2022年11月10日木曜日

骨折で入院した患者が餓死させられた 遺族が病院を告訴

   


 ディジョン大学病院で骨折で入院した母親が絶食状態で放置されたために死亡したと、遺族が病院を告訴するという事件が起こっています。

 この事件は、8月23日、77歳の母親が骨折し、治療、手術のために入院し、翌日、夜の野菜スープの食事を与えられた後は、手術のために絶食が必要とされていたため、数日間にわたり、手術が延期されたために、その間、食事が与えられず、4日後には、脱水症状を起こして集中治療室に入り、その3日後には死亡してしまったという悲劇です。

 この遺族の訴えに対して病院側は、「手術が延期になることが決定した時点で、毎回、彼女には食事を与えていたし、彼女のファイルには、その旨が記載されている」と発表しています。

 しかし、遺族側は、「昼時に数回、面会に行ったが、彼女が食事をした気配はなかったといい、集中治療室に移動する事態に陥った際に医師からは、「完全な脱水状態にある」と説明があり、きちんと食事をしていたら、そんな事態はあり得ない」と病院側の説明には、全く納得していません。

 そのうえ、病院側が医療機密の尊重と調査の適切な実施を理由に、患者の死の正確な状況を公にすることを拒否しているため、ますます騒動が大きくなり、ついには、ディジョン検察庁は、この告訴を受けて自発的過失致死罪で予備調査を開始したことを確認し、大学病院は検察庁から解剖を命じられました。

 現実的には、骨折や3日間の断食で死亡するとは考え難いため、問題とされるのは、彼女が集中治療室に入る前の4日間に、少なくとも水分補給をしていたかどうかということにあります。

 遺族にとっては、母親と同居していた障害を持つ妹の安全の方が気にかかっていたと語っており、むしろ、母親は病院に入院しているのだから安心していたといい、それはそのとおりで、骨折で入院した人間がまさか死ぬとは思っていなかっただけに、その衝撃も大きかったと思います。

 病院の人手不足はいつも叫ばれていることで、緊急性の低い手術が延期されてしまうことは、十分にあり得ることだとは、思いますが、度々、延期になる手術のための食事管理等は、二次災害のようなもので、考えてみれば、そのようなミスもあり得ないこともないかもしれません。

 しかし、少なくとも患者は、集中治療室に入る前までは、話ができない状態であったわけでもなく、絶食状態、あるいは水分をとれない状態に何かしらのアクションはとれたのではないかとも思えるところが疑問ではあります。

 どちらにしても、医者が遺族に対して十分な説明を行っていないことも告訴の原因の一つとなっているこの騒動。少なくとも母親が死亡した場合に、その原因は何であったのか?知りたいのは、当然のことだと思います。

 しかし、病院の記録というものは、どの程度、正確なものであるかは、私も疑問に思う経験がないでもありません。

 それは、夫が亡くなった病院から、その1年後くらいに、「その後、体調はいかがでしょうか?」という手紙がご丁寧に届いたことがあり、「どうなってるの?この病院?」と少なからず不快な思いをしたことがありますが、もうその時点では、全て終わっている状態だったので、そのまま手紙は捨ててしまいました。

 つまり、そのような手紙が届くということは、その病院(パリ市内の公立病院)での夫に関するファイルは不完全であったということなのです。

 病院については、嫌な話ばかり聞くような気がしますが、滞りなく治療が済んだケースは、取り上げられることはないので、印象は悪くなる一方なのかもしれません。

 それにしても、遺族側の訴えが事実だとしたら、骨折をしたばかりに空腹と喉の渇きに苦しんで死んでしまった・・しかも病院で・・というのは、やはりあり得ない話です。


ディジョン大学病院 骨折で入院、餓死

 

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2022年11月9日水曜日

インターネット不通の一日の恐怖 想像以上のネット依存

  


