2021年10月26日火曜日

フランスでの婦人科検診 子宮頸がん検診

 


  

 毎年のように婦人科検診の通知が来ていたにも関わらず、ずっと放置したまま、ここ数年は、それにロックダウンなどが重なり、できる限り、病院には行かないことにしていたため、これまで私がフランスで婦人科検診に行ったのは、23年間でたったの一度だけでした。

 もうそれは、10年以上も前のことだったので、記憶も朧げで、ひたすら不快で痛かった記憶しかなく、そのうちの一つは乳がん検診だったと思うのですが、大してありもしない胸を無理矢理機械で挟んで、レントゲン?を撮ったのが、もう悲鳴をあげるほど痛くて、「これは、検査で病気になりそう!」などと思い、「もう一生やりたくない!」と思ってしまったのです。

 以来、検査の通知が来ても、ロクに中身も見ずに、捨ててしまうことはないものの、なんとなく気にしながらも、いつか、時間的にも、精神的にも余裕ができたら行こうと、束のように通知が溜まっていき、そのうち、もう封筒を見ただけで、「あっ!これは婦人科検診の通知だ!」とわかるくらいになり、通知に添えられている手紙にも「あなたは、ここ何年も検診を受けていませんが、検診を受けることはとても大切なことです」などと記載されるようになり、歳を重ねるにつれて、普通に生活しているだけでは健康を保てないことを痛感しつつあり、少々、不安を覚えるようにもなってきました。

 先日、いつも薬を処方してもらう、かかりつけの医者のところに行ったときに、ついでに届いていた通知を持っていって、相談したところ、「それは、やらなきゃ!前回は、いつやったの?」と言われ、「もういつだったか覚えていないくらいずっとやっていない・・」と言うと、「そんなはずはない!絶対、5年以内にはやっているはず・・」などと断言されて、なんだかそれ以上はもう言い返すのも憚られて、婦人科を紹介してもらったのでした。

 彼女が知っているお医者さんなら、少しは安心か・・と自分に言い聞かせて、予約を入れて、数十年ぶりに婦人科検診に行ってきたのでした。

 婦人科検診、(今回の通知は子宮頸がんの検診)は、厚生省(公衆衛生局)が2018年に開始した子宮頸がんプログラムの一環で、その通知を持って行けば、検査は無料でやってくれます。

 このプログラムは、25歳から65歳の全女性を対象としており、子宮頸がんの早期治療を行い、死亡率を減らし、また情報のフォローアップとケアの質を向上させることを目的としており、全ての女性が全国の子宮頸がん検診への平等なアクセスを保証しています。

 年齢に応じて、3〜5年に一度の検査が推奨されていますので、これに応じて、この間隔で通知が送られてくるものと思われます。(私の場合、ずっと受けていなかったので、毎年のように送られてきていたのだと思います)

 この通知を受け取ったら、地域の婦人科に予約を取り、検診票を持参して、検診を受けます。この検査の実施の記録と結果はこのプロジェクトを担当する地域ガン検診調整センター(CRCDC)に送信されます。

 この検診に関しては、通知と健康保険カート(Carte Vital)を持参しさえすれば、前払いなしで国民健康保険により100%カバーされます。(しかし、一応、レシートのようなものをくれるので、それに記載されている内容によれば、かかっている費用は30ユーロ(約4,000円程度)ほどです。

 フランスでは、がんの治療に対しては(特別な療法は除く)100%、国で補償されるので、早期に発見して、がんを回避することは、結果的に国の医療費節減にもつながるのです。

 年齢、妊娠、出産の経験、出産時の手術について、健康状態(既往症など)について、家族(家系)の病歴、アレルギーなどについての簡単な問診の後に、内診が行われ、子宮頸部からのサンプルが採取されます。

 多少の痛みと不快感はあるものの、前回感じたほどの嫌悪感はありませんでした。内診・サンプル採取は正味5〜10分ほどで終わります。

 採取されたサンプルは、宛名のついた封筒に入れてくれるので、それを自分で切手を貼って郵送します。

  

サンプルは自分で郵送するところが、いかにもフランス


 一度、検診を受けると個人個人のデータファイルが作成され、地域ガン検診調整センター(CRCDC)がフォローアップし、今回の結果とともに今後のデータもそれに追加される形で保存されます。

