マクロン大統領が閣僚理事会を開催し、その冒頭で行ったスピーチが衝撃を与えています。
マクロン大統領は、世界を襲っている「一連の危機」を振り返りながら、国際関係の非常に厳しいパノラマを描写しながら、非常にインパクトの強いメッセージを発信しました。
閣僚理事会の席上ゆえ、一応は出席している閣僚に向けての発言ではあるものの、報道カメラが入っている以上、それは、少なからず国民に向けてのメッセージでもあり、同時に国民の不安を煽るものでもありました。
「私たちは豊かさの終焉、不安のない生活の終焉、先行きの見える生活の終焉を経験しており、コストのかからない流動性の終焉を経験している。水のように、ある素材や技術の希少性が再び登場する。私たちは、今、決して自暴自棄にならずに行動を起こさなければならない」そして「私たちは気楽な時代の終わりを生きているのであって、我々の自由というシステムには犠牲が必要かもしれない」とフランス人の反感を最も煽るようなことも、あえて付け加えています。
「この大きな変化に直面し、国民は大きな不安を抱えて反応するかもしれません。このような困難に直面したとき、私たちには待つという選択肢はありません。志を持って国を興し、守るべきものを守り、必要とする人を守らなければなりません。」
「私は真剣さと信頼性を期待します」「このような不安や課題に直面すると、時に何でもかんでも約束したり言ったりしがちです。世界では、人々が望んでいることを言うのが魅力的に見えるかもしれません。彼らが聞きたいことが効果的で役に立つこともあります。」
「しかし、我々はまず、それが有用で、効果的で、公正であるかどうか、あるいは彼らを説得しに行く必要があるかどうかを自問自答することによって、理由をつけなければならない」。 これは、閣僚向けの注意喚起で、「不用意なことを言うな。容易に約束をするな。」ということです。そして最後に、「私は多くの合議制を期待している」と、締めくくりました。
これは、この混乱の時期に起こりうる政府の不協和音を回避するための発言とも受け取ることができます。
また、このマクロン大統領のスピーチを補うように、政府のスポークスマンであるオリヴィエヴェラン氏が「秋には政府が施策のパッケージを提示する」ことを説明しています。
しかし、このマクロン大統領のメッセージは、何よりも戦争や地球温暖化のための干ばつ被害などから起こるエネルギー危機やインフレなどに直面して、9月の新年度の始まりとともに当然、起こるであろうデモに対しての先制パンチのようなものであったような気がしています。
げんきんなもので、フランスでは、その大小にかかわらず、年間を通して、毎週のように、土曜日にはデモが行われていますが、7月、8月の夏のバカンスシーズンには、しっかりみんながバカンスをとって、デモも行わないのが普通です。(昨年は、アンチワクチン、アンチヘルスパスのデモがありましたが・・これは例外的な場合・・)
今年も夏の間には、目立ったデモはほとんど行われていません。
バカンスも終わって、さあ、これから、仕事!という時になると、デモも再開するのです。
今年は、この混乱の世、特にデモは激しいものになるのは必須のところ、マクロン大統領は、このデモを迎え撃ちする、わざと強めのメッセージを国民に直接という形でなく、閣僚理事会という場を通して発表したのは、それなりの作戦であったような気がしています。
人はこのような混乱の時、明らかに今よりも世の中が悪化すると思われる中でも、どこかに希望的観測を抱くもの、しかし、さらに悪化して「こんなはずじゃなかった・・」と怒りが爆発します。たとえ、このようにハッキリといわれることは、ショッキングでも、マクロン大統領は、「現実を直視し、受け入れるところは受け入れて対応していくためのカンフル剤が必要である」と考えたのではないか?と思っています。
マクロン大統領 豊かさの終焉
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