フランス大統領選挙・最終投票を目前に控えて、最終候補に残った2名、エマニュエル・マクロンとマリン・ルペンが直接対決する討論会が行われました。
これは、フランスでは以前から大統領選挙の前には必ず行われている伝統的なもので、5年前にマクロン氏が当選した際の選挙前にも、同じ2人がこの討論会に参加。5年の歳月を経て、奇しくも同じ2人が再び対決することになりました。
前回の大統領選挙の際には、パンデミックも戦争もなく、現在の世界状況と比べてみれば、格段に平和だった時で、正直、私はそれほど注目していませんでしたが、今回、同じ2人が再び対決するにあたって、5年前の討論会の映像が流されるのを見るにつけ、マクロン大統領は若かったんだなぁ〜と、逆に言えば、歳とったなぁ〜と思うのです。この5年間の彼の苦労がスベスベだった顔に皺を刻み、顔つきも厳しくなった気がします。
今回の討論会は、前回に比べると、途中、数回、緊迫し、語気を荒げる場面はあったものの、比較的穏やかに進んだような印象を受けました。実際に討論会の中で本人同士がそんなことを呟きあっている場面もありました。
討論の内容は、現在のインフレに対応する購買力問題について、ウクライナ戦争を中心とする国際外交について、財政問題について、環境問題について、定年の年齢設定・年金問題について、安全保障について、国際競争力について、移民問題について、教育問題について、環境問題についてなど多岐にわたり、とても2時間50分の討論では語りきれない内容で、司会者が途中で話題を遮り、進行していきましたが、全体的には、マリン・ルペン氏は、国民が喜びそうな減税や定年の年齢の前倒しなどの抱負を語ったものの、一体、そのお金はどこから出てくるのか?と素人の私でさえ感じてしまうものでした。
具体的な数字の提示も曖昧で不明瞭なものが多く、たびたびマクロンが厳しく訂正する場面が見受けられ、逆にそれが、マクロンの現職の大統領としての説得力を際立たせ、これまでの功績をアピールさせるきっかけとなる感じでした。
この討論会は、生放送で放映され、この中継は、両者が会場に到着する前から、カウントダウンされ、まるで、この放送で大統領が決まるかのように盛り上げるように演出されていましたが、実際に相当の視聴率をとっているものと思われます。
この討論会の始まる直前の世論調査によると、すでにどちらに投票するかを決めているという人が87%、まだ検討中という人が13%と発表されていましたが、この放送直後の視聴者の支持率は、エマニュエル・マクロン59%、マリン・ルペン39%と発表されました。
フランスの厳しいところは、この放送直後から、すぐにこの討論会を振り返り、一言一句を検証しなおし、この討論会に臨んだ両者の態度、視線の送り方から、身振り手振りについてまで、厳しく評価し合うジャーナリストが再びこの討論会について、討論しなおすところで、そんなところは、議論好きのフランス人の様子がまざまざと見えるところ。この討論会についての討論会でも、誰もがよく喋ること喋ること・・。
最初は、今回は、相手を尊重しながら話を進め始めたな・・と思われたエマニュエル・マクロンも、途中から、話が白熱していくに従って、彼が一定の層に嫌われる「偉そうな感じ(傲慢な感じともとれないではない)」が現れ始め、「おまえ・・全然、わかってないな・・」とでも言いたげな感じでかなり強引な説明をし始める場面には、このマクロンを嫌う層には、ますます嫌われるように映ったのではないか?とも思われます。
フランス大統領選挙は、数日後。外国人である私には選挙権はありませんが、それでも、政権によっては、大きく状況は変わっていくので、この結果を見過ごすことはできません。
ましてや、ウクライナでの戦争中、フランスだけでなく、ヨーロッパ全体にも、国際的にも影響していくであろう大統領選挙です。
フランスは大統領選挙も国民投票で行われることもあると思いますが、この国民の政治に対する関心の強さ・・日本にも少しはあったらな・・と思うのです。
マクロン VS ルペン討論会
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