2021年10月16日土曜日

3回目のワクチンを拒否するとヘルスパスが無効になるかもしれない

 


 ヘルスパスの適用から一気にワクチン接種率が上昇したフランス。このおかげで、現在、感染状況も落ち着きを見せ、日常生活を取り戻しつつも安定した状況を保っています。

 しかし、1日の新規感染者数は5,000人前後から下がることはなく、引き続きウィルスが確実に存在し続けていることを示しています。そんなフランスの次なる課題は、2回目のワクチン接種から6ヶ月経過すると、その効果が減少することが多くの専門家の研究で明らかにされている今、3回目のワクチン接種をどのように浸透させていくかにあるようです。

 現在のところ、フランスでは、9月から、2回目のワクチン接種が終了して6ヶ月以上経過した65歳以上の人(特に80歳以上を優先)、重症化のリスクの高い人(腎不全、糖尿病、肥満、癌患者、心不全、高血圧、慢性肝疾患、脳卒中、重度の免疫不全などの病歴のある人)に対しては、3回目のワクチン接種が推奨され、すでに開始されています。

 今後、2回のワクチン接種後6ヶ月後に急激に効果が減少し始めると言われている現象がどの程度、感染状況、また、感染悪化の状況に影響してくるかは未知の部分であるために、3回目のワクチン接種をどうやって拡大していくか、また、どの程度、必要性があるかを国民に納得させていくのは容易なことではありません。

 先日、労働相のエリザベット・ボルネがインタビューを受け、「最近の研究ではコロナウィルスに対する免疫がワクチン2回目の投与から6ヶ月後に低下することが示されています。」「したがって、3回目の投与を行うことは絶対に必要です。」と述べています。

 また、この必要性に伴い、「3回目のワクチン接種を拒否した場合は、それ以前のヘルスパスの撤回を検討している」「これは現段階では決定事項ではないものの、あくまでもフランス国民を保護するための重要な検討事項」と述べています。

 「今日、私たちが幸いにも恩恵を受けているワクチンによる保護を継続させることは必要不可欠である」としています。

 「ヘルスパス」の起用の発表も、かなり衝撃的で、強硬的なもので、当初は少なからず反発もありましたが、結果が伴ってきたために、今では国民の大半はこの「ヘルスパス」を受け入れています。

 それが「3回目のワクチン接種をしなければ、これまでのヘルスパスが無効になる」というのもまた、なかなか強硬な手段で反発を生みそうな気もします。

 しかし、これまでヘルスパスによって、ある程度、保護された空間であった場所が、6ヶ月以上経過したワクチンの効果が薄れてきている人も同じ空間にいるということは、ヘルスパスの意味をなさなくなってしまうことになります。

 ヘルスパスの起用は国民をワクチン接種に追い立てる目的とともに、人の集う空間を少しでも保護された場所に保ち、相互に人々を保護する役割も果たしてきたのです。それが6ヶ月以上経過し、ワクチンによる保護が薄れてきた人が混ざってしまうのでは、ヘルスパスの意味がなくなってしまうのです。

 結局、ヘルスパスにより、国民を保護し続けることを考えれば、少々、残酷な気もしますが、6ヶ月以降経過したヘルスパスは無効とするというのは至極、真っ当なことなのかもしれません。

 数度にわたるロックダウン(完全ロックダウンからレストランや店舗の営業停止、外出行動範囲、時間制限など)やヘルスパス、医療従事者のワクチン接種義務化など、フランスはこれまで、感染対策に関しては、かなり強硬な手段を取り続けてきました。

 しかし、フランスは、かなり強硬な手段を取らなければ、統制の取れない国であることは、これまでの感染の経緯を見ても明らかで、彼らは危機管理能力、衛生観念、感染対策の基本的な能力が極めて低い上に、ある程度の個人個人の良識に頼ることが可能な日本と違って、自主的な自粛などはあり得ない話で、強硬的な規則がなければ、感染を抑えることは不可能なのです。

 2回のワクチン接種率が上昇したことを喜んでばかりはおられず、今度は、このワクチン接種の効力が薄れ始めていく対応をしていかなければならないのです。これを放置すれば、また、ふりだしに戻り、さらなる混乱が生じます。

