2022年5月5日木曜日

加速するインフレ 食用オイルが棚から消えた

  


 ウクライナ戦争によるインフレが世界中で進んでいる模様で、フランスもどうやら例外ではないようです。このインフレ騒ぎは、ガソリン等の燃料費の価格高騰から始まり、電気代等の値上げに対して、フランス政府は早々に低所得世帯にエネルギーチケットを配布したりして対策を講じてきました。

 ここのところは、今度は食料品の価格高騰について問題になりつつあり、スーパーマーケットの棚を見ても、世界有数のひまわりオイルの輸出国であるウクライナ戦争から派生したと見られる特にひまわりオイルを皮切りに食用オイルの棚が見事に空、または品薄になり、オリーブオイルは、まあまああるものの、たとえ、あったとしても「一人2本まで・・」などと張り紙がされています。



 フランス人ってそんなにひまわりオイル使ってるの?と逆に不思議に思ってしまうくらいですが、品薄、値上がり確実・・と、急激に買い占めが起こったものと思われます。

 そんなわけで、食用オイルについては、値上げとともに、そもそも商品自体がないので、一体、どの程度、値上げしているのか?中には、4倍近く値上げしているとの話もありますが、今のところ、我が家には、とりあえずの買い置きがあるので、価格が高騰している食用オイルを買ってはいません。

 現在のところは、まだ棚から姿を消していないオリーブオイルに関しても、フランスの農業・食料問題を専門とする経済学者、ブルーノ・パルマンティエ氏は、「インフレに加えて、オリーブの木は過去10年間、地球温暖化の犠牲になっており、オリーブオイルの価格は自動的に上がっている」と述べており、オイルの価格上昇は地球温暖化も関連していることを語っています。

 彼は、ひまわり油に代わる第一の油として、「フランスでは、10月に収穫が予定されているひまわり油の生産が農家で増え、フランス国内の需要を調整する可能性がある」として、フランス産の菜種油を推奨しています。

 ヒマワリ油の世界的な不足は2023年初頭まで続くと予想されており、世界銀行は「2024年までインフレが続く」と予測しています。

 また、他の食品に関しても、昨日の仏ル・パリジャン紙によると4月の食品インフレ率は、パスタ15.31%、冷凍肉11.34%,、小麦粉10.93%,、オイル9.98%,、マスタード9.26%と発表しています。



 フランスは世界の中でもかなり、食料品自給率の高い国ですが、だからといって、スーパーマーケットなどに置かれている商品がフランス製のものとは限らず、フランス製の食料品よりも安い商品が多く輸入されて売られているのが現実でもあります。

 そもそもガソリン価格が高騰した時点で少なくとも、輸送費は確実に余計にかかっているわけで、欧州内からの低価格の輸入品の方が価格が高騰し、もともと高価であったフランスの製品の方が値上げ率が低いという逆転現象も起こっています。

 食用オイルについては、我が家は、もともとそんなにオイルを使うわけでもなく、安くなっていた時に少し買ってストックしているので、現在のところは、あまり、実感はありません。もともと、私には、生活必需品に関しては、ストック癖があり、ストックのストックがないと買い足しておくので、2020年のロックダウンでほぼ2ヶ月間買い物に行かなかった時もなんとか、生活できていました。

 考えてみれば、あのロックダウン騒ぎの時も買い占めが起こり、トイレットペーバーがなくなったり、小麦粉がなくなったりしましたが、別にこれがなくてはどうしてもダメということもないので、なければ別のものを代用してなんとかするということは、例えば日本の食料が手に入りにくくても、他のものを代用してなんとかするトレーニングは長年にわたる海外生活で培ってきているので、買い占めに走るほどには心配はしていません。

 現在の物価上昇を受けて、フランスの大手スーパーマーケットチェーンルクレールは、今年の夏に向けて、6~7%の物価上昇を見込んだ上で、フランスで最も必要とされる12品目については物価上昇の影響を受けないように対処すると発表しています。

