2022年8月26日金曜日

「私たちは豊かさの終焉の時を生きている」マクロン大統領閣僚理事会での厳しめのスピーチ

  


 マクロン大統領が閣僚理事会を開催し、その冒頭で行ったスピーチが衝撃を与えています。

 マクロン大統領は、世界を襲っている「一連の危機」を振り返りながら、国際関係の非常に厳しいパノラマを描写しながら、非常にインパクトの強いメッセージを発信しました。

 閣僚理事会の席上ゆえ、一応は出席している閣僚に向けての発言ではあるものの、報道カメラが入っている以上、それは、少なからず国民に向けてのメッセージでもあり、同時に国民の不安を煽るものでもありました。

 「私たちは豊かさの終焉、不安のない生活の終焉、先行きの見える生活の終焉を経験しており、コストのかからない流動性の終焉を経験している。水のように、ある素材や技術の希少性が再び登場する。私たちは、今、決して自暴自棄にならずに行動を起こさなければならない」そして「私たちは気楽な時代の終わりを生きているのであって、我々の自由というシステムには犠牲が必要かもしれない」とフランス人の反感を最も煽るようなことも、あえて付け加えています。

 「この大きな変化に直面し、国民は大きな不安を抱えて反応するかもしれません。このような困難に直面したとき、私たちには待つという選択肢はありません。志を持って国を興し、守るべきものを守り、必要とする人を守らなければなりません。」

 「私は真剣さと信頼性を期待します」「このような不安や課題に直面すると、時に何でもかんでも約束したり言ったりしがちです。世界では、人々が望んでいることを言うのが魅力的に見えるかもしれません。彼らが聞きたいことが効果的で役に立つこともあります。」

 「しかし、我々はまず、それが有用で、効果的で、公正であるかどうか、あるいは彼らを説得しに行く必要があるかどうかを自問自答することによって、理由をつけなければならない」。 これは、閣僚向けの注意喚起で、「不用意なことを言うな。容易に約束をするな。」ということです。そして最後に、「私は多くの合議制を期待している」と、締めくくりました。

 これは、この混乱の時期に起こりうる政府の不協和音を回避するための発言とも受け取ることができます。

 また、このマクロン大統領のスピーチを補うように、政府のスポークスマンであるオリヴィエヴェラン氏が「秋には政府が施策のパッケージを提示する」ことを説明しています。

 しかし、このマクロン大統領のメッセージは、何よりも戦争や地球温暖化のための干ばつ被害などから起こるエネルギー危機やインフレなどに直面して、9月の新年度の始まりとともに当然、起こるであろうデモに対しての先制パンチのようなものであったような気がしています。

 げんきんなもので、フランスでは、その大小にかかわらず、年間を通して、毎週のように、土曜日にはデモが行われていますが、7月、8月の夏のバカンスシーズンには、しっかりみんながバカンスをとって、デモも行わないのが普通です。(昨年は、アンチワクチン、アンチヘルスパスのデモがありましたが・・これは例外的な場合・・)

 今年も夏の間には、目立ったデモはほとんど行われていません。

 バカンスも終わって、さあ、これから、仕事!という時になると、デモも再開するのです。

 今年は、この混乱の世、特にデモは激しいものになるのは必須のところ、マクロン大統領は、このデモを迎え撃ちする、わざと強めのメッセージを国民に直接という形でなく、閣僚理事会という場を通して発表したのは、それなりの作戦であったような気がしています。

 人はこのような混乱の時、明らかに今よりも世の中が悪化すると思われる中でも、どこかに希望的観測を抱くもの、しかし、さらに悪化して「こんなはずじゃなかった・・」と怒りが爆発します。たとえ、このようにハッキリといわれることは、ショッキングでも、マクロン大統領は、「現実を直視し、受け入れるところは受け入れて対応していくためのカンフル剤が必要である」と考えたのではないか?と思っています。


マクロン大統領 豊かさの終焉


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2022年8月25日木曜日

フランス発の航空運賃 1年間で 43.5%上昇

  


