や常習者の溜まり場になり、スターリンクラックなどと呼ばれるようになっていました。

 これらのドラッグ常用者は、暴力行為・破壊行為を起こしたりして、近隣住民との摩擦が絶えず、フランス政府は、この状況を打開しようと、200人の警察官を動員し、この場所(エオール庭園やスターリングラード庭園)のクラック常用者を別の場所へ強制的に移動させました。

 しかし、彼らを別の場所へ移動させただけでは、何の解決にもなっておらず、移動先でも再び問題となり、再度、移動を繰り返していましたが、今月25日、パリ警察は突如、プレスリリースで、ジェラルド・ダルマナン内務大臣の要請により、クラックの溜まり場をパリ12区にあるSNCF(フランス国鉄)所有の場所に移動させることを発表し、大騒動になりました。

 この9ヶ月間で3回目の引越しとなるクラック常用者の移転は、「安全なフェンスを設置するための作業が行われた後」に行われるとされていたものの、この発表は、地元の政治家や住民を驚かせました。「事前に何の相談も通告もない決定に愕然とした!この一方的な決定は、断じて受け入れることはできない!」とパリ12区や12区に隣接するベルシー・シャロントン市も大反発。

 この政府の決定は、国が地域の議員・議会を蔑ろにしていることも露呈した結果となりました。

 同時にパリ市長であるアンヌ・イダルゴが「パリ北東部からベルシーにある鉄道用地へ麻薬使用者を移動させるという警察庁長官の計画に対し、欧州人権裁判所(ECHR)に提訴する意向である」と発表。

 また、彼女は同時に、「これはクラック常用者の苦しみを解決するものではなく、パリにはいかなる居住地からも隔離された場所は存在しません。これは、近隣地域全体の平和と安全を乱すことになります。このプロジェクトには大きな問題がある。不安定な人々を鉄条網の後ろに移すことは、公衆衛生対策にはならず、何の効果もなく、何より非人道的です。」と述べています。

 この大反発の結果、パリ警察は、28日のプレスリリースで、このクラック常用者の移動を断念したことを発表しました。

 12区に近隣するベルシー・シャロントン市からは、ことさら反発が強く、パリ警察の発表から72時間、市議会総動員での激しい抗議活動の結果、断念という決断を得たことに安堵、満足していると発表しています。

 しかし、計画がはっきり中断したとの確証が得られず、不安が残る中、市民の署名活動が続いています。昨日、出かけた際に、我が家からもそう遠くない場所で「クラック移転反対」のビラ配りをしながら、署名を求めている人々に遭遇しました。


クラック常用者移転反対のビラ

  

 結局、解決策は、移転ではなく、必要なのは、薬物のケア施設で、それをせずにただ、彼らを移転させ、たらい回しを続けるだけでは、なにも改善しないのです。

 長引くパンデミックで新型コロナウィルスの感染蔓延がおさまらないだけでなく、蔓延するクラックというドラッグ問題、もはやドラッグの蔓延する場所では、ウィルスの感染などとは、別世界のようでもありますが、しかし、同じパリの住民でもあります。

 パンデミックという抑鬱された状況がさらにクラックを蔓延させたという見方もできないではありませんが、これはウィルスのように目に見えない感染ではありませんが、同じ土地に蔓延する社会問題のひとつです。

 この移転プロジェクトには、それ相応の資金が費やされているにもかかわらず、何の解決にもなっていないことや、これらの計画が当該地域の市に何の打診も相談もなく行われようとしたことに薬物だけではない不安を感じた出来事でもありました。

 また、警察の弁明もお粗末で、この現在のところやり場のない移転計画の断念で、今後も現在の場所でのクラック常用者による占拠状態が長引くことに対して、遺憾の意を示し、パリ市長であるアンヌ・アンヌ・イダルゴを避難することで責任転嫁しようとしているのも情けないことです。

 フランスは、ワクチンセンターだけでなく、薬物治療センターを作らなくてはならないのです。


クラック CRACK ドラッグ


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2022年1月29日土曜日

日本の水際対策 海外からの入国・隔離期間7日間に短縮も外国人入国は停止のまま

  


 日本の「水際対策に係る新たな措置について」という文面をパンデミック以来、一体、どれだけ見たかわかりません。

 今回のお知らせは、「1月29日午前0時より、水際対策強化に係る新たな措置に基づき、オミクロン株が支配的となっている国・地域(現時点では全ての国・地域)から帰国・入国する全ての方について、入国後の自宅等待機、健康フォローアップ、公共交通機関不使用の期間が10日間から7日間に変更されます。既に入国済みの方に対しても同時刻から適用されます」という内容のものでした。

厚生労働省 水際対策に係る新たな措置について

 これだけなら、若干、隔離期間が短縮されるのですから、日本への一時帰国を希望する海外に在住する日本人にとっては、朗報といえば、朗報ですが、問題なのは、相も変わらず、「外国人の新規入国は停止」という部分です。

 いい加減、いつまでも外国人であるというだけで入国を制限する日本のやり方は、全く理解ができません。私は日本人ですが、「日本人だけ・・」という日本人さえよければいいだろうというやり方は、実は日本人の首を絞めていることにも繋がっていると思うのです。

 今や蔓延するウィルスの性質も変化し、世界中が対策を変更している中、なぜ?日本は、2月末までの鎖国延長を緩和しないのでしょうか?

 日本に住む多くの日本人にとっては、鎖国状態の日本は、現在の自分たちの生活には、直接関係のないことかもしれませんが、外から見れば、異常な対応です。パンデミックが終息しない段階で、リスクを冒しながら、多くの国が規制を緩和し始めているには、理由があるからです。

 多くの企業がいつまでも鎖国している日本に業を煮やして、他国に乗り換えることを考え始めています。それも当然でしょう。こんなにいつまでも鎖国をされていては、仕事がやりにくくて仕方ありません。他の国は、そんなことしていないのですから、他をあたるのは、当然です。

 留学生とて、いつまでも入国させてくれない日本に見切りをつけ、日本留学は断念するか、他の国に留学先を変更し始めています。

 このままでは、本当に日本は世界から、取り残された状態になります。

 先日、「日本が鎖国状態を2月末まで延長する」と発表した際に、フランス紙に「グローバル化しながらも内向きな国、日本」「このパンデミックは、この列島がいまだに孤立主義を培い、外国人を統合しようとしないことを明らかにした。」などと書かれたとおりのことを日本は続けようとしているのです。

 日本のように資源のない国は、世界と関われなければ、どうにも立ち行かなくなることは、明白です。

 長引くパンデミックに、いつまでも、「今は、とにかく感染を抑えることが最重要課題」などとは、言ってはいられない状況です。広い視野で、同時にいくつもの対策を次々に対応させていかなければなりません。

 いつまでも、「外国人は入国させない」と言い続ける国に、いつまでも、他の国々が辛抱強く待ってくれるわけはありません。他の国々は、ものすごい勢いで動き始めているのです。

 そのうち、日本が開国した頃には、誰も見向きもしなくなっているかもしれません。

 先日、マクロン大統領が、APCEでの講演で「私たちは 歴史に対する責任と同時に、未来に対する責任も負っています。」と話しましたが、実に日本の現在の対応は、未来に対する責任をどう考えているのか?と、絶望的な気持ちになります。

 日本人に対する海外からの入国隔離期間を短縮したタイミングは、鎖国を解除、あるいは、緩和するタイミングでもあったはずです。そもそも、入国に際して、国籍によって区別するなどナンセンス。そんなことをしている国は、ありません。

 私は、日本人の日本入国の隔離期間の短縮よりも、いつまでも鎖国を解除しないことの方がよほどショッキングです。

 長期的に、本当にグローバルな対応を考えなければ、日本は、国を守っているつもりが自分の首をしめている状態です。

 今、私は、海外にいて、外から日本を見て、政府が国を滅ぼしていく様子を地団駄を踏みながら見ている気分です。


日本の水際対策 鎖国 隔離期間短縮


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2022年1月28日金曜日

パリのメトロのプロブレム・テクニック

   

メトロのトンネルを歩くハメになった・・動揺していたためブレブレ


 フランスに来てから、20年以上が経ちますが、パリのメトロの不通は、日常茶飯事のことで、最近は、パンデミックの影響もあり、以前と比べれば、めっきりメトロに乗ることも減ったので、そんな不具合を感じる機会からも遠のいていました。

 しかも、フランスに来たばかりの頃は、パリ近郊の郊外にしばらく住んでいたので、通勤には、郊外線から、パリ市内のメトロに乗り換え、45分程度かかっていたので、通勤距離が長いほど、問題に直面することは、多く、たびたび起こるストライキは、問題外としても、何かといえば、止まって、「プロブレム・テクニック」という説明のみで、延々と待たされたり、急に乗り換えなければいけないことが、かなり頻繁にありました。

 45分という通勤時間は、東京では、それほど長い範疇には入らない通勤時間であると思いますが、フランスでは、常にいつ起こるかわからないロスタイムを考えると、遅刻が嫌いな私としては、そのためにかなり早めに家を出ていました。

 今の住まいに引っ越してからは、14番線という運転手のいないメトロを利用することが多くなったために、まず、ストライキはなく、いわゆる「プロブレム・テクニック」でさえも少なくなり、たまに止まっても、少し待っていれば済むし、「当分、動きませんから、違う線に乗り換えてください」などというアナウンスがあったとしても、少し待っていれば、動き出したりするので、よっぽど、待たされた場合は、渋々、他の線に乗り換える程度で、かなり問題は、少なくなりました。

 このパリのメトロを使っていれば、非常に頻繁に耳にする「プロブレム・テクニック」には、フランス人も慣れきっていて、大して怒る様子もなく、さっさと職場に連絡をしたり、黙って、ぞろぞろと、乗り換えホームにおとなしく歩いて行くのも、あれほどデモで怒りまくっていたりする人々の「プロブレム・テクニックへの寛容さ?」は、ちょっと意外な景色でもあります。

 まあ、怒ったところで、仕方はないのですが・・。

 不通、大抵は、「プロブレム・テクニック」と言っても、駅で止まってしまうことがほとんどなので、そのまま他の線やバスに乗り換えることができるのですが、先日は、なんと、初めて、メトロがトンネルの途中で延々と止まってしまいました。

 しばらく、待っていましたが、問題が深刻であったのか、なんと、駅でもないにもかかわらず、メトロを降りてくださいとのアナウンス・・これは、12番線だったので、未だにがっちゃんとハンドルを手動で扉を開けるタイプの扉、勝手に扉をあけて、メトロから線路に飛び降りて行く人もいれば、飛び降りるのを躊躇して、車内に残る人と、多少、ざわついてはいるものの、パニック状態にならないのも不思議な感じでした。

 そのうち、運転手さんが近くの車両の扉の開いているところにハシゴをかけに来て、まだ若い運転手さんは、「さすがに毎日、運転していても、こんなことは初めてです・・」と言いながら、汗だくでハシゴをかけてくれていました。

 しかし、近くにいた乗客は、「私は、これで2度目です・・」と言っていたのには、笑えました。

 結局、その「テクニカル・プロブレム」がどんなものであったのかは、わかりませんが、その後、ぞろぞろと乗客がトンネル内の線路上を歩いて、駅に移動したわけですから、相当な時間、その線は、不通になっていたものと思われます。

 何の問題かわかりませんが、一般乗客に線路上を歩かせるということなど、よほどの事情がない限り、日本だったらあり得ないことだし、もしあったら、大ニュースになりそうなことだろうと思います。もちろん、パリでは、全く報道はされていません。

 この近くに居合わせた乗客が「これで2回目・・」と笑っているということは、「そんなに珍しくもないのか・・」と、これまでの自分の幸運さを思い知らされたのでした。


パリのメトロ プロブレムテクニック


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2022年1月27日木曜日

フランスの高齢者施設オルペア Orpéa の実態暴露の大スキャンダル

  