 依然として、コロナウィルス対応は綱渡り状態です。

 ようやく落ち着き始めたと思ったら、今度は3回目のワクチン接種問題とそれに伴うヘルスパス問題。コロナウィルスが完全に終息するか、さらに長期に効力が持続するワクチンができない限り、永遠にこれが続くと思うとうんざりしますが、これも致し方ありません。

 私は2回目のワクチン接種が終了したのが、6月の初めだったので、このままでいくと、3回目のワクチン接種は12月になりそうです。


3回目のワクチン接種 ヘルスパス無効


<関連記事>

「フランス9月1日から3回目のワクチン接種開始」

「フランスは、ヘルスパスがないと身動きが取れなくなる! 義務化という言葉を使わない事実上の義務化」

「フランスでワクチン接種が進んでも感染拡大が止まらない理由」

「コロナ禍で、日本では可能でもフランスでは不可能なこと フランス人に黙食はあり得ない」

「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」


2021年10月15日金曜日

フランスでは知らない人に話しかけられる確率が高い私

  


 フランス人、特にパリジャン・パリジェンヌはツンとしていて、お高くとまっているイメージがあるかもしれません。たしかにそういう感じの人もいるにはいますし、同じフランスの中のフランス人同士でも、パリジェンヌ・パリジャンは感じが悪いと評判が悪いのも事実です。

 しかし、実際に生活していると、そうでない人も多く、あくまで私は日本(東京)と比べてのことですが、パリでは、知らない人に話しかけられることが多いのです。

 最近は、Googleのおかげで随分と減りましたが、私は実によく道を聞かれることが多かったのですが、実のところは、私は、大変な方向音痴で、特別よく知っている場所は別として、方向感覚がなく、道を説明するということが大変苦手なのです。

 最初は、「外国人の私になぜ道を聞くかな?」などと思ったりもしたのですが、フランスには、そもそも移民も多く、外国人が普通に生活しているので、外国人だからといって、よそ者だというような感覚が彼らには、あまりないのです。(もっと、別の意味での区別はあるとは思いますが・・)

 道を尋ねられやすいタイプの人というのがあるそうですが、どうやら、私はその一人のようです。

 しかし、私は、日本ではあまり知らない人に話しかけられるということはないし、日本で道を聞かれたこともほとんどありません。

 道を聞かれるだけでなく、フランスでは知らない人によく話しかけられます。

 例えば、買い物をしていて、知らないおばさんから、「それ、どうやって食べるの? 美味しい?」とか、逆に聞いてもいないのに、「これいいわよ!」と言われたり、「これは気をつけなきゃダメよ!」とか言われたりします。

 この間もバターを見ていたら、「このバターとこっちのバターはどう違うの?」(フランス人が私にバターについて聞くか?と思ったけど・・)とか、すれ違った女性に、「そのスカーフ素敵ね!どこで買ったの?」とか、骨折して矯正用の靴を履いていた時も、「うわぁ〜私と一緒!どうしたの?」とか、先日もバス停でバスを待っていたら、青年から「バス・・もうすぐ来るはずなんですけどね・・この間もね・・」などと話しかけられて、ナンパでもなかろうに・・と思ったりもしました。

 薬局で顔見知りの店員さんと話していたら、別の見知らぬ人が会話に加わってきて、話に花が咲いたり、なかなか知らない人と話す機会は少なくありません。だからと言って、それはその場限りのことなのですが、とにかく、フランス人が話好きなことに間違いはありません。

 考えてみれば、バスに乗ったりする時も、運転手さんに「ボンジュール!」と挨拶している人も少なくないし、運転手さんの方から「ボンジュール!」と言われることもあります。知らないバスの運転手さんにも気軽に挨拶する、そんな文化なのです。

 うちの母は日本でも、わりと気軽に誰とでも話をする人で、私が若かった頃には、そんな母を「ママは全くおしゃべりなんだから・・」と、ちょっと恥ずかしいような気持ちでいたのですが、まさに、私は自ら望んでというわけでもないにもかかわらず、これではまるで母のようだと現在の自分に苦笑してしまいます。

