毎年のように婦人科検診の通知が来ていたにも関わらず、ずっと放置したまま、ここ数年は、それにロックダウンなどが重なり、できる限り、病院には行かないことにしていたため、これまで私がフランスで婦人科検診に行ったのは、23年間でたったの一度だけでした。
もうそれは、10年以上も前のことだったので、記憶も朧げで、ひたすら不快で痛かった記憶しかなく、そのうちの一つは乳がん検診だったと思うのですが、大してありもしない胸を無理矢理機械で挟んで、レントゲン?を撮ったのが、もう悲鳴をあげるほど痛くて、「これは、検査で病気になりそう!」などと思い、「もう一生やりたくない!」と思ってしまったのです。
以来、検査の通知が来ても、ロクに中身も見ずに、捨ててしまうことはないものの、なんとなく気にしながらも、いつか、時間的にも、精神的にも余裕ができたら行こうと、束のように通知が溜まっていき、そのうち、もう封筒を見ただけで、「あっ!これは婦人科検診の通知だ!」とわかるくらいになり、通知に添えられている手紙にも「あなたは、ここ何年も検診を受けていませんが、検診を受けることはとても大切なことです」などと記載されるようになり、歳を重ねるにつれて、普通に生活しているだけでは健康を保てないことを痛感しつつあり、少々、不安を覚えるようにもなってきました。
先日、いつも薬を処方してもらう、かかりつけの医者のところに行ったときに、ついでに届いていた通知を持っていって、相談したところ、「それは、やらなきゃ!前回は、いつやったの?」と言われ、「もういつだったか覚えていないくらいずっとやっていない・・」と言うと、「そんなはずはない!絶対、5年以内にはやっているはず・・」などと断言されて、なんだかそれ以上はもう言い返すのも憚られて、婦人科を紹介してもらったのでした。
彼女が知っているお医者さんなら、少しは安心か・・と自分に言い聞かせて、予約を入れて、数十年ぶりに婦人科検診に行ってきたのでした。
婦人科検診、(今回の通知は子宮頸がんの検診)は、厚生省(公衆衛生局)が2018年に開始した子宮頸がんプログラムの一環で、その通知を持って行けば、検査は無料でやってくれます。
このプログラムは、25歳から65歳の全女性を対象としており、子宮頸がんの早期治療を行い、死亡率を減らし、また情報のフォローアップとケアの質を向上させることを目的としており、全ての女性が全国の子宮頸がん検診への平等なアクセスを保証しています。
年齢に応じて、3〜5年に一度の検査が推奨されていますので、これに応じて、この間隔で通知が送られてくるものと思われます。(私の場合、ずっと受けていなかったので、毎年のように送られてきていたのだと思います)
この通知を受け取ったら、地域の婦人科に予約を取り、検診票を持参して、検診を受けます。この検査の実施の記録と結果はこのプロジェクトを担当する地域ガン検診調整センター(CRCDC)に送信されます。
この検診に関しては、通知と健康保険カート(Carte Vital)を持参しさえすれば、前払いなしで国民健康保険により100%カバーされます。(しかし、一応、レシートのようなものをくれるので、それに記載されている内容によれば、かかっている費用は30ユーロ(約4,000円程度)ほどです。
フランスでは、がんの治療に対しては(特別な療法は除く)100%、国で補償されるので、早期に発見して、がんを回避することは、結果的に国の医療費節減にもつながるのです。
年齢、妊娠、出産の経験、出産時の手術について、健康状態(既往症など)について、家族(家系)の病歴、アレルギーなどについての簡単な問診の後に、内診が行われ、子宮頸部からのサンプルが採取されます。
多少の痛みと不快感はあるものの、前回感じたほどの嫌悪感はありませんでした。内診・サンプル採取は正味5〜10分ほどで終わります。
採取されたサンプルは、宛名のついた封筒に入れてくれるので、それを自分で切手を貼って郵送します。
サンプルは自分で郵送するところが、いかにもフランス |
一度、検診を受けると個人個人のデータファイルが作成され、地域ガン検診調整センター(CRCDC)がフォローアップし、今回の結果とともに今後のデータもそれに追加される形で保存されます。
このデータは、フランス公衆衛生研究所やがん研究所(INCa)など、これらのミッションを担当する研究所で共有され、がん制御システムを評価、研究を実施するために、国立がん研究所の腫瘍学データプラットフォームに追加され、ナショナル・ヘルスデータシステムのデータとの照合されます。
長いこと放置して、検診を受けなかったくせに、こんなシステムを知ってみると、自分の健康維持だけでなく、自分の検査が、国のがん研究に貢献しているようで、少し嬉しい気分です。
ただし、データ保護規則(RGPD)およびデータ保護法に基づき、このデータ処理へのアクセスを拒否する権利もあり、自分の権利が尊重されていないと感じた場合は、CNILに苦情を申し立てる権利があります。
本人には、3週間後くらいに、サンプルを送った検査施設から直接、結果が送られてくると言うことです。
長いこと気にかかりつつも放置してあった検診をようやく受けて、3週間後に受け取る通知に問題なければ、積年の気がかりが解消され、ようやくホッとできることに、なんだ・・もっと早くやっておけばよかった・・と調子のいいことを思った私でした。
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