2022年7月11日月曜日

シャルル・ド・ゴール空港のロストバゲージの行方

  


 パリ・シャルル・ド・ゴール空港の大掛かりなストライキから1週間経って、空港に足止めを食ったスーツケース約2万個が依然として持ち主の元に届いておらず、空港に山積みにされているようです。

 先週末のパリの空港でのストライキは、多くのフライトをキャンセルさせただけでなく、何万人もの旅行者の荷物を奪いました。荷物係もストライキを起こしていたうえに、荷物積載のシステムダウンが原因だったと言われています。

 今回のシャルル・ド・ゴール空港でのロストバゲージの多くは当然のことながら、最も発着便の多いエール・フランスの便に関するものが多いそうで、エール・フランスは、荷物を積まずに離陸してしまった旅行者に対して、当初は、「1週間以内には、荷物を届ける」と発表していたにもかかわらず、荷物は山積みにされたまま、持ち主の元には届いていないのです。

 そもそも、このハイシーズンに人員不足にストライキ、次から次へと離発着が続く空港では、その日の荷物の処理で手一杯。賃金値上げとともに、過剰労働の緩和を訴えていた空港職員が、残業までして山積みにされた荷物を処理するとは考え難く、また、時間が経てば経つほど、空港に残された荷物の配送先は、旅行先に届けられるべきものなのか?それとも自宅に届けられるべきものなのか?どんどん複雑な要素が含まれてきます。

 平常時のフライトでさえも、荷物が無事届くかどうか?盗難にあったり、スーツケースが壊されたりしていないか?いつも不安を感じるところですが、空港に足止めをくって1週間以上経ってしまったスーツケースに関してはもう不安というより絶望的です。

 エールフランスおよびシャルル・ド・ゴール空港は現在、ロストバゲージ扱いになっている荷物は空港で保管していると発表していますが、スーツケースが何の保護もされずに倉庫の外、コンテナでむき出しになっているものもあることがわかっています。

 これまで、個人的には最も荷物のトラブルが多いのは、イタリアというイメージがあって、ローマからの便でスーツケースの鍵が切られていたこともあったし、サルディニアに行った際は、空港について、やたらと空港内にロストバゲージのコーナーが多くて嫌な予感がしていたら、やはり荷物は同じ便には積まれておらず、必ずしも荷物は同じ便では届かないのは普通というようなことを言われてびっくりし、荷物は翌日ホテルに届けてくれたものの、一晩は着替えもなく不自由な思いをして以来、イタリアに行く際には、もう荷物は預けずに手荷物以外には持たないようにしているくらいです。

 しかし、ここまで大掛かりに荷物が溜まって保管(というより、放置)されている状態には、楽しいはずのバカンスが荷物のクレームを入れることに費やされるストレス満載のものになってしまいます。

 この事態を受けて、エールフランスは、一刻も早くスーツケースを持ち主に返すために増援を動員したことを発表していますが、このロストバゲージの量を考えると、パリ空港組合は、この荷物の山が処理されるには、数ヶ月間かかるはずだと断言しています。

 ということは、バカンスに出かけた人はさすがにもうバカンスを終えて帰ってきたあとに荷物が戻るということです。

 エールフランスは「荷物はすべてこちらに向かっている」と、これ以上荷物の配達の遅延を否定していますが、荷物の保管状況を考えると現実的な解答ではありません。

 すでに、補償問題についての解説が始まっていますが、荷物が遅れた場合、補償を受けることができることが可能で、荷物がない間に生活必需品(衛生用品、下着など)を購入しなければならなかった場合、請求書の提示により航空会社に払い戻しを請求することができます。また、荷物を紛失した場合、乗客1名につき約1,200ユーロを限度として弁償を請求することができます。

 しかし、どちらもクレームを申し入れるのは、書面で21日以内に航空会社宛に申し立てをする必要があるので、この期限を過ぎてしまえば、補償されることはありません。これは、旅行保険などの補償とは別のものなので、もしも、泣き寝入りしたくなければ、航空会社と保険会社との両方の手続きが必要になります。

 航空会社が補償を拒否した場合、民間航空総局(DGAC)にオンラインで苦情を申し立てるか、旅行観光オンブズマン(MTV)に連絡し、解決を図ることができます。

 友好的なアプローチがうまくいかない場合は、裁判を起こし、被った損害の賠償(物の交換、荷物の紛失・破損)を請求することができます。管轄の裁判所は、紛争に関わる金額によって異なります。会社や裁判は2年以内ということです。