 このデータは、フランス公衆衛生研究所やがん研究所(INCa)など、これらのミッションを担当する研究所で共有され、がん制御システムを評価、研究を実施するために、国立がん研究所の腫瘍学データプラットフォームに追加され、ナショナル・ヘルスデータシステムのデータとの照合されます。

 長いこと放置して、検診を受けなかったくせに、こんなシステムを知ってみると、自分の健康維持だけでなく、自分の検査が、国のがん研究に貢献しているようで、少し嬉しい気分です。

 ただし、データ保護規則(RGPD)およびデータ保護法に基づき、このデータ処理へのアクセスを拒否する権利もあり、自分の権利が尊重されていないと感じた場合は、CNILに苦情を申し立てる権利があります。

 本人には、3週間後くらいに、サンプルを送った検査施設から直接、結果が送られてくると言うことです。

 長いこと気にかかりつつも放置してあった検診をようやく受けて、3週間後に受け取る通知に問題なければ、積年の気がかりが解消され、ようやくホッとできることに、なんだ・・もっと早くやっておけばよかった・・と調子のいいことを思った私でした。


婦人科検診 子宮頸がん検診


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2021年10月25日月曜日

燃料費の急激な高騰のためにフランス政府が緊急に支払う100ユーロのインフレ補償手当

   


 パンデミック以来、ロックダウン等により、停滞していた経済が想像以上の速さで回復しつつあったフランスで、今回の燃料費を始めとする物価の急激な上昇は、見過ごすことができない問題として急浮上してきました。

 日常生活に直結するこの急激な物価の上昇にフランス国民がおとなしくしているはずはありません。

 すでに、先週末には、夏以来、続いてきた「ヘルスパス反対」のデモとともに、黄色いベスト運動が、この燃料費・物価の上昇に対するデモを開始しています。

 フランス政府はこれを棄ておけない状況であると判断し、カステックス首相は、このインフレに対応する措置として、「月収2,000ユーロ(約26万円)未満の国民に対し、100ユーロ(約13,000円)のインフレ補償手当を支給する」ことを発表しました。

 この100ユーロの「インフレ補償手当」支給には、3,800万人のフランス人が該当しています。

 カステックス首相は、「価格の上昇に直面して、政府は最も公正で効率的なシステムを選択した」と説明しています。これには、就業者、従業員、自営業者、失業者だけでなく、奨学金を受けている学生、年金生活者などの多くの人が対象になります。

 このインフレ補償手当は、家族の構成や車を所有しているかどうかに関わらず、1人当たり100ユーロが支給されます(非課税)。この手当は個別に支払われるため、例えば、夫婦で双方が2,000ユーロ未満の収入の場合には、200ユーロが支給されます。

 この2,000ユーロの基準額は、税務世帯の規模ではなく、1人あたりに決定されたもので、労働者の半数以上と退職者の70%をカバーしていることになります。また、私は都市部に住んでいるので、さほど車の必要性を感じることはありませんが、フランスでは、現在、84%の世帯が車を所有しているため、特に燃料費の高騰は多くの世帯にとって、切実な問題であるのです。

 すでに高騰している物価のため、この措置は緊急性を帯びていることから、この資格に該当する者には、特別な申請等の手続きは必要なく、2021年12月から2022年2月の間に、自動的に支払われます。

 しかし、これは、恒久的な補償ではなく、差し迫った状況にある中産階級への財政的な後押しであることは言うまでもありません。

 100ユーロ支給の価格について、政府は、車を頻繁に利用する人の値上がり分の費用を80ユーロ、追加の20ユーロは他の物価上昇(食品等)のインフレを補うと見積もっています。

 この緊急措置に必要な金額は38億ユーロとされており、そのための資金として増税が心配されていますが、政府は、このインフレ補償手当を行うことで、消費を停滞させることなく国民が消費することで、価格が上昇している分、追加になる消費税で10億ユーロは回収できるとしており、残りの28億ユーロについては、2021年の経済回復率が6.25%に上方修正されたことにより、特に増税することなく、回収可能な金額であると説明しています。