 ビクトール・カスタネというフリーのジャーナリストが出版した、『Les Fossoyeurs』(墓掘り人という辛辣な風刺をこめたタイトル)というフランスの高齢者施設「オルペア(Orpéa)」の惨状の暴露本が今、フランスで大スキャンダルとして取り上げられています。

 この本の著者は3年間、関係者250人にインタビューを行い、あらゆる圧力に耐え、信じられないような調査の糸を手繰り寄せながら、ようやくこの出版に漕ぎ着けたと説明しています。

 世界23カ国に65,500人の従業員を擁するオルペアグループは、フランス国内に372の事業所を有し、そのほとんどが高齢者施設です。中には、ヌイイ・シュル・セーヌ(オー・ド・セーヌ県)にあるレジデンス「レ・ボルド・ド・セーヌ」のような「超高額」なものもあります。

 今回の大スキャンダルには、作家で女優のフランソワーズ・ドランが2018年にひどい褥瘡(じょくそう)(一般的には床ずれと言われるもの)で亡くなったのも、この施設だったことが大きくマスコミで取り上げられています。

 証言者の中には、「月額7,000ユーロもかかるこの施設は、医療機関ではなく、利益を追求する企業だ!」と怒りを顕にする者もいます。

 フランスは、少子化は避けられているため、日本のような高齢化社会にはなっていないために、あまり目立ちませんが、なかなかの長寿国、高齢者が多い国でもあります。

 現に、私の周囲のフランス人なども、親の介護問題は、なかなか切実で、100歳を超えた親を家に引き取って介護をしていたり、90歳を過ぎた両親が2人で暮らしているために、毎週のように、週末には、両親のもとに買い物や身の回りの世話をするために通っていたり、父親が亡くなってしまったために、母親1人では、生活ができないために、高齢者施設を探していたりなど、私の周囲にいる人がすでに結構な年齢のために親の年齢も90歳以上と聞いて、ちょっとびっくりしたりすることもあります。

 幸か不幸か、我が家は主人もろとも高齢者は全滅しており、高齢者施設を探したことはないのですが、現在の我が家の住まいの周辺には、なかなか高齢者施設も多いようで、昼間など、近所のバスに乗ったりしていると、その高齢者施設の住民で、比較的、自分で出歩けるような状態の人々は、昼間は街中で買い物などのお出かけに遭遇することもあり。うっかり席に座っていると、向こうから、「席、譲ってちょうだい!」などと言われるので、「フランスの老人恐るべし!」と仰天したりすることもあります。

 日本では、母が他界した後、父が1人残され、一軒家に1人で暮らしていましたが、最後の最後には、どうにもならなくなり、私も弟も海外暮らしのために、なんとか、父を説得して、介護付きの高齢者施設を探し回ったことがありましたが、なかなかな高額なのにもかかわらず、どこも満員でビックリしました。

 フランスでも、高齢者施設探しは、なかなか大変なうえに、高額なところが多いようで、今回の大スキャンダルを巻き起こした高齢者施設もフランスで最も高額な高齢者施設の一つで、月額6,500ユーロ(約85万円)から、最高12,000ユーロ(約156万円)もかかるそうで、ちょっと一般人には、不可能な高額の高齢者施設でもあります。

 価格が高ければ、それなりのサービスが期待されるのは、当然のことですが、そこでの衛生管理、医療ケア、介護体制、食事までの事情の実態は、信じ難い内容のもので、実際に、あまりの人員不足のための過剰な労働や営利優先の経営に耐えかねて転職した元従業員の証言などは、絶句するような内容のものでした。 

 この施設は、民間の高齢者施設ですが、たとえ、それが民間運営のものとはいえ、国や各省庁の審議会から多額の資金援助を受けているため、国費が正常に利用されていないことについても、問題視する声があがっています。

 この施設の元介護助手は、「おむつは1日3枚までという配給制で、入居者が病気であろうが、腹痛であろうが、流行病があろうが関係なかった」と証言しており、この本の著者は、「同グループ内での機能不全が高齢者を虐待するシステムを構築している」と言及しています。

 今回のパンデミックが始まった、ごくごく初期には、高齢者施設での老人の大量の犠牲者が出て、大問題になり、一時は、高齢者施設は、家族でさえも面会が許されない隔離された状況に置かれていましたが、そもそも、いくら高齢者の集まりであるとはいえ、ことさら日常から衛生管理には、通常の場所よりも数段上のレベルの衛生管理がされているはずの場所なはずであるにもかかわらず、あれだけの犠牲者を出したのには、別の理由もあったのだと思い知らされています。

 しかも、家族からしたら、これだけ高額の入居料を支払っていながら、この有様には、怒り心頭に発するのも当然のことと思われます。

 また、この本の中には、2005年から2007年、2010年から2012年までニコラ・サルコジ政権に厚生大臣を務めたグザビエ・ベルトランとオルペアとの関係も明らかにされています。

 著者は、グループの元医務部長とのやりとりの中で「わかっただろう、なぜ我々がオルペアで全権を握っていると感じたか?我々は、当時の厚生大臣を懐柔していたのだ」と言われたことを記しています。

 オルペアのスキャンダルは政治規模のものになり、現在の厚生大臣オリヴィエ・ヴェランは、「オルペアの経営陣を早急に召喚し、説明を求め、独立した調査を行うことを検討する」と発表。

 政府のスポークスマンであるガブリエル・アタル氏も「このような行為が我が国で許容されるのは問題外。これが事実であることが証明されれば、最も厳しい制裁を求める」と政府の声明を発表しています。

 フランス大手新聞社・ル・モンド紙がこの本を取り上げたことで、現在の大スキャンダルに発展し、同社の株価は急落、その後、グループの要請により上場が停止される事態にまで陥っています。

 オルペアの経営陣は、「我々は、これらの非難はすべて虚偽であり、非道であり、偏見に満ちていると考えており、正式に異議を申し立てる」と声明を発表していますが、長年にわたる調査と多くの勇気ある証言者によって作成された調査書とも言えるような内容に、今や世論をさえも味方につけたと思われる一冊の本に、どう太刀打ちできるのかは疑問です。

 これまで、私は、フランス人が何かにつけて「物申す」ことに、「ちゃんとやることやってから言えっつうの!」などと、思う事が多かったのですが、時には、デモにしろ、マスコミにしろ、ジャーナリストにしろ、時には、この「物申す人々のチカラ」が社会には、必要なのではないか?と思うようになりました。

 日本も「物申すべきこと」が山積みのような気がしています。


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2022年1月26日水曜日

フランスの1日の新規感染者数50万人突破とオミクロンBA2

 


 フランスの1日の新規感染者数は、18日に 46万人を突破して以来、若干ではありますが、減少傾向にあり、1週間のうちには、40万人台を切る日もあったので、ヤレヤレ、ようやく下がり始めたか・・と思っていたら、週明けには、再びリバウンド?で、「なんと50万人を突破(501,635人)」、集中治療室の患者数も少しずつ減少していたものの、どうやら、3,700人前後で下げ止まりの状態です。

 本当に、身近なところにも、あっちもこっちも感染者、もう私も、いつ感染しても、何の不思議もないと思い始めています。

 入院患者数は着々と上昇を続け、同日、3万人を突破(30,189人)、1日のコロナウィルスによる死亡者数も393人(病院での死亡のみ)と、高齢者施設での死亡者等を併せれば400人超え、2021年4月以来の高い数字に達しています。

 毎日のようにピークはいつか?ピークは過ぎた!などとの報道がされていただけに、さすがにこの1日の新規感染者数50万人突破や入院患者数3万人突破のニュースは、ショックでもありました。

 現在、フランスでのこの感染爆発は、ほぼオミクロン株によるもので、これまでのデルタ株のようなリスクは低いものの、高齢者や虚弱体質の人、また、ワクチン未接種者、そして、ブースター接種をしていない人には、リスクが常に存在し続けており、追加のブースター接種を必死に呼びかけています。

 オリヴィエ・ヴェラン保健相は、中でも、オミクロンBA2という、オミクロン株のいとこのような存在と言われているウィルスについて、従来のオミクロン株より、さらに感染力が強く、先週のデータでは、1万件のうち、60件だったものの、数日後、数週間後には数千件になる可能性があると警告しています。

 また、このBA2の変異は、スパイクタンパク質に生じたもので、リスクは従来のオミクロン株と同様と言われているものの、この変異種に対する身体の免疫反応に疑問が持たれている、つまり、再感染の可能性があるということも懸念されています。

 フランスでは、今週から、ワクチンパスポートが正式にスタートしましたが、その効果を期待するには、あまりに早い段階でのさらなる感染悪化。

 まさに、あまりの感染者の多さに、国民は、感染しても、「あ〜ついにやっぱり来たか・・」くらいの感覚になっていますが、後遺症などについては、未知のままです。

 このフランスの感染爆発については、新学期が始まったことが非常に大きな影響を与えたと考えられるとも言われています。この説は、学術会議のメンバーなどからも支持されており、「流行の再開/継続」は、「小学校、幼稚園、保育園でのウイルスの循環が非常に活発なことと一部関係がある」と考えられています。

 検査と隔離の連続で、あまりに煩雑な学校でのチェック作業に、ストライキやデモまで起こる騒ぎになっているというのに、結局のところ、学校での感染拡大は、止められていないようです。

 そのために、子供のワクチン接種に関しては、これまで両親の承諾が必要だったものが、厚生省は、保護者どちらか1人の同意でワクチン接種が可能になることを発表し、子供たちのワクチン接種を促進しようとしています。

 子供のワクチン接種には、慎重になる保護者の気持ちもわかりますが、米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスに感染した子供は、1型もしくは、2型の糖尿病の発症リスクが高く、感染した子どもは感染していない子どもに比べ、感染から30日後以降に糖尿病と診断される率が2.66倍になっているという研究を発表しています。

 ワクチンも長期的な影響が心配、しかし、感染しても後遺症が心配。すぐに重症化するリスクが低いとはいえ、安易に「感染したら、免疫ができる」などと、楽観的にばかりは、なっていられません。

 ワクチンパスポートのスタートとともに、続々と規制を緩和していくのも、再び心配になってきました。

 それにしても、グラフを見てもわかるとおり、フランスだけがぶっちぎりの爆走中、オミクロンBA2は、現在のところ、感染者の一部ですが、4〜5週間の間に現在のオミクロンを上回ると見られています。ピークは、まだまだ先のようです。


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2022年1月25日火曜日

パリで今、人気の雑貨屋さん 「フルー 」 Fleux Paris

  


 パリで今、人気急上昇中の雑貨屋さんがあるというので、覗きに行ってみました。

 「フルー」「Fleux」というお店です。

 面白いことに、その店舗は、パリ4区の Rue Sainte-Croix de la Bretonnerie という小さな通り沿いに、ジャンルごとに5店舗を設けています。

  


 パリ市庁舎、マレ地区の近くのパリの新しい創造的なファッションが続々と登場する界隈でもあります。

 単なる雑貨屋さんとは、一線を画しており、家具から室内装飾品、照明器具、食器、文房具、スキンケアー用品、ベビー用品などなどの広範囲の商品を扱いながら、その一つ一つの店舗は、こじんまりとしていて、別々の店舗になっていることが、かえって、見やすくさせている印象があります。

 どちらかといえば、マドレーヌにあるIKEA CITY(IKEA・イケア)に近い商品構成では、ありますが、もうちょっと、小洒落た感じ(実際におしゃれでかわいいものがたくさん)のものをセレクトしてあるお店です。

 パリの雑貨店といえば、ピローヌ(Pylones)などは、日本進出も果たしていて、有名ではありますが、ピローヌのはっきりしとした色使いの商品とは違い、どちらかといえば、シックでパリらしい上品な、フランス人好みな色使いのものが多く、パリらしさを楽しめるお店でもあります。


 