 もっとも、今回のインフレはパンデミックで弱った経済状態の上に全世界を巻き込んでいるウクライナ戦争が大きな原因であることに違いなく、なにもかもを奪われて避難しているウクライナの人々のことを思えば、インフレに文句を言っている場合ではないかもしれないとも思うのです。

 この戦争を機会に、多くの国で軍事体制の見直しが行われているように、国民の生活を守るためには、自国のことは自国で賄うという体制に変化していくのかもしれません。


インフレ ひまわりオイル 物価上昇


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2022年5月4日水曜日

約1ヶ月ぶりのマクロン大統領とプーチン大統領の電話会談

 


 ロシアによるウクライナ侵攻が開始される前後にかけては、かなり頻繁にプーチン大統領と電話会談していたマクロン大統領ですが、ウクライナの首都キエフ近郊ブチャにおけるロシアが行っていると見られる残虐行為が公表されて以来(3月29日以来)、プーチン大統領との電話会談がパッタリと行われなくなっていました。

 この間、フランスは大統領選挙があったこともあるとは思いますが、あまりに凄惨な状況に言葉を失ったのかもしれません。

 プーチン大統領と直接、話のできる人は、今、世界中にそんなにたくさんいるわけではなく、たとえ、説得が叶わなかったとしても、対話を続けることができる人がいることは大切なことで、これでマクロン大統領が、プーチン大統領とのコミュニケーションを絶ってしまうのではないかと少し心配でもありました。

 しかし、大統領選挙に再選が決まった直後に、「来週早々にもプーチン大統領とは話をする準備がある」と語っていたとおりにマクロン大統領は、昨日、プーチン大統領と約1ヶ月ぶりの電話会談を約2時間にわたって行いました。

 マクロン大統領は、ロシアがウクライナに対して行った侵略戦争がもたらす結果の極めて深刻さを改めて強調し、マリウポリとドンバス情勢について深い懸念を表明し、ロシアに対し、ここ数日始まったアゾフスタル製鉄所からの避難を人道支援団体と連携して継続させ、国際人道法に従って避難民が行き先を選択できるようにするよう要請しました。

 また、世界の食料安全保障への影響を考慮し、黒海を経由するウクライナの食料輸出に対するロシアの封鎖を解除するために、関連する国際機関と協力する用意があることを表明しました。

 そして、ロシアに対し、この壊滅的な侵略を終わらせることで、国連安全保障理事会の常任理事国としての責任を果たすよう求め、平和とウクライナの主権と領土保全の完全な尊重を可能にするための交渉による解決に向けて努力する意志を引き続き表明しました。

 一方、プーチン大統領は、「西側諸国はウクライナが行っている残虐行為を無視している。止めるように圧力をかけるべきだ」と主張。また、「西側諸国はドンバス地方の町や集落に対する戦争犯罪および大規模な砲撃を終わらせる手助けが可能である」と提案。

 「西側諸国がウクライナ当局に適切な(ロシアにとって)影響力を行使し、ウクライナへの兵器供給を停止すれば、これらの残虐行為に終止符が打てる」と語りました。

 ウクライナが残虐行為を止めるために圧力をかけよと言いながら、ウクライナへの兵器供給を停止すれば、残虐行為に終止符が打てるという支離滅裂な話。

 そもそもロシアがウクライナに侵攻しなければ、西側諸国もウクライナへの兵器供給などしないわけで、ロシアが停戦しない限り、西側諸国も兵器供給を止めるはずはないのです。こうして、二人の電話会談がなされている間にも、マリウポリでは、国連と赤十字の支援により、アゾフスタル製鉄所から民間人を一部避難させた後も、民間人が避難している建物を含む原発の領土に発砲し続けています。

