2020年4月14日火曜日

コロナウィルス・ロックダウンの延長と徐々に解除していくことを同時に発表したマクロン大統領の真意


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 「フランス人は、マクロン大統領を信頼しているか?」 
演説が始まる少し前のニュースのタイトルには、こんなタイトルがつけられていました。

 フランス国民の多くが注目していたマクロン大統領の演説は、コロナウィルスとの戦いが始まって以来の第一線で働く医療従事者をはじめ、この状況下で働き続けている商店、交通機関、警察、運送関係等々、そして、外出禁止の生活を守り続けている人に対する感謝から始まりました。

 そして、ロックダウンの効果は、表れているものの、イル・ド・フランス(パリを中心とした地域)やグラン・エスト(フランス北東部の地方)での医療対応の飽和状態や現在の一日の死者数、集中治療室にいる患者数などを考えても、未だ、到底、ロックダウン解除の状況ではないことなどを述べ、5月11日までのロックダウンの延長を発表しました。

 そして、同時に、あくまでも、国民がルールを守り、ウィルスの拡散が現実的に減速した場合という前提で、5月11日には、段階的に保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校を再開すること、一般の人の仕事も徐々に再開することを発表したのです。(ただし、レストラン、カフェ、映画館、劇場、美術館は、引き続き閉鎖、イベント、集会なども同様に少なくとも7月中旬までは、禁止。EUの国境も当面、閉鎖。)
(15日以内に11日以降の詳細な計画を発表する。)

 そして、更なる経済的援助、特に、観光業、飲食業、ホテル業等の経済的打撃の大きい部門、最貧員層の人々に関しては、特別な措置を取ることを、4月15日以降の閣議で決定すること、さらに、5月11日からは、症状のある全ての人にコロナウィルスの検査を行い、陽性者は隔離し、治療を行い、皆が安全に社会生活を始めるために、全ての国民にマスクを配布することも付け加えました。

 しかし、私は、この5月11日という日程の発表は、最低でも、あと一ヶ月以上は、ロックダウンが必須な状況で、財政的なことも含め、何よりも国民があと一ヶ月のロックダウンの状況をいかに受け入れやすくするかを考え抜いた、あくまでもロックダウン延長を目的とした発表であったと思っています。

 5月11日という日にちが、どのように選定されたか、(これまでの感染者の状態や感染の推移や、それまでに、物資的や環境的に政府が準備することができる日程から設定されたと思われますが・・)はっきりとは、わかりませんが、2週間ずつ細切れに、延長を発表されるのでは、国民の意識も緩みやすく、最低でも必要な期間の日付を設定することで、ある意味、これまでに相当なストレスを溜め込んでいる監禁生活に目標のようなものができ、その後の生活に向けての準備をすることもできます。

 そして、それまでは、(5月11日までは、)今まで同様、むしろ、より厳しく外出禁止の規則を守ってほしいと訴えたのです。

 これまでも、外出禁止ではありましたが、天気が良いから、バカンスに入ったから・・とふらふらと出歩き始めてしまうフランス人を、さらに、長期間、コントロールするためには、どうしても、はっきりとした日にちの目標の設定が必要であったように思います。

 もちろん、未知の病気であり、世界的なパンデミックになっている状況、この感染がどのように変化していくのかは、わかりません。

 いみじくも、スペインが、一足先に、リスクを冒しながらも、一部、社会活動を再開し始めたことから、俄かに、色めき立ち始めようとしていたフランス人を牛耳る、最良とまでは行かないまでも、よくよく考えられた政策であったような気がしています。

 5月11日という日にちを突きつけられたフランス人が、今後、一ヶ月近くの外出禁止をどれだけ守って生活することができるか? 今のフランスの感染状況は、本来ならば、5月11日という日程が設定できるような甘い状況ではありません。
 少しでも気が緩めば、さらなる感染拡大は、充分に考えられることです。

 「とりあえず、予想し得る範囲内で日程を設定し、それまでに、そのための準備は整える。だから、それまでは、外出禁止を尊重するように。もし、それが出来ずに感染が更に拡大すれば、さらなるロックダウンの延長もあり得る。」ということです。

 多くの国民は、さらに一ヶ月近いロックダウンの延長は、致し方ないこととは、わかっていても、生半可な説明では、国民を納得させることは容易ではなく、ロックダウンの延長と同時に、ロックダウンを徐々に解除していく日にちを同時に発表するという方法は、ロックダウン下にある国民の心情や、国民の動きを鑑みながら、ロックダウンの延長という少なからずショッキングな事実以上に、ロックダウン解除実施の現実的なリスクに国民の注目を移行させることであったと思います。

 特に、5月11日の学校の再開については、リスクが高すぎると、既に批判的な見方が広まりつつありますが、とにもかくにも、彼の真意は、ロックダウンの延長とその徹底であったことに違いありません。

 「5月11日にロックダウンを徐々に解除する。」というのは、あくまでも、ウィルスの拡散が現実的に減速した場合という前提ですから、たとえ、学校再開は時期尚早という声が上がったとしても、それは、いくらでも変更できることで、彼の第一の目的であった、一ヶ月近いロックダウンの延長に、なんら、問題はないことなのです。



 

































 

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