 まさに、ここまでくると、完全な戦闘体制、やっぱりフランスで生きていくためには、常に戦闘体制に入る覚悟が必要なのか・・と、ほとほとウンザリします。

 私の場合、飛行機を利用するのは、やはり日本⇄パリ便が最も多く、スーツケースの中身はほぼ食糧、しかも航空便ならではの保存のあまりきかないものなども多いので、もし、今回のようなロストバゲージになり、数ヶ月間も放置されてしまったら、ほぼ私のお宝の食糧は絶望的なことになると思うと、ゾッとしてしまいます。

 それでも、無事に回収できたらまだマシですが、保管?放置されている間に盗難に遭う可能性も大です。今は、海外からの小包も規制が厳しくなり、やたらと税金がかけられるようになっている今、ロストバゲージに泣き寝入りするわけにもいきません。

 本当に今は航空運賃も爆上がりしている上に迂回ルートなどで時間もかかり、そのうえロストバゲージで荷物を受け取るのに数ヶ月もかかるのでは、本当に踏んだり蹴ったりです。


シャルルドゴール空港 ロストバゲージ


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2022年7月10日日曜日

ニースの交通機関でのマスク着用義務化、裁判所から停止命令

  


 1日の新規感染者数が20万人を超えてしまった現状を受けて、ニース市長は政府の決定に先駆けて、週明けの月曜日から、公共交通機関でのマスク着用を義務化することを発表していました。

 公共交通機関でのマスク着用義務は強く推奨されているものの、全然、マスク率は上がらず、感染者数がひたすら増えていく状況に、このニースでの公共交通機関でのマスク着用義務化をきっかけに、これが全国レベルに広がってくれるのではないか?と、私は期待していたくらいでした。 

 ところが、事態は思ってもみない方向に転換し、ニースの行政裁判所は、「自治体特有の緊急の理由」はなく、「そのような措置の制定が不要」であると判断し、月曜日からのニースでの公共交通機関でのマスク着用義務は撤廃されてしまったのです。

 ニース行政裁判所の暫定救済裁判官は、4人の申請者からの申し立てにより、「自治体に特有のやむを得ない理由」がないため、「このような措置の制定は不要」であり、「行き来の自由」と「個人の自由を尊重するすべての人の権利」に対する「重大かつ明白な違法侵害」であると判断したというのです。

 ニース行政裁判所がこの決定を下すのにあたっては、エリザベット・ボルヌ首相が水曜日に行った国会での演説で、「マスクの着用は強く推奨されるが、強制ではない」と述べたことを強調しています。

 市長というものは一般的な警察権を持っており、パンデミックと闘うための措置をとることができる一方で、「特定の地域状況の存在を示し、この目的のために管轄の国家当局がとる措置の一貫性と有効性を損なわないという二重の条件のもとでのみ、警察権を行使できると裁判官は説明しています。

 特に集中治療室の占拠率が全国レベルで20%であるのに対し、アルプ・マリティーム県では14%であったニースでは、これらの条件が満たされていないと行政裁判官は判断した結果、「夏の学校休暇中の観光に関連する特殊な状況にもかかわらず、この措置の制定を不可欠とする自治体特有のやむを得ない理由の存在は証明されていない」としています。

 ニース市長は、この判決に対し、「病院スタッフの疲労、この夏の期間にニースを訪れる人の多さ、病院の緊張のリスクについて、私は引き続き懸念しています」と述べ、すべての人に責任を負うよう呼びかけ、「最も弱い立場の人々の健康、経済活動の維持、新学期開始の準備のための条件、すべてが危機に瀕しているのです」と訴え続けています。

 しかし、マスクをしたからといって、移動の自由が妨げられるというものでもなく、このいつまでもおさまらないパンデミックの中での個人の自由がどこまで尊重されるべき(しかもマスクごときで・・)なのかは、甚だ疑問でもあります。

 結局、もっともっと感染状態が悪化した状態にならなければ、マスクは義務化されないということで、これでは、「マスク義務化されれば、マスクをする」と言っていた人々に対しても、「やっぱりマスクはいらない」ということを強調してしまった結果を導いてしまい、マスクによって、少しでも感染拡大を回避するという道から、かえってさらに遠ざかってしまったように思います。