 一昨日、午前中の一仕事を終えて、一息ついたところで、つけっぱなしにしていたYouTubeの画面が急に止まって、ぐるぐるし始めて、「えっ??」と思ったものの、そのうち、また繋がるだろうと思って、そのまま放置しておきました。

 ところが、一向に回復する兆しはなくて、「えっ??」が、「え〜〜〜??」という感じになってきて、「まさか??」と思って、コンセントを一旦、外して、繋ぎ直すという原始的な手段を試みましたが、回復はせず・・(これで回復する場合もある)。

  これが、家のボックスが故障したのか、それとも我が家が利用しているネットサプライチェーン側のシステムダウンなのか?もわからず、とりあえず、携帯でSFR(ネット会社)と検索すると、同様のトラブルに遭っている人がいる模様で、おそらく、これはうちの問題ではなく、供給側の問題なのだろうと判断し、イライラしながら家で待っていても仕方ないので、パリの街中にお買い物に行くことにしました。

 ネット環境というものは、現在の私の生活には欠かせないものであるにもかかわらず、どうにも苦手意識が消えないというか、実際に苦手だし、わけがわからないというか、わかっていないというのが正直なところで、これまでは、ほぼ全て娘に頼っていました。 

 実際に現在の家のインターネット契約は、彼女が全てやってくれて、彼女名義になっているのです。しかし、現在、彼女は日本に住んでいて、彼女に頼るわけにもいかなくなったのです。

 以前に、携帯のネットが繋がらなくなって、「実は契約切れになっていた・・」ということもあったので、もしかして、「今回もネット回線の契約切れ?」とも思い、娘に「家のネットが繋がらなくなったけど、もしかして、契約切れ?」というメッセージを送ると、しばらくして、彼女は問い合わせをしてくれたようで、SFRからの「今、復行作業中、できるだけ早く復行させます」という返事を送ってくれて、「そのうち治るみたい」と言われて、一安心。

 買い物が終わって、家に戻る頃には、治っているだろうと思って、パリの紅葉を楽しみながら呑気に買い物をして、家に戻ると、まだ、なおっておらず、結局、その日は一晩、ネットなしの夜を過ごすことになりました。

 まあ、携帯は繋がるので、全く閉ざされた状況ではないとはいえ、普段はパソコンとiPadと共に家の中を移動しているほど、家のネット環境に依存している私の生活、まるで、ネットがないのは、停電したのと同じような気分でした。

 今や私にとって、家でパソコンが使えないのは恐怖に近く、現在、使っているパソコンが壊れた時のために、予備のパソコンを準備しているほどなのですが、しかし、それもネットが繋がらなければどうにもなりません。

 なにか、故障があったり、わからないことがあれば、何でもすぐにネットで検索して解決法を見つけるので、ネットが通じなければ心許ないといったらありません。

 いつのまにか、こんなにネットに頼る生活になっていることを今さらのように思い知らされて、家の中が暗くなったような気さえしてしまうのです。

 今では普段、あまり見ることがなくなったDVDを見たりして、その日、本来はやるはずのことは諦めて、早々に寝ることにしたのですが、なんだか眠れず、結局、飲んだくれることになりました。

 翌朝、起きると、幸いなことにネットは復行していましたが、これが何日も続いたら、どうなることだろうか?とゾッとしました。

 しかし、もともとは、ネットなどない世界に生まれ育ってきたにもかかわらず、今では当然のようにあるネット環境に浸りきって生活していることを、あらためて実感し、ちょっと一日ネットが繋がらないくらいでパニッてしまうのも、「それならそれで、落ち着いて、今日は本でも読もう・・」とはならなかったことに、以前は、あんなに好きだった本を最近、ちっとも読まなくなったな・・と思いながら、これからは、心してネットから少し離れる時間を心して作った方がいいかな?などとも思ったのです。


インターネット不通 ネット依存


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2022年11月7日月曜日

パリのラーメン屋さんで感じる違和感 

  