 だからと言って、私が日本に行った時には、やはり、知らない人から話しかけられることはないので、やはり文化の違いなのか?とも思います。

 自分自身がフランス語や英語を話している時と、日本語を話している時は、無意識のうちに何か自分の中で違うスイッチが入る気がすることもあります。

 それでも、やはり、フランス人が知らない人にわりと気安く話しかけることは間違いないのですが、しかし、それも誰にでもというわけでもなさそうなのです。

 先日、家のプリンターのインクが切れて、娘がインクを買いに行った時、「じゃあ、ついでにこの空っぽになったインクのボックス捨ててきて!」と頼んだのです。空のインクのボックスはどこにでも捨てられるゴミではないので、売っている場所なら専用のゴミ箱があるためです。

 娘は、その空のインクのボックスを持ってゴミ箱を探してウロウロ・・ようやくゴミ箱を見つけて捨てに行ったら、近くにいた警備のおじさんが、「ゴミ箱、探しているみたいだったから、場所を教えてあげようかと思ったけど、怖くて話しかけられなかった・・」と。

 イカつい警備のおじさんに怖がられる娘には、ちょっとウケましたが、どうやら、だれも彼もが誰にでも気安く話しかけるわけでもなさそうです。

 イカつい警備のおじさんが意外とシャイだったのか?はたまた娘がよっぽど怖い顔して歩いていたのか? 

 黙って歩いているだけで、話好きなフランス人を怖がらせる娘と、やたらと知らない人から話しかけられる母親、妙な親子です。


フランス人は話好き

 

<関連記事>

「パリはフランス人に嫌われている」

「コロナ禍で、日本では可能でもフランスでは不可能なこと フランス人に黙食はあり得ない」

「海外生活と日本の家族 母からの最期の手紙」


 

 

2021年10月14日木曜日

ワクチン未接種の医療従事者は医療従事者全体の0.6%

   


 医療従事者のワクチン接種が正式に義務化された9月15日から約1ヶ月が経過しました。

 7月からヘルスパスの起用が開始され、食事に行くにも、美術館や映画、コンサート、長距離の旅行などなど、フランスではヘルスパスがないと身動きが取れない状態になり、「義務化」という言葉は使わないものの、ワクチン接種はほぼ義務化されたようなものでしたが、医療従事者はきっぱりとワクチン接種は義務化という言葉を使って義務化されました。

 この医療従事者のワクチン接種義務化はかなり厳しい措置を伴うもので、ワクチン接種をしないと給与が支払われない状態になるというもので、ここでは、解雇という言葉は使わないものの、ワクチン接種を拒否している医療従事者は停職処分となっています。

 7月にこの法令が発表された時点では医療従事者の中でも介護の仕事に携わる人のワクチン接種率は60%程度でしたが、現在は、介護者も含めた医療従事者のワクチン接種率は99.4%にまで上昇しており、ワクチン接種をしていない者は医療従事者全体の0.6%だけとなりました。

 頑なにワクチン接種を拒否して退職までに至った者は全体の0.1%程度でかなり例外的なケースのようです。

 当初、この医療従事者のワクチン接種義務化=ワクチン接種をしていなければ仕事ができなくなる状況に反発して、多くの医療従事者が停職になったり、退職をしてしまい、医療体制に弊害が起こるのではないかとの懸念もされていましたが、これまでに病院ないし介護施設等が閉鎖されたり、業務が滞ってしまったケースはなく、結果的にここまでの数字まで上昇してきたので、今後、医療従事者のワクチン接種義務化について、これ以上は問題になることもないと思われます。

 それでも、ワクチン接種をこの段階にまで至って未だに拒否し続けている0.6%の医療従事者は全体の割合としては、少ないものの、実際の人数に換算すると約15,000人ほどの人数でもあり、停職処分にまでなっても拒否し続ける人をどう説得するのでしょうか?

 そして、彼らは拒否し続けて仕事もできずに、どうやって生きていくのでしょうか?

