今月に入ってからのマクロン大統領のスケジュールを見ると、一体、いつ寝ているのか? 大統領2期目の組閣や次から次へと湧き起こる出来事、大きな会議などに臨むにあたって、いつ、どうやって考えをまとめているのか?と不思議になるくらいです。
今月3日の約1ヶ月ぶりのプーチン大統領との電話会談を皮切りに翌日には、インドの首相、さらに、その翌日には、トルコ、南アフリカ、セネガル、モーリタニア、エジプト、アルジェリアの大統領(あるいは首相)と電話会談。
そして、また次の日には、チュニジア、チャド、アブダビの首脳、そしてビルゲイツ、イギリスのジョンソン首相との電話会談。
その間、電話会談だけでなく、国防会議などが挟まり、大統領就任のセレモニー、戦勝記念日のセレモニーを経て、G7の会合、ストラスブールでの欧州議会、ベルリンへ飛び、ドイツのショルツ首相との会談と強行スケジュールをこなしています。
ベルリンから戻ってきたと思ったら、今度は習近平国家主席との電話会談というなかなかな緊張がありそうな電話会談に臨みました。
この習近平氏との電話会談については、なぜか、仏紙では、この二人が話し合った内容について、特にコロナウィルス対応についてを取り上げていて、「ゼロコロナ戦略」のために、厳しい感染対策をとっている中国に対して、中国でのフランス人の懸念に配慮するよう要請したとし、具体的には、「フランスへの航空便を維持し、空港への渡航を許可し、いかなる状況でも親から引き離すことを避け、子どもたちの最善の利益を守る」ことを主張したと報じています。
Avec le Président XI Jinping, nous avons fait le point sur la situation dramatique que traverse le peuple ukrainien du fait de l'agression russe. Les objectifs, nous les partageons : cessez-le-feu, respect de l'intégrité territoriale et de la souveraineté de l'Ukraine. pic.twitter.com/dwd0ObeQpy
— Emmanuel Macron (@EmmanuelMacron) May 10, 2022
しかし、マクロン大統領自身は、習近平氏との電話会談について、「私たちは習近平国家主席とともに、ロシアの侵略によってウクライナの人々が経験している劇的な状況について把握しました。我々は、停戦、ウクライナの領土保全と主権の尊重という目的を共有している」
「ウクライナ戦争は、世界的な食糧危機の危険をはらんでいる。フランスの対応策である食糧危機に対するFARM(Food and Agriculture Resilience Mission)を成功させなければならない」
「中国国家主席は私に、両国のパートナーシップを引き続き深化させ、互恵的にバランスをとっていきたいと表明されました。その思いは私も同じです。航空や民生用原子力のプロジェクトでは、我々の力を結集し、さらに前進していくことになるでしょう」とツイートしており、中国との電話会談の本題がウクライナ問題にあったことが伺えます。
エリゼ宮もまた、同様の内容を同日発表しており、上記の内容に加えて、北朝鮮問題についても、外交努力の調整のために議論されたことを記しています。
以前、マクロン大統領は「中国の言うことをバカ正直に信用してはいけない!」と声高に叫んでいたことがありましたが、その中国の国家主席との会談さえも、こうして前向き?に発信しているのは、やはり現在のロシアに対する対応のために他なりません。
ロシアへの制裁に関しては大きな鍵を握ると思われる中国ですが、「我々は、停戦、ウクライナの領土保全と主権の尊重という目的を共有している」と言っても、都合のいい解釈である可能性も低くない気もします。
もっとも、今のところ、この会談は少なくともフランスのテレビなどの報道ではほとんどスルー状態で、まともに受けとられていないのかもしれません。
そもそも、プーチン大統領とはさんざん話をしてきたマクロン大統領、信用できない相手との会話もお手のもの・・たとえ裏切られても、少々のことでは、今さら応えないのかもしれません。
マクロン大統領と習近平国家主席の電話会談
<関連記事>
「マクロン大統領が警告 「コロナウィルスの中国の発表をバカ正直に信じてはいけない!」
「言論統制・報道規制の恐怖 プーチン大統領を止められるのは誰か?」
「止まらないロシアの威嚇とマクロン大統領とゼレンスキー大統領の電話会談」
「中国とともに赤塗りされた日本の鎖国 6月にはようやくG7並みに水際対策緩和と発表」
「コロナウィルスによる中国人・アジア人種差別再燃 「アジア人狩り」