 何も、暑い屋外でのマスク着用を義務付けているわけでもなく、公共交通機関内でのマスク着用だけなのに、どうして、そんなに義務化することに抵抗があるのか?私には全く理解できません。

 しかも、この4人の申し立てに対するニース市全体の健康危機のための対策に対する判決はたった20分の相談による決定で判決が下り、その決定により、一体どれだけの人が危険な状態に晒されるのかと思うと、憤然とさせられる気持ちです。

 こんなことなら、最後まで公共交通機関内でのマスク着用義務は残っていて、せっかくおとなしく皆が従っていたのに、なぜ?それを解除してしまったのか?と悔やまれます。


ニースの交通機関でのマスク着用義務化停止


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2022年7月9日土曜日

安倍元首相の訃報に関する海外(フランス)の報道、反応

  


 朝、目が覚めて、ツイッターを覗いたら、「安倍、おまえ、いけすかない奴だけど、死ぬなよ・・」というツイートが目に入って、「???安倍って誰のこと???」と思って、そのまま見過ごして見ていると、どうやら安倍元総理のことらしい・・とちょっと、トレンドを見るとフランスのツイッターのトレンド1位も「Shinzo Abe」になっていて、どうやら、安倍晋三元総理が選挙の応援演説中、銃で撃たれて危篤状態ということを理解しました。

 日本とは7時間の時差があるので、一体、日本で何時ごろ起こったことなのだろうか?と思いながら、フランスでもツイッターでトレンド1位ってことはもしかしたら、フランスのテレビでもやっているかもしれない・・と思って、いつもは日中はつけることのないテレビをつけたら、大騒ぎでほぼ生中継のような感じで、安倍元総理が撃たれた時の模様やその後ドクターヘリで運ばれていく様子を日本に駐在しているジャーナリストが解説しながら、報道を続けていました。

 つい、この間、日本の猛暑の様子がフランスのテレビで報道されているのを見て、日本のことをこんなに大々的にニュースで取り上げることはないのに日本の映像がテレビで流されるのは珍しいな・・などと思いながら見ていたばかりだったのに、まさかこんなことで数日後にフランスのニュースで日本の報道が流されるとは、思ってもみませんでした。

 フランスのテレビでは、日本は、合法的に所有されているか否かにかかわらず、G7の中で民間用銃器の流通が圧倒的に少なく、フランスは100人あたり20丁、アメリカは120丁、日本の銃器保有数は0.25丁、こんな社会背景もあり、銃器に対する警戒が希薄であるのかもしれない・・などと言っています。

 しかし、やはりこんなことが日本で起こることなのか?と日本人も思っていると同時に海外の人々も「世界一安全な国・日本」がもはや過去のものとなりつつあるのか?と驚きの目で見つめています。

 そして、もう一つ、驚いたことは、世界中の首脳や要人たちが、決して型通りではない、彼との思い出を重ねた弔意を届けていることで、エリザベス女王をはじめ、バイデン大統領、イギリス、ドイツ、イタリアの現首相、メルケル元首相やオバマ元大統領、トランプ元大統領、そしてプーチン大統領やゼレンスキー大統領まで彼の功績を讃えています。

 中でもメルケル元首相の「日本と世界は偉大な政治家を失った」という彼に対する賛辞にも彼女の最大限の敬意が込められていると感じたし、インドのモディ首相などは、「親愛なる友人が悲惨な死を遂げ言葉にできないほどのショックを受けている。9日、インドは国全体で喪に服す」と語っています。

 日本でさえ、国全体で喪に服すとはいっていないのに・・。

 現在の世界情勢の中心にある人々の中に、安倍晋三という人がこんなにしっかり存在していたことを思うと、他に問題になることはあったのかもしれないけれど、やはり彼の存在は日本にとって、貴重なものであったと思わざるを得ない気持ちになりました。

 この世界各国の要人からのメッセージを見るに、総理大臣という立場を退いてなお、彼の発言に対する影響力は甚大なものであったことがわかります。世界の中で存在感をアピールすることが苦手な日本人としては、彼の存在感はやはり日本人としたら、異例の存在であったようです。

