2022年9月9日金曜日

エリザベス女王ご逝去のフランスでの報道

  



「私は、長い短いにかかわらず、私の全生涯をあなたのために、そして私たちの属する偉大な王室のために捧げます」21歳のお誕生日の日に、そう宣言したエリザベス女王は、70年にわたり、王位を守り続け、2日前まで新首相に面会する映像が流されていた、ほんの数日後にご逝去されました。

 フランスには皇室がないこともあってか、イギリス王室については、ことのほか、注目度が高く、スキャンダルも含めて、マスコミに取り上げられることも多く、この日も女王陛下の容態が悪いことを昼頃から騒ぎ始めました。

 

指摘されていた女王の右手の手の甲の青あざの確認できる写真


 2日前に公開されたイギリスの新首相任命の映像を振り返り、新首相のリズ・トラスと握手している女王陛下の右手の甲に青あざができていたことや、続々と王族のメンバーがバルモラル城へ向かっているのは只事ではない・・などと伝えていました。

 バルモラル城、バッキンガム宮殿を見守り続ける中継映像は、その日の午後から始まり、女王陛下の訃報が流れたのは午後7時半頃(フランス時間)。全てのニュースが吹っ飛んだと思ったら、その日の夜は、特別番組が組まれ女王陛下のニュースが延々と続きました。

 パリのイギリス大使館にも、すぐにエリザベス女王の大きな写真が掲げられ、大勢の人が集まっていました。

 訃報が流れてすぐにこのようなことができるのも、女王陛下の年齢もあり、イギリスは、各国の大使館も含めて、その時に備え続け、誤解や論争を避けるために、ここ数年は、年に2回は、女王陛下が亡くなった場合について、その段取りなどの細部までが検討され続けて来たようです。

 こうして、フランスでの報道を見ていても、フランスには、どれだけイギリス人がいるのかとも驚かされると同時に、また逆にイギリスにはどれだけフランス人がいるのかとも感じ、フランスとイギリスの繋がりの深さを思わせられます。

 フランスにとっても在位70年にわたるエリザベス女王は代々フランス大統領8人との歴史を持ち、また、女王陛下はフランス語も完璧に話すことができた人で、彼女はフランスにとっても女王でもあり、彼女自身もフランスをこよなく愛していたと伝えています。

 ちなみに彼女のお気に入りのフランス大統領はミッテランだったと言われています。

 個人的にも私はイギリスに留学していた時期もあり、イギリスは私にとって特別な国の一つでもあります。当時、私は、勉強のために、イギリスで多くのホスピスを見学して歩いたのですが、そのどこへ行っても、エリザベス女王がそのホスピスを訪問した際の写真が飾ってあり、また、彼女が訪問してくれた時の話を目を輝かせてしてくれる人など(たまたま、ついこの間、いらしてくださったと・・)に出会ったりもして、イギリスの国民にとって、王室がどれほど大きな存在であり、大きな役割を果たしているのかを直に感じる機会もありました。

 とはいえ、こうして彼女の在位中の歴史を振り返る報道などを見ていると、イギリス王室も平坦な道のりではなかったわけで、王室不要論や数々のスキャンダルに非難を浴び、特にダイアナ妃が亡くなった際の女王の冷たい反応などに国民の反感を買ったこともありました。

 彼女がダイアナ妃の訃報を知ったのも、彼女自身がこの世を去ったバルモラル城でのことでした。

 彼女の死後、ご遺体のロンドンへの搬送からさまざまなセレモニー、国葬、埋葬まで、すべて10日以内のスケジュールやその詳細(イギリス国内がどのように喪に服すか)は、すでに全て細かく取り決められています。

 フランスでも、彼女の国葬は前例のない壮大なものになるであろうと伝えています。

 ちょうど、国葬問題で物議を醸している日本にとって、本当の国葬とはどんなふうに行われるものかを目にするよい機会となるのではないかと思っています。ほぼ同時期に行われる国葬は、悉く比較され、いや、もはや比較の対象にさえならない国葬と呼ぶことが憚られるものになる気がしています。