 たとえば、ベビー用品や子供のおもちゃなどにしても、あまりポップすぎない、控えめで落ち着いたやさしい色合いのもので占められているのもフランスらしいところです。素材も吟味されていて、お肌にも優しい品質の高いものが揃っています。

 食器やランチョンマットなどにしても、色合いは、やさしく、どこかフランスらしいエスプリの効いた色合いが揃えられていて、おしゃれな家庭のテーブルにならぶ様子が目に浮かぶような商品です。
 
 


 

 
 何よりも私がこのお店で気に入ったのは、このお店の商品の色、原色ではない深みとエッジの効いた落ち着いた色合いの小物たちが、しかも、いちいちおしゃれだったり、可愛かったりするのですから、このお店を一つ一つ覗いていくだけでも、相当な時間を楽しむことができます。


 


 ペット用の可愛いお皿や動物をモチーフにした可愛らしい商品もあります。

 こんなお店を覗いて、商品を眺めていると、生活そのものを楽しもうとするフランス人の生活が見えてきます。また、日頃、フランス人が好んで身につけたり、使用していたりするもののエスプリを感じる事ができます。

 フランス人は、パンデミックをよそに、ほぼ通常と変わりない生活を始めているものの、日常のパリが戻っていないのは、海外からの観光客が通常の3分の1程度しかいない事です。このお店の場所などは、立地条件もよく、観光客がいたら、さぞかし、すごい人出だろうと思う場所です。

 パリ観光局の発表によると、パンデミック前の基準年である2019年には1020万人であった観光客は、昨年は、360万人程度であったそうです。それでも、そんなにいたの?というくらい観光客を見かけない印象ですが、パリにまた、観光客が戻ってくるようになったら、さぞかし、こんなお店も賑わうのではないか? とすると、逆に考えれば、ゆっくり見られるのも今のうちかもしれません。

 パリにいらっしゃることがあったら、フランス人の日常が垣間見えるようなこんな雑貨屋さんをのぞいてみるのも楽しいかもしれません。


⭐️Fleux Paris 
   36, 39, 40, 43, 52 Rue Sainte-Croix de la Bretonnerie 75004 Paris
 月〜土 11:00~20:00, 日 13:15~19:30
  


パリの雑貨屋さん
Fleux Paris


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2022年1月24日月曜日

日本はなぜ、ブースター接種を急がないのか?

  



 パンデミックが始まって以来、ニュースをチェックするのは、欠かせない作業になりました。状況はどんどん変わるし、それにつれて、ルールもどんどん変わるので、ただでさえ、色々スムーズに事が運ばないことが多いフランスのような国に住んでいれば、ニュースで知っていれば、早めに準備したり、対処したりすることができるからです。

 それだけでなく、やはり、現在の状況を知らずにいることが、不安でもあります。

 正直なところ、一番、気になるのは、今、住んでいるフランスの状況ですが、やはり日本人の私としては、日本のことも常に気になっています。

 1月に入ってからというもの、日本の感染は、あっという間に広がり、やはり、さすがの日本でさえも、こんなにあっという間に感染が拡大するものか・・とちょっと驚いています。

 あの日本人の衛生観念や衛生管理、清潔さ、そして、常に周囲を気遣いながら行動する日本人の住む日本は、感染がヨーロッパのように拡大することはないと思っていました。

 しかし、現在の日本の感染者数を見ると、フランスなどとは比べものにはならないものの、日本とは思えないような数字。日本のニュースを見ると、「蔓延防止措置」という新しいワードが(私にとっては)・・「緊急事態宣言」よりは、少し緩い措置なのだそうで、どうにもわかりにくい感じですが、どうやら、飲食店での時間や人数制限などの内容だそうで、1日の感染者数40万人超えのフランスの飲食店の様子を見たら、日本人は、仰天するだろう・・などと思いました。

 日本とて、感染者が増えるにつれて生じる隔離による社会麻痺状態に陥りつつあることは、先に感染爆発しているヨーロッパと同じ状況が起こることは、必須です。

 先日、日本にいる従姉妹や友人と電話で話していて、びっくりしたのは、日本人がほとんど3回目のブースター接種を行なっていない事でした。フランスでは、もう当たり前のようにブースター接種をしているので、あっという間に2回のワクチン接種率が世界的なレベルまで上昇した日本は、当然のごとく、ブースター接種も着々と進んでいるものだとばかり思っていました。

 それが、私が話をした数人は、まだブースター接種の予約すらできていないということで、そのことに、ちょっとびっくりした次第です。そのうちの1人は、お医者さんです。

 もっとも、これまでの日本は、驚くほどに感染が抑えられていたので、あまりその必要性がなかったこともあるのでしょうが、オミクロン株の急激な感染拡大となれば、話は別で、現在のところ、ブースター接種がオミクロン株に対する最も有効な防御手段であると言われている中、日本がブースター接種を急ぐことなく、蔓延防止措置などの対策に終始していることが不思議な気がしています。

 CDC(米疾病対策センター)は、重症化(入院)を防ぐブースター接種の有効性は90%であるのと比較すると、2回接種の有効性は、2回目の接種から半年以上経過した時点で57%であったという研究結果を発表しています。

 友人の話を聞いて、びっくりして、フランスでの日本についてのブースター接種の記事を調べると、「日本は、再び、感染拡大のため、準緊急事態(蔓延防止措置)宣言が出されているにもかかわらず、国民の1.5%しか、3回目のブースター接種をしていない」という記事を見つけました。

 「世界の国々が2回目と3回目のワクチン接種の間隔(義務的な)の短縮に踏み切っており、現在、アメリカは5ヶ月、フランス3ヶ月、イギリス8週間に短縮したのに比べて、日本は未だ8ヶ月のままで、なぜ、日本はブースター接種を急がないのか?」という内容でした。

 オミクロン株は重症化する可能性が低いと言われていますが、それもリスクの高い人や高齢者などにとっては、どこまで通用する話なのかわかりません。

 オミクロン株はワクチン接種をしていても感染すると言われている一方で、やはり、ある程度は、感染を回避するチカラも持っています。

 フランスでの集中治療室の患者の大半は、ワクチン未接種者で占められているそうですが、ワクチン接種者でも、重症化した人々は、3回目のブースター接種をし損ねていた人々であるとも言われています。

 あの清潔で、徹底した衛生管理をしていたはずだった日本で、まさかの急激な感染拡大したのは、もしかしたら、ブースター接種が遅れているせいではないか?などとも思ったのでした。

 桁違いの感染者を出しているフランスから言うのも、信憑性のない話だと思いつつ、フランスがこれだけの感染者を出しながらも制限緩和に踏み切りつつあるのは、ワクチンパスの施行とブースター接種の拡大というバックアップがあってのことだと思うのです。

 フランスが制限緩和の措置を取り出したのも、感染者数のわりには、集中治療室の患者数が増加しないためですが、それが、ブースター接種の効果によるものだとすれば、日本はどうなるのか???といらぬ心配までしてしまいます。

 いい加減、日本人だって、日常生活制限には、うんざりしているはず、鎖国措置しかり、日常生活の制限しかり、シャットダウンではなく、別の方法をとってもよいのではないか?と感じています。


日本のブースター接種


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2022年1月23日日曜日

WHO(世界保健機構)「海外渡航制限の解除・緩和」の勧告に日本はどう対応するのか?

  


 WHO(世界保健機構)が新型コロナウィルスをWHOの最高警戒レベルである「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言したのは、2020年1月30日のことでした。

 それから、今まで、発表されたWHOの新型コロナウィルスに関する見解や勧告は、どちらかといえば、後出しジャンケンのような気がするものが多かった印象があります。

 しかし、今回、WHOが発表した勧告は、世界中で感染の度合いが違うとはいえ、オミクロン株という、これまでとは桁違いの感染力や特異な特性を持つウィルスの拡大により、世界各国がそれぞれの感染対策をとり、また、感染対策を移行しつつある中で、一つの指標となり得るものであったのではないかと思っています。

 今回の発表で、WHOは、「世界各地でオミクロンの感染者が増え続ける中、オミクロン変異体の感染拡大の抑制に効果がないとして、海外渡航制限の廃止・緩和」を呼びかけています。

 WHO国際保健規則緊急委員会は、2022年1月13日に開催された新型コロナウィルスに関する第10回会合の終了後、本勧告を発表しました。委員会は、パンデミックはWHOの最高レベルの警戒態勢に値するほど深刻であると考え、「海外旅行禁止は何の価値もなく、締約国の経済的・社会的ストレスを圧迫し続けているため、解除または緩和されるべきである」と勧告しているのです。

 国連の世界保健機関によると、包括的な渡航禁止の実施は「国際的な広がりを抑制する効果はない」とし、「懸念される新変異種に関する透明でタイムリーな報告を阻害する可能性がある」と説明しています。

 委員会は、パンデミックについて「世界中の人々の健康に影響を与え続け、国際的な広がりと国際間交通への干渉の可能性を持ち、国際的に協調した対応を必要とする異常事態である」ことに「全員一致」で合意しています。

 フランスは、昨日、感染上昇が続いていた日々から、初めて感染者の減少が見られましたが(1日の感染者数が38万人まで下がった)、依然として、圧倒的な感染者数を出し続けているにもかかわらず、集中治療室の患者数が若干減少し始めたこともあり、ワクチンパスの施行を機に、感染対策の規制の緩和を開始することを決定しています。

 もともとフランスは、あまり入国制限に対して、厳しい措置をとっていないので、このWHOの勧告どおりの状態(逆にもう少し、慎重にすればと思うくらい)ですが、これ(フランス)はあまりに極端な例ではありますが、日本の水際対策は、この世界の潮流から、取り残されている感が拭えません。

 これまでも、日本の鎖国については、海外からは、「日本の内向きな対策」などと、厳しい声があがっていましたが、このウィルスがパンデミック・世界中を巻き込んでいる感染であり、しかもオミクロン株という強烈な感染力で拡大し続けている今、WHOは、「国際的に協調した対応を必要としている」と述べているのです。

 日本が国を守るためにしていることが、国際的にも、経済的にも取り残される危険を孕んでいます。

 このWHOの勧告に対して、日本がどのように対応するのかを期待しています。


WHO海外渡航制限解除または緩和の勧告


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2022年1月22日土曜日

学校の検査と隔離と子供のワクチン接種 子供もワクチンしないと結構、ややっこしい

   


 学校は、できる限り閉鎖せずに、検査と隔離を繰り返しながら、継続しようとしているものの、感染者数や教員の欠員のために、現時点で、19,000近いクラスが学級閉鎖になっています。これは、全国の学校の3.56%に相当します。

 そして、全国の学校の0.25%に相当する152校が休校となっています。

 先日のカステックス首相のワクチンパススタートとともに、いくつかの感染対策の制限解除の日程が発表されましたが、学校については、冬休みのバカンス明けに、(冬休みの期間は、3つの地域ゾーンごとにずらされて設定されています)、この時間を利用して状況を確認し、全ての地域のバカンスが終わる頃に再び保健当局と連絡を取り、どの程度までシステムを適応させることができるか確認する "と述べています。

 最終ゾーンのバカンス終了は3月7日なので、それまでに、学校での感染状況を考慮しながら、制限の緩和は検討するとしています。まだ少し、先のことです。

 そして、同時に、子供のワクチン接種についても、義務ではないものの、ワクチンの有効性が確認されてきていることから、これまでリスクの高い既往症等のある子供に限られていた12歳〜17歳の年齢層に向けてのブースター接種を来週24日から、全ての子供(12歳〜17歳)に向けて解禁することになりました。

 すでにこの年齢層の2回のワクチン接種は400万人近く行われているため、ブースター接種を急ぐことで、学校の安全対策を確保しようとする動きです。

 学校の検査と隔離のルールは、大変、複雑で、感染した場合、接触者の場合、そして、それぞれ、ワクチン接種済みの場合と未接種の場合は、それぞれにルールが違います。

 例えば、感染した場合、ワクチン接種をしている子供は7日間の隔離(5日目の検査結果が陰性ならば、5日で隔離終了)、ワクチン未接種の子供は、10日間の隔離(7日目の検査結果が陰性ならば、7日で隔離終了)になります。