 マクロン大統領もこの安倍元総理に対するツイートを危篤状態の時点で一度、死亡が確認されてから再度、発信しています。(残念ながらマクロン大統領のツイートは型通りの感じの印象)

 この危篤状態の時点で、「心肺停止」と日本で報道されている間にフランスでは、「日本では所定のプロセスで医師が確認するまで死亡とは言わない。しかし、心臓はもう止まっているということだ・・」などと言っているのを聞いて、なんか、そんなこと、サラッとよく言うな・・と思っていました。

 しかし、それは、そのとおりだったようで、昭恵夫人が病院に到着して、すぐに、死亡宣告が行われたようで、彼の死亡時刻はちょうどそのタイミングになっていました。

 マクロン大統領のツイッターを見ていて、偶然に発見したのは、マクロン大統領の公式アカウントで彼がフォローしている日本人は安倍晋三氏ただ一人だけで、岸田首相は入っていません。政権が変わってもなお、発言が注目されていたのは、安倍晋三氏だったことがわかります。

 彼の死とともに、彼の業績がフランスでも解説されていますが、それに比べると、圧倒的に存在感のない現在の岸田首相が浮き彫りにされているような気もしてしまいます。現職の首相をよそに、今回の事件の記事には、「日本で最も有名な総理大臣が暗殺された」などとタイトルがつけられているのをみかけます。

 これが日本での選挙のさなかに起こったことで、民主主義への冒涜などと言われていますし、そういう側面もあるとは思いますが、この事件は事件で、選挙とは別問題です。

 この選挙直前のこのような暴挙は決して許されることではありませんが、これが同情票に繋がる危険もありそうなことを私は少し心配しています。事件は事件、選挙は選挙で、投票はお香典ではないことを忘れてほしくありません。

 それにしても、現在、戦争真っ只中で、「明日はもう、この世にいないかもしれない・・」と国連で演説していたゼレンスキー大統領やプーチン大統領が、世界一平和なはずの日本で銃撃された元総理大臣に弔電を送るとは・・安倍氏自身も思ってもみなかったことに違いありません。

 結局、この日は、1日中、フランスのトレンド1位は「Shinzo Abe」でした。


Shinzo Abe 安倍元総理大臣


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2022年7月8日金曜日

海外生活一人暮らしの女性の終活

    


 海外生活をしている者にとって、終の住処については、いつかは具体的に考えなくてはいけない問題の一つでもあります。海外生活はストレスも多いせいか、わりと早く亡くなる人も少なくないような気もしています。

 ある程度の年齢に達すれば、日本の両親は亡くなり、日本に一時帰国するといっても、もう帰る場所もないという人も増えてきます。私の場合は、母が亡くなってからはかなりたっていますし、父もそれから10年後くらいに亡くなって、実家はいなくなってしまいましたが、幸か不幸か家が残っているので、今のところ帰る場所がないわけではありません。

 私は、海外に出た時には、あまり具体的に色々と考えていたわけでもなく、一生海外で暮らそうとか、確固たる決意を持っていたわけでもありません。

 しかし、海外で生活するにあたってはビザが不可欠なので、未だにビザの更新の度に、ビザが更新できなかったら、日本に帰らなければならないのかな?と不安になったりもします。

 パリに住む日本人の知り合いの中には、独身で子供もなく、一人暮らしという人も意外と少なくありません。ガンにかかって、日本に帰国することに決めた人もいたし、最期まで病気と戦って亡くなっていった人もいたし、もう覚悟を決めて、一切の治療をせずにほぼ最期のギリギリまで普通の日常生活を送っていながら、全て自分が亡くなった後の葬儀や後始末の準備をしていたことが、その人の葬儀に行って初めてわかったこともありました。

 我が家の比較的、近所に住んでいた日本人の女性がいました。彼女は私よりもかなり年長で、一人でしっかり稼いで、すでにリタイアして、大きなアパートやニースに別荘まで持っていて、悠々自適の生活を送っていました。

 しかし、ある時、彼女が引っ越すというので、アパートまで買ったのに、なぜ?と聞くと、今後のことを考えて、断捨離をして、もう少しこじんまりとしたところにアパートを買い替えて引っ越すとのこと。

