2024年4月15日月曜日

電気料金の値上げとエネルギーチケット

  


 ここのところ、電気料金は毎年、着実に値上げされており、2024年は2月からさらに10%値上げされています。これは毎年徐々にあげられているため、数年前から比べるとずいぶん高くなったと思いますが、しかし、それでもこの値上げは国によって抑制されている状態のようです。 

 実際の電気料金は、これ以上に値上げされているのが現実なのですが、国が関税を調整しているために、これでも他の欧州諸国に比べて大幅な値上げを抑えているのだそうで、国からしてみれば、この調整を少しずつ段階的に終了させていく予定で、当初は2023年12月に終了予定だったものが、2025年2月までに延長されています。

 したがって、国は引き続きフランス国民の請求書の一部を一定期間負担しているわけで、この措置により、2024 年の国家予算では、30億ユーロが割かれています。

 ということは、2025年2月には、また確実に値上げされることは間違いなさそうです。

 これまでフランスは特にウクライナでの戦争が始まって以来のインフレのために、インフレ手当やエネルギークーポン(エネルギーチケット)などを数度にわたって配布してきましたが、全員に一律○○ユーロ・・ということはまずなくて、この援助の実質的な金額も所得によって違っています。

 このあたりは、とても合理的なところです。

 これは、前年度に申告された所得や家族構成(子どもの年齢や数など)により、自動的に配布されるもので、エネルギーチケットに関しては現金で支払われるものではなく、EDF(フランス電力)の個々のアカウントにデポジットとして、支給されます。

 今回のエネルギーチケットの平均支給額は150ユーロ(約24,500円)ということで、所得や世帯の規模に応じて48ユーロから 277ユーロ(約45,000円)とされています。

 このあたりの援助に関しては、フランスのシステムは非常によくできており、この枠内の人々に一定の率の金額(相当のバウチャー)を配布するとなれば、そのたびに個々に申請する必要はなく、自動的に振り込まれるようになっているところは、とてもスムーズで円滑に行われます。

 実際には、このチケットが配布された後は、電気料金は、そのデポジットから電気代が自動的に支払われることになるので、他の用途に使うことはできません。

 これらの援助に関しては、かなり手厚いと言えば手厚いのがフランスですが、年々、その援助されるはずの枠が狭められてきているのも国家の緊縮財政が見え隠れするところで、最近ではHLM(低所得者向けの公営住宅)の居住資格についての見直しを行う必要があることが話題に上がっています。

 このHLMについては、一応、2年に一度、チェックされているのですが、このチェックはこれまで居住権の問題もあって、わりと緩かったのですが、「所得の上限を大幅に超えた人々が公営住宅に住み続けることの妥当性を再検討する必要がある」と住宅大臣が問題を投げかけており、収入増加に応じて、家賃の増額、あるいは、退去が求められる可能性があります。

 フランスの場合、低所得者層への援助はこれまでも手厚いイメージがあるのですが、それだけ低所得者層がギリギリの生活に窮しているということでもあり、格差社会のあらわれでもあると思われます。

 そこのところが、税金を払う側にまわるか?もらう側にまわるか?などと揶揄されることにもつながっているのですが、実際のところは、ギリギリのところで、もらう側には回れない人々が一番厳しいのかな?という気もしてしまいます。


フランスのエネルギーチケット エネルギーバウチャー


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2024年4月14日日曜日

春の種蒔き ベランダ野菜栽培

  


 春になると、毎年、ベランダで野菜の種を撒くのが年中行事のようになっています。今年は、3月にしばらくパリを留守にしていたし、パリに帰ってきてからも、お天気があまり良くなくて、気温も上がらなかったので、ずっと頃合いを見計らってきました。

 そもそも私がベランダで野菜を育てるきっかけになったのは、最初にアフリカに引っ越したときのことで、アフリカといえば、そうそう簡単に日本に帰ってくることも難しく、持っていける荷物にも限度があって、日本の食べ物にしても、そんなに持っていけるわけでもなく、母が、持っていけないならば、自分で育てれば?と日本の野菜の種を持っていくことを提案してくれたのでした。

 今から考えれば、アフリカにいた頃はもっと時間もあったし、広いベランダもあったし、年中お天気もよかった(良すぎ)ので、もっと本腰を入れてやれば、どんなにか立派な野菜もできただろうに・・と思うのですが、あの頃は、とにかく私はフランス語を覚えることに必死で、そこまで真剣に野菜の栽培には取り組んでいませんでした。

