幸いなことに、全くご縁のない刑務所という施設ですが、フランスでは犯罪に遭遇(といっても、スリとかひったくり、せいぜい強盗??・・くらいですが・・)する機会はやはり日本よりは多く、しかも、簡単な窃盗の類では、ほぼ、事情聴取、調書を取られるくらいで釈放されてしまうので、フランスで刑務所に収監されるということは、よほどの場合なんだろうな・・という認識がありました。
一度、万引き集団(若者たち)に出くわしたことがあって、お店の人が警察に通報して。お店に警察官の一団がやってきて、抗う若者たちを取り押さえて、後ろ手に手錠をかけたりしているのを目にして、なんだか殺伐としていて、やることが派手だな・・と思っていました。
その時に、同行していた警察官に「この子たちはどうなるんですか?」と尋ねたら、「身元を確認して、調書を作って、家に帰します」と言われて、「えっ?それだけ?」とビックリしていたら、逆に警察官にビックリし返され、「あなたはそれ以上にどうしてほしいの?」と言われて、ダブルに驚いたことがありました。
なので、変な話、フランスで刑務所に入るには、かなりハードルが高いと思われるのですが、にもかかわらず、刑務所はいつも超満員で、2023年1月1日現在の受刑者数は72,173人(日本の受刑者の約2倍(フランスの人口は日本の約2分の1))で若干減少した・・と言われています。
しかし、フランスでの犯罪が減少しているはずはなく、2022年11月、12月と過去最高記録を更新し続けた挙句の若干の減少で受刑者数がかなり高い人数であることに変わりない中での若干の減少ということらしいです。
そして、前述したように、フランスでの収監は狭き門?でありながら、刑務所は常に不足状態であり、全体の刑務所密度は119%、150%を超える刑務所は56ヶ所あります。6つの刑務所では稼働率?が200%以上に達しているそうです。
フランスは3年前に欧州人権裁判所(ECHR)から、慢性的な刑務所の過密状態を指摘され、歴史的ともいえる非難を受けました。この記録的な稼働率を改善するために、政府は新しい刑務所の建設と仮釈放の延長による効果を期待しているのだそうです。
1月1日以降、これによって懲役2年以下、刑期3カ月未満の受刑者の早期釈放が可能になりました。2021年4月からの試算では、6,000人の受刑者がこの仕組みの影響を受けるとされています。
新しい刑務所の建設はともかく、早期釈放が刑務所の過密回避の対策というのは、どうにも恐ろしい話で、「それは、あまりに安易で、解決策ではないだろ!」・・と思います。
以前、パンデミックが始まったばかりの頃に、刑務所内での感染拡大のために、一部受刑者を釈放・・ということがあり、「ちょっ・・ちょっ・・と待ってよ!」と思ったことがありましたが、今回もまたそんな気持ちです。
特に性犯罪者、DVなどの暴力犯に関しては、マスコミを騒がすような重大事件などでも、よく「つい数ヶ月前に出所したばかりだった・・」とか、釈放後、追跡用のプレスレット(電子タグ)の監視が充分にできていなかった・・などという話が浮上することが多い気がするので、一般市民の安全が脅かされる可能性があるのです。
そもそも、犯罪者にもかかわらず、収監に至るケースが日本などに比べるとかなり低いうえに、懲役2年以下、刑期3カ月未満の受刑者の早期釈放というのは、全く理解しがたいことです。
ここで、チラッと日本の刑務所問題を見てみたら、一般社会同様、刑務所内の受刑者の高齢化が問題になっているようで、下手をすると、介護施設?と思われるようなところもあるようで、それはそれで、ため息が出てしまう感じです。
また、一時、カルロスゴーンの逮捕の際にフランスにも日本の刑務所内の受刑者への厳しい扱いは常軌を逸しているとフランスでも話題になりました。
フランスの刑務所と日本の刑務所、それぞれのドキュメンタリーを見たりすると、それぞれ全く別の恐怖にかられます。
しかし、とりあえず一般社会の生活を脅かす人について、少なくとも刑務所のキャパの問題で解放してしまうことは、やめていただきたいと思うのです。
フランスの受刑者数
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