 行動力のある彼女は荷物の整理をすると、不要なものを処分するのに、フリーマーケットまで開いて、荷物を処分して、かなり身軽になって引っ越していきました。かなりあっさりとした様子で、自分にもしもの時があった場合に、自分の財産などの分配もフランス語に不慣れな日本にいる兄弟の子供たちに残すための書類等も全て準備したと話してくれました。

 私の場合は、そんなに心配するほどの財産があるわけでもないのですが、どちらにせよ私の些少な財産は娘が引き取ることになると思うので、できる限り、日本にあるものも、フランスにあるものも減らしていこうと思ってはいるのですが、彼女のように具体的に何もしているわけでもなく、一生、このままフランスに居続けるのかどうかも決めているわけでもありません。

 きっぱりとフランスにずっといることを決めて、日本の銀行口座なども全て閉めてしまっている人もいますが、私の場合、日本の銀行もそのままで、当然のことながら、現在生活しているフランスの銀行もそのままです。

 かろうじて、今、私がしていることは、私の些少ながらもバラバラに散らばっている銀行などの口座がどこにあるのか、私がいなくなった後にわかるように一つのノートに書き残してはいるのですが、それもごちゃごちゃになってきて、また書き直さなければと思っているところです。

 私の父が亡くなったときには、そのようなものはなく、また、私も弟も海外生活を送っているので全て銀行にお願いしてしまいましたが、その他のものの後始末は果てしなく大変なものです。人が何十年も生きるとガラクタも含めてこんなに足跡を残すものなのか・・とちょっと呆然とするほどです。

 前回の滞在許可証の更新の際は、さんざんすったもんだした挙句にどういうわけか、永住権も取れてしまったので、フランスの法律が変わればまた別の話ではありますが、フランスにこのままいることも可能になったのですが、かといって、ずっとこのままかどうかも決めているわけでもありません。

 できればフランスと日本と半々くらいで暮らせたらいいな・・などと甘いことを考えてはいたものの、パンデミックやウクライナ戦争で日本との行き来も早々、簡単な話ではなくなってしまいました。

 これが長引けば、今度は体力的に日本との行き来も無理になってしまう(すでにかなりキツいけど・・)のではと、とりあえず、このいつまでも終わらないパンデミックと戦争に悔しい思いを募らせています。

 しかし、一度にはできない自分の後始末、そろそろしっかり考えなければと思っている今日この頃なのです。


海外生活の終活


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2022年7月7日木曜日

ニース市長 公共交通機関でのマスク義務化を発表 フランス人は義務化されなければマスクはしない

 



 ニース市長・クリスチャン・エストロジは、公共交通機関でマスクを着用することが再び義務付けられるよう、ニース市の他の市長と共同で政令を制定し、来週の月曜日から交通機関でのマスク着用義務を復活させることを発表しました。

 この政令は、「メトロポリスの交通網全体」において、「月曜日から、市長たちとの共同政令に基づき、全員が強制的にマスクを着用する」ことを意味しています。

 今回の措置で、ニース市は政府の勧告をさらに上回ることになりました。ニース市長はこの公共交通機関でのマスク着用義務復活の理由として、「24時間以内に20万人以上の患者が発生し、急激に増加する第7の波に乗り、このままでは新学期を危険な状態でスタートさせることになってしまう」とニース市長は警告しています。

 これに対し、エリザベット・ボーヌ首相は、同日行われたニュース番組のインタビューの中で、国全体としては、「4回目のワクチン接種を進めている」、「公共交通機関でのマスク着用義務化をとるつもりはない」と答えています。

 彼女は、このインタビューの中で、「もちろん、公共交通機関内や人混み、閉鎖空間でのマスク着用は強く推奨しますが、それは、もうフランス国民はよく理解していることで、私もそのような場所ではマスクを着用しています」と語っています。

 彼女の言っていることはもっともなことですが、このもっともな理屈は一般的なフランス人には通用するものではありません。

 この発言を聞いて、私は「おいおい・・この人、大丈夫か・・?」と思ってしまいました。

 もちろん、彼女の言うように、多くのフランス人は公共交通機関や閉鎖空間、人混みでマスクが必要なことを理解しているかもしれませんが、理解はしていても、義務化されなければしないのが一般的なフランス人なのです。

