2021年4月7日水曜日

子供が一人で歩いて通学できる・「はじめてのおつかい」の番組が成立することは驚異的な治安の良さ

  


 フランスでは、子供の学校の送り迎えは、一般的には、小学校卒業まで続けられます。

 娘が通っていた学校では、高学年にもなれば、親の承諾があれば、一応、子供が一人で帰宅することは、許可されていたものの、「万が一、何かあったら、取り返しがつかない」「何か起こったら、後悔し切れるものではない・・」と、我が家も小学校卒業までは、登校時、下校時は、送り迎えを続けてきました。

 送り迎えは、学校だけでなく、お稽古事の行き来や、外出なども、全て送り迎えが必要で、子供がお友達の家のお誕生日会などにお呼ばれをしたりしても、必ず、送りに行って、お迎えに行く、あるいは、招待してくれた家のお父さんかお母さんが家まで迎えに来てくれたり、送ってくれたりしていました。

 ですから、基本的に、子供が一人で家にいるということも、一人で外出するということも、フランスでは、許されないことで、(何の恨みかわかりませんが、我が家は、決して、子供を一人にしたこともないのに・・)「子供を学校(幼稚園)にも行かせずに置き去りにしている」と通報されたことがあり、区役所の自動保護担当の人が、家に調査に来たことがありました。

 そんなことは、毎日、送り迎えしている際に学校の先生とも、子供だけでなく、親も顔を合わせているので、学校(幼稚園)の出欠を確認して貰えば、すぐにわかる嘘なので、全く問題にはなりませんでしたが、そんな通報で、区役所の担当の人がすぐに家に飛んでくるということや、そもそも、そんなロクでもない通報を誰が何のためにしたのか? その方が恐ろしい気がしたのでした。

 まあ、それくらい、子供を放置したりする家庭もあるということなのでしょうが、こちらとしては、子供の学校やお稽古事の送り迎えと仕事の毎日に、大変な思いをしてきたので、そのとんでもない見当違いの通報をした人に、私の日常を見せてやりたいと思う気持ちでした。

 子供を送って、仕事に行き、仕事が終わると迎えに行き、仕事がお休みの日は、お稽古事のはしごの送り迎えや買い物や家事で瞬く間に時間が過ぎていくのです。

 特に娘が小さい頃に、同じ年頃か、ちょっと年上くらいの女の子が、その頃に住んでいた地域で行方不明になった事件があり、どこへ行ってもその女の子の捜索のためのポスターが貼ってあり、とても他人事とは思えなかったりもしました。

 日本の人気番組に、「はじめてのおつかい」という小さい子供におつかいを頼んで、その様子を隠し撮りして、その様子をレポートする番組がありますが、フランスでは、小さな子供におつかいを頼んで、一人で買い物に行かせるなどということは、全くできません。

 とても愛らしく、微笑ましい番組で、できたら、日本に一時帰国した時に娘の「はじめてのおつかい」の様子を撮ってもらいたいと思ったくらい好きな番組ですが、考えてみれば、あれは、日本ならではできる、かなり奇跡的な番組で、フランスだけでなく、おそらくあれができる国は、なかなか無いだろうな・・と、海外に出てみると思います。

 買い物に行く時は、子供を一人で家に置いておくこともできないので、必ず一緒に連れて行きましたが、一人で買い物に行かせることなどは、できません。

 それでも、お金を払って、何か物を買うということをさせてみたくて、娘が初めて、お金を持って、フランスで買い物をしたのは、パン屋さんでした。

「焼けすぎていないバゲット一本下さい」と言いなさいと言って、パン屋さんの前まで一緒に行って、パン屋さんの外で待っている・・というのが、娘のはじめてのおつかいでした。

 せいぜいこの程度がフランスでできる「プチはじめてのおつかい」です。

 日本に一時帰国した際、娘を実家の近くの区立の小学校に一時入学(2週間ほど)させて頂いたことも数年ありましたが、教頭先生から「登下校の際にお子さんにこれを持たせてください」と、防犯ベルを渡された時には、日本もこんなになったのか・・と驚かされましたが、基本的には、近所の子供が数人で子供だけで登校できるのは、やはり、スゴいことです。

 電車やバスに乗れば、私立の小学校に通う子供がランドセルを背負って通学している様子などは、フランスでは考えられない光景だと、あらためて思わせられるのです。

 日本を出て初めて、日本ではあたりまえだったことが、実は、全くあたりまえではなかったことは、実にたくさんあり、どちらかというと、日本の方が特別なんだということが、いかに多いことか! 学校の送り迎えも、「はじめてのおつかい」も、世界的に見たら、驚異的に治安の良い日本ならではのことなのです。