 

エリザベス女王ご逝去 英国王室


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2022年9月8日木曜日

恐怖の家 子供の児童手当を食い物にして子供に虐待を続けてきた親 逮捕

   


 私は日本で子育てをしたことがないので、日本の児童手当というものが、どの程度のものかはわかりませんが、時代が違うとはいえ、私が子供の頃に両親から児童手当の話というのは聞いたことがなく、そのようなものを国からもらっていたという話も聞いたことがないので、少なからず、育児に対する国の支援はフランスの方が手厚いような気がします。

 フランスでは、子供を育てるにあたって大なり小なりの支援金が支払われます。その金額は、家族構成や親の収入や職業形態によって、支援の金額も方法もリソースも変わってきます。

 たとえば、年度始めには、新年度のための準備費用が支給されたり、公立の場合は授業料は無料ですが、キャンティーン(給食)の費用は両親の収入によって金額は違います。また、子供の人数によって年金のポイントが加算されたり、税制上も子供の人数が考慮され、3人以上子供がいると、グッと優遇されるという話も聞いたことがあり、実際に娘のクラスメイトなども3人兄弟という家族が多いです。

 また、共働きが多い(というか、ほとんど)ため、両親の仕事の時間帯によっては、ベビーシッターが不可欠な場合は、その一部を国が負担してくれるというシステムもあります。また、親の収入が少ない場合などには、住宅手当なども子供の数によって換算されます。

 しかし、どんなに国が援助してくれるとはいっても、実際に子供の教育にかかる費用をそれだけで賄えるはずはなく、私などは、とうていこれ以上は無理だとハナから、もう一人子供を・・などということは考えていませんでしたが、まあ、それも子供をどのように教育したいかによっても異なってくるので、中には、子供の児童手当をほとんど子供には使わずに、自分たちはロクに働かずにいる親もいるということは聞いていました。


 今回、パ・ド・カレー県(フランス最北端の県)で4ヶ月から24歳までの10人の子供を持つ夫婦(40歳と44歳)が、この中の子供の一人が警察に駆け込んで、助けを求めたことから、児童虐待で逮捕されました。

 この家は、「恐怖の家」として知られることになり、この子供のうちの一人(21歳)がテレビなどに顔出しで証言しています。

 この青年が耐えきれなくなって、警察に助けを求めに駆け込んだことにより、警察が家に踏み込んだ時には、幼い子供2人が椅子に縛られ、排泄物まみれになっていたといいます。すべての子どもたちは、常に両親からの脅迫、暴力に怯え続けて育ってきました。

 この家庭は、2013年からソーシャルサービスによって監視されていたものの、両親はソーシャルサービスのチェックの前に子供たちに圧力をかけ、「家で何が起きているのかを言ってはいけない、すべて順調だと言え!。私たちが経験していることを話すと、ホームに入ってみんなから遠ざけられることになる!」と脅迫し、何とか制裁を免れ続けてきてしまったようです。

 この青年の証言によると、父親はこれまでに半年間しか働いたことがなく、夫婦は生活保護と児童手当で生活しており、子供を金づるとしていて、子供が成人して、援助が切られるたびに、子供を作って収入を補うということを繰り返していました。

 子供は彼らの収入源だっただけでなく、この子どもたちの自由を奪い、殴る、蹴るの身体的な暴力や言葉による脅迫、逆らえば長時間の土下座、少しでも動けばリンチ状態。

 その矛先がたとえ、自分に向かないことがあっても、常に兄弟姉妹の誰かが暴力を振るわれる場面を目にすることだけでも、大変な恐怖とストレスを感じ続けていたのです。

 このような家庭ですから、児童手当は子供のために使われることはなく、父親は頻繁に車を買い替えたり自分のためにお金を使っていたようです。

 両親の逮捕により、子供は保護され、現在は特別な施設での生活を始めています。

 この青年は、両親の仕打ちに耐えられなくなって警察に駆け込んだわけですが、この青年が他の兄弟姉妹の命を救ったかもしれません。しかし、少なくともこれまでの間にこの家で育って来た子どもたちの心の傷やトラウマは想像を超えるものであるに違いありません。