 フランスのお役所仕事は、本当にトラブルも多く、時間もかかるのが普通ですが、税金やお金に関することは、きっちり漏れなく請求も来るし、支払われるべきものは、きっちり支払われます。

 ロックダウン中の営業停止などのための補償金なども、大きなトラブルが起こったという話を聞くこともなく、早急に支払われていました。

 これは、全ての情報が全てオンライン化され、個人個人の納税状況などが全て把握されているからこそ可能だったわけで、今回の「インフレ補償手当」も同じように支払われるものと思われます。

 同じお役所でも税務署(財務省)だけ、どうして、こうもきっちりしているのだろうか?と思いますが、徴収される場合だけでなく、支払ってくれる時には、ありがたいことです。

 決して黙って我慢はしない国民を抱えたフランス政府は、この燃料費の高騰により、2018年に起こった過激な「黄色いベスト運動」の二の舞にならぬよう、即刻に緊急措置をとったのだと思われます。

 放置すれば、物価の上昇による経済停滞だけでなく、暴徒化するデモにより、さらに状態は悪化する可能性を秘めているのです。

 それにしても、この対応措置の速さ!スゴいです。


フランスの補償 燃料費高騰


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2021年10月24日日曜日

フランス政府からの3回目のマスクの無料配布

   

左から1回目、2回目、右端が3回目に配布されたマスク


 パンデミック以前から、日本からの観光客にマスクをしている人を見かけるにつけ、フランス人から、「なんで?日本人はマスクをしてるの?」と半ば嘲笑的に言われることがありました。「別に、みんながマスクをしているわけではないけど、衛生的に気遣っていたり、花粉症の場合なんかもマスクをするかも・・」などと、適当な返事をしながら、ちょっとバカにされている気分であまり気持ち良いものではありませんでした。

 医療従事者や特別な仕事以外には、マスクをする習慣がなかったフランスで、マスクは病気を連想させ、美観?を損ねるため、個人的には、パンデミック以前は、フランス人が街中でマスクをしているのを見たことがありませんでした。

 ある時、会社内の改装工事をしているときに、あまりに社内の埃がひどく、慌てて誰かがマスクを買いに行って、今はどこでも見かける大きな箱入りのマスクを買ってきた時には、フランスの薬局にもマスクを売ってるんだ・・とビックリしたくらいでした。

 それがパンデミックが始まって、あっという間にロックダウンになり、非常時用に備蓄してあったはずのマスクが経年劣化して廃棄されたまま、補充されていなかったことから、医療施設でさえもマスクが不足し、急遽輸入されるマスクが国賓待遇で警察車両に誘導されながら、政府の管理のもとに運ばれるような時もありました。

 この頃は、まだロックダウン中だったので、ほとんどの人がほぼ外出できない状態でいたので、マスクは薬局でも一般人は購入することはできませんでした。(医療従事者ややむを得ずに人と接する必要のある仕事関係の人優先)

 まさに「マスクを笑うものはマスクに泣く」の状態でした。

 当初は、マスクの必要性をそれほど理解していなかった国民に対して、フランス政府は、「医療従事者でなければ、マスクは必要ない」などと言ってもいました。

 そんなフランスでマスクが配布され始めたのは、日本で「アベのマスク」が騒ぎになっていた頃でもあり、ロックダウン解除が決まった2020年の5月のことでした。

 この時、私のところに届いたのは、市役所からで、ロックダウン解除のタイミングには、国単位ではマスクの供給が間に合わず、市役所が急遽、布で作らせた、色は良いけど、ペラペラのマスクでした。

 あれから、何度かの感染の悪化、減少を繰り返し、その度にマスクの着用が義務化される場所が拡大され、今年の5月に2度目のマスクが今度はフランス政府から届きました。

 それは6枚セットの白い洗えるマスクで前回よりも、だいぶ、しっかりしたものでしたが、しっかりしすぎて、逆にちょっと息苦しい感じでギャザーも少なく、あまり使い勝手が良いものではありませんでした。

