昨年5月、スーパーマーケットチェーンLidl(リドル)で購入したアルコールを摂取し、その後、交通事故で死亡した16歳の少年の母親が「未成年者にアルコールを販売した」として、このスーマーマーケットに対して訴訟を起こし、5,000ユーロの罰金を求める裁判に発展しています。
フランスでは18歳以下の未成年者にアルコールを販売することは、法律で禁止されていますが、現実にそれがどの程度、遵守されているかは、不透明というか、曖昧にされている印象があります。
スーパーマーケットに行けば、どこでも普通にアルコールは販売されていますが、このような年齢チェックが行われているところを私は目にしたことがありません。しかも、最近、かなり普及しているセルフレジなどにも、アルコールを購入する際にも一応ではあっても年齢認証のチェックなどの画面はでてきません。
事件は、2021年5月8日午後6時15分、少年が飲酒後にスクーターに乗っていたところ、鉄塔に衝突し、一緒に走っていた友人(共に飲酒していた)のスクーターにはねられ死亡したというものです。少年からは、血液1リットル当たり0.56gのアルコールが検出されており、加害者となった少年は、すでに児童裁判所で過失致死罪で有罪の判決を受けています。
今回の裁判の焦点は、このスーパーマーケットでウォッカ2本を購入した際のレシートにありました。被害者の母親は、2本のボトルが未成年に販売されたとし、Lidl社に対して訴訟を起こしているのです。
この母親は、「あの日、子供に酒が売られていなければ、棺に花を飾る必要もなかった可能性が高い」と訴えていますが、ついには、「息子の事故は、本人の責任ではなく、アルコールに責任がある」とまでしているところが、不可解ではあります。
遺族側の弁護士は、アルコールの販売と消費は、死と直接関係があるとし、この裁判が未成年者へのアルコール販売に対する意識を高める役割を果たすことを期待していると語っています。
このレシートの日時は、当日の午後1時頃になっており、その日勤務していた社員は10代の少年たちを記憶していないと語っていますが、加害者の少年は、この店でウォッカを買ったと証言しています。
結局、現時点では、監視カメラからは、この少年たちの確認ができず、証明ができていませんが、判決は1ヶ月後に下されることになっています。
この事件をきっかけに未成年者へのアルコール販売禁止の原則が想起されるのは、良いこととは思いますが、もしも、この店舗が少年にアルコールを販売してしまっていたとしても、そもそも16歳の少年が平日の午後1時にウォッカを買いに行くという生活自体がどうかしていると考えるのが普通です。
フランスは、アルコール飲料のテレビコマーシャルなどを禁止していたり、かなりアルコールに対しては、厳しい対応をとっているようなところもあり、逆にたまに日本に行くと、アルコールのコマーシャルがいかに多いかに驚かされる気がしますが、実際のところの規制はゆるゆるであることも事実なのです。
未成年者へのアルコール販売
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