 フランス民間航空局(DGAC)によると、2022年7月、フランス発の航空運賃の上昇率は、1年前と比較して、すべての目的地を合わせて43.5%に達しました。

 1年前と言われても、1年前の7月といえば、フランスでは、まだまだワクチン接種が思うように進んでいかないためにヘルスパス(ワクチンパスポート)の起用が発表された頃で、ヘルスパスがないと、食事にも旅行にも行けないことになり、皆、慌ててワクチン接種に走り、バカンス先でもワクチン接種をできるようになっていました。

 1年前のそんな時期でも、フランス人は、負けじとバカンスに出かけていましたが、それでも、やはり、普段は海外に出かける人も国内旅行、あるいは、近隣のヨーロッパ諸国に切り替える人が多く、また、外からの観光客もちらほらとは見えたものの、観光業界(特に航空業界)は通常モードには戻っていませんでした。

 私自身もまだまだ、長距離の移動は怖くて、バカンスに行くつもりもなかったため、航空運賃などをチェックすることもしていませんでした。感染が怖かったこともありますが、せっかく旅行に行ってまで、やれ検査だ隔離だなどという煩わしさはごめんこうむりたかったこともありました。

 パンデミックが始まって以来、来年には、元に戻るかな?と毎年のように思いながら、もう2年以上、次はウクライナでの戦争が始まり、日本行きなどの飛行機はキャンセルが続いたと思ったら、今度は迂回便のための長距離フライトと燃料費高騰のためのチケット爆上がり。

 普通なら、経由便ならば、時間がかかる代わりに、少々、お値段は安くなるところが、今までよりもずっと時間がかかるにも関わらず、値段はずっと高くなっているのですから、納得いきません。

 そして、それは、日本行きに限ったことではなく、フランス発の航空運賃全般にわたる値上げ(まあ当然ではあるけど・・)、しかも1年で40%以上も値上げしているなど、狂気の沙汰です。それでも、みんなインフレ、インフレ・・と騒ぎ立てているわりには、フランス人はバカンスには出かけるところを見ると、みんなお金あるんだな・・と感心したりもします。

 2022年の夏は、観光業は、ほぼ通常どおりまでに回復しているとのことで、ユーロコントロールの調査によると、フランスの空港では、1日に約4,200便が運航され、これはパンデミック以前の数字の90%の数字にまでのぼっているということです。

 一般的に「航空券の価格は需要と供給によって決まる」と言われていますが、需要は、ほぼ戻りつつあるとはいえ、これにプラスして、燃料費の高騰の問題があります。

 2021年半ばには、燃料がコストの15%を占めていたのに対し、2022年上半期には29%を占めていると言います。このコストに入れられる分と燃油サーチャージとして追加に乗せられる金額をどう設定しているのかは疑問なのですが、JALは、10月から、燃油サーチャージがまた値上げになり、北米、中東、オセアニア、ヨーロッパ線は燃油サーチャージだけで114,400円に値上げするとのニュースを見て、ちょっともうため息も出ない感じです。

 日本は最近、外国人観光客の入国制限を緩和するという発表があったというので、これでフランス人も日本に旅行ができるようになるんだ!!と期待したら、なんのことはない、大した緩和ではなく、依然として個人旅行客は認めないという意味のわからない緩和。しかも、もうすぐ夏休みも終わりというタイミング。これでは、日本へ行く外国人観光客は戻りません。

 パンデミック前の日本行きの飛行機(パリ⇄羽田便)などは、9割型フランス人で埋められていたのに、これらの人々が行けないということは、「航空券の価格は需要と供給によって決まる」のならば、日本行きの航空券の値段は、まだまだ下がらないということで、これに燃油価格の高騰分を加算すれば、雪だるま式に高くなるわけです。

 しかし、パンデミックから戦争と続き、失われていく時間は長くなるばかり、夏のバカンスシーズンが終わったら、もう日本行きは諦めて、近場のヨーロッパの中でどこかへ行こうと思っていたら、欧州域内路線では54.5%値上げしているとのことで、ちょっと萎えてしまいました。

 そして、また、フランス民間航空局(DGAC)が、「航空券は、冬から来年にかけて5〜10%値上げする」と追い討ちをかけるような発表。

 航空運賃が少しでも下がるのを待つか、失われていく時間を少しでも早く取り戻すか? 悩ましいところです。



航空運賃値上げ


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2022年8月24日水曜日

救急車が電動キックボードに乗ったティーンエイジャー2人を轢き殺す陰惨な事故

  