 これは、営業が停止されていた店舗や美術館や映画館などが再開し始めたタイミングで、外出は許可するけれど、マスク着用は義務化された状態であったのです。

 あれから、夏のバカンスとほぼ同時にフランスでは、「ヘルスパス」(ヘルスパスによる飲食店や娯楽施設等の入場制限)の制度が取られ、ワクチン接種率も急激に上昇し、それにより、感染状態も減少し、集中治療室の患者数もかなり減少していきました。

 今では、フランスでは、ほぼ日常の生活を取り戻し、屋外でマスクをしている人はかなり減りましたが、相変わらず、公共交通機関や飲食店以外のヘルスパスの提示が求められる場所などの屋内空間では、マスク着用が義務付けられています。

 そして、先日、パンデミック以来3回目の政府からのマスクが届きました。今では、どこでもマスクは買えるようになりましたが、義務化しているためなのか?まだまだ気を緩めてはいけないという警告なのでしょうか? 

 感染が減少したため、ヘルスパスはもう撤廃しても良いのではないか?という声も上がり始めている中、政府は追加のマスクを国民に配布し続けているということは、政府はまだまだ慎重な態度を崩していないという表れでもあります。

 政府からのマスクの配布はこれで3回目になりますが、度を重ねるごとに、クォリティもアップし、今回も6枚セットの洗えるマスクですが、かなり使いやすいように改良された自国製のリサイクル可能なもの。

   

マスクのチェックシート

 4時間ごとにマスクは交換してくださいとか、1枚に付き、50回(洗って)使用可能な6枚分のマスクのチェックシートまでついています。これでマスクをチェックしながら、マスクを使用する人がいるかどうかは、疑問ですが、つまり、1日2枚使うとして、150日間分のマスクだということです。

 感染が減少したとはいえ、ここのところ、若干ではありますが、上昇傾向に転じ始めたフランス。先日、フランスは議会で「ヘルスパス」は、必要であれば、2022年7月31日までは延長できる法案が採択されました。

 ここのところ、ワクチン接種の拡大で感染が収まりかけたに見えていた世界の国々でも、イギリス、ロシアなどでは、急激な感染者の増加が記録され、ドイツでさえも感染者の増加を発表しています。

 フランスは「ヘルスパス」で救われ続けるのか? それとも、これまで常にイギリスの数ヶ月後に同じような状態になって感染増加している前例を見る限り、またイギリスと同じ道を辿るのか? いずれにしても、政府が憂慮してマスクを送ってくるように、まだまだ、気を緩めることはできないのが現状のようです。


マスク無料配布


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2021年10月23日土曜日

海外での在外選挙投票には、事前に在外選挙登録が必要 そしてそれは2ヶ月もかかる

   

パリの日本大使館はここから歩いて7分程度のところ


 これまで私は、「在外選挙制度」というものがあることを知りながら、なんとなく忙しさにかまけて、日本の様子もよくわからないし・・やり方もわからないし・・と、なし崩しに、ここ20年以上も選挙の投票はせずに過ごしてきてしまいました。

 このパンデミックや日本の様子を見るにつけ、私も日本国民として、少しでもできることはしなくては・・と思うようになり、近々、日本で選挙があるのを機に、「在外選挙」の投票をしてみようと思い立ったのでした。

 総務省の在外選挙制度についてのホームページ(総務省・在外選挙制度について)もありますが、具体的に必要な書類などを直に聞いてみようと在仏日本大使館に電話してみると、まず、ほっとした何とも日本人らしい丁寧で優しい応対に思いの外、ほっこりさせられたのでした。

 しかし、在留届さえ出していれば、簡単に在外選挙の投票ができると思い込んでいた私には、ショックな話で、在外選挙で投票するためには、まず、「在外選挙登録」というものが必要で、在外選挙人名簿の登録申請書を提出しなければならず、実際に申請が受理されてから、登録証を受け取ることができるまでには、約2ヶ月間かかるということで、「今回の選挙には間に合いませんよ」と言われてしまいました。

 申請した書類は、外務省経由で、日本で最後に居住していた市町村の役所に送られて、住民票が抜かれていることなどを確認してから、発行されるものなのだそうです。

 しかし、大使館の担当者は、「今回は間に合いませんが、来年は参議院選挙もありますから、申請はされておいた方が良いですよ!」と勧めて下さったし、まだまだ、フランス生活も続きそうなので、せっかく来たのだから、申請しておくことにしました。