はじめてのおつかい


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2021年4月6日火曜日

パリの超高級レストラン、闇営業の大スキャンダル



 パリのレストランは、コロナウィルス対策のために、昨年10月末から閉店したままで、もう半年近く、テイクアウト以外の営業は認められておらず、1回目のロックダウンから合計すると、かなりの長期間、閉店休業状態で、多くの店舗が危機に瀕し、廃業に追い込まれた店舗も少なくありません。

 そんな中、M6(フランスのテレビチャンネル)がパリ市内の超高級レストランが闇営業しているルポルタージュを潜入映像付きで報道し、また、映像の中で、このディナーの参加者が「多くの大臣とも、この種の闇営業の高級レストランで食事している」と証言していることから、単なる闇営業問題だけには、おさまらず、大騒動になっています。

 日本での自粛などとは異なり、フランスでは、全てのレストランが営業禁止の中の隔たれた空間の中での秘密の超高級レストランの営業に、しかも大臣クラスの政治家まで参加となれば、それはもう大騒ぎです。

 この閉ざされた豪華なデコレーションに囲まれた贅沢な空間では、扉を超えた時点から、皆が、まるでコロナの全くない世界のように振る舞い、マスクをしている人はゼロ、今では、懐かしささえ感じるようなビズー(お互いに頬を合わせ合う)で皆が挨拶しています。

 メニューは、高級なシャンパンからキャビア、フォアグラ、トリュフ、タラバガニ、雲丹、仔牛のフィレミニョン、車海老などで彩られた、有名なトップシェフの名前も添えられたメニューなどのお料理も含まれた最低でも160ユーロから500ユーロ近い(約65,000円)のメニューが用意されています。

 映像の中の会話は、「ボンジュール、ムッシュー、ようこそ! どちらからのご紹介ですか? 夜のメニューは、160ユーロからです。ここに来る人は、マスクを取ることになっています。この扉を通り抜けると、コロナウィルスはありません。私たちは、快適な時をお過ごしいただきたいのです。ここはプライベートクラブで、皆さんに自分の家にいるようにくつろいでいただきたいのです。」というウェイターの案内から始まります。

 そして、この参加者の一人が、「私は、今週、2〜3カ所の、いわゆる違法レストランで多くの大臣と食事しています。なかなかユーモラスな時間です。私たちは、依然として、やりたいことをやる民主主義の世界に生きています。」と証言しています。

 このM6のルポルタージュの報道を受けて、パリ検察庁が違法なレストランの営業で他人を危険に晒している危険な行為として、調査を開始しています。

 このレストランは、すでにM6の画像とネットワーク上の以前の出版物を考慮して、レストラン経営者はクリストフ・ルロワであるといくつかのメディアとインターネットユーザーによって識別されていますが、このパーティーの主催者とされている人物は、事実を否定しています。

 このレストランの営業に関しては、経営者、パーティーの主催者に対しては、1年の懲役、15,000ユーロの罰金が課せられる可能性、また、参加者に関しては、現行犯でなくとも、事実が確認されれば、マスク不携帯、また、ソーシャルディスタンスを取っていない二重の罰金(135ユーロ×2=270ユーロ)を課せられる可能性があります。

 しかし、500ユーロ近いメニューを食している人々にとって、この程度の罰金は、痛くも痒くもないものだとも思うのです。

 昨年のイースターのバカンス時期には、ヨーロッパ中が国境閉鎖されていて、国境突破するために、プライベートジェットで、リゾート地に出かける人まで出たことが問題となりましたが、全く懲りないこの上層階級の人々。

 特権階級意識、自分たちは特別だということに慣れている人は、むしろ、このような違法行為にも、かえって一般人よりも抵抗がないのかもしれません。これまでにも10月末以来、違法に営業しているレストランが摘発されて、1,000人近くの人がレストランで食事していた事実が今回の騒動で、再浮上しています。

 しかし、形は違うとはいえ、ウィルスは人種や階級の差別はなしに誰にでも感染するので、結果的には、街中やセーヌ川沿いで戯れる若者と同じようなもの。

 フランスの感染拡大が止まらないのも当然です。

 大臣級の人が参加していたというのが事実(これは、デマであるという噂もある)であれば、それこそ、スキャンダルもメガ級の大スキャンダルで、これはまた大きなデモにでも発展しかねません。


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2021年4月5日月曜日

フランスのCMと日本のCM・テレビコマーシャル

   

           

 