 公共交通機関でのマスク義務化が発表されたニースで、「来週からニースでは公共交通機関でのマスク着用が義務化されますが、この件についてどう思いますか?」というインタビューに答えている女性が、「今は公共交通機関内でマスクをしていませんが、マスク義務化は賛成です。この感染拡大には必要なことです。来週からは私も公共交通機関ではマスクをします」と躊躇いなく答えていました。

 このインタビュー映像を見て、「これこれ・・フランス人はこれなのよ・・」と思いました。マスクが必要だと思っているなら、今すぐにでもすればいいのに、義務化されなければしない、義務化されるのなら、します・・という人がきっと大半なのだと思います。

 6月末の時点で行われた世論調査によると、フランス国民の71%が公共交通機関でのマスク着用義務化を望んでいるという結果が出ています。にもかかわらず、パリの公共交通機関内でのマスク率は一向に上がってはいません。

 この現状がその答えです。必要だと思っていても、義務化されなければマスクはしないのです。そして、義務化してほしいと思っているのです。

 現在のボーヌ首相の様子を見ていると、彼女が首相に就任する際に、新旧首相の交代の挨拶の中で、カステックス前首相が「フランス人は要求の多い国民で、額面通りには受け取らない。しかし、彼らはそれに対処する方法を知っている。彼らは偉大な人々であり、政治的な人々だ」「また、マティニョン(首相官邸)の住人に批判が集まるのは必至だ」と彼女に警告したことを思い出します。

 彼女の言っていることは正論ではありますが、それがそのまま通用しないのが、フランス人です。この公共交通機関内でのマスク義務化問題をはじめとして、新内閣は発信力が弱くなり、基盤が揺らいでいます。正論だけで押し通すことができるエリート集団ではなく、一般大衆を動かしていかなければいけないことを彼女はもう少し理解する必要があります。

 このままでは、他の案件に関しても、この優等生発言をする彼女は受け入れられないのではないか?と案じられてしまいます。

 また、これから本格的なバカンスシーズンに突入するにあたって、パリにも観光客が増えてきました。メトロの中などで気になるのは、特に観光客のマスク率が低いことが目につきます。

 外国から来る観光客にとって、フランスはマスクが必要のない国として認知されているのです。バカンスに来てまで、マスクなどしたくないに違いありませんが、現在のフランスはそんな状態ではありません。

 バカンスに来ている観光客が感染を拡大させる危険も大いにあることなのです。ニースなどは、観光客も多い地域なので、ニース市長の決断は極めて妥当であると思います。

 1日の新規感染者数が20万人を突破しただけでなく、フランスの集中治療室は、コロナウィルスによる患者で、すでに20%占拠されており、これはもうただの風邪と変わらない・・と言っていられる状態ではなくなっています。

 ワクチン接種が感染を防ぐものではなくなっている現在、ワクチンパスの復活はあまり意味がないと思いますが、せめて公共交通機関内でのマスク義務化はフランス全土でしてほしいのです。


ニース公共交通機関マスク義務化復活


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2022年7月6日水曜日

フランスの1日の新規感染者数20万人突破

  


 フランスの感染拡大が止まりません。ここ数週間で、1日の新規感染者数は5万人ずつ増加していくという増加の仕方です。1週間で5万人ずつ増加とは・・なかなかえげつない増え方です。

 昨日の1日の新規感染者数が206,554人であったことが発表されても、もうさほど、驚きませんでした。どちらかといえば、「やっぱりね・・」そんな諦めたような気持ちでもあります。それにしても、1週間で55%の増加です。やっぱりね・・とは思っても、やっぱり酷いです。

 1日の新規感染者数が10万人を超え始めたあたりから、政府は公共交通機関や閉鎖空間でのマスク着用を強く推奨することを呼びかけ始めましたが、推奨されただけでは、フランス国民が従わないことは素人の私が見てもわかることです。

 最近、パリのメトロ内では、「マスク着用は義務化はされていませんが、マスク着用は強く推奨されています」とご丁寧にフランス語と英語でアナウンスが入っていますが、メトロ内のマスク着用率は、若干増えたかな?という気もしないことはありませんが、ざっと見て、20人に1人程度だったマスク率は15人に1人くらいになった程度な感じです。

 さすがにワクチンがかなり浸透してはいるので、これだけ毎日、新規感染者が増加しても、パンデミック初期のように、救急車のサイレンがとめどなく聞こえ続けるようなことにはなってはいませんが、さすがに1日20万人ずつ感染者が増加していれば、全ての指標がプラス、しかも、それぞれの数字が王台を超えるタイミングを迎えています。