 また、接触者になった場合、ワクチン接種をしている子供は隔離なし(即日、2日後、4日後のオートテストをする必要がありますが・・)、一方、ワクチン未接種者は、接触者になった場合は、7日間の隔離が必要です。

 検査と隔離の繰り返しに辟易している子供たちも保護者たちも、子供とはいえ、ワクチン接種が進めば、感染のリスクだけでなく、この検査と隔離の繰り返しのリスクを軽減することができるようになります。

 まだ開発されて間もないワクチンで、将来的にこのワクチンが子供に及ぼす影響を心配するのは、充分、理解できます。ましてや子供は重症化するリスクが低いとなれば、子供のワクチンは、子供自身のためというより、周囲に感染を広げないためです。

 我が家には、もう小さい子供がいないので、そのワクチン接種の将来的な影響を心配することは、ありませんでしたが、今、もしも娘が、まだ未成年の段階であったらば、どうしただろうか?と考えてしまいます。

 検査や隔離の作業の煩雑さや、そのために学校に行けずに学業にも影響を及ぼすとなったら、やはりワクチン接種に踏み切るのも止むを得ないかもしれません。

 学校のストライキ・デモも初回からは、動員数が減少したものの、2週連続で続いています。この学校のストライキやデモでさえ、子供のワクチン接種で感染が減少すれば、消滅するはずのものです。

 いずれにせよ、結局、現在頼れるのは、ワクチンだけで、ひたすらワクチン接種にこだわり、ワクチンパスまで起用する政府の方針は、やっぱり妥当なのかもしれません。

 近隣のオーストリアでは、ワクチン接種の義務化(オーストリアのワクチン接種率は、現在72%)が決定し、ワクチン未接種者には、3月中旬以降、罰金3,600ユーロ(約46万円)が課されることになるそうです。

 でもこれは、いくらなんでもフランスでは、絶対、ありえないこと。こんなことをしたら、フランスだったら、暴動が起こりかねません。


子供のブースター接種解禁 子供のワクチン接種 学校の検査と隔離

 

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2022年1月21日金曜日

1月24日ワクチンパススタートと感染対策規制緩和の日程

  


 カステックス首相は、20日、ワクチンパスによる制限を1月24日からスタートすることを発表しました。これにより、ワクチン未接種者は、これまでヘルスパスでアクセスできていた場所には、入場できなくなります。

 しかし、ワクチンパス自体よりも、それと共に発表された他の制限解除の日程の方に注目が集まり、ワクチンパスによるワクチン未接種者への締め付け(締め出し)には、これまでさんざん議論が続けられてきたこともあるのか、同時に発表されたその他の規制解除の日程と内容に注目が集まりました。

 締め付けとともに、規制解除を発表するのは、前日のイギリス首相の「多くの感染対策に関わる規制を終了する」という発表も影響していると思われますが、同時にワクチンパスでの締め付け感を和らげる意向も感じられます。

 以前にマクロン大統領が、ロックダウンの延長とロックダウンを徐々に解除していく日程を同時に発表したことがありましたが、あの時と同じやり方です。

 1月24日にワクチンパスが施行され、その1週間後には、屋外でのマスク着用義務化とリモートワークの義務化が撤廃され、さらに、その2週間後には、ディスコ、カフェやバーでの立ち飲み、スタンディングコンサートが解禁される予定です。

 とはいえ、ワクチンパスというワクチン未接種者への締め付けと、正反対とも思える感染対策のための制限緩和という、一見、矛盾しているような対応策は、フランスでの感染者数は、ここ数日、40万人を超える状況でありながら、感染者の97.8%がオミクロン株による感染(2.2%がデルタ株による感染)に置き換わっていることが理由の一つに挙げられています。

 感染力は強くても、重症化するケースが低いこともあり、また、このオミクロン株がワクチン接種をしている人でさえ、感染するとはいえ、ワクチン接種者の場合は、4.5倍感染を回避し、25倍重症化を回避する効果があると説明しています。

 イギリスでの制限解除では、1日あたり未だ10万人以上の感染者が出ているものの、感染は減少傾向にあり、医療体制は、安定してきているためであるとしていますが、フランスの場合は、未だ、顕著な減少傾向は示しておらず、時期尚早であると不安の声も上がっていますが、フランス人が規制の緩和に反対するケースは一般的には考えづらく、今後、さらにワクチン接種を強化し、コロナとの共生に進んでいく方針だとみられます。

 ただ、屋外マスク義務化の解除や、リモートワークの義務化の解除とはいっても、実際に義務化が徹底しているわけでもなく、正直、大した変化があるという気はしません。先日、ランチをしにレストランに行ったら、店内は、ぎゅうぎゅう詰めの大混雑で、ヘルスパスのチェックはあったものの、食事の場ゆえ、マスクをしているのは、店員さんだけで、なんだか、これで屋外マスクの義務化してもなぁ・・と違和感を感じたのも確かです。

 つまり、多くの規制があるものの、現実のフランス人の生活は、すでにあまり規制されていないということです。

 政府はどちらかといえば、ワクチンパスに対する国民の反発を恐れていて、この発表の際にも、此の後に及んで、「これは、ワクチン接種の義務化ではない」などと言うのは、おさまりの悪い感じも拭えないのです。

 このワクチンパスと感染対策の規制緩和は、ワクチンパスによる効果をかなり楽観的にとらえている内容で、カステックス首相は、「ワクチンパスの導入が発表されて以来、100万人以上のフランス人が予防接種に踏み切った」と語っており、ワクチンパスが実際にスタートすれば、さらにこのワクチン接種率は上昇すると見込んでいるようです。

 そして、現時点でのワクチン未接種者への救済措置として、一定の条件のもとでワクチン接種の全スケジュールを取得する(現在から2月15日までに1回目の接種をする人は、1ヵ月後に2回目の接種をすること、その間に24時間以内の検査で陰性であることを証明することで仮ワクチンパスの恩恵を受けられるようにする)ことを提案し、ワクチン未接種者に手を差し伸べています。

 規制緩和で注意が逸されているものの、これは、あくまでも国民をワクチン接種に導くものであることがわかります。

 つまり、感染力が高いとはいえ、ワクチン接種をしていれば、かなり重症化を避けられる状態で、ワクチン接種率があがれば、もはや感染者数は問題にするべきではない考えられているということでもあります。

 しかし、現在蔓延しているウィルス(オミクロン株)に対しては、ある程度は許容できるものかもしれませんが、パンデミックは終わっておらず、ウィルスは常にそこにあり、変異を繰り返していることを考えれば、決して油断できるものではありません。

 とはいえ、長引くパンデミックを規制に縛られながら暮らし続けることは、これもまた、経済的にも精神的にも不可能なことであり、結果として、新規感染者数が毎日40万人を超える事態でも、このような決断に踏み切ったと思われます。

 ワクチンパス施行開始の宣言とともに、感染状況が改善し、特に病院での病床圧迫が恒久的に減少した場合、(集中治療室で数週間も新患が来なくなったり、医療逼迫が最低レベルまで下がったら)ワクチンパスは中断される可能性があるとも説明しています。

 このワクチン接種への追い込みと規制への緩和ムードに傾きつつあるフランス、ヨーロッパですが、日本の鎖国は、いつまで続くでしょうか?


フランス1月24日ワクチンパス開始 感染対策規制緩和


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2022年1月20日木曜日

ヘルスパスの評価と自動的に有効期限切れになり失効するワクチンパス

  



 ワクチンパスが議会で多くの議論を呼び、自由剥奪の声が途絶えない一方で、ワクチンパスの兄貴分である「ヘルスパス」が今、評価され始めています。

 Conseil d'analyse Economique(CAE)(経済分析諮問委員会)が発表したOECDとブリューゲル研究所の協力による調査によると、ヘルスパスによって、フランスでは4,000人、ドイツでは、1,100人、イタリアでは1,300人が死亡せずに済んだとしています。

 この研究では、同じような状況にありながら、ヘルスパスの導入の時期、またヘルスパスの導入をしなかった国、フランス、イタリア、ドイツの3カ国を分析、比較しながら、「フランスに、もし、ヘルスパスがなければ、入院は30%増え、死亡者も4,000人以上増えていただろう」と分析しています。

 まず、フランスでは、ワクチン接種率の上昇が、ヘルスパスのシステムにかなり影響を与えたことは、明白であり、また、ロックダウン状態から、人々が外に出始めた時には、おっかなびっくりであった一部の国民もヘルスパスによってリスクの高いと言われる場所での社会的な交流を持つことへの恐怖心が薄れ(現在では、薄れすぎですが・・)、ワクチン接種率の上昇とヘルスパスによって経済活動が想像以上に回復し始め、60億ユーロの損失を逃れたと試算しています。

 直接的な影響は、国民が社会活動を行えるようになったことにありますが、もしも、ヘルスパスがなければ、ワクチン接種率は停滞したままで、医療体制は飽和状態を迎え、政府は再び、ロックダウン、外出禁止、特定の場所の閉鎖といった制限を課さざるを得なくなっていたであろうという見解です。

 これからヘルスパスはワクチンパスへと移行しますが、これは、ワクチン接種済みの人にとっては、アプリを入れ替える必要もなく、そのままワクチンパスとして使用できるようになるので、とりたてて何もする必要はありません。

 しかし、一方では、2回目のワクチン接種から7ヶ月後には、3回目のブースター接種をしない場合は、ワクチンパスは自動的に失効してしまいます。

 保健省の発表によると、先週末には、約56万人がヘルスパスを失ったと言われています。

 7ヶ月後という期間をうっかりしていると、知らないうちに失効していることがあり得るようです。慌てて、ブースター接種を受けに行っても、接種後、ワクチン接種が有効化されるまでは、7日間待たなければならず、1週間は、ワクチンパスが必要な場所にはアクセスできなくなってしまいます。

 また、2月15日からは、2回のワクチン接種から、ブースター接種までの最長期間が4ヶ月に変更になるので、ワクチン接種からワクチンが有効になる期間を考慮すれば、4ヶ月経過する少なくとも1週間前までにワクチン接種を受けなければ、レストランやカフェ、文化施設、娯楽施設、スポーツ施設などには、アクセスできない1週間以上を過ごすことになります。

 ひとまず、ヘルスパスからワクチンパスへ移行するタイミングで、ヘルスパスの効果は絶賛されていますが、ワクチンパスへの移行による効果については、現在では、ワクチンを接種していないフランス人はごく少数派のため、ワクチンパスの効果は、このごく少数派の人々にどの程度、響くのかは、未知数です。

 しかし、ヘルスパスの起用が発表になった時は、少なからず衝撃的な内容で、反発も多くありましたが、結果的に見れば、こうして絶賛され、大いに評価される結果となったわけですから、ワクチンパスもしばらく時間が経過しなければ、一体、どんな評価が下されるのかはわかりません。

 とはいえ、大多数のフランス国民は、ワクチン接種済みなので、大勢に影響はないと思われますが、それでも感染がおさまらなければ、結局は、残すところは、マスクや手洗いやソーシャルディスタンスなどの基本的な感染対策しかありません。


ヘルスパスの評価 ワクチンパス有効期限


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2022年1月19日水曜日

フランスの1日の新規感染者数46万人突破と子供の検査を放棄し始めた保護者

 


 一昨日のニュースでは、いくつかの地域では、どうやら、感染が下降し始めたので、どうやらピークを越えたかもしれない・・とか、どこかのラボ(検査施設)では、おそらく1月13日がピークだったようだ・・などと言いつつも、全国的には、決して減少しているわけではなく、ただ、上昇が緩やかになってきている・・と感染のピークはいつか?という話ばかりしているような気がします。