 考えてみれば、私は日本でほとんどラーメン屋さんというものに行ったことがありません。本当にこんなに長く生きてきて、ラーメンは決して嫌いではないのに、なぜだか日本でラーメン屋さんに行ったという記憶は、片手で足りるくらいしかありません。

 麺類は大好きなのですが、昔からどちらかといえば、お蕎麦の方が好きで、日本で仕事をしていた頃は、毎日のように、お昼は外食をしていたにもかかわらず、なぜか職場の近くにはラーメン屋さんはなく、その代わりにオヤジのように週2〜3回はお蕎麦屋さんに通っていました。

 今でも、日本に一時帰国した際に限られた食事の回数を考えると、ラーメン屋さんに行く余裕はなく、結局、たまにラーメン屋さんに行くとなるとパリでラーメン屋さんということになってしまう不思議なことになってしまいます。

 それでさえ、せいぜい年に1〜2回です。パリで日本食を食べる時に、日本円に換算するのは、ご法度なのですが(ラーメン一杯2,000円とかになってしまうので、バカバカしくなるので・・)、やはり、そんなに日本でラーメン屋さんに行ったことがないとはいえ、たかがラーメンにこの値段?と思ってしまいがちで、結局、私が一番食べる機会が多いラーメンは、パリでもわりと手軽に手に入るインスタントラーメンであることが多いのです。

 私がパリに来たばかりの頃は、数えるほどしかなかったラーメン屋さんも、今ではわりとあちこちに見かけるようになり、特に日本食屋さんが集結しているようなオペラ座界隈の地域になると、けっこうな数に増えたうえに、どこのラーメン屋さんも行列ができるほどの人気で、お寿司ほどではないにせよ、パリでRamen(ラーメン)は、ポピュラーな存在になりました。

 日本でのラーメンの値段を考えなければ、Ramenは、外食にしては、そんなに高い方でもなく、若者にも人気なのですが、彼らのラーメンを食べる姿に、微笑ましさと、どこか違和感も感じます。

 最近では、かなりお箸を使える人が増えたとはいえ、やはり麺類をお箸で掴むというのは、難易度が高いこともあるのか、どこか、たどたどしいお箸使いや食べ終わった後のお箸を交差させたまま、どんぶりのスープに浸かっていたりする様子には、ちょっとげんなりすることもあります。

 しかし、一番、もったいないなぁ〜と思うことは、彼らは、「麺類をすする」ということをせずに食べることで、どこかぎこちなさを感じるとともに、「それじゃ!ラーメンは十分に味わえないだろ〜が・・」と思うのです。

 彼らにとって、音を立ててスープをすすったりするのは、マナー違反という生活習慣?食習慣?に加えて、彼らには「麺をすする」ということができない人も少なくない気もします。

 麺類をすすりながら食べるという技?を私は自分がいつ身につけたのか覚えがないほど、日本人にとっては、ラーメンだけでなく、お蕎麦、うどん、お素麺などと麺類の多い国に生まれた面食い人種にとっては、当たり前のようなことが、考えてみたら、「食べ物を吸い込むがごとく食べる」ということは、逆に独特な技なのかもしれません。

 逆にいえば、洋食のテーブルマナーなどでは、食器はガチャガチャ音をたてないとか、スープはズーズー音をたてて飲まないなどと言われていた気がするので、彼らがラーメンを食べる際にラーメンをすすらないのも、それまでの食文化の違いと考えれば当然といえば当然でもあります。

 それに加えて、フランス人には猫舌の人も多いので、以前はラーメン屋さんでさえも、フランス人仕様に湯気のたっていないラーメンを出すお店があったりしましたが(今はどうなっているのかわかりませんが)、最近は、パリでも、さすがに熱々のラーメンしかお目にかからなくなりました。

 しかし、せっかくのラーメン、すすらないでは味も半減してしまう気がして私としては気になって仕方なく、ラーメン屋さんに行くたびに、確認するように、周囲の人を遠くから、見守ってしまうのです。

