2019年6月18日火曜日

フランス人の子供の進路の選択 女性も社会の一員として働くことが前提




 フランスの子供の進路の選択において、というか、教育において、日本と大きく違うことがあります。それは、女性もひとりの人間として社会に出て、働くことが前提だということです。

 これは、とても大切なことだと思います。フランスの大変、良いところです。フランスの女性は、結婚して、家庭を持っても、仕事を持ち続けるのが一般的です。

 これは、一人の人間として、家庭の中だけでなく、社会と関わり、何らかの形で社会に貢献できるということです。そのことを前提として、教育を受けられるということは、何と素晴らしいことなのだろうかと思います。

 フランスの進路の選択は、大まかには日本でいう高校2年生の学年から始まります。普通の高校の場合、クラスが、S(理系)、L(文系)、ES(経済系)に大きく分かれ、そのどれかを選択しなければなりません。クラスを選択して、分かれた時点で、かなり、授業内容も変わってくるため、ここが最初の分岐点とも言えると思います。

 日本も高校の段階で、ある程度、文系、理系と分かれるとは思いますが、フランスは、その分かれ方が、かなり、はっきりしています。その段階で、選択しきれない場合、成績が上位の子供は大抵の場合、Sを選択するようです。その後、進路を変更したい場合でも、Sからなら、L、ESに変更することは、ある程度、可能ですが、その逆の場合は難しくなってしまうため、可能性を大きく考えると、Sを選択することになります。

 フランスの学校は、小学生の時から、落第、飛び級(成績が飛び抜けて良く、本人、親が希望する場合のみですが、一年学年を飛び越して進級します。)が当たり前なので、娘は、小学校から高校まで、同じ私立の学校でしたが、いつの間にか、いなくなっている子や学年が変わっている子供もいたようです。

 選択するクラスによって、授業もそれぞれの分野の突っ込んだ内容となり、それぞれ、異なってくるため、それに伴って、その方面の良い先生との出会いが生まれます。そして、それぞれのクラスで勉強を続ける中で、かなり具体的な進路を模索するようになっていきます。

 日本では、大学に行っても、進路がはっきりしないような、何となく大学へ行くというケースも多いですが、(何となく行く大学のために奨学金を借金して、卒業後に返済に追われるという何とも理解しがたい問題が起きているようですが・・)、私は、娘が高校生になってからは、”もし、勉強が好きじゃないんだったら、何も大学に行く必要はないから、行かなくてもいい。
 
 でも、何もせずにいられるほど、うちは、裕福ではありませんから、働いてください。”と言ってきました。私は、これを冗談で言ったのではありません。無駄に大学に行く必要は全然ないと本気で思っているし、私には、そういう世間体を気にする観念はありません。

 しかし、娘は、”大学に行かないなんて、そんなわけないでしょ!”と私を一括し、理系の道を選択しました。ちょうど、高校2年から3年にかけて、理系の素晴らしい先生との出会いがあったようです。こうして、かなり早い段階で、進路をある程度、定めて、それに沿った教育を受け、きっちりと将来の仕事を見定めながら、勉強していける娘を見ていて、私は、正直、羨ましいと思っています。私もその年代に、そういう機会に恵まれていれば、どんなに違っただろうか?と。

 時代も国も違いますが、私が子供の頃は、女性が結婚しても仕事を続けているのは、特別に優秀な人か、あるいは、経済的に苦しい家庭なのだと思っていましたので、一生続ける仕事のために、勉強するという観念が、恥ずかしながら、ありませんでした。しかし、それは、違っていたのだと今、はっきりと思います。

 女性は、出産という大事業がありますから、(まあ、子供を持たないという選択もありますが、)出産の前後は、仕事を続ける上では大変なハンディキャップを背負うことになります。フランスでも、待機児童の問題が無いとはいえませんが、やはり、社会がそのような体制になっているので、日本と比べれば、会社側にも理解がありますし、日本よりは、子供がいても、ずっと仕事がしやすい環境になっていると思います。

 子育ての期間は限られていますから、確かに大変ではありますが、そこを何とか乗り切れれば、仕事は続けられたに越したことはありません。

 フランスは、ダメダメなところも沢山ある国ですが、こと、教育に関しては、私は、素晴らしいと思っています。教育にかかる費用も日本と比べたら、格段に安いです。これは、国が莫大なお金を教育のために割いているからです。一般的に大学、そして、その上のグランドエコールなどは、国立がほとんどなので、実際に小学校から上に進むほど、学費は安くなります。(経済系のエコールは、例外的に高いそうですが。)

 この教育のシステムは素晴らしいのに、どうして、ダメダメな社会になってしまうのか? 私はずっと疑問でした。これまで、私は、娘の通ってきた学校しか見てこなかったため、他の学校の様子を知らなかったのです。

 確かに、娘の行っていた学校はとても良い、厳しい学校でした。そして、他のレベルの低そうな学校の様子を見て、これはいけない!と焦って、探した学校でした。しかし、そのレベルの低い学校を見て、危機感を感じない家庭が多いことも現実です。これは、古くから、その家庭に引き継がれたある種の継承なのです。

 そうなのです。これが、やはり、フランスの格差社会なのだと気が付いたのは、後になってからでした。

 そういう意味では、この格差の問題は、日本よりも深刻な部分を含んでいるのかもしれません。