 先日、ロシアのラブロフ外相の「ヒットラーにはユダヤ人の血が入っていた」との発言(ウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ系であるのに非ナチ化のために戦うか?ということについての正当化しようとする稚靴な言い訳)にイスラエルが激怒した話が伝えられていましたが、このラブロフ外相の発言によって、イスラエルはエストニアに対してイスラエル製スパイク対戦車ミサイルのウクライナへの供与を許可しています。

 イスラエルはこれまで、このウクライナ戦争に関して、ロシアへの経済制裁も武器供与も行わず、中立な態度をとってきましたが、ロシアはこのイスラエルをも怒らせてしまいました。

 やることなすこと、すべて裏目裏目にでて、さらに残虐行為を加速させている感のあるロシアですが、残念ながら、マクロン大統領との会話は平行線のままのようです。

 しかしながら、マクロン大統領は、今後も交渉による解決に向けて努力する意志を示しているので、一時中断していたマクロン大統領とプーチン大統領の電話会談は続くものと思われます。

 今回も2時間以上にもわたる長い電話・・仲の良い友人となら、2時間の長電話もなんのことはありませんが、明らかに意を反する相手とこんなに長時間、怒らせないように、また、自分も怒らないように電話を続けることは、大変な緊張状態です。

 いみじくも、大統領に再選された際にプーチン大統領は、マクロン大統領に対して、「新しい任期での成功とともに、健康をお祈りします」という不気味なメッセージを送っています。

 しかし、プーチン大統領も大変なストレスの中、心身ともに健康ではない気がします。


マクロン大統領とプーチン大統領の電話会談


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2022年5月3日火曜日

パリに日本人観光客が戻る日は遠い 燃油サーチャージ大幅値上げ

 


 2020年のパンデミック以来、飛行機も飛ばなくなって、ロックダウンの中、家の窓から空を見上げて、「いつもなら、飛行機雲の1つや2つは見えていたのに・・」と思っていました。あの時は、飛行機ではなく、時折、大型のヘリコブターのようなものが見えて、「ああ〜また誰かが地方の病院に移送されているんだな・・」などと思ったものです。

 ついこの間、天気のよい日の青空に、飛行機雲がいくつも重なっているのを見て、飛行機もずいぶん、増えたんだなぁ〜と感慨深い思いがしました。

 そんな中、5月に入って、どうやらパリー羽田の直行便が再開されるというニュースを聞いて、ちょっと嬉しくなりました。しかも、迂回便とはいえ、ルートが変更されて、私が3月に日本に行った時(あの時は直行便はなくロンドン経由でしたが・・)と比べると飛行時間が短縮され、パリ→羽田便は13時間45分(通常は12時間程度)、羽田→パリ便は15時間15分になったようです。

 しかし、喜んだのも束の間、今度は6月から燃油サーチャージが大幅値上げされるとのこと。JALの場合は片道36,800円、往復だと73,600円もかかることになります。ざっと1.8倍の値上げです。これは、あくまでも燃油サーチャージだけの値段なので、航空運賃にこれがのっかることになるのです。これは大変なことです。家族で旅行など、そうそう簡単にできるものではありません。

 JALは、この値上げをとりあえず6月、7月のものとしており、8月以降についての燃油サーチャージについては、未発表で2ヶ月間の石油市況平均が1バレルあたり6,000円を下回った場合は、8月以降は、この大幅な値上げを適用しないとしていますが、これはほぼ不可能なこと。今後当面は、値上がりすることはあっても値下げになることはあり得ない感じです。

 私としては、4月にフランスに戻ったばかりなので、当分、日本はいいかな・・とは思っていますが、長期的にこの値段が定着してしまうとなると大問題です。

 このところ、パリの街中を歩いていると、ずいぶん観光客が戻ってきたな・・と思うのですが、アジアからの観光客は少なく、ヨーロッパ周辺の観光客か、アメリカ人です。パリの観光客の多くを占めるのはアジア系の人々、これらの人々が観光客として戻らないことは、依然として大打撃です。(そして、皮肉なことにパリへの観光客には、ロシア人もけっこう多いのです。)