 想像してみてください、すすらないで食べるラーメンを・・。


すする ラーメン パリのラーメン屋さん


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2022年11月6日日曜日

異常なスピードで拡大する乳幼児を襲う細気管支炎 小児用集中治療室が飽和状態

  


 10月下旬から救急外来を受診する乳幼児の数が急増し、小児用集中治療室が飽和状態に陥っています。

 10月24日から30日の1週間に、救急外来を受診した2歳未満の子どもは6,167人で、2021年の同時期の2倍となりました。前週との比較では、47%増と急増し、救急外来受診後の入院が1週間で45%増加しています。

 この救急外来の急増の原因は、気管支炎・特に細気管支炎と呼ばれる乳児と生後24ヶ月未満の幼児の下気道を侵すウィルス感染症の流行によるものです。症状としては、鼻水、発熱、咳、呼気性喘鳴(気道内部の一部が狭くなっているか、閉塞しているために起こる)、呼吸困難などが挙げられます。

 この細気管支炎の流行は実は毎年、起こっているもので、冬になると50万人近くの子供が感染し、約1万人が入院しています。多くの場合は、深刻な事態になることはありませんが、特に1歳未満の乳幼児の場合は、2~3%の割合で入院を必要とする合併症を起こしたり、蘇生を必要とすることもあるようです。

 一般的には細気管支炎の流行は、11月中旬に始まり、12月にピークを迎え、1月に終了するところ、今年は9月に最初の感染者が発見され、その後も感染者数の増加が止まらず、この流行がこれまでのものより5〜6週間早く始まったことや、増加のカーブが急速なことから、フランス公衆衛生局(Santé publique France)は、すべての地域が流行基準を超えたとして最大限の警戒態勢を敷くことを発表しています。

 しかし、現在のところ、フランス全土が同じ状態ではなく、東部は影響が少ないようですが、オー・ド・フランスとイル・ド・フランス地方は病床不足に悩まされており、すでに、イル・ド・フランス地方の病院に入院していた31人の赤ちゃんが、他の地方に移送されています。

 集中治療室の病床不足で患者を移送とは・・コロナウィルスによるパンデミックの初期の頃を彷彿とさせますが、それが2歳未満の乳幼児というのは、ますます痛々しい限りです。

 公衆衛生局は、「成人にとっては、軽症で済む感染が、乳幼児には危険であることがあるため、手洗い、哺乳瓶やダミーの共有、布団の定期的な掃除、赤ちゃんの部屋の換気などの感染のリスクを抑えるために必要な措置、警戒を怠らないことが必要である」と呼びかけています。

 この病気は40年ほど前から医療関係者に知られており、対処の仕方もわかっているため、コロナウィルスが発生した時のような脅威ではないとされているものの、問題は細気管支炎そのものではなく、問題は、病院が人手不足、病床不足にあり、それに対処していかなければいけないことであるとも言われています。

 しかしながら、この異常気象で夏が長く続いたにもかかわらず、早くにこの病気の流行が始まり、例年以上の増加を続けている理由は解明されていません。

 2歳未満の乳幼児が発熱、咳、呼吸困難などを起こせば、周囲は大人以上に過敏に反応することは、不可避です。我が家も一度、別の病気でしたが、すぐに救急へ連れて行きなさいと言われた時には、大慌てで真っ青になったことがありました。娘が酸素マスクをされた時には、夫は大きな図体をして、気を失いそうになったほどです。

 これまで、気管支炎に対するワクチンは存在していませんでしたが、サノフィ社とアストラゼネカ社が開発した乳幼児における呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症の予防を目的とした予防薬、ニルセビマブがEU(欧州連合)で承認されたばかりで、2023年から発売予定になっています。

 ニルセビマブは、厳密にはワクチンではありませんが、同じ予防の意図で働き、一回の注射で気管支炎の発生を予防することを目的としています。合成抗体治療薬であり、病気と戦うための武器を直接身体に与えることができます。