 最近では、日本出国前にも事前に申請することができるそうですが、私が日本の住民票を抜いたのは、かれこれもう20年以上も前のこと、しかし、フランスで在留届を提出済みであり、住所を変更していなければ、パスポートさえあれば申請することができるのです。(在留届を未提出の場合は、現在の住居の滞在を証明する電気料金の請求書などの住所が記載された書類が必要)

 また、住民票を抜いているのに、どこの区役所?と思いきや、自分が出国前に最後に居住していた市町村が管轄になるのだそうです。申請書には名前、生年月日、性別、フランスでの住所、日本から出国した年月日、日本で住民票に記載されていた最終住所、連絡先などを記入するようになっています。

 私が日本の住民票を抜いたのは、フランスの前にアフリカに行った時点の大昔の話、詳しい日にちなどは、古いパスポートを調べればわかるのでしょうが、とても思い出せませんでしたが、大体でいいですよ・・と仰るので、そのとおりに・・。

 私は、フランス国籍を持っているわけではないので、フランスでも選挙で投票する権利はなく、長らく日本の選挙にも参加していなかったので、かれこれ四半世紀近くも選挙の投票というものをしないまま過ごしてきてしまいました。

 在外選挙登録申請をするのは日本大使館ですが、大使館なんて、あんまり縁がなかったなと思いつつも考えてみれば、ここ20年以上の間には、パスポートの書き換え(自分の分と娘の分)、娘の日本の教科書の受け取り、相続手続きのために必要な書類の申請などなど、ざっと数えただけでも、これまでに50回近くも行っています。

 パリのフランス大使館は、シャンゼリゼにほど近いとても良い場所にありながら、これまで、大使館に行くときには、子供の送り迎えや仕事があったために、昼休みを抜け出して(といっても昼休みは大使館も昼休みのために昼休みをずらしてもらっていました)、全速力で走って行って、走って帰るという慌ただしさで、周囲の景色を楽しむような余裕はまるでありませんでした。

 あらためて、久しぶりに平日の昼間に行ってみると、凱旋門からふらふらと歩くと気持ち良いことこの上なく、また、大使館は嘘のように空いていて、申請もあっという間に済みました。現在は、日本に行くためにビザを申請する人などもほとんどなく、空いているのも当然なのかもしれません。

 この大使館の空いているタイミングならば、在外選挙登録申請もいつもよりもずっとスムーズにできるので、今が狙い目かもしれません。(といっても、今回の選挙には間に合わないのですが・・)

 日本の投票率が低いことは、大変、問題だと思いつつ、海外にいるからといって、投票する権利がありながらも、放置したままに何もしてこなかったことを今、反省しています。

 フランス人は大変、政治にとても関心のある国民で、日常から政治の話題が上がることも多く、そんなフランス人に影響されたところもあってか、また同時にフランスと日本の政治を見比べたりしていることもあり、日本が少しでもより良い方向へ進んでくれることを願いつつ、遠くに住んではいても、日本人としてできることを少しでもしたいと思った次第です。

 実際に投票する際は、実際の日本の投票日よりも1〜2週間早くに投票するということです。

 在外選挙登録には費用はかかりません。また、申請時は本人が大使館(または領事館)に出向く必要がありますが、大使館や領事館の遠くに住われていて、そうそう容易には行けない方には、大使館が費用を負担して、郵送してくださるそうです。

 一度、申請してしまえば、それ以降は同じ登録証で投票ができるそうなので、時間に余裕がある際には登録されておくと良いと思います。

 これまで、私も色々理由をつけては後回しにしていたことですが、思っていたよりもずっと簡単に申請できたので、それをお知らせできればと思いました。


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2021年10月22日金曜日

日本のテレビ・情報番組の視聴者からの質問捏造問題を見て感じたこと

 

 

 日本の大手テレビ局の情報・報道番組が視聴者から寄せられた質問を捏造していたことが話題になっていて、さもありなんな話だと思いました。

 この場合、番組が取り上げたい問題に関して、「視聴者から寄せられた質問」として、あたかも視聴者の多くが同じ疑問を抱いているかの如く扱うから、こういったありもしない質問を捏造することに繋がるのであって、恐らく、その方が説得力があると報道する側が考えており、演出の一つの方法で、また、そのようなことが常態化していることから起こるわけで、取り上げたい問題に対して、率直に報道すれば問題はないものの、妙な話だとも思います。

 また、これがなぜ公に暴露されてしまったのかは語られていませんが、内部にこのようなやり方に疑問を持っていた人がいたということでしょうか?