 本来は、このフランス政府が行っている児童手当は大変、ありがたいもので、この政策をきっかけにフランスは日本のような少子化の道を辿ってこなかったのも事実です。しかし、中には、このようなクズ親も現れてしまうことも事実です。

 かねてからフランスでのクズは限りなくクズだと思っていましたが、このクズ対応をするべくソーシャルサービスが機能していなかったことは、その被害に遭い続けて来た子どもたちの年月には取り返しがつかないことです。

 以前、私たちがフランスに来たばかりの頃、パリに引っ越してくる前、まだ娘も小さかった頃、突如、「子供を学校に行かせていない(フランスでは2歳から学校)と通報があった」とソーシャルサービスの人が家に訪ねて来たことがあり、「こっちは忙しくしながら、学校だけでなく、公文にまで通わせているのに・・」と憤慨したことがありましたが、そんなことは、学校に聞いて貰えばすぐにわかることなので、何の問題にもなりませんでしたが、逆にそんなすぐに嘘がわかるような嫌がらせの通報をする人がいることの方を不気味に思ったくらいです。

 また、このソーシャルサービスから難癖をつけられて、しっかり働いて子育てしているにもかかわらず、子供をとりあげられそうになって日本に子供を連れて帰国した人も知っています。

 このクズ親も問題ですが、このチェックを行うソーシャルサービスも適正に機能していない印象を拭いきれない気がするのです。


児童手当 児童虐待 恐怖の家


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2022年9月7日水曜日

ディオールギャラリーとアヴェニューモンテーニュのディオールショップ

   

 

 凱旋門がラッピングアートにデコレーションされていたのは、昨年の9月のことで、あれからもう、1年も経ってしまいました。

 ラッピングされた凱旋門を見るために久しぶりにシャンゼリゼに行った時、シャンゼリゼの中腹あたりにあるルイヴィトンビルの正面あたりの建物の大きなスペースが工事中で、それこそ工事中用の美しいラッピングに包まれた建物全てが Dior(ディオール)になっていて、ディオールスゴいな・・と思いながら、凱旋門に向かってシャンゼリゼを上がっていきました。

 すると工事中のディオールとは別に、ディオールのお店があって、普段は無縁のこういう高級品のお店を覗いてみるのもいいな・・と思って店内に入っていくと、まだそんなに観光客が戻ってきていない時期なのにもかかわらず、けっこうお客さん(観光客らしき人々)がいて、またまたびっくり!「いるところにはいる!」「売れているところは売れているもんだ!」と私にとっては、美術館を眺めるような気分でディオールのお店をぐるーっと見てきました。

 近くにいた店員さんに、「あんなに広い工事中のスペースがディオールだっていうことは、工事が終わったら、このお店も向こうに引っ越すんですか?」と聞いてみたら、「いやいや、あれは事務所だから、このお店はこのままで・・」と言われてまたびっくり!こんな一等地にあんな規模の事務所!!

 お姉さんは、私の驚きをよそに「今、アヴェニューモンテーニュの方のお店が改装中で、来年春頃には、素晴らしいお店に生まれ変わるから、ぜひ、春には向こうのお店も見に行ってみてね!」と見学だけの私にそれはそれは愛想よく親切に教えてくれたのでした。

 その後、そんなことは全然、忘れていて先月、偶然、バスでアヴェニューモンテーニュを通りかかり、一つの大きな角地にディオールのお店があるのをバスの中から見かけて、さすがにアヴェニューモンテーニュ!お店の前には、ヴォアチュリエ(正装をしたお車係)までいて、「お!これがあのお姉さんの言っていたディオールのお店だ!」と思いましたが、私はバスの中、わざわざ降りるのも面倒で、その日は、そのまま通り過ぎてしまいました。

