2021年10月30日土曜日

医療介護者・看護士不足のための病床閉鎖の増加

   


 科学技術評議会によれば、現在、フランスの公立病院の病床は医療介護者・看護士の不足から、その20%あまりが閉鎖状態に追い込まれていると言われ、このことに対する早急な対応が求められています。

 これは、もちろん今回のパンデミックにより極端に労働条件が悪化したことが引き金を引いてはいますが、そもそもこの問題はコロナ以前からの長期にわたる問題であったことが問題を根深くしています。

 そもそも、医療介護士・看護士の仕事は、「きつい」「汚い」「危険」の3Kと言われる職業でもあり、敬遠されがちな上に、フランスの医療介護士(看護士)の給与は他のヨーロッパ諸国と比較してもかなり低水準。

   

EU・OECD加盟国の看護士給与比較

 その上、介護士・看護士という仕事は、30年後もキャリアアップが望みにくい職業であることも将来を見据えた時に、理想と現実とはかけ離れていき、厳しい労働環境下での精神的、肉体的なストレス、疲労が蓄積されていくと、離職、転職に繋がっていってしまうことが少なくないのです。

 2020年10月の時点で全国看護士団は、看護士の10人に4人が、5年後、この職業に止まっているかどうかわからないと述べたことを明らかにしています。実際に今年に入ってからは、1,300人の看護師の辞職が確認されています。

 それに加えて、介護士・看護師を目指す学生の中途退学もこのパンデミック下に急増し、フランスが医療崩壊を起こした時点で看護学生が大量に動員されたことから、実際の職務につく以前に、あまりに厳しい病院の現場を目の当たりにしてトラウマ化してしまったことも大きく影響していると言われています。

 パンデミック以前からすでに人員不足だった医療現場において、大きな志を持って看護の勉強をしていた学生にとって、最初の現場があまりにショッキングなものであったことは間違いありません。

 人を救いたいという高い志を持ち、社会に不可欠な大切な仕事をしている、しようとしている人々が安い賃金と劣悪な労働環境で耐えられなくなり、報われない状態が長く続いていれば、バーンアウトしていくのも当然です。

 昨年の今頃は、感染者が急増して、再度、夜間外出制限や外出距離の制限のロックダウンが行われていた時期です。

 あの頃に比べれば、感染状況はかなり改善してはいるものの、それでも辞職する人が後を経たないのは、問題がパンデミックだけに起因しているわけではないということです。

 フランスでは、医者を志して医学部に進学したものの、医学部途中で医者になることを断念した人が看護士になっているケースも少なくないため、看護師になって、実際の現場での仕事に臨んで余計に焦燥感を感じてしまうという事態にも陥りがちになります。ツイッターなどのSNSでも看護士が辞職を告げているメッセージが広く伝えられています。

 転職ということがあまりマイナスにとらわれていないこともこの状態をさらに悪化させています。

 この医療介護者・看護士不足への中期的な解決策として、「とにかく学生の数を増やすこと、より多くのトレーニングを行う必要がある」と語っている人もいますが、仕事同様にプライベートを大事にする人々が、この現在の介護者や看護師が耐えきれずに辞職していく現状を踏まえて、そのような職業に着くための学校を選択するとは考えづらく、学生の数を増やすためには、現場の労働環境・待遇の改善が先なのではないかと思います。

 昨年から比べると改善しているコロナの感染状況ではありますが、ここ1週間ほどで、コロナウィルスによる入院患者は14%ほど上昇しています。

 マルセイユの病院では、市内にある2,700床の病床のうち、16%の448床が閉鎖されており、感染が再び増加し始めている現在から冬にかけて、どうやって過ごすのかわからない、絶望の危機に瀕していると語っています。

 コロナウィルスのピーク時には、集中治療室の占拠率が〇〇%などということがしきりに報道されていましたが、現在では閉鎖されている病床が〇〇%などと言われるようになり、また、別の意味での不安材料が生じてきました。

 労働者の権利の主張が激しいフランスで、なぜ、このセクターはいつまでも改善されないのか?