 その後、フランスに引っ越してきてからは、しばらくは色々と落ち着かず、仕事と子育てに忙しい日々を送っていたので、野菜を育てることもすっかり忘れていました。

 とはいえ、パリに来て、生活も落ち着き始めてから、私のベランダ野菜栽培は再開し、日本に一時帰国するたびに野菜の種を買ってきては、春になると種まきをし、春先には春菊や水菜、小松菜などの葉野菜、夏にはきゅうりというのがお決まりのスタンダードになり、その他に小葱やにら、しそ、三つ葉、山椒などの薬味の類は、欠かせません。

 なにしろ、本当に猫の額ほどの狭いベランダなので、何を優先させるかは頭の痛いところです。今年は、いつものメンバーに加えて、スナップエンドウやからし菜、ししとうなどにも挑戦します。

 数年前にパンデミックのために突然、ロックダウンになり、家から出られなくなったときも、たまたまその直前に日本に行ったときに買い集めていた野菜の種が、いつも以上に役に立ち、当初はどんな病気なのか、予想もできずに、毎日毎日、外からは救急車のサイレンが聞こえてきて、テレビから流れてくるのは、もう病院に収容しきれない患者が溢れた病院の様子などで陰鬱になりがちだったときに、ベランダでの野菜の栽培には、心がなごみ、どこか土いじりに癒されている感じがしたと同時にどんどん育っていく野菜に実際に買い物に行くのも怖かったときに食卓を彩ってくれるとれたての野菜には、本当に助かった思い出があります。

 今でも春先の種蒔きの時期になると、あのロックダウンという前代未聞の時間を思い出します。

 現在は、どこにでも買い物には出られますが、やはり日本の野菜というと手に入りにくいものも多く、なにしろ、ベランダに出れば、ちょっとした青菜や薬味などが手に入るので、こんなに便利なことはありません。

 だいたい収穫が終わる秋の終わり頃には、枯れ枝を取り除き、土を大きなケースに入れ替えて、冬の間は、野菜くずなどを少しずつ土に埋めながら、翌年用の土を作ります。我ながら、「エコだな~!」と悦に入りつつ、土づくりをしています。

 この種蒔きの時期もなかなか頃合いをはかるのが難しく、早すぎれば芽が出ないままダメになってしまうこともあり、とはいえ、スペースにも限りのあることゆえ、後の予定が詰まっていて気は焦ります。

 私の場合、一番のメインイベントはきゅうりなので、きゅうりはだいたい例年からいくと、5月の日本のゴールデンウィークあたりに撒くのが一番成功率が高いです。きゅうりは、一旦、育ち始めると、ジャックと豆の木みたいに目に見えるかたちで、どんどん蔓を撒いてどんどん育っていくので、喜びもあります。

 少し背がのびていくと、毎年のようにベランダにやってくる鳩との闘いになるのですが、これも、根気よく闘っていく日を過ごしていくとそのうち鳩も諦めてくれます。

 こうして、ごくごく狭いベランダでも植物が育っていく喜びと太陽と土と水の偉大なチカラをしみじみと感じたり、同じように育てても、育ちかたが色々だったり、収穫の喜びを味わったり・・。こんな時間の過ごし方も楽しいものだ・・と思ったり・・。

 日本の家なら、庭もあるので、野菜を育てるスペースはあるものの、日本の野菜はいつでもどこでも簡単に手に入るために、きっとこんなことしなかっただろうし、こんな楽しみも味わうことはなかったと思います。

 海外生活ゆえに始めたこのベランダ菜園も今や私にとっては大切な楽しみになっているのです。


ベランダ菜園


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2024年4月13日土曜日

公共交通機関のトラブルに遭遇し続けた1日

  

電車とホームの間がこんなにあいている・・


 久しぶりの晴天に恵まれて、こんな日こそ溜まっていた用事を済ませよう・・と明るいなかばお花見気分で出かけました。気候も良くなって良い気分でバスに乗っていたら、久しぶりにいきなりRATP(パリ交通公団)の検札官の一団が乗ってきて、乗客のキセルチェックを始めました。