 後日、たまたま友人と久しぶりに会う約束をしていて、「どこか行きたいところある?」と聞いたら、彼女が「ディオールのギャラリーに行きたい!」と言うので、急遽、予約をとって、ディオールのギャラリーに行くことに・・。




 当日、予約どおりにギャラリーに行くと、予約をとっているにもかかわらず、行列が・・しかし、さすがにそれほど待たされることはなく、中へ。



 
 


 中に入ってすぐ、中央には螺旋階段があり、その周りを色とりどりのディオールの商品のミニチュアで囲まれているスペースはまさにインスタ映えしそうなスポット。展示場には、エレベーターで上がり、この螺旋階段は帰りに降りてくることになります。

 中を進むと、ディオールの歴史を辿るドレスやアトリエ、ディオールにまつわる展示品の数々が続々と並びます。

 


 数々の名作と言われる映画の中に登場していたドレスはその映像とともに楽しむことができます。

 


 また、部屋ごとにドレスや展示品にあったように立体的にデコレーションされている様子は特にディオール好きというわけではない私も圧倒されました。

 


 洋服はドレスが中心で、あまり現実的なファッションではないものの、その分だけ美しいドレスに囲まれた空間は、異次元の夢の中の気分を楽しませてくれます。

 J'adore(ジャドール)の香水のCMで使用されたドレスなどもありました。

 


 しかし、なんといっても圧巻だったのは、最後のクライマックスのポイントに用意された音楽とともに朝日から夜への時間とともに背景の変わるスペシャルポイントでした。

 



   

 「ファッションデザイナーは、ある意味、夢の先導者」というディオールの言葉どおり、夢のひとときに誘ってくれる空間で、庶民の日常にはない贅沢な夢の中に身をおくのも、たまには、よい経験かもしれません。

 このギャラリーから出ると、すぐのところにまた、例のアヴェニューモンテーニュのディオールの店舗があるのですが、これは、少し現実的といえば現実的ではありますが、これもまた、お店の中のカフェには、大きな陶器の動物園のような空間ができていて、ディオールってどんだけスゴい!!と思わせられる空間なのでした。

 私にとっては、こちらもまた美術館と大して変わらないような、しかし、カフェでお茶を飲むくらいは参加できるかな・・と思う空間でした。

 やっぱり、ディオール・・恐るべし・・です。

 



ディオールギャラリー ギャラリーディオール アヴェニューモンテーニュ

11 Rue François 1er, 75008 Paris 11:00~19:00 


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2022年9月6日火曜日

フランスの学生の数学学力低下に思うこと

 


 ウクライナでの戦争が勃発して以来、フランスはウクライナから避難してきている人々を数万人単位で受け入れていますが、長期にわたることから、フランスに避難してきた未成年の子供たちの教育を支援するために、UPE2A(Unité Pédagogique Pour les Élèves Allophones Arrivants)と呼ばれる適応教育ユニットを立ち上げ、フランス語の集中学習を受けて、後にフランス滞在中に従来のフランスの教育システムに参加できるようにするプログラムを実施しています。

 ウクライナ人を受け入れているのはフランスだけではありませんが、このような避難生活を前向きに受け止めるなら、今のウクライナの子供たちは、少なくとも外国語に長けた世代になるかもしれません。

 こうして、ウクライナの子供たちを受け入れ、彼らがフランスの学校で教育を受け始めると、彼らの中から思わぬ声が上がり始めたのです。

 「ウクライナより数学がずっと簡単!」と・・・。

 言い換えれば、「フランスの学校の数学のレベルはウクライナよりも低い」ということなのです。語学にハンディのある学生にとって、数学の授業は順応しやすいとも言われることがありますが、「ずっと簡単!」と言われてしまえば、順応うんぬん以前に義務教育の段階でのレベルが明らかに低いことを認めざるを得ないのです。

 このフランスの学生の数学学力の低下については、フランスの教育の専門家は、「フランスは伝統的に少数のエリート教育機関の維持により、この分野ではまだ優れた教育を誇っているが、この学問の基本を多くの人々に教えるという点では失敗している」と分析しています。