 日曜日はラボも休みのところが多く、月曜日の数字はいつもかなり少なくなるのですが、それでも10万人超え、逆に、その分が若干のっかる感じで、火曜日の数字が少し多くなる傾向があるのですが、それにしても火曜日の1日の新規感染者数は、464,769人でした。

 先週は、だいたい1日の新規感染者数は、ずっと30万人前後だったので、いくら月曜日の分が多少のっかったとしても、いきなり46万人超えとは、ちょっと、いくらなんでも増え過ぎです。

 そう言われてみれば、思い当たらないこともなく、ここのところ、毎日のように感染者追跡アプリのアラート(感染者と近距離で接触しています・・ただちに検査し、ワクチン未接種者は隔離してください・・という通知)が入ります。

 アラートには感染者と接触したという日付が入っているのですが、日付が前後して通知されてくるので、検査したと思ったら、その前日の分のアラートがその翌日に来たりするので、もうなにがなんだかよくわからなくなってきましたが、外出した日は、もれなくアラートが入っているので、それだけ感染者が増加しているということなのでしょう。

 アラートの日付の一つに友人とランチをした日が入っていたので、一緒にランチをした友人にも一応連絡すると、彼女のところにもアラートが来ていたのに、気付いていなかった模様。「これが来たら、検査しなくちゃいけないのかな?」などと言うので、「だって、もし、感染していたら、他の人に感染させてしまうかもしれないでしょ!」と念を押すと、「あ〜そうか・・そうだよね・・」と、もはや、感染者接触のアラートにも少々、麻痺している感じ。

 検査に、そして検査することの意味に麻痺してきているのは、おそらく最も頻繁に検査をしているのは、小学生以下の子供たちとその保護者たちで、ただでさえ、感染者が多いなか、ワクチンという鎧を着ていない状態の子供たちには、感染者も多く、学校を継続するためにクラスメートに感染者が出た場合は、すぐに検査、その2日後、4日後に3回検査しなければならないのですから、大変な作業です。もしも、続けてクラスに感染者が出た場合は、毎日のように検査するハメになります。

 現在、子供の検査は、薬局や検査場などでの検査以外に、オートテスト(セルフテスト)のキットが無料で受け取れるようになっており、家で検査をして、検査の結果は、保護者が書面に書いて証明書を提出することができるようになっていますが、「感染例が多過ぎて、もういちいち子供の検査はしていられない。検査はしないで、とにかく学校に行かせる!」

 「毎日の検査は、頻度が多過ぎて、子供にとって苦痛すぎる・・検査時に子どもが痛がるので、何度も繰り返すとトラウマになる」というのです。気持ちはわからないではありませんが、これでは偽ヘルスパス(偽ワクチンパス)ならぬ偽の陰性証明書を親が子供に持たせることになります。

 また、他のケースでは、「偽の証明書を書いて、誤魔化すことはしない。しかし、検査に疲れてきたので、7日間学校に行かせず、検査はしない。」という親もいます。

 しかし、一方では、「ルールを守らない人が増えれば増えるほど、それが長引き、みんなが疲弊していくので、クラス内で感染者が出た場合は、しっかり検査を続けるべきだ!」と訴える人もいます。

 「ルールを守らない人が増えれば増えるほど、それが長引き、みんなが疲弊していく」というのは、まさに子供の検査に限ったことではなく、大人の感染対策についてもまさに同じことが言えます。

 先週は、1日あたり30万人だった新規感染者数は、今週には、46万人まで増加してしまいました。ワクチン接種をしているから、ヘルスパスがあるから、ワクチンパスがあるから大丈夫という気の緩みがこの、ちょっと目を疑うような数字を叩き出しています。

 この数字のわりには、入院患者数や集中治療室の患者数は劇的には増加しておらず、このまま増加していけば、もはや集団免疫も夢ではなくなるかという気もしてきますが、一方で、感染が蔓延すれば、新しい変異種が登場する危険もあるわけで、やはり、検査と隔離は続けなければならず、基本的な感染対策は、しっかりと続けなければなりません。

 しかし、ここまでくると、数字の感覚が麻痺してきて、46万人って何人だったっけ?と思ってしまいそうになるほどで、もはや感染者数をカウントする意味はないのではないか?という声もありますが、やはり、全く薄れきっているフランス人の危機感をかろうじて保つためにも感染者数は知るべきではないかと思うのです。


フランス1日の新規感染者46万人突破


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2022年1月18日火曜日

ワクチンパスポート施行とコロナウィルス感染証明書

   


 毎週のようにデモが起こり、反対の声は常にある中、フランスは国会でワクチンパスポート法案を採択、憲法評議会の承認を経て、今週末にもワクチンパスは施行されることになりました。

 ヘルスパスとアクセスできる場所は、基本的には変わらないものの、これまでヘルスパスでは、PCR検査・抗原検査の陰性証明書が使用できたものの、これが一切、通用しなくなります。

 このワクチンパスは、16歳以上の全国民に対して適用されることになります。ですから、ワクチン接種をしない限り、レストラン・カフェ、文化施設、娯楽施設、スポーツ施設、イベント会場へのアクセス、長距離電車やバス、(家族以外の相乗りなどの特定の交通手段も含まれる)、飛行機などの公共交通機関は利用できなくなります。

 また、偽ワクチンパスの流通を防ぐために、ワクチンパスのチェックには、ワクチンパス自体の整合性を確認することが必要な場合には、本人確認として、写真つきの公的書類(IDカードなど)を求めることが許されるようになりました。

 そして、偽のワクチン証明書に関する罰則が強化され、他人のワクチンパスを使用した場合、または、他人にワクチンパスを譲渡した場合は、現行の135ユーロから1,000ユーロの罰金になるとともに、偽のワクチンパスポートを不正に入手した場合(偽造、第三者からの借用を問わず)は、3年の禁固刑と45,000ユーロの罰金が課されることになり、複数の偽ワクチンパスポートを不正に所持した場合には、5年の禁固刑と75,000ユーロの罰金に引き上げられることになりました。

 しかし、このワクチンパスポートには、例外もあり、12歳から15歳の未成年に関しては、これまでどおり、ヘルスパスが(PCR・抗原検査の陰性証明書)がワクチンパスポートと同じ効力を持ちます。

 また、前回のワクチン接種から7ヶ月経ってもブースター注射を受けていない人について、有効期間を超えてからの予約しか取れなかった場合、あるいは、医療上の理由で3回目の接種ができていない人に関しては、仮のパスポートを受け取ることができますが、その間は、本来はワクチンパスが求められる施設にアクセスする場合には、PCR・抗原検査の陰性結果を提示する必要があります。

 また、ワクチンパスポートの代わりにコロナウィルス感染、回復証明書(6ヶ月間有効)(11日以上6ヶ月未満の感染)を提示することも可能ということになっているようです。

 このワクチンパスポート施行は、ワクチン未接種者に圧力をかけて、ワクチン接種に向かわせるためのものであることは言うまでもありませんが、感染した場合にどの程度の免疫ができているのか?ワクチン接種同様の効果?があるのならば、ワクチン未接種者でも感染していれば、6ヶ月間、ワクチンパス証明書はいらないということになります。

 ワクチン接種の有効な期間が短くなり、3ヶ月後にブースター接種が可能ということになっているのに(ワクチンパス自体は2回目のワクチン接種から7ヶ月以内にブースター接種をということになっています)、感染した者に関しては、6ヶ月間感染証明書が有効というのも疑問です。

 そうでなくとも、フランスには、毎日、30万人程度の新規感染者がいて、1月前半(1日から15日まで)だけでも、累計で4,153,835人の感染者がいます。

 こうなってくると、ワクチンパスポートを施行して、ワクチン未接種者を接種に向かわせるということが、なんだか虚しい気もしないではありませんが、現在のフランスは、初回接種から3回目のブースター接種を合わせて、毎日50万人程度がワクチン接種を受けているようで、かろうじて感染者よりは多い数字です。

 そもそも、ワクチン接種で感染を防げていたのはデルタ株までの話で、オミクロン株は、ワクチン接種だけでは感染は防ぎきれず、重症化は防げるとされていますが、この変異株の性質上、ワクチンパスの意味合いが、なんだかずれてきてしまっているような気がしています。

 ワクチンパスを持っているからといって、感染していないとは言いきれず、これまでワクチンで感染から守られている人のみがアクセスできる場所は、ある程度、安全であると思ってきましたが、必ずしもそうではないわけです。

 つまり、現在の状況では、感染そのものを避けることはできないが、感染しても重症化する可能性が低いという人だけがアクセスできる場所がワクチンパスによって、限定されるということです。

 そして、それらの場所にアクセスできなくなることから、ワクチン接種をする者が増えるという算段です。

 ヘルスパスが施行された時は、画期的なシステムで、感染のリスクが高いと思われる場所でも、少し安心して行けるようになり、感染者も一時、減少しましたが、今回、コロナウィルスの変異によって、そこまで決定的な手段とは思えない気がしてきました。

 とはいえ、少しでもワクチン接種が進んで重症化する人が減少すれば、それはよいことに違いありませんが、なんだか少し、期待はずれになってしまった気がしないではありません。

 必死にヘルスパス施行に向けて突き進んでいた間に、コロナウィルスの変異により、いつの間にか、少し状況は違ってしまいました。

 フランスでは、毎日のように、ピークはいつか?ピークはもうすぐ・・と、ひたすら感染がおさまるのを待っているようで、一部の地域では、感染者数が下がり始めたと言っていますが、ヘルスパスの施行によって、画期的な感染の減少を期待するには、まだまだ時間がかかりそうな気がしています。


フランスワクチンパスポート施行


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2022年1月17日月曜日

フランスで継続するアンチワクチンパスデモとジョコビッチの全豪オープンからの強制退去

   


 ワクチンパス施行を目前とするフランスでは、相変わらず、ワクチンパス反対のデモが続いています。とはいえ、前回のデモに比べると、デモ参加者は大幅に減少し、内務省の発表によると、前回の約105,200人に対して、今回は、約54,000人に減少しています。

 彼らのデモでの訴えは、「ワクチンパス反対」「ワクチン接種そのものに反対」「自由」「政府の強行策に反対」など、毎週のことで、掲げられているプラカードや訴えの内容は、ほぼ同様の内容です。

 しかし、今回のデモで気になったのは、そのプラカードの中に「ジョコビッチは私たちの旗手である!」というものが、混ざっていたことでした。

 このデモが行われた時点では、ジョコビッチの全豪オープンの出場可否に対する最終的な決定が出ていなかったため、これは、ジョコビッチが全豪オープンに出場することになれば、アンチワクチン論者を正当化するものになってしまうのではないか?と、オーストラリア裁判所の決定を不安な思いで、見守っていました。

 フランスのデモ隊にまで影響を及ぼすとは・・ジョコビッチ、恐るべし⁉︎です。

 フランスでも、テニス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ選手の一連のワクチン未接種での全豪オープン出場可否の騒ぎは、連日、報道されていたので、その影響力の大きさは、テニス界だけでなく、フランスで「アンチワクチン論者の旗手」として、まつりあげられるのは、当然といえば、当然だったかもしれません。

 しかし、今回のジョコビッチ選手のワクチン接種に関しての一連の報道では、「ワクチン未接種の発覚」から、彼のビザは、取り消し、その後、同選手の弁護団から異議申し立てがなされ、「彼自身が12月16日にコロナウィルス陽性であったこと」が申告されましたが、その直後に「隔離もせずに、公の場にマスクなしでマスコミに対するインタビューや公的イベントに参加していたことの発覚」そして、「ビザ申請書は、本人が記載したものではなかった」など、見苦しい応酬が続いて、最終決定は、オーストラリア裁判所の決定に委ねられていました。

 世界ランキング1位のトップアスリートである彼は、彼自身の健康管理についての強い信念をもっていることは、理解できますが、どの選手も同じ条件をクリアして参加している大会に、たとえ、彼が世界ランキング1位であろうとも、例外を認めることは、あり得ないことだと思っていました。

