パンデミックのために、パリ市内のお店はずいぶん、入れ替わった印象があります。毎日、お店をチェックして歩いているわけではないので、ハッキリしたことは言えませんが、しばらく行かなかった場所に行くと、「あれ?ここにこんなお店ができている!」と思うことが多いため、新しいお店ができているということは、いつの間にか、消えているお店も少なくないということです。
よほど印象の強いお店、あるいは、自分が行ったことがあり、確かな記憶に残っているお店でもない限り、新しいお店になってしまえば、ここは、もとは何のお店だったかも思い出せないくらい、街の景色はあっという間に塗り替えられてしまうものです。
またそのくらい印象が薄いから消えてしまったとも言えるわけですが、この消えていく店舗の中に、衣料品・プレタポルテ(既製服)のお店も少なくありません。
昨年のうちに倒産したCamaille(カマイユ)に続き、今年に入って、先月末には、Go Sport(ゴースポーツ・スポーツウェア・スポーツ用品店のチェーン)が管財人の管理下におかれたという話を聞いたと思ったら、今度はKookaï(クーカイ)も管財人が任命され、Pimkie(ピンキー)は売却され、新しいオーナーを迎え、負債を整理するために、現在フランス国内にあるピンキー213店舗のうち、少なくとも100店舗は閉鎖される見込みと言われています。
これらの衣料品業界の低迷は、パンデミックを機に、消費者のトレンドが変化したことが理由とされていますが、どのブランドもフランス人なら一応、知っている、大きめのコマーシャルセンターなどに行けばたいてい店舗が入っている印象のお店で、ある程度の知名度もあり、中堅どころの、まあまあお手頃価格のブランドでした。
そのうえ、最近は、そのコマーシャルセンター自体も危うい感じが無きにしも非ずで、こうなってくると、もう悪循環です。
ファッション業界には流行があるので、時代の波に乗って、それなりに変化していかなければ生き残れないのは、自明の理であることは言うまでもありません。
時代の移り変わりによって、自然淘汰されていくのは、致し方ないといえば、それまでなのですが、それでも、ある程度の存在、規模までに到達していたはずのブランドが消滅してしまうことは、いささか寂しくもあります。
これらのブランドに共通することは、中堅どころで、比較的お手頃価格の商品を扱っていたといブランドうことで、このあたりの位置は、オンラインショッピングに侵略された感があります。
これに比べて、ディオールやシャネル、エルメスなどのハイブランドは、ますます勢いを増している現状には、この業界の極端な両極化を感じさせます。
つまり、これまで中堅どころに位置していた部分が抜け落ちていく危険性があるということです。考えてみれば、この中堅どころというものは、インパクトも薄くなりがちで、おそらく現在、この中堅どころのブランドとして確固とした位置を築きつつあるユニクロなどは、次々とその特化したクォリティを活かした新製品を発表したり、これまで欠けていると思われていたファッション性も少しは追及するようになり、また、店舗の場所の選び方なども非常に練りこまれている感じがします。
とはいえ、ここまでフランスに浸透していたブランドが消えるということは、寂しさもあるだけでなく、それなりの店舗数も抱えていたことから、また大勢の失業者が生まれます。
時代がどんどん変化していくうえに、パンデミックやインフレなどの要因も加わり、その状況も含めて、それを凌駕する勢いで企業も変化を続けなければ生き残れない・・そんな時代の厳しさをこれらの衣料品ブランドの相次ぐ経営危機から感じるのです。
Kookaï(クーカイ)、Pimkie(ピンキー)
<関連記事>
「カマイユ(Camaïeu)倒産に見るカマイユとユニクロ パリの微妙な比較」
「最近フランスに繁殖するハードディスカウントショップ アクション Action」
「FAUCHON(フォション・パリ)破産申請 コロナの経済打撃は、パリの老舗にも・・」