 つまり、少数のエリート以外の教育には、失敗しているということで、大変、わかりやすい分析です。

 文部科学省委託の調査報告書によると、「フランスにおける数学能力の平均レベルはほぼ40年間低下し続けている・・」そうで、国際調査においても、フランスはトルコ、日本や韓国、さらにはアイルランドなどの先進国にも大きく遅れをとっていることが明らかになっています。

 主な原因は明らかで、2019年のバカロレア改革で、いわゆる「共通」の授業から数学が純粋に削除され、プルミエールの必修科目から外された(理数系クラスを除く)ことにあります。

 結果的に、それからわずか3年後、この報告書に関わった専門家委員会は、すでに以前の取り決めへの復帰を勧告しています。つまり、授業科目から外されたり、試験科目から外されることがわかっていれば、勉強しなくなるということです。

 我が家の場合は、娘は理数系のクラスを選択したので、これには該当しませんでしたが、数学に関しては、いくつかのタイミングで思い出されることがあります。

 最初は、公文の算数をやらせようかどうか迷ったタイミングでした。娘を日本語でも、読み書きをきっちりさせたくて、公文に通わせていた頃、小学校に上がったばかりの頃に公文には、日本語だけでなく、他の教科もありました。

 場所がパリ(海外)ということもあり、公文に来ていた子供はほとんどが日本語をやっている子供たちなのですが、中には日本語だけでなく、算数の計算問題を黙々とやっている子供もいました。

 ごくごく基本的な計算問題などは、同じような問題を繰り返しやる訓練でスムーズにできるようになっていく公文のような方式は良いとは思っていたのですが、当時は仕事が終わって娘を迎えに行って、帰って来てから公文の宿題をやらせるには、時間に余裕があるわけではなく、算数の授業はフランスの学校でもやっているんだから、まずは日本語だけで、欲張りすぎて共倒れになってもいけないと、公文の算数は諦めたのです。

 私は日本語以外は、あんまり娘の勉強をみた覚えはほとんどないのですが、一度、「数学でわからないところがある・・」と夜、私のところに宿題を持って来たことがありました。娘がいくつだったかは覚えていませんが、私がみられる数学といえば、せいぜい小学校か中学校程度だったと思います。

 一応、「これは、こうして、こうするでしょ・・」と説明し、娘にやらせてみると、娘も理屈はわかっている様子・・「ちゃんとわかっているから、あとは何回もやってみて、訓練して慣れるしかないよ・・」と言ったら、娘はとぼとぼと自分の部屋に戻っていきました。

 少しして、娘の部屋を覗くと、娘はシクシク泣いていて、猫のポニョが彼女に手をかけて、心配そうにしている・・という、ちょっと心が痛むような、微笑ましいような光景を目にすることになったのでした。

 それでも、負けず嫌いの彼女は、めげずに、その後も常に高得点をとり続け、文系か理系か選択する段階になって、フランスの場合はその後にも選択肢の広い理系を選ぶことになったのです。

 しかし、彼女がその後、飛躍的に数学の成績が上がり、本格的に理系の道に進んだのは、運良く出会えた先生のおかげで、俄然、数学がおもしろくなって成績も上がったようです。

 数学だけに限ったことではありませんが、良い先生との出会いというものは、教育の現場において、なによりも大きなモチベーションとなり得るのだということは、自身の体験からも、そして娘を見ていても実感するところです。

 私は全くの文系人間で数学はどちらかといえば好きではなかったので、高度な数学の学力が一般的な人にとってどの程度、重要なことなのか、よくわかりませんが、全般的な学力に関しては、質の高い教師の肩にかかっているような気がします。

 フランスでは教師は給料も安く、人手不足も問題になっているので、単に授業の時間数やバカロレアの科目の問題だけではなく、何よりも優れた教師が必要なのではないか?と思っています。

 私は娘の学校には、年初に行われる父母会のようなものくらいしか、顔を出していませんでしたが、それでも、その際に滔々と語る先生の話に、「こんなに志の高い先生に見ていただけることは、なんと素晴らしい、幸運なことか・・」と感激して帰ってくることもありました。