 先日、日本にいる叔母が、日本のテレビ番組を焼いたDVDを送ってくれて、久しぶりに日本のテレビ番組を見ました。今は、YouTubeなどでも、結構、日本の番組なども見れるようになったのですが、それでも、そうそう日本のテレビ番組は、見ているわけでもないので、日本からの荷物をほどいて、早々に嬉しくDVDを見たのでした。

 娘が小さい頃は、現在のようにYouTubeもネットフリックスもなく、ひたすら娘の日本語習得のため?に、日本のテレビ番組を録画してもらったビデオやDVDなどを頻繁に送ってもらっていて、それを繰り返し、繰り返し、見せていたので、我が家のテレビは、フランスでも、ほとんどいつも日本のテレビ番組が流れているような感じでした。

 最近は、娘もすっかり日本語を習得し、両親も他界してしまったため、日本からのDVDもすっかり届かなくなったのですが、久しぶりに日本のテレビ番組を見て、番組はもちろんのこと、結構、楽しいのが、テレビ番組の合間で、流れているCMだということに気がついたのです。

 普段は、テレビといえば、フランスのテレビのニュース番組くらいしか見ない私にとって、あらためて、日本のテレビCMは、なかなか新鮮で楽しいのです。

 なんといっても、日本のCMは、ビールなどのアルコール飲料のCMが多いこと!「うわぁ〜ビール美味しそう!」とフランスに来て以来、ほとんど飲まなくなってしまったビールを日本のビールのCMを見て飲みたくなります。そして、高齢者用のオムツのCMなどもフランスのテレビでは見かけないCMで、日本の高齢化社会を思わせられたりもします。

 フランスでは、タバコ、アルコール飲料などのテレビコマーシャルは、消費者保護のために法律で禁止されているため、ビールやワインなどのテレビコマーシャルはありません。また、薬に関しても、社会保障によって払い戻されない薬のみと限定されており、概して、フランスは、消費者の保護や特定の専門的利益(部門)の保護など、さまざまな理由により、CMには、規制が多く、CMの種類も限られているのです。

 また、ファストフードなどのジャンクフードや、アルコール飲料のポスターなどにも、必ず、「健康のために、1日5種類の野菜をとりましょう」とか、「健康のため、アルコールは1日2杯以内にしましょう」などの注意書きが入っています。

 そんなに規制したりしなくても、日本人の方が余程、健康に気を使った食事をしていることも皮肉なことですが、そんなところにもロックダウンせずにいても、日本のコロナウィルス感染がフランスのようにならない自主規制ができる現状の一旦が表れているような気もします。

 フランスのCMで、圧倒的に多いと思われるのが、車のCM、香水、保険、宝飾品、水、乳製品など、どちらかというと、全体的にイメージを全面に作られている感じで、何気にテレビで流れていても、「えっ??これ、なんのCMだったの??」と思うものも少なくありません。

 また、日本のCMのように芸能人が出てきて商品を宣伝するようなCMも極めて少ない印象です。

 私がフランスに来た20年以上前に、フランスのテレビで、シャネルの香水のCMが流れているのを見て、CMも国によって、違うもんだなぁ〜と思って以来、ついぞ、CMをこれといって見ようと思って見ることもなかったのですが、日本のテレビ番組の合間に録画されている日本のCMは、次から次へと新製品が登場したり、今の日本の一部が垣間見れて、海外在住者にとっては、なかなか楽しめるものでもあるのです。

 とはいえ、冒頭で貼り付けた映像は、最近、フランスで流れているスーパーマーケットのCMで、私が結構、気に入っているものです。

 ごくごく普通にどこでにでもいるような、フランス人の家族の日常を切り貼りしたような流れになっていますが、誰もマスクをせずにごくごく当たり前の日常を無邪気な子供の様子を交えて作られていて、今は、失われている日常を愛おしく感じる素敵な仕上がりです。

 これも、最後の数秒のテロップが入らなければ、何のCMかわからないものですが、なんだか、ほっこりさせられる最近の私のお気に入りのCMです。


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2021年4月4日日曜日

フランス人にとってのロックダウンの意味

     


 今回のフランスの学校閉鎖を伴う3回目のロックダウン強化がマクロン大統領から発表されたのは、水曜日の夜だったので、ここのところ、その手の規制強化の発表は、木曜日の夜で、金曜の夜から週末に入る前のタイミングで、規制が切り替わるようになっていたところ、1日繰り上げての発表だったので、この現在の急激な感染悪化に1日でも早く対応しなければならない緊急性を持ったものであると思っていました。