 私自身は、Navigo(定期券)のようなものを持っているので、それを検札官が持っているマシンにかざせば、OKなのですが、近くにいた若い男性が無賃乗車だったらしく、身分証明書の提示を求められ、「この場で払うなら、50ユーロ・・現金がなければ、クレジットカードでも払えます・・」などと言われていました。

 この男性、身分証明書を探しているのか?ゴソゴソとスマホをいじりだして、なかなか手続きは済みません。その間に別の無賃乗車だったらしい若い男性がいきなりバスを降りて逃走・・それを追いかける検札官の一団のうちの一部の人。

 その間、延々とバスは停車状態で出発できず。しばらくして、ようやく・・生半可には、解決しないと判断したのか?RATPの一団と捕まった男性は、そこで下車してやっとバスが出発しました。渋滞だけでなく、バスはこんなことでも遅れるのです。

 現在は、パリ地区は学校のバカンス期間ということで、工事のためにいくつかの路線が閉鎖になっており、迂回しなければいけないことも手伝ってか、平日の昼間というのに、その他の路線は少々、いつもより混んでいる感じです。

 この先、6月までは、まだまだパリのメトロ・・あちこちの路線で閉鎖が続くようです。

 そんな状態なので、パリ市内を動くのには、いつもなら、そこまで確認しないのですが、念のためにその路線が動いているかどうか?確認して動いています。

 そんなわけで、いつもはあまり乗らないRER C線を使おうとサイトでチェックすると、なんと、工事中でもないのに、「不通」と出ていてウンザリ・・この近くの他の駅は?何に乗ればよかったっけ??・・と考えながら歩いていると、不通なはずのC線の駅に人が下りていくのを見て、「えっ?もしかしたら、動いているの?」と一応、駅まで行ってみると、なんと電車は普通に動いていて、「なんだ・・動いてるじゃん!」とズッコケましたが、まあ、動いていないはずが動いているのだから、まあ良しとするか・・でも、サイトは必ずしもあてにならないことを確認。

 ふだんはあまり乗らないC線ですが、駅で停車した際に、車両とホームの間が少し段差があるうえに、けっこう間があいていて危ないな・・と思いました。

 ひとつ用事を終え、別の場所に移動するのに、今度は別のメトロに・・。ところが、今度は、乗ったはいいものの、突然、ある駅でメトロはストップ。理由も何も説明はありませんが、それは、いつものこと・・。まあ、そこまで急いでもいないし、座れているから、そのまま本を読んで待っていようと思っていると、隣に座っていた結構、年配の女性が運転席の運転手に「いつまで待たせるの!」と激しく抗議を続けていました。若くなくても凄いパワーで運転手に食って掛かる様子を内心「すげ~~」と思いながら眺めていました。

 そのうちに、「しばらく動けませんから、お急ぎの方は別の手段で移動してください」とアナウンス。そうは言っても、そういったとたんにメトロが動きだすこともあるので、しばらく待っていましたが、どうやら、当分、動かないようだからと私も諦めて、しょうがないから、バスで行こうと駅を上がっていき、一駅分、歩くと次の駅の前では、救急車が数台停まっていて、人だかりができていて、大騒ぎになっていました。

 どうやら、その駅で電車とホームの間で人がはさまってしまう事故が起こったとのこと・・さっき、C線で車両とホームの間があきすぎていて危ないな・・と思ったばかりのできごと、C線だけでなく、電車とホームの間隔がけっこうあいている場所は多いのです。

 ともあれ、あのまま電車の中で待っていなくてよかった・・と思ったのでした。

 こうやって、パリ市内を移動する中で、こうも次々とトラブルに遭遇し続けるとは・・オリンピック前で工事が多いのは承知しているものの、さすがにそれまでには、工事は終わっているとしても、こうも色々トラブルが多くては・・これは人災的な側面も多いため、ふだん、パリ市内の交通機関に慣れている人ならばともかく、大多数が外国からくる人々に埋め尽くされるタイミングでは、さぞかし混乱も倍増するのだろうな・・と、やっぱり思ってしまった1日でした。


パリの公共交通機関


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2024年4月12日金曜日

3歳以下の子どものスクリーン(タブレットやスマホなどのデジタル機器)の使用を禁止

  


 今週初めに国民議会にて、「保育園や保育所での3歳以下の子どものスクリーン(タブレットやスマホなどのデジタル機器)の使用を禁止する法案」が提案され、子どものスクリーン使用に関する健康に影響を与える問題についての議論が高まっています。