 この間は、消防士の森林火災放火事件があったと思ったら、今度は救急車がティーンエイジャー2人を轢き殺すと言う事件が起きて、驚愕しています。

 消火活動にあたるはずの消防士が放火し、怪我人や病人を助けるために駆けつける救急車が人を轢き殺してしまうのですから、本末転倒このうえない話です。

 月曜日の午後6時半頃、リヨン2区を電動キックボードでバスと二輪車、スクーター専用レーン(一般車道の横のレーン)を走行中だった15歳の少女と17歳の少年が後から猛スピードでやってきた救急車に跳ね飛ばされて死亡しました。

 目撃者によると、2人は数メートルも跳ね飛ばされたと言われており、そのスピードがどれほどのものであったか、この事故が故意によるものではないにせよ、視界のきかない場所でもなく、前方に人がいることがわかれば、人が数メートルも飛ばされるスピードのまま走り続けたというのは、合点がいきません。

 救急車の運転手はアルコール反応はないものの薬物反応についての検査結果はまだ出ていません。

 しかし、リヨン検察庁の発表によると、この救急車の運転手(36歳)は、過去に28件の交通違反の前科の記録が残っており、2019年に一度、運転免許が失効になっており、保険に加入していないことや、免許証で認められている以上のカテゴリーの車を運転していることも、警察に知られていた、なかなかの注意人物であることがわかっており、2020年3月に再交付された8点の点数は2点しか残っていない仮免許で運転していたことが発覚しています。

 このような人物が一般車両を運転することさえも、恐ろしい話なのに、ましてや、他の車より優先的に運転することが許される救急車の運転手という立場で運転していたことは、彼の雇用についても問題があったと思わざるを得ません。

 救急車に撥ねられた2人のうち、1人(15歳の女の子)はほぼ即死、もう1人(17歳の男の子)は、蘇生措置がとられたものの、すぐに死亡しました。

 衝突した運転手は同乗者とともに、ショック状態で入院したものの、すぐに回復、直後に警察に身柄を拘束されました。

 リヨン検察庁は過失致死罪の捜査を開始し、ローヌ公安局に委託しています。

 新年度が始まる寸前の、まだまだ若く健康なティーンエイジャーの命があっという間に失われてしまったこの事件、どうしてもお母さん目線になってしまうのですが、この子たちのご両親、ご家族にしたら、まさに青天の霹靂、信じられない出来事で、悔やむにも悔やみきれない事故であったであろうと思います。

 亡くなってしまった2人は、一般車道を走っていたわけもなく、専用レーンを走っていたのだし、この運転手に全面的に非があったのはもちろんですが、このような人物を救急車の運転手として雇用していた側の責任も深く問われるべきだと思います。

 他人事のようですが、このような事故の話を聞くにつけ、子供が無事に育って大人になるということは、奇跡的なことなんだと思ってしまいます。


救急車死亡事故 電動キックボード


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2022年8月23日火曜日

日本の国税庁キャンペーン「サケビバ」にはフランス人も唖然

  


 最近、日本のびっくりするようなニュースをフランスのテレビで知ることが増えた気がします。

 つい、先日、フランスのテレビのニュースで日本の「サケビバ」の話を報道していて、かなり、驚きました。

 このキャンペーンは、20歳から39歳の若者に向けて、酒類業界の活性化や問題解決に対するプラン、特に若年層の需要に向けた新たなサービスやプロモーションなどを募るもので、国税庁のサイトを見ると、これに応募して、なんかいいことあるのかな?と見ると、参加費無料とあるだけで、何もメリットはなさそうです。アイデアを募集しておいて、参加費無料とは、なんたる上から目線!