 スポーツマンシップという言葉が適当かどうかはわかりませんが、大会が定めた(大会開催国が定めた)ルールを個人的な理由で守らないというのは、テニスのトッププレイヤーとしては、ガッカリさせられるものでした。

 彼が信念をもって行なっていることなら、姑息なごまかしをせずに、なぜ、堂々とワクチン未接種を公表しなかったのか?と思ってしまいます。

 結局、オーストラリア裁判所は、「オーストラリア社会に健康上のリスクをもたらす可能性がある」という理由で、ビザの撤回を支持する判決」を下しました。

 この決定は、彼自身のウィルス感染のリスクよりも、この世界ランキング1位のジョコビッチの入国、大会出場が「反ワクチン感情を助長すること」や「国民の不安を増大させること」などの社会的な影響を考慮してのものであったことは、言うまでもありません。

 正直、フランスのアンチワクチン論者は、助長されかかっていました。

 オーストラリアは、パンデミック開始以来、感染拡大に対して世界で最も厳しいとされる規制を敷いてきた国の一つでもあります。この事実をジョコビッチが知らなかったはずはなく、ましてや大勢のスタッフを引き連れている彼の周囲の人々もどう考えていたのか?疑問は残ります。

 また、パンデミック以来、テニスの世界大会はいくつも行われてきたにも関わらず、選手のワクチン接種に関するチェックをしてこなかったのかも疑問です。

 次のメジャー大会は3月にインディアンウェルズ(3月10日~20日)とマイアミ(3月23日~4月3日)で開催されるマスターズ1000です。アメリカへの入国には、やむを得ない理由がない限り、完全なワクチン接種のパスポートが必要です。

 フランスにおいても全仏オープンは、まだ先ですが、ワクチンパスポートの施行が始まれば、当然、テニスの試合会場などでは、ワクチンパスポートなしでは、入場できなくなります。

 これで彼がワクチン未接種者であることは、全世界の周知の事実になり、今後の彼の行く先には、大きな壁が立ち塞がることになりました。

 今回のオーストラリアの決定で、どんなタイトルを持つ権力者であっても例外は認められないとされたことは、少なくともアンチワクチン論者を助長させることにはならなかっただけでも正しい決定であったと思っています。

 そもそも、ウィルスは、国籍も権力も地位も差別することはありませんから。


ジョコビッチオーストラリア退去


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2022年1月16日日曜日

いつまでもフランスで感染がおさまらない理由を見た1日

  


 先週末にパリ郊外で会合があり、この感染が蔓延するさなかに、嫌だなと思いつつ、「リモートにすることはできないのですか?」と聞いてみたのですが、「リモートは不可能」と却下され、渋々、参加してきたのです。

 もともとその会合は、1月5日の予定だったのですが、それが感染対策を考慮して延期され、結局のところ、その時点よりも悪化している状況で開催、これ以上、待っても感染はおさまらないという判断なのでしょうか?

 そもそも会合というのは、実際に顔を突き合わせて話し合いができれば、それに越したことはないのですが、実際に行ってみると、どうしてもそれが必要なのかは、甚だ疑問で、しかも、昼食会までもを挟んでの丸一日。

 そして、参加している人々は、もちろんマスクを着用しているものの、マスクをしっかりしている人ばかりではなく、咳をするたびに、なぜかマスクをずらす人や、話に熱がこもってくると、マスクを外してしまう人などもいて、その度に私は、苦々しい思いをしながら、マスクの上からそっと小さな布を覆うのでした。

 マスクを外して、思いっきり席をしたり、大きな声になれば、マスクがより邪魔になるのは、道理ではありますが、実際は、真逆のことをしていることに彼らは気づいていないのです。この話が過熱してきて、マスクをついずらして話をしたりするのは、政治家などにもよく見られる光景です。

 大した内容でもないことに昼食会まで挟んでの会合、百歩譲って、会合をするとしても、さっさと話を進めれば、半日で済むものをダラダラと時間をかけることにも、まるで感染対策に対する対応を感じられません。

 感染対策といえば、入口にマスクとアルコールジェルが置いてあることくらい。感染対策のつもりなのか、どういうわけかトイレのいくつかが閉鎖されていることは不思議なことでした。(手を洗いたいのに、トイレが閉鎖とは・・)

 こんな感じでリモートワークがあまり行われないものなのかとフランスの感染悪化の一端を見た思いでした。

 そして、帰り道、普段は、ほとんど乗ることがないパリ郊外線に乗ると午後5時前、まだ、ラッシュアワーではないから、それでもまだマシだな・・と思っていると、そこはかとないアンモニア臭が漂ってくるではありませんか?

 そういえば、パリのメトロの駅などは、以前は、こういう匂いがよくしてきたものですが、パンデミック以来、駅や車内は清潔になり、久しく嗅いでいない匂いでしたが、どうやら、パンデミック当初には、見かけた、あの清潔に駅や車内を消毒している人もみかけなくなり、すっかり緊張感がなくなっています。

 挙句の果てには、電車の車内でのアンモニア臭とは・・郊外線といえども、パリからそう遠い長距離路線ではありません。

 おまけに、近くの席にすわっている男性数名が、車内でピーナッツを食べながら、ビールを飲んで楽しそうに話しているのには、さらに驚きでした。本来ならば、一言、言いたいところですが、こんな時、酔っ払い相手に注意をして、逆ギレされても怖いので、黙ってそっと席を移りました。

 パリで日常を取り戻すということは、このように不衛生で、無秩序である日常が戻ってくることでもあるのです。

 こんな光景を目の当たりにすると、「日本だったら、みんながきちんとマスクしているし、どこもかしこも衛生的で、ましてや電車の車内でアンモニア臭なんて、あり得ないだろうな・・」と思うと、「もう日本に帰りたいかも・・」とちらっと思ってしまうのです。

 日頃は、行かない場所に行くと、たちまち見えるフランスの現状に、これでは、毎日感染者が30万人いても仕方ないな・・と思った1日でした。


フランス人の衛生観念と無秩序と危機感の欠如


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2022年1月15日土曜日

前代未聞の歴史的規模の学校の感染対策への教職員組合のデモとストライキ

 

  


  IFOP(L'Institut Francaise d'Opinion Publique・フランスの世論調査会社)の調査によると、66%のフランス人(フランス人の約3分の2)がパンデミック発生当初から学校をできる限り閉鎖しなかった行政の選択は正しかったと支持していると発表しています。

 ところが、現在の感染爆発状態のフランスでは、学校を閉鎖しないことには賛同しているものの、学校を継続するための感染対策としての週数回にわたる検査に次ぐ検査、そして隔離、クラス内で感染者が出るたびに、また検査。

 そして感染した教員の代理要員の手配等々、学校の授業を維持するための感染対策のための業務は煩雑を極め、それを繰り返す学校は、「筆舌に尽くし難い大混乱」と悲鳴をあげ、ストライキ・デモを決行するに至りました。

 この全国の教職員組合のデモには、77,500人が参加し、小学校最大の教職員組合であるSNUipp-FSUは、75%がストライキを行なったと報告しています。

 感染対策に振り回される煩雑すぎる作業の繰り返しに加えて、ワクチン接種があまり進んでいない小学生以下の学校教員には、感染のリスクも大きく、また、この煩雑さは、学校教員だけでなく、子供の検査・隔離の繰り返しには、保護者をも巻き込んでいるために、もはや周知の事実で多くの人がこれを認めるところ。

 「このままの状態を続けることはできない」「昨年のようにクラスに1人でも感染者が出た場合は学級閉鎖にするというルールに戻してほしい」「教員の安全を確保してほしい」などの要求をかかげて、デモ・ストライキを決行したのです。

 日常から、学校のストライキは少なくないフランスですが、今回ばかりは、FCPE(Fédération des Conseil de parents d'élève=フランスの代表的な保護者団体)でさえも、ストライキの呼びかけに署名し、保護者にも教師とともに政府の運営に抗議するよう呼びかけられました。この抗議は、全国自治父兄会連合も支持しています。

 このように、今回の教職員組合のデモやストライキは、日常的な学校のストライキとは、原動力を異にする大きな世論に支えられたデモでもあったのです。

 学校を閉鎖しないためにとっている感染対策のために、ストライキで学校が閉鎖してしまう状況では、元も子もない話。政府がこれを捨て置くことはできないのは、当然の結果でした。

 また、このデモ・ストライキの予定が発表された後に「教師がウィルスに対抗してストライキを起こす」とストライキの決行を非難した、教育相ジャン・ミッシェル・ブランカー氏の発言が炎上し、教育相の辞任を求める声までも叫ばれる大騒ぎに発展しました。

 その日の夜には、ジャン・ミッシェル・ブランカー教育相は、緊急記者会見を行い、教職員組合と政府の会談の結果、「学校(特に幼稚園の先生)に500万枚のFFP2マスクを配布すること」、「今後、教職員労働組合、保健省、教育省との間で2週間に一度は会議を開催し、感染対策についての調整を話し合うこと」を発表しました。

 この発表に対して、FFP2マスクの学校への配布は、良しとしても、検査と隔離、学級閉鎖などについての措置の変更には、触れられていないために、納得がいかないという意見の人も少なくないようではありますが、私は、この一連の動きを見ていて、デモやストライキも時には、必要なものだとフランスに来て以来、初めて思いました。

 デモやストライキは、フランスの文化の一つであるといってもよいほど、日常からフランスでは、デモやストライキが絶えることはありません。パンデミック以前にも、黄色いベスト運動やら、年金問題などなど、毎週土曜日(通常は土曜日)に行われるデモは、途切れることはありません。

 パンデミックが始まってからも、マスク義務化反対だのヘルスパス反対、ワクチンパス反対など、デモは途切れることはなく、いい加減、なにかあれば、すぐにデモ・ストライキに発展するフランスには、正直、うんざりすることも少なくありませんでした。

 しかし、今回は、教職員のデモということで、顔ぶれも印象も違い、この感染爆発の中で、学校を継続するために必死に戦っている人々の叫びは理解できるもので、また、今回のデモによって、すぐに全ての要求が通ったわけではありませんが、FFP2マスクは500万枚も教員向けに配布されることになり、現場の意見を聞き、話し合う機会を持つという政府の歩み寄りを勝ち取ったのです。

 先日、マクロン大統領が、ワクチン未接種者に対して、「彼らを本当に怒らせたい!」といった発言が物議を醸しましたが、彼らを怒らせたいということは、彼らに真剣に考えてほしいということに他ならないと思うのです。マクロン大統領は、まさに彼らを怒らせることによって、彼らに闘いを挑んでいるのです。

 今回の学校の感染対策に関しては、教師を怒らせようと思ってしたことではありませんが、結果的に大きな怒りが爆発し、政府に闘いを挑んだ形になりました。

 政府も国民も常に戦闘体制・・そんな感じです。

 フランス人にとっては、デモやストライキはお家芸のようなもので、お手のもの、声を上げることに躊躇いはなく、彼らは自己主張すること、異議を唱えることに慣れており、子供の頃から、そのような教育を受けていますから、この流れはフランス人にとっては、特別なことではありません。

 あまりに日常化しているデモやストライキはどうかとも思いますが、今回のように、本当に深刻な状況の中、子供の将来を考えている双方が、世論を巻き込みながら、政府が国民の意見に歩み寄る態度をもたらすことは、意味のあることではなかったかと初めてフランスのデモも悪いことばかりではないと思った次第です。

 日本にもデモがないわけではありませんが、フランスのデモを見慣れていると、「これ?本当にデモなの?」と思ってしまうくらいびっくりするくらいお行儀が良いです。

 日本には、デモという形が適しているのかどうかはわかりませんが、今の日本政府の行政には、声を上げることが、たくさんあるのではないか?と思うことがあります。

 海外にいると、「日本人は黙って我慢するからダメなんだ・・」と言われることがありますが、日本人は国内の政治に関しても、黙って我慢ばかりしていてはダメなのではないか? 日本国民はもっと怒ってよいのではないか?と今回のフランスの学校のデモ・ストライキを見ていて思ったのでした。