 大勢に影響はないものの人道的にどうなのか? 当初は、実際に医療従事者とてワクチン接種を受けるかどうかの選択の権利はあるべきだ!などの声が大きく上がっていました。

 しかし、個人の意思を尊重するべきだという声が猛然と上がり続けると思いきや、これらの依然としてワクチン接種を拒否している医療従事者がインタビューに答えていたりすると、かなり露骨に冷たい態度を示すフランス人が多いのにも、ちょっと意外な気がしたりもします。

 この背景には、医療従事者にかかわらず、国民全体の85.5%までワクチン接種率が上がっている状況があり、「医療従事者はワクチン接種を受けるのは当たり前だ!」という認識につながっているようです。

 時が経つにつれて、ワクチンに対する世論も変化してきていることを感じます。

 今回、ワクチン接種拡大のためにフランス政府が取った政策は、ヘルスパス(ワクチン接種2回接種証明書、72時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)がないと多くの場所にアクセスできないという法令や、医療従事者のワクチン接種義務化=ワクチン接種をしなければ停職(給料が支払われない)という、かなりのインパクトのあるもので、日頃のフランスならば、もっともっと反発を生み、暴動でも起こりかねないほどの強硬手段でした。

 しかし、パンデミック・数回にわたるロックダウンから、国民も、いつまでの感染の波とロックダウンを繰り返すことはできないという危機感から、どうにか事は政府の思いどおりになり、なんとか結果も伴ってきました。

 フランス政府は、0.6%のワクチン未接種の医療従事者への説得とともに、医療従事者に対しては、早めにワクチン接種を開始し始めたこともあり、3回目のワクチン接種を推奨し始めました。

 現在のところ、医療従事者への3回目のワクチン接種に関しては、義務化にするかどうかは決定されていません。


医療従事者ワクチン接種義務化


<関連記事>

「10週連続のヘルスパス反対デモと3,000人の医療従事者の停職処分と戻ってきた日常」

「フランスは、ヘルスパスがないと身動きが取れなくなる! 義務化という言葉を使わない事実上の義務化」

「フランスのヘルスパスは成功したのか?」

「フランス病院連盟が政府に要求する全国民ワクチン義務化」

「高齢者施設の介護者へのワクチン接種がびっくりするほど進んでいない!ワクチン接種義務化の是非」


2021年10月13日水曜日

フランス2022年1月から野菜や果物のプラスチック包装禁止

  


 フランス政府は、2022年から、現在使用されている野菜や果物のプラスチック包装を禁止することを発表しました。

 この法令により、フランスでは、ねぎ、ズッキーニ、なす、ピーマン、きゅうり、トマト、カリフラワー、ジャガイモ、人参、玉ねぎ、かぶ、りんご、梨、バナナ、オレンジ、キウィ、みかん、グレープフルーツ、メロン、パイナップル、マンゴー、柿などの青果はプラスチックの包装で販売することはできなくなります。 

 ただし、例外として、1.5㎏を超える容量の青果については、引き続きプラスチック包装で販売が可能であり、まとめて販売すると劣化リスクが高い完全に熟した果実、春頃収穫される赤い果実(いちごなど)も例外に加えられています。

 罰則・罰金がなければ規則ではないようなフランスならではで、この義務を順守しなかった場合、罰金は15,000ユーロ、1日当たり1,500ユーロの罰金が課せられる可能性があります。

 店舗にもよりますが、現在、果物と野菜の約37%がプラスチックのパッケージで販売されており、これはプラスチック消費量の45.5%にあたります。

 日頃、買い物をしていても、フランスではもともとスーパーマーケットなどの野菜なども計り売りが基本で、自分で選んだ分量の野菜を袋に入れて、専用の計りにかけて、出てくる金額とバーコードが表示されたステッカーを袋に貼り付けて買い物をするので、そこまでプラスチックを使っているとは思ってもみませんでした。

 しかし、考えてみると、自分で必要な分だけ自分で選んで買い物をする野菜や果物の他には、マッシュルームやバナナ、比較的、安くまとめて売るために、プラスチックを使用した包装もたしかにあるのです。それだけ、プラスチックについて無意識に利用していたことを今さらのように思い知らされます。

 日本へ行くと、野菜などもプラスチックで適量に仕分けされ、買い物も簡単に済むのに・・などと思っていた私は、自分の環境問題への認識不足を感じます。

 もっとも、日本はゴミの収集もフランスとは比べ物にならないくらい徹底しているので、食料品がパッケージされていたトレイなどもきれいに洗って回収されているので、日本はまた別のアプローチの仕方なのかも・・と思ったりもしますが、フランスのゴミ収集・処理の現状を見れば、日本のような回収作業はほぼ不可能なので、こういったかなり強行的な手段に出るのも致し方ないのかもしれません。