 今回の議会への提案は、3歳以下の子どもに対するものですが、児童へのこれらの電子機器の過剰使用については、小学生、中学生についても以前から取り上げられているものです。

 今回の提案では特に3歳以下の子どもをスクリーンの前に置くことは、「言語能力、コミュニケーション能力の発達の遅れ」だけでなく「運動能力の低下」、「睡眠障害」などを引き起こす原因となっていると説明しています。

 今やバスや電車の中でも小さい子どもがスマホでアニメを見ていたり、ゲームをしていたりするのを見かけるのは珍しくなくなりましたが、今回の議会への提案については3歳以下の子どもの保育園での使用禁止ということで、そもそも保育園でタブレットなどを与えて子どもを保育していたのか?とちょっと、驚かせられるところでもあります。

 しかし、これは、基本的には、保育園だけでの話ではなく、家庭内にも同じことが言えるわけで、フランス公衆衛生局は、2023 年 4 月に発表した調査で、2 歳児は 1 日あたり平均 56 分、3歳半の子どもの場合、1日1時間20分をスクリーンの前で過ごしていることを明かしています。

 以前は、テレビは1日〇時間まで・・などと言われたものですが、テレビの場合は少なくとも家にいる時間しか見られなかったものが、持ち運びのできるスマホやタブレットの場合は、四六時中、触れることができてしまうのですから、どこかでストップをかけ、その危険性について、保護者や監督者が認識できていない場合は、その視聴時間が際限なくなってしまいます。

 たしかに、公共交通機関などの中でむずがる子どもにスマホを与えておとなしくさせたりするのは、一見、ラクで良いアイディアのような気がしてしまいますが、やはり、幼少期には、自分の目で色々なものを見たり触れたり、感性を育み、そして、公共でのマナーを学ぶチャンスでもあるのです。

 娘が小さかった頃は、ここまでスマホやタブレットが浸透していなかったので、これほどまでに問題にはなっていなかったものの、それでも、当時、フランスの子どもの間でも大人気だったNINTENDO DSなどのゲーム機器を私たちは決して買い与えなかったし、スマホでさえも、かなりの年齢まで持たせていませんでした。

 私が子育てを始める頃に、子どもの家庭内暴力などの問題が浮上していて、こんなになっちゃったら、どうしよう?と親族にもいる教育関係の仕事に携わっている人々に相談したら、「色々と家庭によって、事情はあるんだろうけど、とにかく身体を動かすこと、スポーツなどをさせて、エネルギーを発散させることが大切らしい」という話を聞いて、私は、とにかく、娘の有り余るエネルギーを発散させることを心掛けてきました。

 タブレットやスマホに子守をさせている場合は、その正反対になってしまうわけです。

 そもそも我が家の場合は、私も仕事をしていて、ウィークデーは仕事帰りに娘を迎えに行って、家に帰ってくるのは、夜7時近く、それから公文の宿題をさせて、食事をさせて、娘が寝るまでの時間には、他のことをしている余裕はほとんどありませんでした。

 ただ、タブレットはありませんでしたが、テレビはあったのです。しかし、私は娘の日本語教育のために、娘の幼少期は、ごく一部のテレビ番組を除いて、テレビは日本の番組をDVDで見るだけのものでした。娘が当時、繰り返し、飽きることなく見ていた日本のドラマなどのおかげで娘はずいぶん日本語を覚えたと思うので、必ずしも、スクリーンを全て否定するつもりはありません。

 しかし、やはり、幼少期には、タブレットなどではなく、身体を動かしたり、家族と会話をしたり、本を読み聞かせたりと他にやることはいくらでもあります。

 このスクリーンの有害性については、幼児だけでなく、ティーンエイジャーや大人とて過剰な使用については、気をつけなくてはいけないことがたくさんあるような気がしています。

 個人的にも、ついついスマホを覗いてしまう習慣をあまり良くない、もっとスクリーンから得られる情報以外のものを自分の目で見たり、感じたりすることが必用だと感じ、日中はできるだけ、スマホやネットに接しないようにしています。

 スマホから得られる情報はとても便利で有効であると同時に他の者と接する時間や機会を奪っているということで、これが精神衛生上、また健康上あまり良いことではないような気がしているのです。

 ましてや成長段階にある幼児や子どもの場合は、他のものから子供たちの経験すべきこと、感性を育てることを遮るものとなっているような気がしてならないのです。


3歳以下の子どものスクリーン使用禁止


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2024年4月11日木曜日

若者たちよ!旅行をしよう!海外に行こう!