 特に日本からの観光客が戻らないのは、フランス入国は日本からなら、ほとんど問題もないのですが(私が入国した時にも、ノーチェックだった)、日本に帰る時には、72時間前の陰性証明書や日本入国時に提示しなければならない書類(今は少し簡素化されて、事前に「ファストトラック」というシステムができて、到着予定時間の6時間前までに「My SOS」というアプリをダウンロードして事前申請を行えば検疫手続きの一部を事前に済ますことができるようになったらしい)や空港での検査が待っています。

 ただでさえ、お休みがとりにくい日本で、もしも、入国時に陽性になれば、さらにしばらく自粛状態になってしまいます。

 日本から海外旅行に行く場合は、日本に帰国し、再入国する際には、どこに行ったにしろ、最低でも、ほぼ同じことが必要なので、パリに限ったことではありませんが・・。

 しかも、ただでさえ遠いヨーロッパ、いくら直行便が復活したとはいえ、迂回便でいつもよりも長い移動時間が必要です。

 その上、考えてみれば、ロシアからのミサイルがパリまで約3分20秒などと脅されている国にだれがわざわざ旅行に行くでしょうか? まさかとは思いますが、ここ数ヶ月間で、「まさか!」と思っていたことを次々とやっているプーチンが自暴自棄なことをやらかす可能性はゼロではありません。

 私は別にパリ旅行のネガティブキャンペーンをやっているわけではありませんが、あらためて考えてみれば、日本人観光客がわざわざ旅行先としてパリは選ばないだろうな・・友達にも気軽に「パリに遊びに来て!」などとは言えないな・・とちょっとガッカリしているのです。

 我が家の近くにあるホテルも、シーズンによっては日本人観光客がいたりしたのに、日本人どころか、お客さんが戻らず、空室だらけのようで、夜にも客室の灯りがつきません。

 世界一の観光大国と言われるフランス・パリも平和な日常を取り戻したようにに見えても観光客が戻らなければ、本格始動とはなりません。

 また、飛行機でさえも、本格的に直行便が再開するには、パンデミックまではほぼフランス人で満席であったほどに日本はフランス人にも人気の旅行先となっていたのに、日本が外国人観光客(一部の国をのぞいて)を受け入れないために毎日運行には戻らないでしょう。

 戦争も一向に解決の糸口も見えないまま、パンデミックもおさまらず、今年こそは・・と思い続けてもう2年以上。最近は、もう今年こそとは思わずに、パリオリンピックの2024年には、元にもどっているかな?と思うようになっています。


燃油サーチャージ値上げ


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2022年5月2日月曜日

フランスのメーデー 労働者の日と労働者のデモとスズラン

  


 5月1日は、フランスでは労働者の日として、祭日でお休みですが、今年は日曜日にあたり、多くの人にとっては、休日が1日減ってしまうことになります。(フランスは5月1日と8日が祭日なので、今年は2日とも日曜日)

 休日出勤というのも、普段の休日ならば、フランスとて、ないわけではありませんが、この日(5月1日)ばかりは、労働者のための休日ということもあり、基本的に法的に労働は禁止、この日に労働させる場合は、雇用者は労働者に対して、ダブル(職種によってはトリプル)の賃金を支払わなくてはならないため、普通の会社はまず休み、店舗とて、かなり閉店にしているお店が多く、比較的、静かな日です。

 しかし、どこもかしこも静かかというと、そういうわけでもなく、労働者の日ということもあり、デモが大々的に行われる日でもあります。そうでなくとも、毎週土曜日は、いつでもどこかでデモをやっている国なので、デモがあるからといって、とりたてて驚くことでもないのですが、メーデーという大義名分がある分、デモの動員数は、いつもに増して拡大する傾向にあります。