フランス教職員組合歴史的ストライキ・デモ


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2022年1月14日金曜日

「ワクチン接種拒否なら集中治療辞退を!」医療従事者の叫び

  


 

 フランスでは、「オリヴィエ・ヴェラン保健相がコロナウィルス感染」というニュースがセンセーショナルに報じられています。

 昨日、朝、閣僚会議に出席していたヴェラン氏は、午後に感染者追跡アプリ(TousAntiCovid)を介して、感染者と接触していることを警告され、最初のテストを受けましたが、陰性であることが証明されました。しかし、昼過ぎに軽い症状が出たため、再度検査したところ、今度は陽性だったそうです。

 1日のうちに2度の検査を行なって、陰性であった結果が陽性になるということにも、ちょっと驚きです。側近によると、「彼は自己診断で抗原検査も陽性であることを確認した」ということです。(彼自身は、本来、医者でもある)

 彼は、10月末に3回目のブースター接種を受けているので、現在、ワクチン接種の間隔を3ヶ月と定めているフランスで、ワクチン接種後3ヶ月以内でも感染するというワクチン接種に対するネガティブキャンペーンに繋がりかねない政府首脳の感染のニュースですが、幸い彼の症状は、軽症で、隔離状態にはなるものの、今後も職務をリモートで続行するそうで、これが「ワクチンをしていれば、重症化しない」キャンペーンになってくれればと思います。

 現在、フランスには、約500万人ほどのワクチン未接種者が残っていますが、この感染爆発状態に、この500万人の中から、続々と病院に入院してくる患者に病院の逼迫状態は進み続けています。

 先週の初めに、パリのピティエ・サルペトリエール大学病院名誉教授のアンドレ・グリマルディ氏のジャーナル・デュ・ディモンシュ(フランスの日曜紙)に「ワクチン接種を拒否する成人には、重症になった場合に蘇生を希望するかどうかという事前指示書を書くように体系的にアドバイスするべきではないか?」「ワクチン接種を受けないという自由な選択を主張する人は、蘇生を受けないという自由な選択を前提に一貫性を持たせるべきではないか?」という疑問を投げかける寄稿が物議を醸しています。

 この寄稿は、パンデミックが始まって以来、そろそろ2年が経とうとしている現在、感染の波をいくつも繰り返し、疲れ果てている医療従事者の怒りの心情を吐露したものです。

 多くの医療従事者の怒りは、政府とワクチン未接種者という2つのターゲットを持っており、その一つである政府に対しては、早い段階で病院スタッフを確保し集中治療室の病床を増やすための手段を取らなかったことを非難しています。

 また、ワクチン未接種者に対しても、特に50万人と言われる80歳以上のワクチン未接種者について、重症化した場合に蘇生術が効かなくなり、理不尽な治療のために長い期間を集中治療室を占領することになり、結果的に起こる患者のトリアージュ(患者の選別)に繋がっており、結果的にその判断を迫られる医療従事者の負担は計り知れないものであるという内容です。

 集中治療が必要な複数の患者に対して、病床が不足している場合に、どちらを優先させるべきか?を合議で決めるのは医療従事者ですが、「この介護者を導くべき原則を議論するのは、学協会、独立機関、倫理委員会、そしてそれ以上に社会全体とその選出代表者に任されるべきではないか?」と問題提起しているのです。

 医療従事者が道徳的な判断を持っていないということではなく、その判断が患者との関係に介入し、彼らの判断に影響を及ぼしてはならないということを彼は注意深く説明しています。

 コロナウィルス以外の患者の集中治療室での平均滞在期間が4〜5日であるのに対し、コロナウィルス感染患者の平均滞在期間が2〜3週間であることを念頭に、コロナウィルス以外の患者(がん患者等)の手術予定が崩され、延期されるたびに感じる怒りとやるせなさ、集中治療室を占領するコロナウィルス患者のほとんどがワクチン未接種者であることに憤りを覚えながら、ワクチン未接種者のコロナ患者に「だから言っただろう・・」と思いながら、この仕事をしながら、初めて患者に共感できなくなっていると語っています。

 彼の寄稿の「ワクチン接種拒否なら集中治療辞退を!」という部分が特に取り上げられて騒がれていますが、ワクチン接種を受けないという決定を苦々しく後悔している患者が毎日、病院に到着するという光景が日常とならないように、そして、集中治療室のコロナウィルスの患者の選別が、医療従事者の責任だけに委ねられていることに疑問を呈しているのです。

 病気に関しては、本来、患者を責めることはできませんが、ワクチン接種という防御の手段がある以上、それを拒否して罹患した場合は、すでにその患者や家族の選択の結果であると言えないこともありません。その選択の結果、人手不足や病床不足のためにおこる命の選別、医療従事者につきつけられる患者の一人一人の命を選別しなければならないという医療従事者が感じる厳しさややるせなさは、計り知れません。


ワクチン接種拒否なら集中治療辞退


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2022年1月13日木曜日

日本の鎖国延長についてのフランスの報道の中で気になったこと

   


 フランスの新型コロナウィルス感染は、とどまることを知らず、2日連続、1日の新規感染者数は、36万人を突破しています。それでもフランス政府報道官ガブリエル・アタルは、「ウィルスが蔓延していても、できるだけ、普通に生活を送ることができることを目標としています」と語っています。

 そのため、「特に学校は閉鎖しない」ことを目標に、非常に厳しい検査と隔離の方針を立ち上げ、このあまりの煩雑さに音を上げた教職員組合がこれまでに例のないほどの規模でのストライキを予定していたりしますが、基本的な「普通に生活を送ることができることを目標とする」姿勢は、摩擦は起こっているものの、このなんとかして学校を存続させようという姿勢に表れています。

 また、イギリスとの国境規制の緩和についても、数日中に発表される予定になっています。どちらかと言えば、この感染者数にも関わらず、規制緩和に動きつつあるのです。

 そんな中、正直、遠い国である日本の国境規制については、それほど大々的に報じられているわけではありませんが、(まさにそれどころではない状況)それでも、完全にスルーされているわけではなく、各国のコロナウィルス(特にオミクロン)対応について、少しずつ紹介されている中、日本のこの「鎖国延長」については、海外のニュースの中では(ヨーロッパを除く)比較的大きく扱われている方でした。

 その中で、かなり辛口のものがあったので、参考までにその報道について、書いておきたいと思います。

 「日本は、ほとんどの外国人の入国制限を2月末まで延長し、オミクロン対策として集団予防接種センターを再開すると発表」

 岸田文雄首相は記者団に対し、「人道的見地から必要な措置を講じ、国益を考慮しながら、2月末まで国境管理措置を維持する」と述べた。

 「地元メディアは、日本人の親族を持つ外国人や留学生を対象に、厳しい措置の例外を検討していると報じたが、結局、正式な発表はなかった。」

 「駐在は凍結され、建設現場は中断され、学習計画は半減し、家族は2つに分断される...。」

 「このニュースは、観光客だけでなく、ここで働くビジネスマン、エンジニア、学生などの外国人をも激怒させた。しかし、現地の人々は拍手喝采である。88%の日本人が、国境を守るため、そして彼らにとって苦痛のない閉鎖を認めている。」

 「日本は、検疫期間や入国者への頻繁な検査など、厳しい国境管理を実施している。しかし、こうした取り組みもオミクロン変異株の蔓延を防ぐことはできず、日常的に報告される件数は急増している。全国レベルでは、先週の週次平均が10倍になっている。」

 「グローバル化しながらも内向きな国、日本」「このパンデミックは、この列島がいまだに孤立主義を培い、外国人を統合しようとしないことを明らかにした。」などなど、事実とともに、かなり辛辣な報道もあります。

 これまで世界的なレベルから考えれば、奇跡的とも思われるほどに、感染を抑えてこられた日本としては、水際対策を強化し、これ以上に感染が蔓延することを抑えようとしていることは理解できますが、「人道的見地から必要な措置を講じ、国益を考慮」と言いながら、日本人の配偶者でさえも、外国人の場合は入国できないという非人道的な対応は、海外からすると理解はできないのが普通の感覚です。

 永久に日本が鎖国措置を続けるわけではないにせよ、このあまりに長く続くパンデミック禍中で、この日本の閉鎖的な対策には、かなり批判的な声が多いのは確かです。

 日本以上に感染が蔓延している国からの入国者に慎重になるのは、必要なことではありますが、外国人に対しては、隔離を自己負担にしたり、日本人が入国する場合と同じ感染対策義務などの方策をとれば、不可能なことではないはずです。

 家族が日本人である場合はもちろんのこと、留学生に対しての措置も同様に、外国人であるということで、入国を制限するのは、世界からは、理解されていません。

 フランスはもちろんのこと、多くの海外の国々は、国によって、隔離の期間や条件が異なることはあっても、留学生の受け入れも続けています。もちろん、日本からの留学生も海外では受け入れられています。

 留学生の受け入れについては、パンデミックのさなかに、我が家の娘も2度にわたり、日本の大学への留学を拒否され、ついに、そのチャンスを逃してしまったので、恨みつらみが募っています。

 「日本で学びたい」と真剣に考えている学生を断ち切ってしまうことは、日本にとっての大変な損失です。将来、もしかしたら、日本で働きたいと思ってくれるかもしれない、少なくとも、日本を知りたい、日本に興味を持ってくれている外国人をシャットアウトしてしまうのは、大変、残念なことであり、大変なイメージダウンです。

 日本は、パンデミックの最中にオリンピックを開催することができた国です。留学生の受け入れも、きちんとした隔離対策さえ取れば、可能なはずです。「なぜ、オリンピックならできて、留学生にはできないのか?」これは、この鎖国延長による日本の閉鎖的な対応がどれほど日本にとってダメージになっているかということは、私は、結構、大きな問題である気がしています。

 最近、「日本政府は、世界のニュースを見ているのか?」「子供の将来、日本の20年先、30年先の未来を考えているのか?」と感じることが多くなりました。

 いみじくも、「グローバル化しながらも内向きな国、日本」と酷評された日本政府は、現在の日本国内にいる日本国民にしか目が向いておらず、世界からのイメージのダメージには、無関心な気がしてなりません。これが進めば、世界の中での日本の役割は減少していきます。

 いざという時に日本のことしか考えない国を世界は、信用しなくなります。

 1日30万人もの感染者を出し、2ヶ月後には、2人に1人が感染している状況になると言われている国にいる人間が言うことではないかもしれませんが、長引くからこそ、数々の摩擦を起こしながらも、日常生活に近い生活を送ろうとしているフランス、ヨーロッパの姿勢を私は、嫌いではありません。

 日本政府には、日本国内だけでなく、世界の中にある日本であるということや、その未来をになっていく若者の将来、未来の日本を考えてほしいと思っています。


日本の鎖国延長


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2022年1月12日水曜日

2ヶ月以内にヨーロッパの半数以上が感染する フランスの1日の新規感染者数36万人突破

  

 

 世界保健機構(WHO)のヨーロッパ支部長のハンス・クルゲ氏は、「現在の世界的な感染率からすると、(Institute for Health Metrics and Evaluation(IHME)の分析)、今後、6〜8週間以内にヨーロッパの人口の50%以上がオミクロン変異種に感染すると予想される」と発表しました。

 感染力の強い変異型の潮流が高速で拡散する中、新規感染者の急増は、すべての大陸で加速しており、パンデミック開始以来の水準に達しています。

 この2週間、米国で新たな感染者数の増加がめまぐるしいですが、欧州でも非常に強い感染者を記録しています。

 医療体制については、入院患者数は増加しているものの、集中治療室への入院率は鈍化しており、死亡率は比較的、安定しているものの、WHOヨーロッパの支部長は、「ワクチン接種率が低い国で、ワクチン未接種者の重症化が進むと、どのような影響が出るかはまだわからない」と懸念しています。