 この禁止は、使い捨てプラスチックを排除するというフランスとヨーロッパの方針の一環で、政府はこの試みにより、年間10億以上の不要なプラスチックの削減に役立つことになると見積もっています。

 フランスでは、レジ袋というものもなくなって久しく、使い捨てのプラスチック製の食器や綿棒やストローなど、いくつかの商品は販売できなくなりました。

 しかし、この措置は果物や野菜の包装に完全に終止符を打つものではありません。包装は、プラスチックに代わる解決策として、木製のものや段ボールの使用、また野菜や果物の貯蔵方法についても検討の余地があるとしています。

 それにしても、ここ1〜2年でのスーパーマーケットでの環境問題に対応する規制は、次から次へと進み、レジ袋がなくなって以来、野菜などの計り売りの際に使われていたビニール袋は全て紙袋になり、食品廃棄物を減らすために賞味期限ギリギリもしくは切れているもの、見るからに危うい野菜などが食品廃棄物防止のラベルが貼られて販売されるようになり、レシートを廃止する動きから、今度のプラスチック包装禁止の法令です。

 地球温暖化が進み、洪水などの被害が多発している中、このような環境問題への取り組みは必須で急務であるとはいえ、先日もマクドナルド・フランスのペットボトル廃止から生じたマクドナルドの水問題が沸騰したばかりですが、スーパーマーケット・食品業界が優先事項として特にターゲットになっている感じが否めないことも確かです。

 それだけ日常に直結するものであり、消費量も多いことからだと思いますが、これに対応していく業界側も悲鳴をあげています。

 変化を嫌うフランス人が変化していくことを余儀なくされている・・地球環境問題は、急務であることをひしひしと感じさせられる、ここ数年の変わり様なのです。


フランス 2022年1月からプラスチック包装禁止


<関連記事>

「マクドナルドの水が呼び起こす大論争 Eau by McDonald's」

「食品廃棄物防止・減少へのフランスの取り組み スーパーマーケットの食品廃棄物防止のラベル」

「フランスのスーパーマーケットからレシートが消える」

「ゴミの捨て方に見るフランス人のモラル フランス人には、箱を潰して捨てようとか、そういう観念はない」

「フランスでの日常の食料品の買い物 ① フランスの野菜」

「フランスでの日常の食料品の買い物 ② フランスのチーズ等 料理せずに簡単に食べられる食品」














2021年10月12日火曜日

フランスの小・中学校(高校) 私立進学へのススメ

 


 子供の教育は、もちろん、その家庭に一番の責任があることは言うまでもありませんが、子供の通う学校も大きくその子の人生に影響してきます。

 どの国にも社会的格差は存在しますが、フランスはその格差がかなり大きく、子供の頃から通う学校によって、まるで世界が違います。そのどちらに行くか、人生の別れ道の違いは最初は小さいものでも、年齢を重ねるとともに大きくなっていくのが、恐ろしいほどです。

 我が家の近所にも、小学校、中学校、高校ともにいくつかの公立の学校がありますが、たまに近所を走っているバスに乗ったりすると、子供たちのバスの中での立ち振る舞いや言動で、大体、どこの学校の生徒なのかが見当がつきます。

 我が家は、そんなに治安の悪い地域でも貧窮層の多い地域でもないにもかかわらず、公立の学校がこのような状況であることは、信じ難いことですが、これがフランスの現実なのです。

 家の近所には、私立の学校は幼稚園から高校までの一貫教育の学校が一つだけなので他に選択肢はなかったのですが、それにしても、バスの中で暴れて騒いでいる子供たちを見ると、もしも私が娘の教育について、深く考えずにこれらの公立の学校に入れていたら、娘もこの子たちの仲間入りをしていたかもしれないと思うと今さらながら、私立の学校に入れて助かった・・などと思うのです。