  


 世界最強と言われる日本のパスポートを持つ権利がありながら、実際には、現在の日本人のパスポート保有率は6人に一人くらいと聞いて、とても残念に思っています。

 私が若い頃には、おそらく海外旅行に出る人はもっと多かったと思うし、実際にパリにいる肌感として、パンデミックの少しまえから、パリへの日本人観光客の数は少しずつ減りはじめ、パンデミックで一時、ぱったりと途絶え、その後も日本人観光客は、ぽろぽろと見かけることはあっても、あまり回復していないような気がしています。

 かつて日本人がパリに大勢押しかけた時の名残りか路線によっては今でも残っている日本語のアナウンスなどを虚しい気持ちで聞いています。

 日本人の6人に1人しかパスポートを持っていないと言われれば、それもあたりまえだろうと思うのですが、どうにも残念な気がしてなりません。

 私は若いときから旅行が好きで海外旅行もけっこうしていたし、類は友を呼ぶといえば、それまでなのですが、周囲にも旅行好きの人が多くいたような気がします。

 考えてみれば、周囲の同世代の友人や従姉妹たちを見回しても、留学経験者も多いし、旅行に出ることも多く、現在でも、おそらくパスポートをもっていないと思われる人は、思いあたらないほどなのですが、どうもその下の世代(その子供たち)を思い浮かべると、もしかしたら、パスポートを持っていないかもしれないことに思い至りハッとさせられます。

 個人的には、若者こそ、海外旅行や留学をしてみるべきだと思っているのですが、どうやら、今の若者たちの多くは、以前ほどは海外に出たいと思わなくなっているような気がします。

 大きな理由のひとつは、航空運賃が爆上がりしたことなどによる経済的な理由があるだろうし、まとまった休暇がとれない、とりにくいということもあるかもしれません。しかし、休暇がとりにくいという点では、私の世代も条件は同じだったはずです。

 この間、日本に一時帰国した際に、かなり久しぶりに娘と同じ年ごろの親戚の子に会ったとき、「旅行とかしないの?」と何気なく聞いたら、「あんまり旅行には興味ない・・東京にはなんでもあるし・・」という答えが返ってきて、ちょっと愕然としました。

 「東京になんでもある・・」とまあ、それは価値観の相違で、旅行が好きじゃない人もいるか・・とその時は、思ったのですが、いやいや「東京にないものはたくさんある・・」、たとえば、日本国内でさえも、少し旅行をしてみれば、日本には壮大で美しい自然を携えているところがたくさんあるし、海外には、異なる文化やその文化のもとで生活している人々がいて、色々な生き方や考え方があって、自分の生活圏とは違う場所に身を置くことによって、あらためて色々なことを感じたり、考えたりすることもできます。

 違う空気を感じるということは、想像以上に大きな体験であり、せめて、旅行でもいいから、海外に出てみることは、若い時だからできる大事な経験であると思うのです。

 実際に生活してみなければわからないことも多々あるし、海外に出れば、危険なこともたくさんあるし、気をつけなければならないこともたくさんあります。

 しかし、最近は日本も治安が悪くなったなどと言いつつ、世界的に見れば、未だに日本は格段に治安のよい国で、ある意味、日本が特殊な国であるということも実感として知っていていいことです。

 ましてや、万が一、海外で恋愛関係に発展したりして、クズ男にひっかかりでもしたら、本当にクズは日本では考えられないほどのクズなので、目も当てられない結果になりかねないところもあります。

 私の場合、夫はフランス人ですが、知り合ったのが日本だったということもあり、そんなに悪い人ではなかったのは、本当に偶然のようなもので、運がよかったと言った方がよいくらいです。

 自分が海外に最初に出たときには、そんなに具体的に将来についての展望を描いていたわけでもなく、ただ勉強したいことがあったので、その勉強をするために何としてもイギリスに行きたいと思っていただけで、今から思い返すてみれば、実に危なっかしいものでした。