 今年は、大統領選挙の直後ということもあり、早くも新しいマクロン政権の提案している政策に反対する人々やデモに乗じて、暴力・破壊行為に及ぶ人々が出たりと、また、なかなかな騒ぎになったようです。

 今年のメーデーのデモは、フランス全土で11万6,500人、パリだけで24,000人に及びました。デモ隊がレピュブリック広場を出発してわずか数分後、黒い服、手袋、マスクをつけた機動力のあるデモ隊が、オベルカンフ通りでメインの行列から離れ、警察と衝突。

 さらに、レオン・ブルム広場では、マクドナルドの店舗が破壊され、窓には反資本主義のスローガンが書かれました。 沿道では、銀行の支店、不動産会社、保険会社、有機製品の店などが同じような被害を被りました。

 また、デモの最終目的地であるナション広場に到着した行列の左翼指導者が警察と衝突し、投擲された弾丸に反応して催涙弾が発射される事態となりました。



 中には、火をつけられた店舗に消火活動にあたっている消防隊に殴りかかる人まで現れ、(なんと、女性)計45名が逮捕されています。

 一度、デモ隊の近くをたまたま通りかかったことがありましたが、警察や憲兵隊が重装備でものすごい警護をして先導しているのにびっくりしたことがありましたが、そこまでしても、このような暴力・破壊行為が、デモの本体から派生して起こるのです。

 現在のロシア国内の状況などを見ていると、デモの権利は認められるべきものだと思いますが、このような暴力・破壊行為は本来のデモの意味とは別問題です。

 ジェラルド・ダルマナン内務大臣は、この事態を「容認できない暴力」と非難し、パリ消防隊も「人々や市の資産を守り、デモの進行を保証する消防隊員への野蛮行為は恥ずべきことである」と抗議のツイートを発表しています。

 ここのところ、(特に年末年始に感染が異常に拡大し、ウクライナ戦争が開始されて以来)ここまでデモ隊の一部が暴徒化することは、あまりなかったので、ここまでの騒ぎは久しぶりでもあり、これよりずっと悲惨な戦争の状況を見慣れてしまっているために、今までよりも驚かなくなってしまっている自分にも驚きです。

 しかし、今回の大統領選挙では、想像以上に、今の政権に満足していない勢力が拡大していて、しかも、マクロン大統領に投票した人でさえも、必ずしも彼の政策に満足して投票したわけではないことからも、このメーデーを皮切りに、今後、このデモがますます拡大していく危険性は無きにしも非ずだと思っています。

 また、フランスでは、メーデーには、労働者に感謝して、スズランの花を送り合うという風習もあり、街中でスズランを売っている人を見かけます。このスズランの販売は、販売用に栽培されたものではなく、庭や森で摘んだスズランを販売することが一般の人にも許可されています。(ただし、お花屋さんから40m離れた場所で人や交通を妨げないこと)

 なんとも、ほっこりさせられるスズランの販売事情と、デモの暴徒化により燃やされる店舗と警察と争い炎と黒煙があがる風景に、そのどちらもが同時に存在しているパリの不思議を思うのです。


5月1日 フランスのメーデー


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2022年5月1日日曜日

止まらないロシアの威嚇とマクロン大統領とゼレンスキー大統領の電話会談

  


 毎日、毎日、戦争のニュースで気持ちが滅入ってきて、正直、このニュースを避けたくなる気持ちがあります。ウクライナの様子は、本当に日々悲惨な光景で、同じ瞬間に、しかも地続きの国がこんなに悲惨な状況にあることが信じ難い気がしてしまうこともあるのですが、これはやはり現実なのです。

 私は昔の戦争を知っているわけではありませんが、オンタイムの戦地の状況が流されるのは、現代の戦争というものなのかと不思議な気もしています。

 今回の戦争は、どうやらロシア(というよりもプーチン大統領)の目論見の甘さが戦争を長引かせているようですが、彼の意に反して、フィンランドやスウェーデンまでをNATO(北大西洋条約機構)加盟に導き、欧米の力の拡大を引き起こし、どうにも引くに引けない状況を招いています。