 この「サケビバ」に関して、フランスでは、「日本では、パンデミックの影響などで若者の酒類の消費量が停滞し、税収が大幅に減少したために、これを回復させるために、「サケビバ」なるキャンペーンを始めた・・経済が低迷し、約10兆ユーロの財政赤字を抱える国情」「経済規模の2倍もの公的債務を抱える日本では、新しい収入があれば何でもいいのだ」などと言われています。

 もしも、これが酒造メーカーがキャンペーンを張るというのならば、別に驚くこともなく、ニュースにもならなかったと思いますが、これが日本の国税庁が主催というのだから驚きなのです。

 フランスでは、テレビや映画館などのメディアでは、アルコール飲料のコマーシャルは禁止、また、スポーツの協賛も国により、禁止されています。街でポスターなどにも、必ず「アルコールの過剰摂取は、健康を害する恐れがあります」というような内容を併記することが義務付けられています。

 つまり、国民の健康のために、アルコール摂取量の削減を奨励しているのです。まあ、そうは言っても、アルコールは適度に・・という程度という話ではあります。

 それを守って、アルコールをほどほどにしておく人ばかりではない国とはいえ、「税収増」を目的として、国がアルコール摂取を若者に推奨するというのは、よく言えば「すごく奇妙」、はっきり言えば、「日本は税収増化のためなら、国民の健康は考えない国」なのです。

 これは、フランス人に指摘されるまでもなく、どう考えても狂ってるとしか思えないことで、このようなキャンペーンを国税庁が主催するといのも、あまりに露骨です。

 ただでさえ、高齢者向きに作られている日本社会、このうえ、若者に一般的には健康を害すると言われているアルコールを奨励するという、国民の健康よりも税収を優先する恐怖の政治。

 まったく、どこまで節度なく、無自覚にやらかしてくれるのかと、ウンザリさせられます。

 だいたい、日本の人口比率を考えれば、若者は少数派、たしかにパンデミックの影響で、いわゆる日本の「ノミニュケーション」のようなものが減り、それ自体も必要だったのか?という疑問が若者の間で広がったかもしれません。

 しかし、もともと、ノミニュケーション大好き・全盛期の世代が高齢化して、アルコール消費量が減ったのも大きいと思います。

 いかにしても、国として、税収増を考えるならば、普通なら、別の方法を模索するのが当然のこと、もしくは、酒類業界に対して売上増加を促すくらいならば、まだしも、こともあろうか臆面もなく、国税庁が主催して、このようなキャンペーンを張るなど、日本政府は、どこまで世界の認識からズレているのかと本当に恥ずかしい思いです。

 そして、どこまで若者を虐げるのかと腹立たしい思いです。

 フランスでも若者のワイン離れや、最近の若い子はあまり飲まなくなった・・などと言われていますが、アルコールを奨励することは依然としてあり得ないことなのです。


サケビバ 国税庁


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2022年8月22日月曜日

モンマルトルの丘 サクレクール寺院あたりのガラの悪さにげんなり

 


 9月に入って、パリの住人たちがバカンスから戻って来れば、また人が多くなるので、公共交通機関や街も空いているうちに、久しく行かなかったところに行ってみようと、ここのところ、パリの街を歩きまわっています。

 パンデミックの間は、ロックダウンを初めとして、行動制限があったり、観光客もパッタリいなくなって、潰れるお店もけっこうあったりして、この2年ほどでパリの街は少し変わったような気がしています。

 これでは今まであったガイドブックなどは、かなりの改訂が必要かも・・と思ったりしています。

 今年は、すでに日本人や中国人などのアジアからの観光客以外は、ほぼコロナ前の人出に戻ったと言われており、観光地と言われる所は、それなりに、結構、賑わっています。

 パリに観光に来る方はどこへ行くのか?あらためて考えてみると、「これだけは見逃せない!」 とかいうものも、ピンと来なくなってしまっているのですが、ルーブルやオルセーなどの美術館か、シャンゼリゼ、エッフェル塔、ノートルダム寺院、モンマルトルの丘のサクレクール寺院などでしょうか?

