2022年4月19日火曜日

ウクライナに招待されているマクロン大統領 ジェノサイドという言葉

  


 フランス大統領選挙が間近に迫ってきて、一時はウクライナ戦争一色になっていたフランスの報道もさすがに大統領選挙に関わる報道も同時に報道されるようになってきました。

 政治の話題が大好きなフランス人にとって、また国民投票で採択される大統領選挙は、本来ならば、もっと全面的に報道されているはずの話題です。

 自らがロシアに出向き、プーチン大統領との直接会談に及んだにも関わらず、ウクライナ戦争が勃発し、その後もほぼ毎日のように、ロシアとウクライナ双方の大統領との電話会談を続ける中で、選挙の立候補の公示はギリギリまで行わず、書面にて立候補を表明したマクロン大統領は、このウクライナ戦争への外交対応が評価されたこともあり、当初は圧倒的に優勢な状況だと見られてきました。

 ところが4月に入ってからは、対抗馬のマリン・ルペン氏の追い上げを受け、マクロン氏も、いよいよ本格的に最後の追い込みをかけ、現在のところ、依然としてマクロン大統領が優勢だと見られています。

 2月末から3月にかけては、大統領のアジャンダ(議事日程)L'agenda du Président de la Républiqueにも、連日のように、ロシアやウクライナをはじめとする世界各国の首脳との電話会談の内容が記されてきましたが、4月に入ってからは、国内の閣僚会議の内容がポツポツと記されているのみに留まっています。

 実際に彼が何もしていないわけはないのですが、大統領選挙を目前にして、また、戦況も沈静化せずに、ロシアとウクライナの仲介も進展しないことから、記載を控えているものと思われます。

 先日、ウクライナでの悲惨な映像が公開されたことから、米国バイデン大統領がロシアのウクライナ侵略への残忍性を訴え、「ジェノサイド」という言葉を使ってロシアを非難したことについて、マクロン大統領は、「国の指導者は、言葉に注意を払うべきだ」という発言をしたことが話題になりました。

 このマクロン大統領の発言は、少なからず、電話会談を続けてきたウクライナのゼレンスキー大統領を失望させたようで、同大統領は、マクロン大統領に「実際に目の当たりにすれば、これは戦争ではなく、ジェノサイド以外のなにものでもないことを納得してもらえるだろう」と、機会があれば、ウクライナを訪問してほしいとお願いしたと語っています。

 しかし、現在のマクロン大統領は、大統領選挙を目前にしたタイミング。日程的にも無理なだけでなく、彼自身は、ジェノサイドという言葉は、国の指導者としては、慎重に使わなければない言葉で、この言葉を使って非難することが、戦争終結のためにならないと考えています。

 マクロン大統領は、このロシアが一方的に残忍な戦争を仕掛けたことや、ロシア軍が虐殺行為、戦争犯罪を行っていることは狂気の沙汰であり、信じがたいほど残忍な行為だという事実自体は認めているものの、現時点で欧州の一国の国家元首として、このジェノサイドという言葉を使って非難することは、プーチン大統領を追い詰めて、さらに戦争を悪化させると考えているのです。

 これは、プーチン大統領がウクライナに対して戦争を始める理由にも自分たちが被害者として使っていたワードでもあり、かなりプーチン氏の中でもキーワードになっている言葉でもあるからです。

 現在はどの程度の頻度で話しているのかは、わかりませんが、一時は毎日のように、4時間、5時間とプーチン大統領と会談し続けてきたマクロン大統領にとって、ジェノサイドという言葉は、プーチン氏を過度に刺激させないためのNGワードなのだと思われます。

 実際にあのプーチン氏を怒らせず、言いたいことを伝えようと電話会談を続けてきたマクロン大統領がとる当然の姿勢のようにも感じています。

 どちらにしても、もしも、マクロン大統領が再選されなければ、ウクライナ訪問もあり得ないことであり、もし、訪問したとしても、彼の発言の重さはまったく違うものになります。

 もし、彼が再選されて、ウクライナを訪問して、実際の戦況を目の当たりにしたとしても、ジェノサイドという言葉を使ってロシアを非難することは恐らく、ないであろうし、だからこそ、現段階で、彼がウクライナを訪問することもないのではないか?と私は思っています。


ジェノサイド マクロン大統領ウクライナ訪問


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