 医療現場という社会にとって、必要不可欠な場所で、一生懸命働いている人々が報われない・・そんな状況は改善してもらわなければ困ります。


医療介護者・看護士不足 病床閉鎖


<関連記事>

「コロナウィルスの第一線に駆り出されたインターンシップの医学生のトラウマ・PTSD」

「フランスの新規感染者3万人超えの中の医療介護者のデモ」

「フランスのコロナウィルス医療従事者の悲痛な叫び」

「コロナウィルスによる「命がけ」という体験」



2021年10月29日金曜日

フランスの食品廃棄物救済アプリ Too Good To Go 


「Too Good To Go」で3.99ユーロで購入した「PAUL」のパン


  最近、環境問題の一貫として、食品廃棄物の問題が取り上げられ、スーパーマーケットなどでも賞味期限間近、または、廃棄処分になっている食料品を食品廃棄物防止の黄色やオレンジ色のラベルが貼られて、大幅に値段を下げて、売られるようになりました。

 これは政府の「アンチガスピヤージュ(無駄廃止)」の呼びかけによるもので、大きな成果を上げてきました。

 そして、ここに来て、食品廃棄物を減らし、それをアプリを使って、利用できるサービスがフランスでは急拡大しています。

 それは「Too Good To Go」という携帯アプリで、自分の希望する地域の食料品を扱う店舗で、その日に売れ残る商品を大幅な割引価格で購入することができるシステムです。「Too Good To Go」をフランス人は「トゥグトゥゴ」と縮めて呼んでいます。

「フランスのToo Good To Go のサイト・ここからダウンロードできるページに飛べます」

 これは、実によくできたシステムで加盟店はその日に売れ残るであろう?食料品を廃棄せずに約3分の1程度の価格で売り捌くことができます。

 まず、だいたい、引き取りに行く都合(時間が限られているために)の良い場所で店舗を探します。

  



 だいたい、この地域にはこれくらいの数の店舗が登録されているということが表示されます。

 毎日、毎日、同じ店舗で同じ数のパッケージがあるかはその日(あるいは前日)にならないとわからないので、その時点での購入可能な数が表示されています。

 


 加盟店には、パン屋さん、レストラン、スーパーマーケットなど、現在、フランスでは23,999の店舗が登録しており、前もって予約し、購入予約をして、アプリで決済を済ませ、当日の指定された時間(閉店間際の時間)に取りに行けば良いだけです。

 この加盟店には地域にもよりますが、「PAUL」や「Eric Kayser(エリック・カイザー)」などのパン屋さん、「Monoprix(モノプリ)」や「FranPrix(フランプリ)」などのスーパーマーケット、Starbucks(スターバックス)など、大手チェーン店も名前を連ねています。

 しかし、今のところ、スタバなどは、購入可能な商品を見つけたことはないので、環境問題に参加してますアピールのために名前を連ねているのか?などと思ったりもします。


注文すると届く画面


 ただ、中身については、選ぶことはできないので、例えば、中身は定価で〇〇ユーロ相当のものが入っているというだけで、その3分の1程度の価格が提示されています。

 先日、それなら一度、試してみよう!と、近くのパン屋さん「PAUL」で12ユーロ(約1,600円)相当のものが3.99ユーロ(約520円)というパッケージを購入してみました。「PAUL」ならば、日頃、売っている商品は大体把握しているし、何が入っていたとしても、ハズレはないと思ったからです。

 なんだか、何が入っているのかわからないので、ちょっとした福袋気分で引き取りに行くのが楽しみでワクワク・・。

 引き取りに行く時間は閉店直前の18時15分から18時30分のたったの15分だけに限られていて(これはお店によって違います)、私たちの他にはもうひと組、この「Too Good To Go」の引き取りに来ていましたが、普通のお客さんは、通常の定価で買い物をしています。

 商品は、その時間には、すでに袋に入って用意されており、アプリを提示するだけで引き取ることができます。

 さてさて、中には何が入っているか?と、家に帰るとさっそく、中身を広げてみました。

 中には、バゲットが1本、スモークサーモンのサンドイッチ、オリーブのパンにオリーブオイルとトマト、モツァレラチーズの入ったサンドイッチ、ブレッツェル、オリーブとベーコンのフガス各1個、ベニエ(チョコレート)2個、シューケット6個、シリアル入りの炭のプチバゲット、ジンジャーブレッドなどなどと盛りだくさん! 余裕で12ユーロ以上の内容です。

 これはお買い得!そして、普段、自分では試すことがないものを試すことができるので、思わぬ発見もあり、これなら、今度、買ってみようか?などと思うきっかけにもなります。

 しかし、逆にこれを知ってしまえば、もう二度と「PAUL」で定価でパンを買わないのではないか?などと思ったりもします。早々に、バゲットなどは冷凍保存し、日持ちしないサンドイッチを真っ先に頂きました。

 けれど、まだまだ充分に美味しく食べられるものを今までは廃棄していたのか?と思うと、とてもお買い得なお買い物をしたと同時に無駄を減らすことに貢献できた!という都合の良い満足感も感じます。