 しかし、ルーブルやオルセー、シャンゼリゼ、ノートルダム寺院くらいまでは、まあまあ観光客が集まるとはいえ、そこまでウッとくる感じはないのですが、モンマルトル・サクレクールは地域が少し離れていることもあり、なかなかどうして、他の場所とは違う人のいるエリアです。

 パリで日常生活を送っていても、だいたい自分のテリトリーとまでは行かないまでも、だいたい行くところは限られていて、パリといっても、場所によっては、かなりガラが悪いというか、これがパリ???と思うようなところもあって、明らかに治安の悪そうな場所には近寄りません。

 自分の時間に自分の身を置いて、心地よいと思う場所でなければ、不愉快な思いをするだけで、わざわざ行く必要もないのです。

 ロックダウンが明けて、それまで閉鎖されていた美術館などが一斉に再開した時、それでもまだ、観光客は戻ってきていなかった頃に、えらく久しぶりにルーブル美術館に行って、ガラガラでスイスイ見れるルーブル美術館を堪能してきたことがありましたが、それ以来、あまり観光地らしいところには、行くこともなく、この間、たまたま近くに用事があって、エッフェル塔を見てきて、周囲の変わりようにびっくりしました。

 そして、また、そんな変化を楽しみに、先日、急に思い立って、久しぶりにモンマルトルの丘にあるサクレクール寺院に行ってきました。娘が小さかった頃は、なぜか、サクレクール寺院は彼女のお気に入りで、彼女はなぜか、サクレクール寺院を「神様のおうち」とよび、行きたがったので、時々、連れて行っていました。

 私としては、サクレクール寺院は丘の上にあるだけあって、丘の上にのぼるまでの階段を上がったり降りたりして、娘が疲れてくれることを期待していただけなのですが、行けば行ったで美しいし、それなりに楽しんではいました。

 しかし、明らかに他の場所(ルーブルやノートルダム、シャンゼリゼなど)とは、メトロの中から、乗っている人々の様子が違い、特に駅の周辺から丘に向かう道なりは、明らかにガラが悪く、怪しげな人がちらほら。そういえば、そうだった・・と思い出したのでした。

 近辺のお店などは、若干変わっていても、一眼で観光客でもなく、住民でもなさそうな人々が観光客目当てに近寄ってくる人々は変わらないのです。

 メトロの駅を上がってすぐのところに、炭火でとうもろこしを焼いて(といっても、日本のようなとうもろこしではない)売っている人がいて、「いくら?」と聞いたら、「3ユーロ」というので、びっくりして(ちょっと前に別の場所で1ユーロだった)、「えっ??じゃあいらない」と言ったら、焦って「あなたには特別に1ユーロにするから・・」と言ってきたのですが、もう気分悪くて、「もういらない・・」と通り過ぎました。観光客だと思ってぼったくろうとしたんだ・・と思うと、嫌な気分になったのですが、同時に、ヤレヤレ、そういえば、ここはこういうところだった・・ということを思い出したのです。




 そこから、丘に向けて上がっていく細い道の途中には、賭博のようなものを観光客を集めてやっている人々がいて、人だかりが・・そして、それを通り過ぎると、偽物のミッキーマウスがいて、嘘・・と思ったのですが、それでも嬉しそうに一緒に写真を撮る人の人だかりができていて、こんな偽ミッキーマウスは以前はいなかったけど、誰が何のためにこんなことをやっているのかと思うと、ちょっと不気味な気もしました。

 丘の上の教会の前には、エッフェル塔のキーホルダーや何やら細かいお土産物を布の上に広げて売っている人がたくさんいて、バケツに水や飲み物を入れて売って歩いている人もいます。

 値段も段ボールの裏などに書かれたようなもので、明らかにぼったくりの値段で売られています。彼らが布の上にお店を広げているのは、警察の取り締まりが来たら、広げていた布をそのまま包みあげて、すぐに逃げられるためです。

 

サクレクール寺院に入るには、一応、セキュリティチェックがある




 まあ久しく観光地っぽいところに来ていなかったので、観光地ってこんなもんだったかな?と思いながら、教会の中をぐるっと回って、教会の裏手にあるモンマルトル広場へ。




 ここは、レストランが多数、混在しているだけでなく、絵描きさんの溜まり場でもあり、自分の作品を売っている人もいれば、似顔絵書きをしている人々がたくさんいるところです。




 この一画は、古い街並みが緑の木々とともに残されていて、とても美しい場所なのですが、最近の絵描きさんは、似顔絵広場に場所を確保できていない絵描きさんが、「あなたの絵、描きますよ!」近寄ってきて、呼び込みまがいのことまでするようになっているのには、びっくりしました。