 一番、懸念される集中治療室の患者数も1,000人を突破(1,004人)(1週間で10.4%増)、入院患者数も17,000人を突破(17,041人)(17%増)、10万人あたりの感染率は、ついこの間1,000人を超えたと思ったら、もう1141人にまで上昇し、100人に一人の感染率が87人に一人の割合までになっています。殊にイル・ド・フランス(パリを中心とした地域)に至っては、すでに1,200人を超えています。

 陽性率(検査をした場合に陽性である確率)は、31.1%、検査をした人の約3人に一人は陽性という驚くべき数字です。

 このフランスのコロナウィルス第7波の拡大にもかかわらず、フランスのパンデミック緊急事態の期限は2022年7月31日に終了する予定であり、新たな「健康監視・安全保障」に関する法律が国会で審査される予定にはなっています。

 しかし、フランスは、これまで、感染状況に応じて、適切に規制を対応させてきましたが、今回は、この事態にもかかわらず、公共交通機関でのマスク着用義務を決定していません。

 公共交通機関でのマスク着用を強く推奨するなどと言っても、もうそんなことは通用しないのは明白なことで、とりあえず少しでも感染を抑える簡単な方法は、義務化して、罰金を課すこと以外にありません。

 ワクチンの追加接種も呼びかけてはいますが、これはもう一度ブースター接種をした人にとっては、さらに追加のワクチン接種はしないという人も多いため、そんなに簡単に浸透する話ではありません。

 これまでのフランスのパンデミック対応は、初期対応など失敗もあったとはいえ、かなり、早急な対応をとってきたと思うし、特に昨年の今頃の夏のバカンス前のヘルスパスの導入などは、かなり強引で驚かされましたが、結果的には、このヘルスパスの導入によって、加速度的にワクチン接種も広まったし、この一筋縄ではいかないフランス国民を壊滅的な被害から救ってきたと思うのです。

 しかしながら、今年2月のウクライナ戦争が始まったあたりから、どうも政府の手綱が緩み始めたことを感じずにはいられません。パンデミックの後遺症(終わってはいないけど)とも考えられる物価の上昇や戦争によりさらに拍車がかかったインフレ対応、そして、大統領選挙、内閣改変と政治的にも他の思惑が先行されているようです。

 そもそも、せっかく公共交通機関でのマスク義務化が浸透していたものをまだウィルスが消滅したわけでもないのに撤廃してしまったことが、そもそもの失敗であったと私は思っています。

 国民にとっては、一度、解放されたものを再び締め付けられるのは、義務化が続くことよりも抵抗があるに違いありません。

 こうなったら、1日も早く早急に取れる罰金、罰則付きの規制をとらなければ、感染は倍々にと増えていくことは避けようもありません。ましてや、これから本格的なバカンスシーズン、昨年はこのバカンス中に感染が拡大することを恐れて「ヘルスパス」がないと身動きできないようなかなり強硬な対策をとったにもかかわらず、何も対策をとらずにグズグズしている政府の意向がまるで理解できません。

 また、今年は、空港や航空会社、SNCF(フランス国鉄)などの公共交通機関のストライキが立て続けに起こっており、ただでさえ人が多く集まるところをさらなる混雑がつくられる事態に至っています。

 このままでいけば、来週には、1日の新規感染者数はさらに5万人増加では済まずに、一気に1日30万人・・なんていうことになっても不思議ではありません。


フランス感染爆発 リバウンド 新規感染者数20万人突破


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2022年7月5日火曜日

もう二度と会わないと思っていた大嫌いな人に偶然、会った

 



 昨日、メトロの駅の構内を移動中、何かが肩に触れた気がしたのですが、気のせいだと思って、私はそのまま歩き続けていました。現在のパリは日本ほどの猛暑ではないにせよ、なかなかの暑さで、その日も私はけっこう強い日差しの中を歩きながら、やっぱり家の中のどこかにあるはずの日傘をもってくればよかった・・とか、この後、買い物に寄って帰るのは、どこのお店にしようか?とか考えながら、周囲にはあまり注意を払わずに歩いていたのです。