 このアプリはデンマークで発祥したアプリのようですが、このようなアプリがもっと世界中に広がると良いなと思っています。


食品廃棄物救済アプリ Too Good To Go

 

<関連記事>

「食品廃棄物防止・減少へのフランスの取り組み スーパーマーケットの食品廃棄物防止のラベル」

「フランスのスーパーマーケットからレシートが消える」

「マクドナルドの水が呼び起こす大論争 Eau by McDonald's」

「フランス2022年1月から野菜や果物のプラスチック包装禁止」


2021年10月28日木曜日

パリで見つけた美味しいお蕎麦屋さん あぶりそば Abri Aoba

  

フランス産の鴨の鴨南蛮そば フランス人は鴨が大好き

 

 お寿司、ラーメン、うどん・・今やパリで和食のお店は珍しくなくなりましたが、そんな中でもあまり見かけないのがお蕎麦屋さんです。

 私はお蕎麦が大好きで、日本で仕事をしていた頃は、お昼というと週2〜3回はお蕎麦というオヤジのような生活をしていました。

 パリに来てからは、そもそもお蕎麦屋さんには全く期待をしておらず、ずいぶん前にサンジェルマン・デ・プレの方にお蕎麦屋さんができたという話を聞いたのですが、あまりの高価さに覗いてみる気にもならず、パリでお蕎麦といえば、家で乾麺を茹でて食べるというくらいでした。

 しかし、先日、「何か美味しいものは・・・」と探していたら、パリにもいつの間にかあったではありませんか? なんと、ミシュランのビブ・グルマン(Bib Gourmand Michelin)(ミシュラン星付きレストランほど高価ではなく、比較的お手頃価格の厳選されたお店)に載っているお蕎麦屋さんが・・。

 これは行かないわけにはいかない・・とさっそく、行ってきました!

 それは、こじんまりとした、さほど目立たない外観でお店の看板も出さずに(看板は敢えて出さないという方針らしい)やっているAbri Soba(炙りそば)という名前のお店で、行列を避けて、なんとか昼1時前には・・と思っていたにもかかわらず、すでに少し行列ができていたことでそのお店だとわかったほど、目立たずに営業しているお店でした。

  

目立たず、看板もなく、ちょっと見には何のお店かわからない外観

 店内に入るとすぐに目に飛び込んでくる、吊るされたワイングラスやその上下にずらっと並んだ日本酒やワインの酒瓶が酒飲みの目にはことさら嬉しく、一見すると、バー?飲み屋さん?と思われる店内です。

 

これだけ見たら、とてもお蕎麦屋さんには見えない


 店内はテーブル席30席ほどとカウンター席が6席で、満席。お店の規模のわりには店員さんは8人もいて、スタッフは全て日本人、お客は私たち以外は全てフランス人という珍しい光景です。

 ここでは、ナイフやフォークは提供していないのか?お客さんたちは、器用にお箸を使っていましたが、中には上品そうなマダムがまるでナゲットかフライドチキンのように、天ぷらを手で摘みながら、お蕎麦を食べている様子なども見られてそれはそれで、微笑ましい感じです。

 

一見、日本か?と思うような座席、座席の下には荷物を入れるカゴまで!


 入り口の扉から内装まで、全て木目調で揃えられ、店内のあちこちに見える細かい装飾品も味のある日本のもので飾られています。


可愛らしい日本の小物とともにフランスのレストランには珍しい黒七味


 さすがに日本人だけのスタッフのサービスは、フランスではあまり見られないサービスが隅々まで行き届いており、お店の人の対応にはいちいち、さすが・・日本人・・と嬉しくなります。

 昼のメニューはそれほど種類は多くありませんが、どちらにせよ、そんなに食べられるわけでないので、充分です。

 お蕎麦には、冷たいお蕎麦と暖かいお蕎麦があり、ざるそば、おろしそば、きつね、ごまだれ、天ぷら、月見、山菜、鴨などがあります。お値段は9ユーロ(約1,200円程度)(ざるそば)から17ユーロ(約2,200円程度)(天ぷらそば)の間なので、パリでの外食としては、このクォリティでこのお値段はすごく納得のいく価格です。

 それぞれのお蕎麦には、プラス6ユーロでサラダ、ご飯(炊き込みご飯(ひじきや枝豆などが入っている)かマグロとサーモンの巻き寿司が2個)の他に、唐揚げか野菜餃子、日替わりのお惣菜のいずれかのを選ぶことができます。

 