 11月の段階で、WHOが「ヨーロッパが再び感染の震源地になる」と予告したとおりになっている状況です。

 中でもフランスは、そのトップを走っている形になっており、ヨーロッパの中でも最高値を記録、1月11日には、1日の新規感染者数は、再び記録を更新し、368,419人を記録しています。    

2020年10月以来のフランスの新規感染者数


 先週(1月2日〜8日まで)の10万人あたりの発症率は、2,790人を超え、中でもイル・ド・フランス(パリを中心とする地域)の一部の地域では、4,000人を超えています。(単純計算で25人に1人が感染しているということ)

 フランス国立衛生局の発表によると、現在(1月11日現在)のコロナウィルスによる入院患者数は、23,371人(前日から+722人)、集中治療室の患者数は、3,969人(前日から+65人)、1日の死亡者341人を記録しています。

 この莫大な感染者数に比べれば、入院にまで至る確率は、かなり低いとはいえ、確実に病院を圧迫し続けている状況には違いありません。

 また、現在、圧迫しているのは、病院だけではなく、感染者の隔離により、社会のあらゆる場所を圧迫しており、特に、ワクチン接種があまりされていない小学校での感染と検査、隔離の問題は、ことさら深刻になってきています。

 それでもフランスは、「学校は最後に閉鎖する場所であり、最初に再開する場所であるべきだ」という姿勢を崩すことは、ありません。学校は、フランスの未来を担う子供の教育を決して諦めないということに他なりませんが、基本的に、全ての機関を閉鎖せずにこの感染の波を乗り切る姿勢とも重なります。

 この新規感染者数36万人超えという状況からは、2ヶ月以内にヨーロッパの半数以上が感染するという話は、決してあり得ない話ではありませんが、ともすると、「オミクロン株は、感染力は強くても、比較的、症状が軽く、これだけ広がれば、もしかしたら、これが最後の感染の波になるかもしれない」とか、「感染してもワクチンさえしていれば、感染しても問題ない新種の風邪をひいた程度になる」とか、楽観視する意見も持ち上がり始めており、感染症専門家などが出てきて、「その可能性が全くないとは言えないが、現在のフランスの状況は、とても、手綱を緩められる状況ではない。楽観視しすぎてはいけない」と必死でブレーキをかけているような状態です。

 こうした中、コロナウイルスに対するワクチンを統括するWHOの専門家グループは、現在あるワクチンの定期的な増量接種のみに基づく戦略には、「これは適切でも持続可能でもないだろう」と、疑問を呈しています。

 しかし、これだけ、感染が蔓延すれば、周囲の知人にも感染したことのある人が増え続けており、先日、長いこと連絡をとっていなかったフランス人の元同僚から電話があり、昨年、コロナウィルスに感染し、呼吸不全に陥り、味覚も失う経験をした・・」と、「幸い、現在は、回復し、もちろん、その後、ワクチン接種もしたし、感染には、人一倍、気をつけている・・3ヶ月後に4回目のワクチン接種をしなければならないなら、自分はすぐにでもするだろう」と強く語っていました。

 現在のフランスでのワクチン接種の間隔は、3ヶ月後から可能ということになっていますが、4回目のワクチン接種は始められていません。しかし、3ヶ月後にワクチンの有効性が低下し始めることから3ヶ月後からブースター接種が可能ということになっているとすれば、早くにブースター接種をした人は、そろそろ3ヶ月を経過し始めています。

 このヨーロッパ(フランス)の感染のさらなるピークを迎える頃に再び、追加のワクチン接種が必要となる人が増加するとなれば、これはエンドレスな状況になってしまいます。

 現在、赤十字のスタッフなどが、街を歩き、ワクチン未接種者を探し回り、ワクチン接種の必要性を説得し、場合によっては、ワクチンセンターまで付き添って、ワクチン接種を進めるというような地道な努力もしているようです。

 「2人に1人は感染」という状況になったら、私はどうしているのだろうか?と思いつつ、自分にできる感染対策を粛々としていくほかに道はありません。


WHO警告 ヨーロッパの半数以上が感染 36万人突破


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2022年1月11日火曜日

ワクチンパス反対デモの拡大とデモ過熱によるサンピエール・エ・ミクロンでの代議士個人攻撃

   



 先週末は、フランス全土で、ワクチンパス反対、ワクチン反対などを訴え10万5000人がデモに参加しました。

 今回のデモは、ワクチンパスが施行される直前ということもあり、また、マクロン大統領がこの数日前にワクチン非接種者についての過激な発言をしたこともあり、年末年始にかけては、少しずつ減少していたデモ隊が再び、増加し始めています。

 パリでは3つのデモ隊に分かれて18,000人が参加しています。デモに参加している人々の主旨は様々で、ワクチン接種そのものに反対している者、ワクチンパスに反対している者、政府の強引なやり方に抗議する者、自由を制限されることに対して抗議する者、マクロンの過激な発言に対して抗議する者などがごちゃ混ぜになっています。

 もともと、フランスのこのヘルスパスやワクチン接種に関するデモは、もうずっと途切れることなく続いており、特にヘルスパスの施行が発表された直後は23万人以上が集まる大変な盛り上がりを見せていましたが、ワクチン接種が進み、ヘルスパスが浸透するとともに少しずつ縮小していたので、フランス全土で10万人超えのデモは久しぶりのことです。

 いつものことですが、警備にあたる警察との衝突もいくつか起こっており、パリ市内では、逮捕者10名、軽傷者3名、他の地域では24名の逮捕者、軽傷者7名が発生しています。

 これらのデモは時には暴徒化することあっても、街中を練り歩いて行進して歩くのが普通ですが、このデモが、フランス領サンピエール・エ・ミクロンで、ワクチンパス反対のデモ隊が過熱し、代議士の個人宅を攻撃するという事態にまで陥る事件が発生しました。

 

 過熱したデモ隊の一部が、代議士宅へ向かい、デモ隊と対話をしようと家の前の階段の上に現れた代議士に向かって多くの人が彼に向かって石を投げ続けたのです。

 デモによる抗議活動は、認められているものですが、個人攻撃は、明らかにルール違反。襲撃を受けた代議士は、顔見知りの者もいる集団が自分に怒りを向け、石を投げつけられ、彼がしていたマスクを引きちぎられ、「ウィルスは存在しない!」と叫び襲いかかるものもいたそうで、その際の恐怖と憤りを語っており、この襲撃者たちを告訴する意向を表明しています。

 政府の決定に対して、また長期間おさまることのないパンデミックへのやり場のない怒りをぶつける標的を個人に向けることは、あり得ない話、ましてや最も個人的な私邸への襲撃とは、警備する警察官もたまったものではありません。

 このように実際の暴力的なかたちでの攻撃は、さすがに珍しいものではありますが、SNSによる抗議や脅迫メールなどは、後を絶たないと言います。

 マクロン大統領は、サンピエール・エ・ミクロンで起こったこの代議士への「耐え難い」「容認できない」攻撃を糾弾し、特定の被害者の苦情を現地で集める可能性に言及しました。

 マクロン大統領が行った「ワクチン未接種者を非難し、彼らを怒らせたい」と言った過激な発言は、一部の国民の怒りを過熱させ、過激な暴力行為に向かわせてしまったかもしれません。

 警察は「政府の決定に最も敵対する者たちが再び標的となりうる国会議員やその事務所に注意を払うべき」と対策を検討中です。

 今、戦うべきは、ウィルスであって、人と人ではないことを思い出してほしいです。


サンピエールエミクロン ワクチンパス反対デモ


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2022年1月10日月曜日

IHU変異種とデルタクロン 新しい変異種の出現のニュースの信憑性

   


 昨年の12月の段階から、世界では騒がれ始めているのに、なぜか、フランスでは、あまり報道されていない新しい変異種があるというのを小耳に挟んでいて、気になっていました。

 それは昨年12月初旬にマルセイユの大学病院の感染症専門医ディディエ・ラウルト教授のチームが新しい変異種を発見したと発表したことから「IHU変異種」と呼ばれ、世界の一部の科学者を心配させているのだそうです。

 実際に「French variant」と検索すると、このIHU変異種について書かれた数百件の記事がヒットします。時には、「この変異種はオミクロンよりもさらに多くの変異がある」とか、「フランスの科学者が警鐘を鳴らす」といった記事にも遭遇します。

 しかし、実際にフランスでは、この「IHU変異種」については、あまり報道されていません。

 この新しい変異種は「IHU型」と呼ばれ、昨年10月にフランスとコンゴで発生した別の型と関連があり、12月中旬に発表されたフランスの公衆衛生局による最新の調査では、その後300人強の陽性例を出しています。

 しかし、「この変異種はフランスにおける感染者の1%未満以下であり、これは非常に少ない症例数、解釈には慎重であることが望ましい」と公衆衛生局は指摘しています。この変異種については、変異種をリストアップしているWHOの定義によると、リスクがあると疑われているものではありますが、必ずしも危険というわけではありません。

 この変異種の発見が、他の科学者によるレビューや検証がまだ行われていない段階で発表され、それが以前にクロロキン(本来は、マラリアの治療薬)を使ってのコロナウィルスの治療に成果をあげて、一躍、ヒーローのような存在になったディディエ・ラウルト教授のチームによるものであったことが、誇大広告の引き金となったと現段階では、言われています。

 IHU変異種が検出されたのは、フランスでオミクロンが広がり始める前の段階であったことから、新しい変異種であり、その存在は事実ではあるものの、オミクロンほどの警戒をすべきものとは、考えられないとされ、むしろ、イギリスのインペリアルカレッジなどは、必要以上に危機感を煽る報道は避けるように戒め、騒ぎを沈静化するために、「このIHU変異種の発見は、南フランスでの症例の急増を説明するものではない」、「フランスで何百人もの人々をICUに送ったわけではない」などとの、この騒ぎを鎮静化させる声明を発表しています。

 クロロキンを使ってのコロナウィルス治療の研究成果を発表したラウルト教授は、一時、救世主のようにマスコミを賑わせたものの、結果的に1年以上経った現在、この治療法が浸透していないことからも、これは、結局、お騒がせ・・というか、マスコミが勝手に騒いだだけだった・・と思わせられます。

 そんな経緯もあり、フランスでは、あまりこの「IHU変異種」については、騒ぎにはならず、それどころか、デルタ変異種がおさまらないうちにオミクロンの驚異的な感染拡大で、それどころではない状況です。

 そして、昨日、「キプロス大学生物学教授のLeondios Kostrikis氏は、「現在、オミクロンとデルタの共感染があり、我々はこの両者を組み合わせた新しい変異種を発見した」と発表しました。

 それは、オミクロンの遺伝的サインとデルタのゲノムを持つとされ、そのため、すでに「デルタクロン」というニックネームがつけられています。

 同医師によると「入院中の患者の方が変異の頻度が高く、デルタクロンと入院の間に相関関係があるとの考えに至るかもしれない」と付け加えたという。「この変異種がより病的なのか、より伝染性が強いのか、あるいはそれが優勢なのか、今後見ていくことになる」と述べています。

 このサンプルは、他研究所(パスツール研究所など)に送られ、これから分析を進めるとしていますが、既に、一部では、異なる変種のサンプルを扱う実験室のミスによるものだと懐疑的な声も上がっています。

 現在のフランスの重症患者は依然として、デルタ変異種による患者が多い中でのオミクロン感染の急激な増加、この異なる変異種が合わさるものであるのかは、わかりませんが、どうやら、科学者の新しい変異種発見の発表が充分に確認される前にフライング気味に世の中に出回ってしまうことだけは、確かなようです。

 私たちにとっては、ウィルスは目に見えるものではなく、変異種ごとに感染対策が特に異なるならば別ですが、できる感染対策を粛々としていくしかありません。

 しかし、新しい変異種が出現するということは、確実にこのパンデミックが長期化するということだけは確かだと思うと、また、うんざりするニュースではあります。


デルタクロン IHU変異種


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