 何度か、そんな先生のお話を聞きましたが、その中の一人は数学の先生だったことも覚えています。

 教師が真剣に向き合っていれば、生徒も感化されるのです。

 父母会が終わって、家に戻って、「あの先生、素晴らしいじゃない!」などと娘に話すと、冷めている娘は、「営業、営業・・」などと、茶化していたりしましたが、まんざらでもない様子でもありました。

 いくら営業でも、それが口先だけのことか、どれだけの熱意があるのか?本当に信念を持って語っているかどうかは、伝わります。

 これまでも、何度か書いてきましたが、やはり、私立の学校の方が、このような先生に巡り合える可能性は高い気がして、やっぱりフランスでも学校選びは、大事だなぁと思うのです。


フランスの数学学力低下問題


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2022年9月5日月曜日

マクロン大統領は安倍元総理の国葬には参列しない

 


 

 「マクロン大統領は、安倍晋三元首相の葬儀への出席を拒否した」このフランスでの報道を見て、「やっぱり・・」と思いました。拒否したという言い方は厳しい言い方ではありますが、「招待されたにも関わらず、スケジュールの都合で出席できないという回答をした」ということではあるものの、事実上、拒否したという表現が本当は妥当なのだと思われます。

 衝撃的な安倍元総理の襲撃事件は、フランスでもかなり大々的に報じられ、当初は安倍氏の長期政権の功績などが神話として残されるかの如く伝えられました。しかし、結果として、それは、ほんの数日のみのことで、容疑者の殺害動機から、この事件の背景が暴かれるとともに、これを選挙・投票日前までは、事実をふせようとした日本の警察やマスコミなどの様子をフランスのマスコミは、厳しく指摘してきました。

 その後も、統一教会と政治のつながりや、統一教会による被害がどれほどのものであり、また、統一教会への献金という巨額な大金が全て韓国に吸収されてきたこと、問題のある団体であるにも関わらず、統一教会が日本において、勢力を拡大するために名称変更をすることを認めたりしてきたことなど、逐一、容赦なく報道されていました。

 また、近々では、日本では安倍元総理の国葬について、物議を醸していることなどもしっかり伝えられています。

 国葬について、仏ル・ポアン紙等では・・

 「最もナショナリスティックな人を除けば、日本人の大多数はこの国家的儀式に反対しており、東京など国内のいくつかの都市で「安倍の国葬をするな!」「こんなことに税金を使うな!」というデモが起こり、学者や作家が立ち上げた署名運動では、すでに7万人署名の嘆願書が届いている」

 「特に、政府は国会を通さずに式典を開催できる法律の条文に頼り、国葬をゴリ押ししようとしているが、これで良いのだろうか?」「この「国葬」は200万ユーロと見積もられ、すべて国の費用で行われることになる」

 政府報道官は「安倍晋三は総理大臣として8年8ヶ月という最も長い在任期間を持ち、様々な分野で結果を出したため、民主主義の象徴である選挙戦中に暗殺された」「国として、外からの多くの弔意に応えなければならない」と国葬にする理由を説明しているが、だいたい、国葬というもの自体、定義が不確実で、そもそも国葬というもの自体が皇族以外には、存在しないものになっている。

 「1967年に一人だけ元首相(吉田茂)の国葬が行われてはいるが、それは戦後、アメリカの占領下という特殊な状況下でのことだった」「現在の民主主義体制では国葬は規定されておらず、この点に関する法的根拠はない」という日本の政治学者のインタビューを引用して伝えています。

 このような報道からも、日本国民の大多数の反感を買っている、しかも問題ある新興宗教とのつながりが死後、まもなく露呈したスキャンダラスな国葬にマクロン大統領が参加するメリットなど一つもあるわけがありません。 

 空気を読むのが得意なはずの日本人、政府だけは例外のようです。

 マクロン大統領が出席しないと公表したことで、他国の現役の首脳もこれに続く可能性が大です。日本は大金を費やしながら、海外からの現役の首脳はほとんど参加することもなく、岸田首相の目論見の一つと言われている国葬外交も不発に終わることで、さらに不評を増大させてしまいます。

 国葬費用は一応2億円と見積もりを出し、残りの費用は国葬終了後に公開するとのことですが、そんなに無理矢理にも国葬を強行させたいならば、残りの費用は、これを強行する内閣のメンバーのポケットマネーで支払っていただくのは、いかがでしょうか?