 この戦争の報道を見ていると、戦争のルールとも言われる戦争犯罪とか国際人道法などという言葉が出てきて、民間人への攻撃や虐殺について、問題にしていますが、そもそも民間人を攻撃しなければよいというルール?も腑に落ちないところではあります。

 もはや敵国の民間人どころか、自分に相反する者であれば、自国民の命さえも何とも思わないような人が、今さら、何かを躊躇するようなことがあるのだろうか?と思ってしまいます。

 先日、ロシアのテレビ番組で第三次世界大戦と核兵器について報道され、現在のウクライナ紛争が第三次世界大戦にエスカレートする可能性が「現実的」な危険であるとの警告を強め始めました。 

 ロシアの外交官セルゲイ・ラブロフの「危険は深刻であり、現実であり、過小評価することはできない」と警告、この強い発言以来、ロシアのテレビは、核兵器使用の可能性をこれまで以上に強調するようになりました。

 番組では、カリーニングラードからパリ、ロンドン、ベルリンに向けて発射されるサルマット・ミサイルの飛行時間を示すインフォグラフィックを発表し、 プーチンが最近「比類なき」と賞賛したこの新世代の超長距離ミサイルは、フランスとイギリスの首都に約3分20秒、ドイツの首都に約1分45秒かかると説明しています。 

 同番組では、「サルマット・ミサイルが1発あれば、もうイギリス諸島はなくなる」と解説しています。ロシアのテレビは、西側諸国を核攻撃で脅し続け、ウクライナへの支援を続けることを必死に思いとどまらせようとしているのですが、西側諸国は、この脅しで引くはずはありません。自分から攻撃を始めておいて、なんだか変なお願いです。

 ロシアがウクライナを攻撃しなければ、西側諸国とて、援助などしません。だいたい、世界中がウクライナへ支援するといって提示している金額に、そんなにお金出せるんだ・・とちょっとびっくりするほどです。



 先日、マクロン大統領は、大統領選挙後、初めてゼレンスキー大統領との1時間にわたる電話会談を行い、軍事装備と人道支援という観点からフランスのウクライナ支援を強化することを約束しました。

 ゼレンスキー大統領は、この電話会談の後、「ウクライナはEUの一員であるように心強く感じている」とインタビューで語っています。同い年であるこの二人、ゼレンスキー大統領はマクロン大統領を「真の友」と呼び、多大なる信頼を寄せています。

 この戦争の一部は、情報合戦とも思えないでもない部分もあり、どんどん過激になって行く中、この悲惨な状況に目を背けそうになるところもありますが、この現実にはやはり目を背けてはいけないし、報道は続けられなければならないと思っています。

 先月、日本に一時帰国していた際は、フランスに比べて日本はこの戦争についての報道が少ないことに驚き、ともするとバラエティー番組ばかりを目にすることになってしまいそうで、日本滞在中は、情報はもっぱら、ネットに頼っていました。

 結局は、バラエティー番組の需要が多いということなのかもしれませんが、日本のテレビ番組の編成にも少々疑問を感じました。(ほとんどテレビをつけてはいなかったのですが、つけるとバラエティ番組ばかりでちょっとガッカリしました)

 現在のところは、欧米諸国が直接攻撃をしているわけではなく、ウクライナへのさまざまな支援をしているだけではありますが、現在の状況では、ロシア側は、もはや、この支援さえも攻撃として受け止めつつあるということです。

 プーチン大統領は、「どうせ、いずれは皆死ぬ」とか、「それでも我々は天国に行ける」とか、新興宗教の教祖のようなことを言い始めているそうです。予言めいたことを言って、それを自らが実行して、自分達が被害者のように訴える・・なんか、日本で同じことをやっていた教祖がいたな・・と思ったりもするのです。