お昼のメニュー

 お蕎麦以外には、鶏の唐揚げ、とんかつ、鮭の西京焼きのお弁当(定食)があり、ご飯、お味噌汁、漬物、野菜餃子がついてきます。

 寒くなってきたので、暖かいお蕎麦が食べたくて、天ぷらそばと鴨南蛮そばを頼んだのですが、天ぷらは別盛りでカラッと揚がったサクサクの天ぷらが楽しめます。

 お蕎麦はお店で作っている特製のお蕎麦で、比較的細めの麺は滑らかで、舌触りも良く、久しぶりのお蕎麦に舌鼓をうちました。


天ぷらそば 天ぷらは海老2本とエリンギとナス

 大きなぷりぷりの海老の天ぷらも、鴨の脂がじわっとつゆに染み出している鴨南蛮にも大満足、お蕎麦に載せられている刻みネギの細かさと小さな三つ葉にまで感動しました。強いていうならば、おつゆは若干、甘めです。


 


 プラス6ユーロでついてきた、巻き寿司は赤酢の酢飯で巻かれており、サラダには水菜、大根のつまなどが合わされ、鰹節と醤油ベースのドレッシング、唐揚げには甘だれがうっすらとかかっており、唐揚げに添えられたサラダには胡麻ダレがかかっています。

 その一つ一つの小さな小皿にも細かい心遣いが感じられ、丁寧に作られていることがわかります。

 その上、どんなものかわからず、一人分しかプラス6ユーロのメニューにせずに二人で分けあって食べていたら、頼まずとも、唐揚げは二人分に切り分けてくれる心配り。

 

お水を入れてきてくれるボトルも可愛い

 お水一つをとってもなくなったら、すぐに次のボトルを持ってきてくれました。(日本ならあたりまえのことですが、フランスでは決してあたりまえではありません)

 こんな感じのお店なので、夜になると、メニューも増えて、ちょっとつまみながら飲める居酒屋さんのようになり、大賑わいになるようです。

 このお店で出てくるものなら、際限なく飲めそうだと思いながら、次回はぜひ、夜に来たいものだと思ったのでした。


⭐️Abri Soba Paris あぶりそば パリ

10 Rue Saulnier 75009 Paris  月曜休 12:00~14:00, 19:00~22:30 日曜夜のみ

メトロ⑦番線 Cadetより徒歩3分、⑧⑨番線 Grand Boulevardsより徒歩7分


<関連記事>

「今、パリで人気のうどん屋さん 喜心 Kisin」

「パリで今、大人気のラーメン屋さん KODAWARI RAMEN TSUKIJI こだわりラーメン築地」

「ファラフェル激戦区 パリ・マレ地区の美味しいファラフェルのレストラン2選」

「パリの日本の食パンブームの波 Carré Pain de Mie カレ・パン・ドゥ・ミの日本の食パン」

「パリで食べられる世界一のピザ PEPPE PIZZERIA ピッツェリア・ペッペ」

「フランス人と日本食」








2021年10月27日水曜日

眞子さまのご結婚報道で見えるフランスの日本という国の見方

 


 「日本の眞子内親王の物議を醸す結婚」「眞子内親王は長い論争の末に結婚した」「眞子内親王の結婚式が帝国の伝統を破る理由」「眞子内親王は4年間の論争の末、ついに婚約者と結婚する」「4年間待った後、眞子内親王はついに結婚しました!」こんな見出しで、フランス大手各紙は眞子さまのご結婚を報道しています。

 フランスでのこの結婚に関する報道は、概ね以下のとおりです。

 天皇陛下の姪にあたる眞子さまは、一般人の小室圭氏と結婚しました。この結婚は婚約発表の3ヶ月後に、夫となった小室圭氏の母親が400万円(3万ユーロ)の返済を拒否したことが公になって以来、日本では物議を醸し続けてきました。

 このスキャンダルは日本社会の非常に保守的な層からは完全に否定的な目で見られていました。

 そのため、宮内庁はこの結婚を延期し、小室氏はニューヨークに旅立ち、勉強を続けていましたが、結婚が正式に決まったタイミングで日本に帰国。4年が経過し、結婚が決まった状況においても空港に降り立った際の彼のポニーテールでさえも非難の的となり、とうとう結婚直前になっても彼らの結婚への反対の声は収まることがありませんでした。

 日本でのこの結婚に対する論争は、英国のメーガンとハリーに匹敵するほどであると報道しています。

 このように、結婚までの経緯については、日本での報道とほぼ同じではありますが、この報道を機に、眞子さまが心的外傷後ストレス障害であると発表されたことから、過去に現皇后・雅子妃殿下が長い間うつ病を患ってきたことなどを例に挙げ、日本のマスコミは、皇族のわずかな粗さにも態度を緩めることはないと指摘しています。