 自分の懐が傷まなければ、海外にまで恥をさらして何をやってもいいというのは、あまりにおさまりがつきません。

 ウクライナでの戦争が続く中、インフレ、エネルギー危機など、どの国でも様々な問題を抱える中、海外の現役の首脳は、そんなに暇ではありません。

 フランスから国葬に参加するのは、(日本にはあまり好意的ではない)サルコジ元大統領かオランド元大統領の代理出席を検討中とのことですが、もしかしたら、外務大臣、いや在日フランス大使・・なんてことになるかもしれません。


マクロン大統領 安倍国葬拒否


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2022年9月4日日曜日

パリ市庁舎前のストリートフードフェスティバル

  

オリンピックのエンブレムが掲げられたパリ市庁舎前の広場


 今週末は、パリ市庁舎前でストリートフードフェスティバルがあると聞いて、覗いて来ました。天気予報を見ると、残念ながら、この週末はあまりお天気がよくなさそうで、慌てて家を出たのですが、途中から雨が降ってきてしまいました。しかし、幸い、平日の午後ということで、そんなに混んでもいませんでした。

 パリでストリートフードというと何があるのだろう?と興味がありましたが、出店しているのは、全てカミオンと呼ばれる軽トラの店舗で設営、撤廃などに便利なものが出店していました。ストリートフード=屋台=カミオン・・なるほど・・という感じでした。

 カミオンといえば、パリで一番、一般的なのはカミオンピッツァとよばれるピザだと思いますが、今回のストリートフードフェスティバルでは、その一番の定番のピザはあるにはありましたが、イタリアンのカミオンの中の一品ということで、あまり全面には出ていませんでした。

 


 考えてみれば、パリでストリートフードといえば、何なのか?と考えてみれば、屋台のようなものは、マルシェ・ド・ノエルとか、移動遊園地のようなものができている場所などにあるものなのでしょうか? ラクレットとか、ハンバーガーとか、ソーセージとか、チュロスとか、そんなものが思い浮かびます。




 ファストフードのようなものと考えれば、ケバブとか、ファラフェルなどが思い浮かびます。一時、パニーニがやたらと流行っていた気がしたこともありましたが、最近はそうでもありません。

 


 しかし、今回のストリートフードフェスティバルでは、奇を衒ったのか、ベトナムのバオや、なにやらあまり見たことのないハイチ料理や、フィッシュ&チップス、タコス・ナチョス・ブリトーなどのメキシカン、そして、何よりストリートフードとは思えない値段でビックリしました。  


 物価上昇中ゆえ、仕方がないことなのかもしれませんが、一品でも14~15ユーロ(約2千円程度)で、これだけ出すなら、もう少しマシなものをレストランでも食べられそうだ・・と思ってしまったのでした。

 しかし、フランス人の不思議なところは、日頃はつましくケチなわりには、外食にはお金を使うという不思議な人々。彼らにとって外食とは、食事そのものだけでなく、みんなと食べるとか、その場の雰囲気を楽しむとか、そういうことが含まれているのではないかと思われます。


あとから、気がついたけど、おじさん、かわいいソックスを履いている


 今回の出店の中で、ちょっとだけ心を惹かれたのは、パンペルドュと呼ばれるフレンチトーストでした。うしろに山積みにされたブリオッシュのパンを使ったフレンチトーストの甘い香りがあたりに広がっています。

 フレンチトーストを焼いているおじさんに「写真、撮らせて!」と頼んだら、じゃあ1枚につき、ビズー1回ね!とジョークをいいつつ、気軽にカメラ目線を向けてくれました。後から気がついてみれば、このお店だけは、カミオンではないお店でした。