 しかし、私は、ここのところ、何回か、日本のテレビ局の報道番組から、インタビューを依頼されたことがあり、その際に感じたことから、その程度のことは、当然、あるのだろうな・・という感じがしたのです。

 私がご依頼を受けたのは、最近では、ほぼ、フランスのコロナウィルス感染対策や現状についてのテーマが多いのですが、お話を伺って、実際に話が進んでいくうちに、大抵、インタビューをする以前から、シナリオは決まっており、悪い言い方をすれば、局側の言わせたいことをなんとか言わせようとする・・そんな感じを受けたことがあるからです。

 日頃から、私はフランスの生の声、現実を日本の方々にも知っていただきたいと思ってブログを書いているので、日本の方々にそれをテレビというもっと大きなメディアで知って頂けるのは大切なことだと思い、ご協力させていただきたいと思ったのです。

 実際の放送は、フランスからは見ることはできませんが、当然、編集されるであろうインタビューは気になり、友人に頼んで録画したものを送ってもらったり、たまたまYouTubeなどで、ライブ放送されていたりすると見ることができるので、実際に放送された内容も拝見しています。

 しかし、それは、実際のインタビューで話した内容から、都合よく編集されていることがわかります。長いインタビューでも、数分にカットされることは当然のこととして承知していますが、切り取られた部分のあまりの偏りに、少々、憤慨したのです。

 番組ですから、ある程度の仮設やシナリオは必要だとは思いますが、これでは、現地の声としてインタビューまでして、報道する意味があるのだろうか?と思ってしまいます。

 つまり、フランスの現地からの声ということで、そのシナリオに都合の良い部分だけを切り取って証言者にされているわけです。

 例えば、フランスのヘルスパスの問題なども、私はかなり好意的に受け止めており、インタビューの内容の大部分は「ヘルスパスの制度は良かった・・このおかげでワクチン接種も大幅に拡大し、感染減少に繋がって、安心して日常生活を送ることができるようになった」ということを話したのですが、実際に報道されたのは、否定的な面ばかりで、やはり、伝えたいことはブログで・・と思わないわけにはいきませんでした。

 どの局も同じというわけではありませんが、こんな経験をしたことから、今回の「視聴者からの質問捏造事件」の話を聞いても、そんなことは朝飯前だろうし、謝罪をしたからと言って、基本的な報道の体制は変わらないだろう・・と思ってしまうのです。

 考えてみれば、「視聴者からの質問」というやり方も、「現地在住の日本人の証言」も演出のひとつであることに変わりはありません。

 今回の問題は、たまたま公になった氷山の一角に過ぎず、そのような報道の方法を考えるとフランスにだってないとは言えないかもしれないし、なんとなく、報道というものを疑ってかからなければならないと思ってしまうのです。

 情報過多の世の中、やはり、多くのニュースや報道を自分自身で見て、何が真実で、自分はどう考えるのかを見つめていかなければならないのだと私は強く思うのです。


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2021年10月21日木曜日

今、パリで人気のうどん屋さん 喜心 Kisin

   

一番人気の天ぷらうどん うどんと天ぷらは別皿盛り


 パリで人気の日本食屋さんといえば、恐らく軒数でいえば、圧倒的にお寿司屋さんだと思いますが、あまりにお寿司は広まり過ぎて、中国人経営のチェーン店展開のような、なんちゃってお寿司のお店が大半を占め、もはやお寿司は珍しくもなくなり、むしろ日本人の視点から見ると、本物のお寿司屋さんを見つけるのが難しくなりました。

 次に人気なのは、ここ数年で人気を不動のものにしたラーメン屋さんで、その拡大ぶり、人気ぶりは目を見張るものがあります。どのラーメン屋さんも食事時には必ず行列ができ、お店によっては、ちょっとこれがパリ?と思うほどの行列ができています。