 特に中学生・高校生くらいになると、どちら側の子供たちなのかは、一目瞭然です。

 私が娘を私立の学校に入れようと思ったのは、当時の私の職場の近くに、なかなかな暴れようの公立の中学校があり、こんな家賃の高そうなパリの中心に住んでいる子供たちでも、こんなことになる・・と危機感を持ったことがきっかけでした。(学校のストライキにうんざりしていたこともあります)

 私たちは、娘が小学校に入学する少し前に現在の場所に引っ越してきたので、小学校からは私立へと思って、入学の申し込みをしたのですが、すでにその時点では定員オーバーで、娘の名前はウェイティングリストに入れられ、仕方なく、その学校に入学できるまでは、公立の小学校に通うことにしていたのです。

 現在はわかりませんが、当時は私立だからと言って、日本のようにお受験があるわけでもなく、子供の能力が測られることもありませんでした。しかし、なんとかして、その学校に入学させてもらえないかと、娘の成績表を送ってみたところ、夏休みの間に「面接に来てください」と学校から連絡があり、急遽、夏休みの間に娘の進学先が変更になったのでした。

 その学校は、カトリック系の学校ではありましたが、宗教色はあまり強くはなく、他宗教の子供たちも多くおり、校内にチャペルはあるものの、礼拝なども強制的に参加しなければならないわけでもなく、どちらかというと、子供たちの学力向上をうたっている学校で、バカロレアの合格率100%を宣言していたので、少しでも優秀な子供を集めたいと思っていることは明白でした。

 私が最初にその学校を見に行って、すぐに思ったのは、「子供たちの顔つきが全然違う」ということでした。小さい子供でもこんなに顔つきが違うものなのかと逆にそのことが空恐ろしいくらいでした。子供の顔つきがここまで違うというのは、明らかに学校の教育なのです。

 バカロレアの合格率100%ということは、できない子は追い出されるということで、小学校からでもできない子は留年(これはフランスの学校では当たり前のことですが・・)、または、やんわりと他の学校への転校を勧められます。

 ですから、娘が小学校、中学校、高校と進む間に、いつの間にかいなくなっていた子供たちもちらほらいました。特に中学校から高校にかけては、特に急に学力ともにその子供の様子が変わってしまうことも少なくない難しい年頃です。

 しかし、厳しいのは学力だけではなく、日頃の生活態度、言葉遣いなども、成績同様に評価され、先生を睨みつけようものなら、「目を伏せろ!」などと言われるほどだったのです。

 常に自由や民主主義を掲げ、言いたいことを言うフランスの文化の中でこのような教育は意外でもありましたが、このような社会にあるからこそ、ある程度の枠内で厳しい環境に身を置くことは必要なことなのかもしれません。

 私立の学校だからこそ、成績や態度が悪ければ追い出すこともできるのですが、それは、そこにいる子供たちを守ってくれるということでもあります。

 大人になれば、ある程度、危険な人には近づかないこともできるし、自分が身を置く環境は選ぶことができますが、学校という括りは、意外にも守られていない環境でもあるのです。特に小学校、中学校はその子の基盤ができる大切な時間です。

 格差の大きい社会であるからこそ、クズは限りなくクズです。麻薬やドラッグなども年々蔓延し、低年齢化していることを考えれば、子供が1日の大半を過ごす学校環境を選んであげることは、とても重要なことに違いありません。

 フランスでは、学歴云々以前に(学歴ももちろん重要ではありますが)、その子供が真っ当な人間になるかどうかがかかっているような気がするのです。

 フランスの文部省は、たいそうな理想を掲げてはいますが、現場は理想どおりには行ってはいないのです。

 学校によって差はあるとは思いますが、フランスは私立だからといって、極端にお金がかかるということもありません。私はフランスでは、小学校・中学校・(高校)は特に私立の学校をおススメします。


フランスの小学校・中学校・高校 私立校のススメ


<関連記事>

「学校選びは人生の岐路 娘の通ったフランスの学校はなかなか厳しい学校だった」

「フランスの教育・学校・バイリンガル教育 ①」

「フランスの教育・学校・バイリンガル教育 ②」

「実践よりも、まず、理論のフランスの教育」




2021年10月11日月曜日

パリジャンの84%は自分たちの街が汚れていると思っている でも自分たちが汚しているとは思っていない

 

 