 似顔絵を描いてもらっているのは、子供連れのお客さんが多く、子供の顔を描いてもらっている人が多かったのですが、1枚、20分で、だいたい50ユーロから60ユーロ(約8,000円)ということで、これが高いのか安いのか、よくわかりません。

 モンマルトル地区(パリ18区)は市長がこの地区をユネスコの世界遺産登録を目指していて、交通規制をしたり、さまざまな試みをしていると聞いていたのですが、この観光客を食い物にしようと集まってくるガラの悪い人々が、何よりもこの街を汚している気がしてなりません。

 パリはたしかに美しい街なのですが、こうやって観光地らしきところに足を踏み入れれば、観光客とともに、必ずこの怪しげな人々が集まっているのには、げんなりさせられるのです。


モンマルトルの丘 サクレクール寺院


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2022年8月21日日曜日

パリで200以上の黄色い郵便ポストが閉鎖 黄色いポストはパリの景観の一部?

  



 私自身は、全然、気づいていなかったのですが、パリでは今年の2月以来、200以上の郵便ポストが閉鎖、または撤去されているそうで、最近、ちょっと話題を呼んでいます。

 フランス郵政省(P.T.T.) は、この郵便ポストの撤去について、郵便物の盗難被害対策をその理由として説明しています。

 2021年には650件以上の盗難被害が報告されているとかで、郵便小包などなら、いざ知らず、ポストに投函される程度の大きさの郵便物の盗難という割の悪そうな犯罪が、どうして、そんなに多発しているのかと思いきや、郵便物から個人情報を集め、勝手にローンを組まれたりするという、なかなかな被害が生じているのです。

 この郵便ポスト撤去に対しては、顧客はもちろんのこと、郵便局の労働組合も仕事がなくなることを恐れてなのか、撤去反対の声があがっていて、労働組合は、「かつてロンドンの街を彩った赤い電話ボックスのように、パリの街を彩る黄色いポストはパリらしい景観を失う」などと、盗難被害対策のもとに隠れたコスト削減策を糾弾しているとかで、それほどパリの景観に寄与しているとも思えない黄色いポスト(その多くは、添付した写真のように汚れている)を、いざとなったら、こじつけるようにパリの景観の一部であるという言い方までして争うのにも、フランス人らしいといえば、フランス人らしいところです。

 そもそも、私自身、郵便ポストというものは、もうあまり利用しなくなっていて、以前は郵便を利用していたものは、ほぼ全てネットで済ませるようになっていて、めっきり郵便ポストを利用する機会はなくなっています。

 以前は、日本にいる家族や友人に手紙を書いたり、娘の写真を撮って送ったりしていたものも、もう長いこと、とんと、手紙も書かず、写真を印刷することさえなくなりました。

 また、以前は、後になってから、きっちり支払ったことを証明できる必要のある支払いは小切手を書いてそれを郵便で送るということをしていましたが、それも全てネットに切り替わり、自分でネットで振り込むようにしてからは、それすらもなくなりました。

 郵便ポスト以前に、我が家の近所にあった郵便局も2つなくなり、ちょっと離れたところ1軒のみになってしまいましたが、そもそもほとんど必要がないために、郵便ポストの前に郵便局自体が減っているので何を今さら・・感もあります。

 日本から荷物を送ってもらったりするのも、たとえ在宅していても不在通知を入れられたりするために、職場に送ってもらうようにしたために、郵便局に取りに行くということもなくなりました。

 郵便ポストの数が減れば、それだけ回収作業も少なくて済むわけで、経費削減にもなるのかもしれませんが、盗難被害自体が減るかどうかは、多少は影響はあるのでしょうが、多くは郵便局内での盗難ということも多いにあり得るので、甚だ疑問ではあります。

 以前、職場の同僚が日本に小包を送ったのに、日本の家族は延々と荷物を受け取っておらず、荷物を出した郵便局へ問い合わせに行ったところ、窓口の女性が彼女が送ったはずのマフラーをしていたのを見つけて、彼女はその女性に食いついて、大騒ぎになったことがありました。