 そして、その中に、ちらほら姿を現し始めたのが「うどん屋さん」で、恐らく、パリに最初のうどん屋さんができて久しいですが、国虎屋、十兵(Jubey)、浪花-YA、など、どれも、日本食屋さんが立ち並ぶパリ1区のオペラ界隈・サンタンヌ通り近辺に集中していました。

 中でも私のお気に入りは国虎屋さんで、うどんの本場四国のうどんが美味で、出汁も天ぷらなども、恐らく日本にあるうどん屋さんにも全く引けを取らないクォリティーで、何回か通ったことがありました。(ただし、お値段は若干高めです)

 そして、最近、周囲の友人やSNSなどで大絶賛されているうどん屋さんがあり、ぜひ、行ってみたいと思い、足を運んで見たのです。

  


 喜心(Kisin)というそのお店は、日本食レストラン街(パリ1区)とはちょっと離れたパリ8区、シャンゼリゼからそう遠くない場所にあり、ミシュランにも掲載されている名店です。

 九州産の小麦粉を100%使用しているという手打ちの麺は、喉越しも良く、こしもあり、透明な出汁は、軟水で北海道産の昆布と築地和田久の鰹節を使用して取られており、一口、口にすれば、化学調味料などは一切使われていない丁寧な出汁であることがすぐにわかります。

 透明でさっぱりしていながらも、しっかりした味わいが感じられる出汁です。

 

店内にはうどんを手打ちしている様子の写真が展示されている

  


 こじんまりとした店内は30席ほどですが、店内装飾なども華美ではないものの、しっとりとした日本を感じられるもので、使われている食器などからも、このお店の配慮が行き届いていることが、そのひとつひとつに感じられます。

  

うどんがつかみやすいように切り込みが入れられたお箸

 例えば、お箸も割り箸などは使用しておらずに、お箸が得意ではないフランス人への配慮からか、お箸の先にはうどんがつかみやすいような切り込みが入っており、うどんが入っている器も表面は小さめながら、底が深めでたっぷり入るわりには場所を取らず、冷めにくい配慮が感じられます。

 提供されているメニューひとつひとつに加えて、細部にわたる配慮、全てにお店の本気度が伝わってきます。

 


 一番人気は天ぷらうどんのようでしたが、天ぷらもさっくりカラッと揚がっていて、うどんとは別皿に天つゆ、大根おろし(鬼おろし)と生姜が添えられています。天ぷらもたっぷり、種類に富み、えびが2本とオクラ、かぼちゃ、モロッコインゲン、紫いも、ズッキーニ、マッシュルームなどが盛られており、メニューにはサラダかお漬物(カブや人参、きゅうり、枝豆など)が混ぜられた酢飯のご飯か白米が選べるようになっています。

 サラダのドレッシングもお醤油ベースのゆず風味です。

 店内に入ってすぐにカレーうどんの注文が入っていたのか、店内にスパイシーなカレーの香りが漂っており、一緒に行った娘はお店に行く前から「胡麻坦々うどん」を食べる!と決めていたにもかかわらず、カレーの誘惑に負けてカレーうどんを注文しました。

 しかも、それに加えて揚げ餅入りという炭水化物の揚げ物トッピングという魅惑的なメニュー(牛カレー揚げ餅うどん)を楽しみました。カレーはさほど辛さはありませんが、(フランス人は辛いものが苦手)、充分にスパイスの香りがたち、手打ちうどんともよく絡む絶品。

 


 その上、サイドメニューを酢飯のご飯という炭水化物オンパレードのラインナップでしたが、不思議と(恐ろしくもありますが)ツルツルッと、軽々と彼女の胃の腑に消えていきました。

 これでお値段もカレーうどん(揚げ餅・チーズが選べる)が19ユーロ、天ぷらうどんが20ユーロとクォリティーと内容・量のわりにはお手頃で、人気の理由が伺えます。

   

  

 ラーメン屋さんにしても、うどん屋さんにしても、いつも行くと思うのですが、麺をすするという文化のないフランス人が器用に音を立てずに麺類を食べる様子も、そして、けっこうお箸を上手に使う人が多いのも日本人としては、嬉しい光景でもあります。

 もちろん、ナイフやフォーク(隣の人はナイフとフォークで天ぷらを切りながら食べていました)なども用意されており、頼めば出してくれます。

 しかし、フランスは、もともと小麦粉文化の国、うどんがフランス人に受け入れられないわけはありません。

 日頃から美味しいものがあれば、すっ飛んでいって食べてみたいという衝動に駆られる私ですが、今回のこの「喜心」は、そんな数々のお店の中でも大ビンゴでした!