 しかし、その若さゆえのエネルギーや今となれば無謀とも思えるような挑戦が、若いときには、あってもいいのかな?とも思っています。必ずしも、海外生活は、平穏ばかりのものでもありませんでしたが、それなりに、色々な経験をし、色々な人々に出会い、色々な文化に触れ、楽しい人生を送ってきたと自分の歩んできた道を後悔することはありません。

 娘にも、色々な場所に身をおいて、色々な経験をしていってほしいと思っています。(言われなくとも、娘は私の若いとき以上にあちこち飛び回っていますが・・)

 そのうち、家庭を持って、子どもでも持つようになったら、それこそ、自分の自由にばかりは時間は使えなくなるのです。

 海外に出てみれば、海外のニュースも少しは知ろうとするようになるだろうし、その中で、良い意味でも悪い意味でも日本がかなり特殊な国であるということがわかるようになります。

 関心事が外に向かないということは、あまり良い傾向ではない気がしてならないのです。

 日本のパスポートは世界最高のパスポートなのですよ!もったいないです!


世界最強のパスポート


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2024年4月10日水曜日

フランス人はマクドナルドがお好き

  


 Expensyaプラットフォームが実施した調査によると、仕事をしているフランス人がもっとも好むレストランの第一位はマクドナルドであったことが報告されています。

 これは、仕事をしている人という括りがあるために、より早く、より安く、より手軽に食べられるという面が優先されるということがあるかもしれませんが、それだけマクドナルドがフランス全土に浸透し、多くの店舗を持っているかということにも拠るものであると考えられます。

 そもそも人気がなければこれだけ浸透し店舗数を増やすこともできなかったわけで(フランスのマクドナルドの店舗数は約1,500軒)、少なくともフランス人はハンバーガーが大好きということは事実です。

 かつては、フランス人はランチでも、ワインなどを飲みながら、時間をかけてゆっくり食事をしている・・というようなイメージがありましたが、現在は、そこまで優雅に食事している・・ましてや仕事をしている人々にとっては、昼休みの時間はやはり限られていて、外食とて時間もお金もかかり、できるだけ早く、安くすませたいと考える人は少なくありません。

 もともと安くない外食がインフレでさらに値上がり、家からお弁当らしきものを持って来たり、簡単なサンドイッチやサラダのようなもので済ませる人もずいぶん増えたと思います。

 パン屋さんでサンドイッチを買うにしても、スーパーマーケットなどで出来合いの食事を買うにしてもそこそこの値段になるので、総合的に考えれば、いつでも温かく出来立てのものが食べられ、セットメニューなどだとかなり割安にもなるマクドナルドなどは、コスパ的に悪くない・・ということになるのだろうな・・と思います。フランスのマクドナルドのセットメニューは、地域や場所によっても異なりますが9ユーロから12ユーロ(約1,500円から2,000円程度)です。

 円に換算すると、マクドナルドなのに高くない?と感じるかもしれませんが、フランスでは、ランチでさえも15ユーロ(約2,500円)以下で食べられるお店を探すのは簡単ではないのが現実です。

 フランスのマクドナルドは、日本のマクドナルドほどには次から次へと新しいレシピやメニューができてくるわけでもありませんが、それでも以前に比べれば、新しいメニューが時々、登場するようにもなり、なによりもフランスのマクドナルドは、一応、100%フランス産の原材料を使っている(可能な限り)ということになっています。

 また、メニューの中には、Cantal AOP または Comté AOP を使用しているものなど、フランス産のチーズにこだわったものなども散見されるうえ、サラダの種類やフライドポテトの代わりに野菜スティックを出してみたりと健康志向にも気を配っている試みが見られます。

 まあ、どのレストランが好きですか?と聞かれた場合の回答として、これだけの店舗数があるマクドナルドという回答が大多数としてあがってくるのは、当然といえば、当然ですが、こうして、色々な企業努力を見ていると、フランスといえどもマクドナルドは時代とともに変わってきているし、フランス人(フランス政府)が好むフランスの原材料を使い、メニューを工夫しながら、ほどほどの価格帯におさえているという点でやっぱり頑張っているんだな・・と思わせられます。

 フランス人の夫などは、古い世代のフランス人で、「ハンバーガーなんて、あんな手で食べる野蛮な食事・・」と言い、(私は、内心、フランスのサンドイッチだって手で食べるじゃん!と思っていたんだけど・・)、マクドナルド=アメリカのもの・・野蛮な食べ物、身体に悪い・・と毛嫌いしていたのです。