 そのマフラーはどこでも売っている既製品ではなく、一点もののオリジナルのマフラーだったために、彼女が送ったものであることは一目瞭然だったのです。

 そんなわけで、人の手を介すれば介するほど、盗難被害に遭う確率は高く、郵便ポストの撤去が盗難被害に貢献するかは甚だ疑問ではありますが、よほどの公的書類などの他は郵便以外の方法で済ませられるようになっているので、できるだけ違う方法を利用した方がいいというのが私の正直な見解です。

 そもそも、郵便物が届くというのは、ろくな用事ではなく、たいてい何かの請求書で、良い知らせではありません。ここまで書いて思い出したのですが、そういえば、先月の家賃の請求書が届いていません。言っている側から、もしかしたら、これも盗難に遭ったのかもしれません。


パリの郵便ポスト200個撤去


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2022年8月20日土曜日

検問拒否で、また警察官発砲事件 同乗者死亡・運転手意識不明の重体

  


 リヨン近郊のヴェニシュー(ローヌ県・フランス南東部にある街)で検問を拒否した車に対して警察官が発砲し、1人が死亡、1名重症に陥る事件が発生しています。

 ほんとに、また?と思ってしまう警察官の発砲事件です。

 事件が起こったのは深夜0時頃のこと、パトロール中の4人の警察官が、ヴェニシューにあるスーパーマーケット・カーフールの駐車場で盗難届が出ている車を発見しました。

 警察官が検問のため、警察車両をおり、対象車に近づくと、運転手は検問を拒否して車を発車させ、それを止めようとした警察官が車にぶつかったものの、車はそのまま逃走しようとしたため、同行していた同僚の警察官が数回にわたって発砲したと言われています。

 警察官の発砲により、車は停車したものの、助手席に乗っていた20歳の男性は銃撃の数分後に死亡、運転手は頭部に重傷を負い、病院に搬送され脳死状態という事態に至っています。

 武器を使用した2人の警察官は、事件後の早朝には身柄を拘束されましたが、同日夕刻には、釈放されています。警察官付きの弁護士によると、「捜査当局は正当防衛の条件を満たしていると考えた」と発表し、この見解は、リヨン検察庁によって確認された。

 しかし、検察庁は「警察官が武器を使用した正確な状況を確認するためには、さらなる捜査、特に事件の詳細の検証と弾道検査が必要である」と述べ、IGPNに調査を委託し、銃器使用の経緯を再確認する模様です。

 検察によると、運転していたアヌシー地方出身の26歳の男性は前科9犯。事件当時、彼は車両窃盗の容疑で捜索中、同乗していた男性はリヨン出身の20歳、警察にはマークされていたものの前科はありませんでした。札付きの不良といった感じの若者のようですが、殺されなければならなかった凶悪犯かどうか、また同じ年頃の子供を持つ親としては、親御さんの気持ちはいかばかりかと思ってしまいます。

 警察組合は、「彼らは同僚が盗難車の制圧に向かい、車が発進したので、反撃した。彼らは命を守るために撃った」と述べ、内務大臣も「私は、フランスのすべての警察官と憲兵に、私は彼らを支持し、彼らの働き方が模範的で勇ましいと思うことを伝えたい」と述べ、倫理規定に則って行動したかどうかは、司法の場に委ねます。私は、私の権限の下にある公務員を信頼しています。」と概ねこの警察官の発砲を容認する声明を発表しています。

 フランスでは検問拒否は30分に1回起こっていると言われていますが、それが警察官の発砲を容認につながるのは、別の問題だと思っています。警察官の発砲事件には、なかなかな確率で犯人を死亡させる結果に繋がってしまっていることも、見逃せない事実です。

 相手が銃を所持している場合は別としても、今回のように車で逃走しようとする場合などは、致命傷にならない発砲方法はなかったのだろうか? たとえ警察官とはいえ、発砲があまりに雑なのではないか?と思ってしまいます。

「死刑制度は人類の恥」とまで明言して死刑制度を非難する国である一方、こんなに頻繁に警察官の発砲事件で死亡者を出すのは、どうにも納得がいかないのです。

 警察も30分に1回は起こっているという検問拒否に往生しているとは思いますが、検問拒否で発砲という事件がここのところ、急激に増えているのは見過ごせない気がするのです。逆に言えば、検問を拒否して逃走する場合は射殺される覚悟で・・というのは、言い過ぎでしょうか?


警察官発砲事件 フランス


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