ロシアの核戦争威嚇


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2022年4月30日土曜日

馴染みの運転手さんがコロナで人生がすっかり変わってしまったという話

  


 我が家は、たいていのところには、バスかメトロで用が足りるために、家の車も処分してしまい、自分で運転することもなくなり、運転するといえば、たま〜に旅行に出かけた時に旅先で車を借りて運転するくらいで、旅行さえも、ここのところ行っていないために車とはほぼ無縁の生活をしています。

 一時は、娘が大きくなって、運転免許をとったら、また車のことは考えようと思ってはいたものの、免許はとりかけたものの(学科試験だけは取っている)、パンデミックのために、彼女自身の学業の予定なども大幅に変更せざるを得なくなったり、技能教習がキャンセルになったりしているうちに取り損ね、しまいには、自転車などでもやたらと事故が多い彼女には運転は向いていないのではないか・・などとも心配になったり、そもそもやり出したら、なんでもやり通す彼女が、ここまでことが進まないのは、それほどやる気もないのかもしれないと思いながら、結局、彼女は運転免許を取らないまま現在に至っています。

 そんな我が家は買い物でさえも、家の駐車場に降りて行くよりも、ごくごく近所の大型スーパーマーケット(カーフール)に行く方が近いくらいで、しかも、荷物の多い時は、そのままカーフールのキャディーで家に荷物を運んで、後で、キャディーを返しに行く方が楽なので、買い物に車が必要ということもありません。

 しかし、日本に行く時などは、さすがに車が必要で、もうここ10年くらい、以前、私が働いていた会社に出入りしていた運転手のマリオさんという人にお願いしていました。もう彼とも長い付き合いになり、電話をするのは、車をお願いする時と空港行きの車の中で話をする程度ですが、10年ともなれば、お互いの家庭環境や家族、健康状態など、そこそこお互いを知っています。

 彼自身は、ハイヤーの会社を立ち上げ、結構な数の車を動かして、成功して、今では、ほぼ引退して、彼の自国であるポルトガルには、大きなプール付きの大邸宅を所有し、パリとポルトガルの半々の生活をしています。

 彼は非常に温和な性格で人当たりもよく、LOREALのVIPや日本からのVIPなどが顧客ということで、決して時間に遅れることなく、きめ細やかな心使いをしてくれる人で、何より優しく、温かい人なのです。

 一度、日本から帰ってきたら、ストライキのためにバスも電車もタクシーでさえもなく、途方に暮れて彼に電話をしたら、会社の車は全て出払ってしまっているから・・と彼の奥さんの車で空港に迎えにきてくれたこともありました。

 今回、日本に行くにあたって、彼に電話したところ、残念ながら彼は今、ポルトガルにいるということで、以前も何回か彼の代わりに来てくれた運転手さんを手配してくれました。その電話の時点でジョエルという運転手が代わりに行きます・・ということだったので、これで車の手配はOK!と思っていたら、後から念の為にジョエルの電話番号は・・とメッセージが送られてきたので、「いつも、親切にありがとう」と返信したら、「ありがとうと言ってくれて嬉しい・・ありがとう」と返信が・・なんとも、あったかいやりとりでした。

 出発当日、ジョエルが迎えに来てくれて、以前、マリオさんが心臓の手術をしたりしていたことを聞いていたので、車中、彼の健康状態を聞くつもりで、マリオは最近どうしてるの?と聞いたら、「彼はコロナで両親を相次いで亡くして、その上、どういうわけか離婚してしまって、すっかり人生が変わってしまった・・」と言うのです。

 コロナで両親とも!?と驚く私にジョエルは、僕もコロナで両親ともに亡くした・・と。私の周辺には、コロナウィルスのために亡くなった人はいなかったので、初めてそんな話を聞いてびっくり! 考えてみれば、フランスでのコロナウィルスによる死者数はこれまでに14万5000人以上。これまで私の周囲にそんな犠牲者の話を聞かなかったのは不思議なくらいです。