 1回の投与ですべての赤ちゃんの気管支炎重症化を予防できる初めての薬とされています。この新しい治療法は大きな進歩で、すでに知られている治療法よりも長持ちするのが利点です。3カ月目以降に効果が薄れるとはいえ、6カ月間は子どもを守れるように製造されています。

 しかし、新薬をかよわい乳幼児に使うというのも、これまた親からしたら、躊躇してしまうところです。

 いずれにせよ、こんな異常な速度や威力で病気が拡大するとは、こわい話、しかも、また病床不足・・私はこんな病気など知らないままに子供は大きくなりましたが、子育て中の方、十分にお気をつけください。


細気管支炎 気管支炎 ニルセビマブ


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2022年11月5日土曜日

牡蠣の生産者が被る夏から秋にかけての猛暑被害 地中海温暖化

 


 フランスでは、年間13万トンの牡蠣が生産され、そのほぼ半分がクリスマスから元旦にかけて消費されます。フランスでは、日本で多く売られているようなむき身の牡蠣ではなく、殻付きのまま売られているのが一般的なので、「牡蠣の殻をあけること」は、フランスに来てから自分でできるようになったことの一つです。

 やはり、クリスマス前になると、魚屋さんの店先に牡蠣がのカゴが並び出すので、なんとなく、食指が動くことになります。しかし、普通は、自分で牡蠣殻をあけなければならないのが面倒だったり、大量に出るゴミが煩わしいので、私は、せいぜい牡蠣を買うのは一年に1度か2度です。

 フランス人はノエルの食事には、大変な力の入れようで、クリスマスイブとクリスマスの当日、そして大晦日の年越しと元旦には、普段はあまり料理をしない人も、それぞれにメニューを工夫しながら、華やかにテーブルを飾るのですが、その数日のごちそうのうちにはやはり、牡蠣が入ることも多いのです。しかし、若い子には、そんなに人気のある食品ではなく、娘の友人などでは、嫌いな人も多いと言います。

 そういう娘は小さい時から牡蠣(生牡蠣)は大好きで、フランス料理が苦手だった彼女はフレンチのレストランでは牡蠣だけを平らげて、周囲を驚かすこともありました。

 話は逸れましたが・・とはいえ、一年のうちの半分以上がこの時期に売れるという牡蠣の生産者は今からノエルのこの時期に向けて、牡蠣の生産を調整しています。

 ところが、夏から秋にかけての度重なる猛暑により、牡蠣の生産者は大変な被害を被っています。

 エロー県(オクシタニー地域圏)の貝養殖業者は、この夏の度重なる熱波の異常な猛暑にもかかわらず、最悪の事態を避けることができたと言われていました。しかし、秋になって、一部の流域で著しい量の牡蠣の死滅が発見される被害が明らかになり始めています。

 この大量の牡蠣死亡事故は、通常ならば、秋になり、盆地が冷え込むことで避けられるのですが、今年は、長すぎたこの猛暑の秋と関係していると言われています。また、夏の暑さでストレスを受けた牡蠣は餌を食べなくなり、成長が止まってしまったこともあります。

 夏バテで食欲がなくなるのは牡蠣も同じなようです。

 この現象は、牡蠣の生産量に影響を与え、年末年始の供給が少なくなる可能性があり、結果として、価格が上昇すると見られています。

 過去20年にわたる海域汚染削減活動のおかげで、この海域内の酸素濃度が大幅に改善され、アマモ場も復活し始めていました。

 しかし、このような夏が続き、地球温暖化が進めば、これらの努力も徒労に終わる可能性があり、水温は上昇を続け、過剰な二酸化炭素を自然に吸収する海洋の変化により、全体の生態系が大きく狂う可能性があります。

 水温が1.5℃上昇したことで、この環境に適応できるような新しい微生物が出現する可能性があり、海の中では新しい世界が生まれ始めているといいます。

 変化は海の中だけではないのは、明らかで異常気象により、地上では水が蒸発し、降雨パターンが変化し、ある地域では降雨量の増加とそれに伴う洪水が、また他の多くの地域では干ばつがより激しく、より頻繁に発生し、多くの農作物も成長サイクルを変化させる、あるいは育たなくなるため、新しい気候条件に耐えられるための、品種を選んで適応させなければなりません。