 しかし、実際に私が(私もそこまでハンバーガーが好きというわけでもないし、娘はハンバーガーが嫌いという変わった若者)おまけにもらえるグラス目当てでマクドナルドのセットメニューを買ってきたりすると、誰よりも早く、あっという間にペロッと完食するのを見て、「本当は大好きじゃん!」と思ったりもしたくらいですが、とりあえず、とにかくアメリカのものを毛嫌いする傾向があったのです。

 しかし、今の時代、そんなふうにマクドナルドを毛嫌いするフランス人は、ほとんど見当たらなくなったどころか、フランス人が好きなレストラン第一位に君臨するようになったのですから、今では夫の方が化石的な存在になってしまったようです。


フランス人の好きなレストラン1位 マクドナルド


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2024年4月9日火曜日

パリオリンピックまで3ヶ月 セーヌ川の水質状況の悪さに警告

  


 パリオリンピックをほぼ100日後に控え、NGOサーフライダー財団は、6か月にわたるサンプリング調査を実施し、オリンピックのいくつかのイベントが開催されるセーヌ川の水質が「憂慮すべき」状態であると警告しています。

 財団は、トライアスロンとオープンウォータースイミングイベントの開催地となるアレクサンドルIII橋とアルマ橋の下で測定された14件の測定のうち、13件が推奨閾値を「上回っている、またはかなり上回っている」状態であったことを発表しました。

 欧州トライアスロン連盟の基準によれば、糞便汚染を示す 2 つの細菌、大腸菌および腸球菌の濃度が100 ml あたり 1000 cfu、腸球菌では400 cfu/100 ml を超えてはならず、それを超えると、その水は水泳には適さないと考えられます。

 オードパリ研究所によって行われた分析では、大腸菌の濃度が定期的に 2000 cfu/100 ml (2 月 7 日のアルマ橋の下で最大 7,250) を超え、腸球菌の濃度が 500 cfu/100 ml (2 月 7 日の最大 1,190) を示しています。

 これらの憂慮すべき結果に直面して、サーフライダー財団は「セーヌ川の水質に対する懸念の増大」を表明し、アスリート、さらにはイル・ド・フランスの住民にとって「汚染された水の中で進行するリスク」を指摘しています。

 特に今年に入って天候が悪く、例年にくらべて雨も多く、セーヌ川は水位が上がっており、橋の下を通る船が通れなくなったりしているケースが増えています。これに対し、大会開催側は、オリンピックが開催される夏の期間は「強い日差し、少ない降水量、長い日照時間、少ない川の流れ」となる川の状況も異なるものであり、水泳は可能であると想定していると語っています。

 また、イル・ド・フランスは、「雨天時の衛生網を改善する作業が4月と5月に開始され、浄水場の消毒装置を稼働させることによりセーヌ川の水質はオリンピックでも維持される」と釈明しています。

 1ヶ月まえほどに、このセーヌ川の水質についてが話題になった頃、インタビューに答えたマクロン大統領がセーヌ川の水質を保障するために「自分がセーヌ川で泳いでみせる!」と豪語したことが水質以上に話題になりましたが、マクロン大統領がセーヌ川で泳ぐ場面が本当にみられるのでしょうか?

 一般的に、パリに住んでいる人が「セーヌ川で泳ぐ」とか、セーヌ川で泳いでいる人を見かけたら、「ちょっとイカれている・・ちょっと、あたまがおかしい・・」と思うのがふつうで、ここで泳げと言われたら、かなりなレベルのアドベンチャラスなチャレンジです。

 最初にオリンピックには、セーヌ川でトライアスロンをやると聞いた時には(かなり前のことですが・・)、「え~~~??」と驚いたものの、それまでには、きれいにするのかな?と思ってもいたのですが、どうやら、直前になっても水質は改善されていないようです。今回、3ヶ月前になってどうやら水質に問題があるらしい・・などという話を聞いても、「そうでしょうね・・」という感じ。

 恐らく、この改善されない理由のひとつは、この雨の多い気象状況にも起因しているとは思いますが、この壮大?なセーヌ川で泳ぐという計画、泳げない場合に備えてのプランを検討するべきなのではないか?との声も上がり始めています。

 すでにリハーサルイベントは、キャンセル(延期)されています。


セーヌ川の水質 パリオリンピック トライアスロン


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