 挙句の果てに何があったのか?離婚なんて・・。彼はもうセミリタイア状態で、子供や孫に囲まれて家族仲良い家庭だったはずなのに・・。家族の誰かが欠けると生活のリズムが崩れたり、バランスが崩れたり、メンタルも厳しいもの・・家族の絆に亀裂が入ることもあったのかもしれません。

 それにしても、このパンデミックの2年間、しばらく連絡を取らなかった人の人生がすっかり変わってしまったと言う話を聞くのは悲しいことです。


パンデミック


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2022年4月29日金曜日

大統領選挙後のスケジュールとフランス国民が望む女性首相の擁立

  



 マクロン大統領の再選から、数日経って、新しい内閣の人事が早々に発表されるのだと思っていたら、マクロン大統領の2期目の正式な就任は5月14日ということで、じっくり地固めをするため、マクロン大統領は新体制の選択と決定に時間をかけることにした模様です。

 昨日、臨時にエリゼ宮に召集された閣僚理事会は、現政府の最後の理事会になるものと思われていましたが、政府のスポークスマン・ガブリエル・アタル氏は、「この理事会が最後ではなく、政府は、国にとって現在のすべての問題に関して必要な決定を下し続けるために活動している」と発表し、周囲を驚かせました。

 とはいえ、今回のエリゼ宮での昼食会を含んだ会合は、多くの特別感を含んだもので、閣僚が勢揃いし、エリゼの中庭が閣僚の到着に合わせて特別に開放され、庭園に隣接するテラスでは豪華なビュッフェも用意され、選挙後初の閣僚会議 ということで、みんな一致団結しており、選挙の勝利は政府の勝利でもあると、この政府の5年間の成果であった感謝と労いを感じさせるものであったようです。

 マクロン大統領は、閣僚に対して、デッキにとどまり、各々の仕事を続けなければならないと述べたそうで、現政府での閣僚会議は、任期ぎりぎりまで続くことになりそうです。

 今回の閣僚会議が最後だと思って参加していた閣僚の面々は「これが最後ではない」と言われた驚きをそれぞれに語っています。


 マクロン大統領は、今後の政府内の人事を立法運動の開始と同時進行させたいと考えており、それらを現政府の閣僚のチームで進めていく模様です。そして、その区切りのタイミングを5月8日というナチス・ドイツに対する戦勝記念日に照準を合わせて実行しようとしているとみられています。

 なかでも、大統領と最も密接に連携していく首相については、最も注目が集まっています。

 次期の首相候補について、マクロン大統領は、現在のところ、「社会問題、環境問題や生産性の問題に長けている誰かであろう」とだけ述べていますが、具体的な名前は挙げられていません。

 しかし、JDD(Le Journal du dimanche)が実施した世論調査によれば、フランス国民の74%が「女性を首相に任命してほしい」と望んでいることが明らかになっており、マクロン大統領がこの国民の声に耳を傾けるのかどうかが注目されています。

 もとより、閣僚人事に関しては、すでに現政権では、大臣だけだと男女8人ずつで同数ですが、首相と担当大臣、閣外相を含む32人全体だと女性が17人、男性が15人で総数では女性の方が多くなっており、意図的に女性を起用しようとしている感があります。

 首相となれば、またハードルが高いとも思われますが、あり得ないことでもないかもしれません。

 もっとも、今回の大統領選挙でマリン・ルペン氏が当選していたら、女性の首相どころか、女性の大統領が誕生していたわけですが、マリン・ルペン氏の場合、男性とか女性とかを超えた次元の人のような感じもしないでもありません。

 どちらにしても、マクロン大統領と強力なタッグを組んでいける人が必須となるため、それが男性であるか、女性であるかは、私個人としては、そこまで重要とも思わないのですが、この国民を背景に、さて、マクロン大統領がどんな決断をするのか? 楽しみです。


新閣僚人事 女性首相


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