 パリの街並みはやはり美しいです。しかし、街並みは美しくても清潔であるかと言えば、そうでもありません。

 JDD(Le Journal du dimanche)の行った世論調査によれば、実際にパリの住民の84%は自分たちの街が汚れていると考えており、73%が清潔さとその維持に不満を感じていると答えています。

 パンデミックにより、数回のロックダウンを経て、一時はパリの街も至るところが消毒され、人出が極端に減少し、飲食店も閉鎖されたことから、その間は清潔さを保っていました。

 しかし、ロックダウンが解除され、ワクチン接種が進み、ヘルスパスの起用により、人々がほぼ以前の日常と同じように街に出始めると、再び街の清潔さも失われ、不衛生な日常が戻ってきました。

 日本人がイメージするおフランスのイメージのパリはシャンゼリゼやサンジェルマンデプレなどのごく一部であり、さすがにそんな場所はキレイに保っていますが、東京に比べれば、決して広いとは言えないパリにも、目を疑いたくなるような不衛生な場所が少なくありません。

 日常が戻ってきて、駅の臭いトイレも戻ってきました。トイレだけが臭いならまだしも(それさえも信じがたいのですが)、駅の周辺までもが臭くなるのは、これが先進国なのか?と疑いたくなります。

 私が時々、通るパリ・リヨン駅なども駅・構内に入るとそこはかとなく漂ってくるアンモニアを含む不快な匂いが戻りつつあることを感じています。

 パリの地下鉄オペラ・オーベール駅も臭い駅として有名な場所です。

 これらの匂いが駅に戻ってきたということは、人出が戻ったことが原因ではありますが、同時に駅での清掃、消毒作業がパンデミックが始まった頃のようには、もはや行われていないということでもあります。

 また、このパンデミックをもってしても、フランス人の衛生観念は、改善されていないということでもあります。

 パリの街中には、多くのゴミ箱がありますが、たくさんあるゴミ箱も利用する人はまだマシですが、そのゴミの捨て方も酷いのです。逆に日本(東京)に行ったことのあるフランス人は、ゴミ箱の少なさに驚いています。(ゴミ箱が少ないのにゴミが落ちていないこと)

 また、住宅街の家庭が排出するゴミなどは、ある程度は分類されて、住宅施設ごとに纏めて管理人が出すのが普通ですが、引っ越しの際の大量の粗大ゴミが出されていたりすると、そこから掘り出し物を探すのか?近隣住民が寄ってきてゴミが大散乱していたりします。

 パリ市は実に街を清潔に保つために年間5億ユーロを費やしているにも関わらず、パリの住民が不満に感じるほどにしか、その成果は上がっていないのです。

 このパリという街を清潔に保つことに目を瞑り、改善しようとしていないパリ市に抗議して、この日曜日にはPlace de l'Hotel de Ville(パリ市庁舎広場)でデモまで行われました。

 しかし、言わせてもらえば、パリの街を汚している張本人たちがパリを清潔に保つ努力をパリ市が行っていないと抗議するのは、なんともお門違いな話で、どのツラ下げて誰が物申しているのか?と相変わらず、自分たちがすべきことをせずに、言うことだけ言うフランス人に唖然とさせられます。

 パンデミックはまだ終息していないにもかかわらず、以前と同じように街を汚し始めたパリジャンたちは、自分たちの街が汚れていると思い、それを不満に感じているようですが、自分たちの街を自分たちが汚しているとは考えていないようです。

 今回のパンデミックにより、実にこれまでに117,052人の犠牲者を出してもなお、衛生環境がどれほど日常生活に大切なものであるか?それを個人個人の心がけにより変えていこうとはせず、問題の責任を国に押し付けようとする彼らには、パリの街を清潔に保つためには、ロックダウンの時と同じように、罰金・罰則が必要なのかもしれません。


フランス人の衛生観念


<関連記事>

「フランスの駅とトイレの先進国とは信じ難い臭さ」

「フランスのゴミの収集 フランス人の衛生観念」

「ゴミの捨て方に見るフランス人のモラル フランス人には、箱を潰して捨てようとか、そういう観念はない」

「フランスの感染がおさまらないのは政府の責任というフランス人」

「実践よりも、まず、理論のフランスの教育」


2021年10月10日日曜日

フランス・死刑制度廃止40周年 死刑制度廃止説得のための戦い

  