 ふわふわで、ととろけそうに柔らかい焼き上がりのフレンチトーストには、お好みでチョコレートソースやチーズソースをかけてくれます。




 この日はあいにくのお天気で、途中で雨が降ってきてしまったにもかかわらず、パリジャンたちは、雨の中でもめげずに、雨に濡れながら、あるいは、傘をさしながらも外で食事を続ける光景には、どんだけ外での食事が好きなんだ!と、恐れ入りました。



 しかし、日本人の私としては、これだけパリでラーメン屋さんが人気なのだから、屋台のラーメン屋さんの一軒でもあったら、どんなにか人気だっただろうか?とか、いやいや、焼き鳥やたこ焼き、お好み焼きなどもあったらよいのに・・など、「だったら、日本に帰れよ!」と言われそうなことを考えながら、その場を後にしたのでした。


パリ ストリートフードフェスティバル


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2022年9月3日土曜日

エネルギー危機が招くデュラレックスなどの工場での冬の間の時短勤務と部分的失業手当

  


 特にエネルギーを大量に消費することを避けられない金属やガラスメーカーは、エネルギー価格の高騰のために、この冬に向けて、工場の閉鎖、縮小、時短操業などの措置に踏み切ることを決定しています。

 強化ガラスの食器の製造のパイオニアと言われるフランスの大手ガラスメーカー・デュラレックス社は、ロワレ地区(パリから160㎞ほどのフランス中心部にある地域)にあるガラス工場で働く約250名を11月から時短勤務にすることを発表しました。

 デュラレックス社は、このエネルギー危機の前(1年前)までは、エネルギーにかかる費用は売上高の5〜7%だったものが、現在では40%を超えているため、このまま通常の工場の操業を続けることは困難だと判断したのです。

 とはいえ、ガラス炉は、完全に停めてしまうと冬場は凍結の恐れがあり、火を落とし続けることはできないため、炉の凍結を防ぐために必要な最低限の時間は操業しなければならないのです。

 この時短操業に伴う、その削減された時間分の従業員の給与は国が負担することになります。パンデミックの際にも適用された部分的失業手当というものです。

 デュラレックスのガラスのコップは、割れにくく、丈夫なことで有名で、フランスの多くの学校のキャンティーンで使用されているもので、日本にも多く輸出されていますが、皮肉なことに昨年から今年にかけての売り上げは30%も上昇しており、デュラレックス社は、この冬の間の生産は減少するものの、商業活動は今後数ヶ月の間のための充分な品質の在庫があるとして、「お客さまには引き続きサービスを提供することができる」また、「この緊迫した時期にエネルギー消費を抑えることで、事業と雇用を維持するとともに、産業界の消費者としての責任について政府の期待に直接応えることができる」としています。 

 政府が、この部分的失業手当を支払うことで、デュラレックス社がエネルギー消費を削減し、かつ会社の存続に希望を繋いだをことで、多くの同業他社や金属・鉄鋼メーカーなどもこの例に続く模様です。

 フランスの鉄鋼グループAscometalも、ブッシュ・ドゥ・ローヌとモゼル県の工場敷地を縮小することを選択し、経営陣は労働組合に対し、11月と12月にそれぞれ3週間の生産中断を発表しました。

 この工場縮小や時短操業でなんとか冬の間のエネルギー価格高騰と消費の対策に努めながら、会社を存続させていく方針を固めたと思われますが、これとて、永久に続けられるものでもありません。

 フランスのエネルギー消費部門全体が、今後も電気やガスを別の価格で購入するための解決策や仕組みを見つける必要があるということです。現在も仕組みはあるものの、今回の値上げの速度を鑑みると、全く不十分であり、この解決策には、政府が大きく関わっていかなければならない問題でもあります。

 エネルギー多消費型企業だけでなく、すべての産業が危険にさらされています。全く大変な時代になっていきます。


デュラレックス時短操業 


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