 現在、環境活動家が美術館で絵画に食べ物をぶちまけたりする理解できない行動が続いていますが、もっと具体的に現実問題に取り組まなければならないのは必然なのです。


牡蠣生産業者 地球温暖化


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2022年11月4日金曜日

未成年者へのアルコール販売に対しての訴訟 Lidl(リドル)5,000ユーロ罰金

 


 昨年5月、スーパーマーケットチェーンLidl(リドル)で購入したアルコールを摂取し、その後、交通事故で死亡した16歳の少年の母親が「未成年者にアルコールを販売した」として、このスーマーマーケットに対して訴訟を起こし、5,000ユーロの罰金を求める裁判に発展しています。

 フランスでは18歳以下の未成年者にアルコールを販売することは、法律で禁止されていますが、現実にそれがどの程度、遵守されているかは、不透明というか、曖昧にされている印象があります。

 スーパーマーケットに行けば、どこでも普通にアルコールは販売されていますが、このような年齢チェックが行われているところを私は目にしたことがありません。しかも、最近、かなり普及しているセルフレジなどにも、アルコールを購入する際にも一応ではあっても年齢認証のチェックなどの画面はでてきません。

 事件は、2021年5月8日午後6時15分、少年が飲酒後にスクーターに乗っていたところ、鉄塔に衝突し、一緒に走っていた友人(共に飲酒していた)のスクーターにはねられ死亡したというものです。少年からは、血液1リットル当たり0.56gのアルコールが検出されており、加害者となった少年は、すでに児童裁判所で過失致死罪で有罪の判決を受けています。

 今回の裁判の焦点は、このスーパーマーケットでウォッカ2本を購入した際のレシートにありました。被害者の母親は、2本のボトルが未成年に販売されたとし、Lidl社に対して訴訟を起こしているのです。

 この母親は、「あの日、子供に酒が売られていなければ、棺に花を飾る必要もなかった可能性が高い」と訴えていますが、ついには、「息子の事故は、本人の責任ではなく、アルコールに責任がある」とまでしているところが、不可解ではあります。

 遺族側の弁護士は、アルコールの販売と消費は、死と直接関係があるとし、この裁判が未成年者へのアルコール販売に対する意識を高める役割を果たすことを期待していると語っています。

 このレシートの日時は、当日の午後1時頃になっており、その日勤務していた社員は10代の少年たちを記憶していないと語っていますが、加害者の少年は、この店でウォッカを買ったと証言しています。

 結局、現時点では、監視カメラからは、この少年たちの確認ができず、証明ができていませんが、判決は1ヶ月後に下されることになっています。

 この事件をきっかけに未成年者へのアルコール販売禁止の原則が想起されるのは、良いこととは思いますが、もしも、この店舗が少年にアルコールを販売してしまっていたとしても、そもそも16歳の少年が平日の午後1時にウォッカを買いに行くという生活自体がどうかしていると考えるのが普通です。

 フランスは、アルコール飲料のテレビコマーシャルなどを禁止していたり、かなりアルコールに対しては、厳しい対応をとっているようなところもあり、逆にたまに日本に行くと、アルコールのコマーシャルがいかに多いかに驚かされる気がしますが、実際のところの規制はゆるゆるであることも事実なのです。


未成年者へのアルコール販売


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2022年11月3日木曜日

2023年に提案される移民法の改正案の概要 積極的な受け入れと追い出しの両刀使い

  


 11月に入り、内務大臣と労働大臣は、2023年の初めに検討される「移民法の改正案」の一部に関してを公表しました。移民法といえば、外国人としてフランスに滞在している私にも関係ない話ではないわけで、見過ごせない内容でもあります。