 お持ち帰りメニューもありましたが、思い止まりました。

 



パリ うどん 喜心 Kisin


⭐️喜心(Kisin)   月曜〜土曜11:45~14:30, 19:00~23:00 日曜・祭日閉店

7-9 Rue de Pnthieu 75008 Paris

メトロ ①⑨番線Franklin D.Roosvelt  ⑨番線 Saint-Philippe-du-Roule




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2021年10月20日水曜日

ミスフランス運営会社・番組制作会社へフランスフェミニズム団体が訴訟状提出

   



 1920年にモーリス・ド・ワレフによって「フランスで最も美しい女性」というタイトルで始まった「ミスフランス」は、世界で最も歴史のある美を競うコンテストの一つです。

 1987年からは、この決勝戦の模様がテレビで生放送されており、芸術、スポーツ、メディアのパーソナリティで構成される審査員の投票によって、優勝者が選出され、この者には、その年の「ミスフランス」のタイトルが付けられます。

 ミスフランスの候補者は、まずフランス本土と海外の地域の代表に選ばれる必要があります。この中からさらに、スタイル、シルエット、スピーチ、行動、および一般的な文化的な教養についてのテストなどに従って、参加している地域のミスの中から15人のミスを事前に選択します。

 その他、審査基準には、相当数の項目があります。

 まず、フランス国籍であること。その年の11月1日の時点で18歳から24歳であること。独身であること(結婚歴がないこと)。身長170㎝以上であること。犯罪歴のないこと。整形手術をしていないこと。

 また、NG事項は、その他にも、刺青、公の場での喫煙行為、宗教的な宣伝性などなど、詳細にわたっています。

 今回のミスフランス選出にあたって、主催者の要求する基準を満たしていないために大会への参加を諦めなければならなかったと主張する3人の女性が、フェミニスト団体とともに、ミスフランス運営会社と番組制作会社を提訴しました。

 彼女(彼)らの申し出によれば、「美しさを代表する」ためのミスフランス選考の募集基準は差別的であり、フェミニスト団体によれば、この性差別的なコンクールは労働法に違反しており、この番組のプログラムは、「労働者の権利を無視しながら、女性を使って儲けようとするものである」と主張しています。

 このフェミニスト団体は、あえて私たちがフェミニストであるかどうかではなく、女性の権利を行使することを求め、具体的に「公の場での喫煙を禁止したり、目立つ刺青やピアスの着用についてのこれらの差別的な条項を規則から削除すること」などを求めています。

 しかし、今回の争点はコンテスト開催者・番組製作者とコンテスト参加者の間に雇用契約に関してと、これに労働法が適用されるものであるかどうかというところにあります。

 そもそもコンテストという誰かを選出する場面で、選考基準は必要不可欠のものであると思われますが、提訴している側からの言い分では、その基準は、現代社会の基準には即しておらず、その栄誉を勝ち取る機会を公平に与えられていないというものです。

 「コンテストへの参加は仕事の提供につながり、差別条項が含まれたミスフランスによって課された規制による、このポストへの応募の可否は雇用における差別に相当する」と言っているのです。

 一方、コンテスト開催側は、「これはコンテストであり、労働法に準拠するものではなく、一種のゲームでもあり、それに規則は存在する」と反論しています。

 多くの国民が一種のお祭りのように楽しんで見ているこの「ミスフランス」にでさえも、またまた登場するフランス人お得意の「権利の主張」。

 訴訟問題とは縁遠い感のあるこの催しに水をさされた感は否めませんが、この問題浮上で今年の「ミスフランス」は例年以上に注目される結果となりそうです。

 今年のミスフランスのコンテストは12月11日に開催される予定です。

ミスフランス


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