 結果、「多くの人がこの結婚に納得していない」と判断した皇室側は、結婚にまつわる皇室での伝統的な儀式を全て中止し、まるで平和な生活への代償を支払うかのように、結婚時に支払われるはずの1億5,200万円(110万ユーロ)を辞退する結果となり、これは、戦後、日本史上初めてのことであると伝えています。

 また、結婚が単なるラブストーリーの延長ではなく、家族間に関わる契約である場合が多い日本という国で、彼女の父親が結婚を受け入れることは、何世紀にも渡る皇室の伝統や習慣を損なうことになろうとも、娘の幸福を望む秋篠宮文仁親王の皇室の変化への願望とも解釈することができ、この願望はこの世代の日本人の両親によって広く共有されつつあるものでもあり、眞子内親王の結婚は、若い日本人女性の開放の強力な象徴になる可能性があるとも伝えています。

 日本の皇位継承は男性皇族のみに引き継がれるもので、女性の皇族は、結婚後、皇室を離脱することが、定められています。皇室の女性を結婚後も皇室に留めおくことは論じられてはいるものの、強硬派の支持者や伝統主義者は、女性が統治できるようにするための措置に激しく反対しているため、制度の変更は今後長い間続く可能性があります。

 皇室を離れた経緯は異なるとはいえ、ニューヨークに移住するこの元皇族の夫婦は、必然的に王室を離脱して異国に移住したハリー王子とメーガン妃との比較が行われ続けるだろうと予測されています。

 気になるのは、いくつかのメディアでは、国民の多くが賛同しないがゆえに、眞子さまが皇室を離脱したという報道があることです。

 いずれにせよ、ニュースの内容そのものよりも、日本古来の伝統的な皇室の異例な結婚というこのニュースを通じて、フランス(海外)からは、日本がこんな風に見えているのか・・ということを垣間見える興味深い一面もありました。


眞子内親王ご結婚 日本の皇室


<関連記事>

「眞子内親王ご結婚に関するフランスの報道」

「メグジット ヘンリー王子とメーガン妃の王室離脱 フランス人はイギリス王室の話題が大好き」

「フランス人は想像以上に日本を知らない」












2021年10月26日火曜日

フランスでの婦人科検診 子宮頸がん検診

 


  

 毎年のように婦人科検診の通知が来ていたにも関わらず、ずっと放置したまま、ここ数年は、それにロックダウンなどが重なり、できる限り、病院には行かないことにしていたため、これまで私がフランスで婦人科検診に行ったのは、23年間でたったの一度だけでした。

 もうそれは、10年以上も前のことだったので、記憶も朧げで、ひたすら不快で痛かった記憶しかなく、そのうちの一つは乳がん検診だったと思うのですが、大してありもしない胸を無理矢理機械で挟んで、レントゲン?を撮ったのが、もう悲鳴をあげるほど痛くて、「これは、検査で病気になりそう!」などと思い、「もう一生やりたくない!」と思ってしまったのです。

 以来、検査の通知が来ても、ロクに中身も見ずに、捨ててしまうことはないものの、なんとなく気にしながらも、いつか、時間的にも、精神的にも余裕ができたら行こうと、束のように通知が溜まっていき、そのうち、もう封筒を見ただけで、「あっ!これは婦人科検診の通知だ!」とわかるくらいになり、通知に添えられている手紙にも「あなたは、ここ何年も検診を受けていませんが、検診を受けることはとても大切なことです」などと記載されるようになり、歳を重ねるにつれて、普通に生活しているだけでは健康を保てないことを痛感しつつあり、少々、不安を覚えるようにもなってきました。

 先日、いつも薬を処方してもらう、かかりつけの医者のところに行ったときに、ついでに届いていた通知を持っていって、相談したところ、「それは、やらなきゃ!前回は、いつやったの?」と言われ、「もういつだったか覚えていないくらいずっとやっていない・・」と言うと、「そんなはずはない!絶対、5年以内にはやっているはず・・」などと断言されて、なんだかそれ以上はもう言い返すのも憚られて、婦人科を紹介してもらったのでした。

 彼女が知っているお医者さんなら、少しは安心か・・と自分に言い聞かせて、予約を入れて、数十年ぶりに婦人科検診に行ってきたのでした。

 婦人科検診、(今回の通知は子宮頸がんの検診)は、厚生省(公衆衛生局)が2018年に開始した子宮頸がんプログラムの一環で、その通知を持って行けば、検査は無料でやってくれます。