 まあ、ビザもちゃんとあるし、違法滞在をしているわけではないので、問題はないのですが、つい最近、パリで起こった12歳の少女の殺人事件の容疑者が滞在許可証の期限切れのために退去命令が出ていた外国人だったために、一部の政党をはじめとして、移民に対してのプレッシャーが高まっていることも、この移民法改正案の背景にあります。

 しかし、この法案は移民をひたすら追い出すというわけではなく、人出不足に喘ぐ業界を救うために、外国人労働者の採用を促進し、同時に滞在許可証を積極的に発行していく姿勢も見せています。

 そういえば、パリにいる私の知人の一人はもともと、かなり昔に遊学でパリに来ていて、学生ビザで滞在していたものの、当時の政府の方針で外国人に対しての労働許可証が大盤振る舞いの時期があったとかで、「まあ、一応、取っておこうか?」という程度のノリでビザを取ったとか・・結局、それから彼女はパリで仕事をみつけて、今では、もうほとんど永住モードです。

 話は逸れましたが、現在は、特に建設業界などで、どちらかといえば、現状、労働許可証を持たずに働いている人に対して、申告制で正規の労働許可証を発行するということが先ず行われるべき問題とされています。

 実際には、ノアールと呼ばれているビザなし労働者で労働力を賄うこと(労働許可証なしに働くこと)は、雇用側にとっては、違法ではあるものの、税金、雇用保険料等その他の出費なしに雇えるわけで、建設業界などでは少なくないのかもしれません。

 また、比較的移民が潜り込みやすいレストランなどでは、警察が突然入ってきて、抜き打ちで滞在許可証(労働許可証)のチェックを行なっているという話も聞いたことがあります。

 今回の改正案では、不法就労者が雇用主を通さずに自ら正規化申請を行えるようにすることも検討されています。

 また、ビザの有効期限切れ等の退去義務命令(OQTF)(obligation de quitter le territoire français) に関しては、内務大臣は、各地域に対し、政府はOQTFの対象となる移民を「指名手配者ファイル」(FPR)に登録し(現在登録者58万人)、OQTFの対象となるすべての人を監視するよう要請する(ただし、監視対象は危険人物のみ)と発表しています。しかし現状ではOQTFの50%近くが控訴され、退去命令は停止され、実際には、実行されているのは、そのうち12%程度のみというのが現状とのことです。

 これに関しては、言わせてもらえば、滞在許可証の更新は、異常に時間がかかり、十分に余裕を持って申請したとしても、期限が切れても手続きが済まないことも少なくなく、私自身も前回のビザの更新では、期限が切れて、「これでは不法滞在者だ!」と青ざめたこともあったし、私の友人もまた、同様の目にあって、これが日本に一時帰国予定の目前まで長引いて、ひきつっていたので、一概に移民側の問題ばかりとは限らず、申し立てがあることは、このような理由も十分に考えられます。

 しかしながら、内務大臣によれば、「今日、パリの犯罪を見ると、少なくともその半分は、不法滞在の状況にある、あるいは許可待ちの、いずれにしても非常に不安定な状況にある外国人で、こうした現実を見過ごすことはできない」と断言したのです。

 パリでの犯罪行為で逮捕された人の48%、マルセイユで55%、リヨンで39%が外国人という発表(こんな統計は存在しないと反発の声もあり)は、衝撃的です。

 とはいえ、現状、人口に占める外国人の割合は7%で思ったよりも少ない印象ですが、これは、外国人でもフランス国籍を取得してしまっている場合は外国人としてカウントされていないのかもしれません。

 また、犯罪者における外国人の割合は19%だそうで、危険人物排除の方向、それでもなお、労働力確保のためには一部、移民を促進するというプラスマイナスの移民法改正案。

 労働力確保のために移民受け入れの是非は日本でも問題になっていますが、フランスが直面しているような、移民問題に関して、このプラスマイナスがつきまとうことは、おそらくどこの国でも同じかもしれません。


2023年移民法改正案


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