 10月9日、フランスは死刑制度を廃止して、40周年を迎え、パンテオンで、これを記念するシンポジウムを開催しました。

 この講演会でマクロン大統領は、「死刑制度の普遍的廃止のための戦いを再開する」と宣言しました。1981年にフランスが死刑制度を廃止して以来、106カ国がこの道を進んだことを振り返り、中国、アメリカ、インドなど50の国は死刑執行の正当性を尊重し続け、2020年には世界で483人の国家殺人が行われたことを嘆きました。

 そして彼は、2022年の前半に欧州連合の枠組みの中で、依然として死刑制度を採用している国に対してこの制度を廃止することの重要性と緊急性を各国指導者に納得させる「最高レベルでの会合」を組織し、それらの国々を説得することを発表しました。

 このシンポジウムには、ジャン・カステックス首相をはじめ、法務大臣のエリック・デュポン・モレッティ、国会議長のリチャード・フェラン、上院のジェラール・ラーチャーを含む約200人が出席しました。

 このシンポジウムには、1981年の死刑制度廃止の際に実際に投票した元法務大臣ロベール・バタンターも参加し、「死刑は人類にとっての恥であり、世界で消滅する運命にある」と断言しています。


 この講演で未だ死刑制度を採用している国として挙げられたのは、中国・アメリカ・インドで日本は入ってはいませんでしたが、日本もまた死刑制度を続けている国であることに違いはありません。

 ましてや、ここに挙げられたアメリカもすでに州レベルでは半数以上が停止・廃止しています。しかも今年の7月になってバイデン政権は、連邦レベルでの死刑執行を一時停止しています。

 EU諸国に至っては、死刑廃止がEU加盟の条件になっています。

 実際に、世界の7割以上が死刑廃止・停止に至っているのです。

 にも関わらず、今回の講演でも日本が話題に上がらないのは不思議なほどに、日本には死刑を支持する声が高い国で、5年に一度、内閣府が実施している世論調査(2019年)では、「死刑もやむを得ない」が80.8%を占めており、「死刑は廃止すべきである」はわずか9%です。

 つまり、日本は他の先進国とは異なり、死刑制度の是非の議論でさえ極めて低調で、世界の流れの中で孤立する可能性を秘めています。

 しかし、実際には、現在の日本では、死刑判決が下りながら、死刑が執行されていないのも事実で、これにはこの世界的な死刑制度に対する潮流が影響していないと考えられないこともありません。にも関わらず、この件に関して、議論が起こらないことの根底には、日本には、「死んでお詫びをする」という歴史的な文化が根付いていることもあります。

 また、日本では世間の同調圧力が大きく、異質なものを徹底して排除しようとする文化があります。

 被害者感情を鑑みれば、「死刑も致し方ない」という考え方もわからないではありませんが、犯罪を生み出すのは、個人であると同時に社会であることも考えれば、その個人を断罪したところで、失われた命を取り戻すことはできません。その犯罪が起こった社会的な原因究明もできないままに通り過ぎてしまうことになってしまいます。

 世界中を震撼とさせた一連の「オウム真理教」の事件に関わった幹部は、ほぼ死刑が執行されましたが、あの社会的に大きな事件がなぜ起こったのかは、徹底的に究明されることはありませんでした。

 EUは死刑廃止の理由を、「全ての人間には、生来尊厳が備わっており、その人格は不可避であること」としていますが、今回のフランスの死刑制度廃止40周年を機に宣言された「死刑制度を採用している国に対して、この制度を廃止する説得を再開する」「この説得を組織化して行う」という宣言により、日本が槍玉にあげられる可能性があります。

 実際に日本の死刑制度を廃止するまでには長い道のりが必要だと思いますが、こうした説得に対して、日本は正面から答えることができるように、この「死刑制度」に関して、少なくとも国民的レベルで議論を開始する必要があります。


死刑制度廃止


<関連記事>

「宗教の教育」

「コロナウィルス対応と結果 フランスと日本の差 誹謗中傷による個人攻撃と自粛警察」

「フランスのPCR検査 感染者を責めないフランス人のラテン気質」