 私は歩き続けていたので、後から考えると彼女は、私を見つけておいかけてきたのだと思いますが、私は全く気が付かずにいました。それでも、また肩に何かが触れた気がしたので、「えっ??」とちょっと警戒して、振り返ると、見覚えのない女性がたしかに私を呼んでいたのです。

 知らない人が何で?とちょっと身構えると、彼女は「○○です!」と名乗ってきました。それは、私の以前の職場にいた同僚の一人で、名前を聞いて、しばし彼女の顔をじっと見てしまったほど彼女の容貌は変化していました。しかし、どちらにせよ、私が二度と会いたくなかった人であることには変わりありません。

 パリの街中を歩いていて、偶然、知り合いに会うということは、なかなかないことで、しかも、私が大嫌いな人、咄嗟に呼び止められて、避けようもなかったのですが、私が彼女を嫌っていることは、彼女自身も知っていると思っていたのですが、そこが彼女のスゴいところで、彼女にとってはそんなことはお構いのないことなのは、相変わらずだったのです。

 もっとも、彼女のことが嫌いな人は私だけではなく、ほぼ全ての人が彼女のことを嫌がっていたので、そんなことを気にしていては、やっていけないのでしょう。

 しかし、職場が同じでは、あからさまに避けることも大人気ないので、仕事をしている時は、そんな感情は押し殺していたのですが、とはいえ、普通なら、そこそこ感じとってしまうもの・・しかし、どんなに周囲の人が嫌がっていても、ちっとも彼女はめげることなく、全く平常と変わることはありませんでした。

 ただ、私が彼女と同じだった職場を後にする際には、かなりハッキリと「職場を変わったら、一切、関わりたくないので、引き継ぐ仕事に関することは、私がこの会社にいるうちに聞いてね・・」と言ってあったのに、どういうつもりなのか?彼女は何も私に聞いてくることはありませんでした。

 おそらく、何がわからないのかもわかっていないのだと思っていましたが、一応、猶予期間はあったので、この先は、本当に絶対に彼女には関わりたくないと思ってかなり私としてもハッキリとした態度を示したつもりでした。

 さすがにそこまで言ったので、私が職場を後にしてからは、一切、彼女からの連絡はなく、他の人を介して一度、連絡してきたことがありましたが、私は全く彼女に会うことはありませんでした。

 そんな感じで別れたので、その後、どこかで見かけたりしても決して声をかけるなどということもないだろうと思っていたのです。

 彼女は数年後に社内で違法行為を犯したために、解雇されたという話を私は他の人から聞いていましたが、そんなことを私が知っているとは思っていないのか、聞いてもいないのに、あれから自分は、2回も転職して、今は、この近くの会社で働いている・・と、次から次へと話し始めました。

 以前から彼女の虚言癖には辟易していたので、今さら、まともに話を聞く気にもならず、また、興味もありません。

 突然、彼女に遭遇して、びっくりしながら、彼女の話を聞いていましたが、おそらく私は、ものすごく嫌な顔をしていたと思います。しかし、相変わらず、彼女はそんなことにはお構いなしに、「私の電話番号、変わっていたかな??」などと、いかにも、今後、また連絡を取り合うようなことを言い出したので、「私はもう、いいから・・」と言うと、彼女も諦めたようでした。

 パリには、かなりアクの強い人が多いのですが、嫌われ者に共通していることは、どんなに嫌がられても意に介せず、まったく応えないということで、何年経っても、彼女は変わらないのだな・・と思いつつ、しかし、べっとりとした言いようのない嫌悪感に襲われ、その日は1日、嫌な余韻をひきずってしまったのでした。

 その帰りに家の近くのスーパーマーケットで買い物をして家に帰り、ホッと一息ついたところで、メガネがないことに気づいて、私は大慌てでスーパーマーケットに戻り、メガネの忘れ物がなかったか?と尋ねに行きました。フランスの場合、まず忘れ物、落とし物が出てくることはないのですが、念のため、諦めるためという気分でしたが、やっぱり、私のメガネはありませんでした。

 そして、家に帰って再び着替えようとした時、洋服ダンスの近くにメガネは置いてありました。どうやら私が一度目に帰ってすぐに、着替えるときに置いたのを忘れていたようです。

 彼女に会ったことでの自分の動揺ぶりをつくづく思い知らされ、なんだかバカらしくなりました。


嫌われ者


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