 このプログラムは、25歳から65歳の全女性を対象としており、子宮頸がんの早期治療を行い、死亡率を減らし、また情報のフォローアップとケアの質を向上させることを目的としており、全ての女性が全国の子宮頸がん検診への平等なアクセスを保証しています。

 年齢に応じて、3〜5年に一度の検査が推奨されていますので、これに応じて、この間隔で通知が送られてくるものと思われます。(私の場合、ずっと受けていなかったので、毎年のように送られてきていたのだと思います)

 この通知を受け取ったら、地域の婦人科に予約を取り、検診票を持参して、検診を受けます。この検査の実施の記録と結果はこのプロジェクトを担当する地域ガン検診調整センター(CRCDC)に送信されます。

 この検診に関しては、通知と健康保険カート(Carte Vital)を持参しさえすれば、前払いなしで国民健康保険により100%カバーされます。(しかし、一応、レシートのようなものをくれるので、それに記載されている内容によれば、かかっている費用は30ユーロ(約4,000円程度)ほどです。

 フランスでは、がんの治療に対しては(特別な療法は除く)100%、国で補償されるので、早期に発見して、がんを回避することは、結果的に国の医療費節減にもつながるのです。

 年齢、妊娠、出産の経験、出産時の手術について、健康状態(既往症など)について、家族(家系)の病歴、アレルギーなどについての簡単な問診の後に、内診が行われ、子宮頸部からのサンプルが採取されます。

 多少の痛みと不快感はあるものの、前回感じたほどの嫌悪感はありませんでした。内診・サンプル採取は正味5〜10分ほどで終わります。

 採取されたサンプルは、宛名のついた封筒に入れてくれるので、それを自分で切手を貼って郵送します。

  

サンプルは自分で郵送するところが、いかにもフランス


 一度、検診を受けると個人個人のデータファイルが作成され、地域ガン検診調整センター(CRCDC)がフォローアップし、今回の結果とともに今後のデータもそれに追加される形で保存されます。

 このデータは、フランス公衆衛生研究所やがん研究所(INCa)など、これらのミッションを担当する研究所で共有され、がん制御システムを評価、研究を実施するために、国立がん研究所の腫瘍学データプラットフォームに追加され、ナショナル・ヘルスデータシステムのデータとの照合されます。

 長いこと放置して、検診を受けなかったくせに、こんなシステムを知ってみると、自分の健康維持だけでなく、自分の検査が、国のがん研究に貢献しているようで、少し嬉しい気分です。

 ただし、データ保護規則(RGPD)およびデータ保護法に基づき、このデータ処理へのアクセスを拒否する権利もあり、自分の権利が尊重されていないと感じた場合は、CNILに苦情を申し立てる権利があります。

 本人には、3週間後くらいに、サンプルを送った検査施設から直接、結果が送られてくると言うことです。

 長いこと気にかかりつつも放置してあった検診をようやく受けて、3週間後に受け取る通知に問題なければ、積年の気がかりが解消され、ようやくホッとできることに、なんだ・・もっと早くやっておけばよかった・・と調子のいいことを思った私でした。


婦人科検診 子宮頸がん検診


<関連記事>

「海外生活中、もし、ガンにかかったら、あなたは日本に帰りますか?」

「パリ一人暮らしの日本人女性の死」

「絶対に入院したくないフランスの病院」

「コロナ以来、初めての病院 フランスの医療システム」

「フランスの医者の大盤振る舞いな薬の処方」







2021年10月25日月曜日

燃料費の急激な高騰のためにフランス政府が緊急に支払う100ユーロのインフレ補償手当

   


 パンデミック以来、ロックダウン等により、停滞していた経済が想像以上の速さで回復しつつあったフランスで、今回の燃料費を始めとする物価の急激な上昇は、見過ごすことができない問題として急浮上してきました。

 日常生活に直結するこの急激な物価の上昇にフランス国民がおとなしくしているはずはありません。

 すでに、先週末には、夏以来、続いてきた「ヘルスパス反対」のデモとともに、黄色いベスト運動が、この燃料費・物価の上昇に対するデモを開始しています。

 フランス政府はこれを棄ておけない状況であると判断し、カステックス首相は、このインフレに対応する措置として、「月収2,000ユーロ(約26万円)未満の国民に対し、100ユーロ(約13,000円)のインフレ補償手当を支給する」ことを発表しました。

 この100ユーロの「インフレ補償手当」支給には、3,800万人のフランス人が該当しています。

 カステックス首相は、「価格の上昇に直面して、政府は最も公正で効率的なシステムを選択した」と説明しています。これには、就業者、従業員、自営業者、失業者だけでなく、奨学金を受けている学生、年金生活者などの多くの人が対象になります。

