11月に入り、内務大臣と労働大臣は、2023年の初めに検討される「移民法の改正案」の一部に関してを公表しました。移民法といえば、外国人としてフランスに滞在している私にも関係ない話ではないわけで、見過ごせない内容でもあります。
まあ、ビザもちゃんとあるし、違法滞在をしているわけではないので、問題はないのですが、つい最近、パリで起こった12歳の少女の殺人事件の容疑者が滞在許可証の期限切れのために退去命令が出ていた外国人だったために、一部の政党をはじめとして、移民に対してのプレッシャーが高まっていることも、この移民法改正案の背景にあります。
しかし、この法案は移民をひたすら追い出すというわけではなく、人出不足に喘ぐ業界を救うために、外国人労働者の採用を促進し、同時に滞在許可証を積極的に発行していく姿勢も見せています。
そういえば、パリにいる私の知人の一人はもともと、かなり昔に遊学でパリに来ていて、学生ビザで滞在していたものの、当時の政府の方針で外国人に対しての労働許可証が大盤振る舞いの時期があったとかで、「まあ、一応、取っておこうか?」という程度のノリでビザを取ったとか・・結局、それから彼女はパリで仕事をみつけて、今では、もうほとんど永住モードです。
話は逸れましたが、現在は、特に建設業界などで、どちらかといえば、現状、労働許可証を持たずに働いている人に対して、申告制で正規の労働許可証を発行するということが先ず行われるべき問題とされています。
実際には、ノアールと呼ばれているビザなし労働者で労働力を賄うこと(労働許可証なしに働くこと)は、雇用側にとっては、違法ではあるものの、税金、雇用保険料等その他の出費なしに雇えるわけで、建設業界などでは少なくないのかもしれません。
また、比較的移民が潜り込みやすいレストランなどでは、警察が突然入ってきて、抜き打ちで滞在許可証(労働許可証)のチェックを行なっているという話も聞いたことがあります。
今回の改正案では、不法就労者が雇用主を通さずに自ら正規化申請を行えるようにすることも検討されています。
また、ビザの有効期限切れ等の退去義務命令(OQTF)(obligation de quitter le territoire français) に関しては、内務大臣は、各地域に対し、政府はOQTFの対象となる移民を「指名手配者ファイル」(FPR)に登録し(現在登録者58万人)、OQTFの対象となるすべての人を監視するよう要請する(ただし、監視対象は危険人物のみ)と発表しています。しかし現状ではOQTFの50%近くが控訴され、退去命令は停止され、実際には、実行されているのは、そのうち12%程度のみというのが現状とのことです。
これに関しては、言わせてもらえば、滞在許可証の更新は、異常に時間がかかり、十分に余裕を持って申請したとしても、期限が切れても手続きが済まないことも少なくなく、私自身も前回のビザの更新では、期限が切れて、「これでは不法滞在者だ!」と青ざめたこともあったし、私の友人もまた、同様の目にあって、これが日本に一時帰国予定の目前まで長引いて、ひきつっていたので、一概に移民側の問題ばかりとは限らず、申し立てがあることは、このような理由も十分に考えられます。
しかしながら、内務大臣によれば、「今日、パリの犯罪を見ると、少なくともその半分は、不法滞在の状況にある、あるいは許可待ちの、いずれにしても非常に不安定な状況にある外国人で、こうした現実を見過ごすことはできない」と断言したのです。
パリでの犯罪行為で逮捕された人の48%、マルセイユで55%、リヨンで39%が外国人という発表(こんな統計は存在しないと反発の声もあり)は、衝撃的です。
とはいえ、現状、人口に占める外国人の割合は7%で思ったよりも少ない印象ですが、これは、外国人でもフランス国籍を取得してしまっている場合は外国人としてカウントされていないのかもしれません。
また、犯罪者における外国人の割合は19%だそうで、危険人物排除の方向、それでもなお、労働力確保のためには一部、移民を促進するというプラスマイナスの移民法改正案。
労働力確保のために移民受け入れの是非は日本でも問題になっていますが、フランスが直面しているような、移民問題に関して、このプラスマイナスがつきまとうことは、おそらくどこの国でも同じかもしれません。
2023年移民法改正案
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