 このインフレ補償手当は、家族の構成や車を所有しているかどうかに関わらず、1人当たり100ユーロが支給されます(非課税)。この手当は個別に支払われるため、例えば、夫婦で双方が2,000ユーロ未満の収入の場合には、200ユーロが支給されます。

 この2,000ユーロの基準額は、税務世帯の規模ではなく、1人あたりに決定されたもので、労働者の半数以上と退職者の70%をカバーしていることになります。また、私は都市部に住んでいるので、さほど車の必要性を感じることはありませんが、フランスでは、現在、84%の世帯が車を所有しているため、特に燃料費の高騰は多くの世帯にとって、切実な問題であるのです。

 すでに高騰している物価のため、この措置は緊急性を帯びていることから、この資格に該当する者には、特別な申請等の手続きは必要なく、2021年12月から2022年2月の間に、自動的に支払われます。

 しかし、これは、恒久的な補償ではなく、差し迫った状況にある中産階級への財政的な後押しであることは言うまでもありません。

 100ユーロ支給の価格について、政府は、車を頻繁に利用する人の値上がり分の費用を80ユーロ、追加の20ユーロは他の物価上昇(食品等)のインフレを補うと見積もっています。

 この緊急措置に必要な金額は38億ユーロとされており、そのための資金として増税が心配されていますが、政府は、このインフレ補償手当を行うことで、消費を停滞させることなく国民が消費することで、価格が上昇している分、追加になる消費税で10億ユーロは回収できるとしており、残りの28億ユーロについては、2021年の経済回復率が6.25%に上方修正されたことにより、特に増税することなく、回収可能な金額であると説明しています。

 フランスのお役所仕事は、本当にトラブルも多く、時間もかかるのが普通ですが、税金やお金に関することは、きっちり漏れなく請求も来るし、支払われるべきものは、きっちり支払われます。

 ロックダウン中の営業停止などのための補償金なども、大きなトラブルが起こったという話を聞くこともなく、早急に支払われていました。

 これは、全ての情報が全てオンライン化され、個人個人の納税状況などが全て把握されているからこそ可能だったわけで、今回の「インフレ補償手当」も同じように支払われるものと思われます。

 同じお役所でも税務署(財務省)だけ、どうして、こうもきっちりしているのだろうか?と思いますが、徴収される場合だけでなく、支払ってくれる時には、ありがたいことです。

 決して黙って我慢はしない国民を抱えたフランス政府は、この燃料費の高騰により、2018年に起こった過激な「黄色いベスト運動」の二の舞にならぬよう、即刻に緊急措置をとったのだと思われます。

 放置すれば、物価の上昇による経済停滞だけでなく、暴徒化するデモにより、さらに状態は悪化する可能性を秘めているのです。

 それにしても、この対応措置の速さ!スゴいです。


フランスの補償 燃料費高騰


<関連記事>

「黄色いベスト運動シーズン2 黄色いベスト運動再開の動き」

「フランス人はお金を使い出した 想像以上の速さで進むフランスの経済復興」

「コロナウィルスによるフランスの経済危機・賃金削減か?人員削減か?」

「スーパーマーケットの日用必需品以外のコーナー閉鎖による部分的な失業手当申請の悪循環」

「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ①」

「ブリヂストン・フランス・べチューン工場閉鎖 ②」







2021年10月24日日曜日

フランス政府からの3回目のマスクの無料配布

   

左から1回目、2回目、右端が3回目に配布されたマスク


 パンデミック以前から、日本からの観光客にマスクをしている人を見かけるにつけ、フランス人から、「なんで?日本人はマスクをしてるの?」と半ば嘲笑的に言われることがありました。「別に、みんながマスクをしているわけではないけど、衛生的に気遣っていたり、花粉症の場合なんかもマスクをするかも・・」などと、適当な返事をしながら、ちょっとバカにされている気分であまり気持ち良いものではありませんでした。

 医療従事者や特別な仕事以外には、マスクをする習慣がなかったフランスで、マスクは病気を連想させ、美観?を損ねるため、個人的には、パンデミック以前は、フランス人が街中でマスクをしているのを見たことがありませんでした。

 ある時、会社内の改装工事をしているときに、あまりに社内の埃がひどく、慌てて誰かがマスクを買いに行って、今はどこでも見かける大きな箱入りのマスクを買ってきた時には、フランスの薬局にもマスクを売ってるんだ・・とビックリしたくらいでした。

 それがパンデミックが始まって、あっという間にロックダウンになり、非常時用に備蓄してあったはずのマスクが経年劣化して廃棄されたまま、補充されていなかったことから、医療施設でさえもマスクが不足し、急遽輸入されるマスクが国賓待遇で警察車両に誘導されながら、政府の管理のもとに運ばれるような時もありました。

 この頃は、まだロックダウン中だったので、ほとんどの人がほぼ外出できない状態でいたので、マスクは薬局でも一般人は購入することはできませんでした。(医療従事者ややむを得ずに人と接する必要のある仕事関係の人優先)

 まさに「マスクを笑うものはマスクに泣く」の状態でした。

 当初は、マスクの必要性をそれほど理解していなかった国民に対して、フランス政府は、「医療従事者でなければ、マスクは必要ない」などと言ってもいました。

 そんなフランスでマスクが配布され始めたのは、日本で「アベのマスク」が騒ぎになっていた頃でもあり、ロックダウン解除が決まった2020年の5月のことでした。

 この時、私のところに届いたのは、市役所からで、ロックダウン解除のタイミングには、国単位ではマスクの供給が間に合わず、市役所が急遽、布で作らせた、色は良いけど、ペラペラのマスクでした。

 あれから、何度かの感染の悪化、減少を繰り返し、その度にマスクの着用が義務化される場所が拡大され、今年の5月に2度目のマスクが今度はフランス政府から届きました。

 それは6枚セットの白い洗えるマスクで前回よりも、だいぶ、しっかりしたものでしたが、しっかりしすぎて、逆にちょっと息苦しい感じでギャザーも少なく、あまり使い勝手が良いものではありませんでした。

 これは、営業が停止されていた店舗や美術館や映画館などが再開し始めたタイミングで、外出は許可するけれど、マスク着用は義務化された状態であったのです。

 あれから、夏のバカンスとほぼ同時にフランスでは、「ヘルスパス」(ヘルスパスによる飲食店や娯楽施設等の入場制限)の制度が取られ、ワクチン接種率も急激に上昇し、それにより、感染状態も減少し、集中治療室の患者数もかなり減少していきました。

 今では、フランスでは、ほぼ日常の生活を取り戻し、屋外でマスクをしている人はかなり減りましたが、相変わらず、公共交通機関や飲食店以外のヘルスパスの提示が求められる場所などの屋内空間では、マスク着用が義務付けられています。

 そして、先日、パンデミック以来3回目の政府からのマスクが届きました。今では、どこでもマスクは買えるようになりましたが、義務化しているためなのか?まだまだ気を緩めてはいけないという警告なのでしょうか? 

 感染が減少したため、ヘルスパスはもう撤廃しても良いのではないか?という声も上がり始めている中、政府は追加のマスクを国民に配布し続けているということは、政府はまだまだ慎重な態度を崩していないという表れでもあります。

 政府からのマスクの配布はこれで3回目になりますが、度を重ねるごとに、クォリティもアップし、今回も6枚セットの洗えるマスクですが、かなり使いやすいように改良された自国製のリサイクル可能なもの。

   

マスクのチェックシート

 4時間ごとにマスクは交換してくださいとか、1枚に付き、50回(洗って)使用可能な6枚分のマスクのチェックシートまでついています。これでマスクをチェックしながら、マスクを使用する人がいるかどうかは、疑問ですが、つまり、1日2枚使うとして、150日間分のマスクだということです。

 感染が減少したとはいえ、ここのところ、若干ではありますが、上昇傾向に転じ始めたフランス。先日、フランスは議会で「ヘルスパス」は、必要であれば、2022年7月31日までは延長できる法案が採択されました。

 ここのところ、ワクチン接種の拡大で感染が収まりかけたに見えていた世界の国々でも、イギリス、ロシアなどでは、急激な感染者の増加が記録され、ドイツでさえも感染者の増加を発表しています。

 フランスは「ヘルスパス」で救われ続けるのか? それとも、これまで常にイギリスの数ヶ月後に同じような状態になって感染増加している前例を見る限り、またイギリスと同じ道を辿るのか? いずれにしても、政府が憂慮してマスクを送ってくるように、まだまだ、気を緩めることはできないのが現状のようです。


マスク無料配布


<関連記事>

「ロックダウン解除に向けて、圧倒的にマスクが足りないフランス」

「ロックダウン後、2回目の買い物 生まれて初めてフランスでマスクを買いました!」

「フランス人は、マスクさえしていればいいと思っている・・フランスで感染が拡大する理由」

「使い捨てマスクは洗って使える???」

「FFPマスクの義務化の是非とフランス人の義務と補償と権利」