 マクロン大統領の発表の時点では、学校が閉鎖になる日程は、発表されていたものの、具体的な長距離移動が禁止になる日付は曖昧で、蓋を開けてみると、実際のイースターの祝日前の週末までは、結果的に長距離移動がギリギリ認められるというものでした。

 学校が閉鎖になる前に、リモートワークが不可能な親や、リモートワークとはいえ、子供を抱えながらの仕事が難しい家庭では、子供を地方に住んでいる両親(ワクチン接種が済んでいる場合)に預ける家族が子供を預けに行くというケースもあり得るので、このような日程になったことも理解できないわけではありません。

 また、リモートワークなら、狭いパリのアパートではなく、地方にあるセカンドハウスや実家に移動する人も少なくありません。

 しかし、実際には、ロックダウンで長距離移動ができなくなる前に、この祝日を含んだ連休の間に最後の機会をなんとか満喫しようと移動する人も多く、ロックダウンになるということは、ロックダウン直前までの猶予期間に、その後に禁止されることをできるだけ楽しもうとする、ロックダウンの意味をはき違えている逆効果の現象がロックダウン前には必ず起こります。

 実際にこの週末にはパリジャンの4分の1が地方に移動したと言われています。それだけ、ウィルスが全国規模にばら撒かれたと言うことです。

 今回のロックダウンは、地域的なものになると思いきや、比較的、危険度がそこまで高くないと思われていた地域まで、営業停止になってしまう店舗を含めて、全国的には、15万店舗がロックダウンのためにクローズ。

 危険地域ではなかった地域の生活必需品とは認められない服飾関係、アクセサリーなどのファッション業界なども、まさか営業停止になるとは思わずに、春夏物の仕入れをすでに済ませてしまっている店舗などは、大打撃を受けることになり、本当に泣きながらインタビューに答えていました。

 そこまでの犠牲を強いてまで行われるロックダウンの悲劇に嘆く人がいる一方で、ロックダウンになる寸前まで、バカンスを楽しもうとする人多くの人が国内を移動し、この週末のうちにウィルスは、国内全域にばら撒かれた感があります。

 また、若者の間では、未だレストランやカフェなどが営業されているスペインへ出かけるのが流行?しており、 フランスでは失われている日常を満喫しています。

 多くの店舗を閉店に追い込む制限をする一方、バカンス時期の移動はギリギリのタイミングまで許可し、実際の日常生活も10㎞以内の移動は、これまでと変わらずの甘々の対応で、「昨年のロックダウンのようには、もうこれ以上は、耐えられない」と言う国民を甘やかし、現在のフランスの感染状況は、天井知らずです。

 だいたい、「もうこれ以上は耐えられない」という意味がわかりません。今は、制限のある生活をしなければ、犠牲者が雪だるま式に増えていくのです。

 しかも、昨年の今頃とは違い、ワクチンができた以上、いくらワクチン接種が遅れているとはいえ、ある程度は、先が見えている状態なのです。このワクチン接種が浸透するまでのもう少しの状況を耐えなければ、この状況が長引くばかりなのです。

 フランス人にとって、ロックダウンは、ロックダウンまでの猶予期間をいかに楽しむか?(結果的には、そのタイミングでさらに感染が拡大する)、ロックダウンになったら、その規制の隙間をついて、いかに楽しむか?です。実際は、ロックダウンしなければならないほど、危険な状態であるということなのに・・。

 しかし、より厳しい規制になるところなのですが、パンデミック以来、1年以上が経過した今、フランス政府は、国民の反発を恐れて、より厳しい制限さえもできなくなっている情けない状態なのです。

 唯一の希望は、4月に入って、マルセイユやパリ近郊の大きなスタジアムを使って大規模なワクチン接種が開始されたことで、これが、せめてもの救いです。

 昨年の今頃は、パリ近郊にあるランジス市場が遺体安置場に使われていたことを思えば、今年は、スタジアムがワクチン接種場になっているのですから、すごい進歩です。

 フランスでは、もはや中途半端なロックダウンの結果を期待するよりも、充分なワクチンが1日も早く届いて、ワクチン接種が進むことを祈るしか無いような気がします。


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2021年4月3日土曜日

コロナウィルスワクチン接種をしました! アストラゼネカのワクチン

 

私が接種したワクチン・頼んで写真を撮らせてもらいました



 私が思いがけずにコロナウィルスのワクチン接種の申し込みをしたのは、今年の2月26日のことでした。ワクチンは、高齢者や感染した場合に重症化するリスクの高い人が優先で、以前に、かかりつけのお医者さんに、「私は、リスクの高い人に入りますか?」と聞いた時に、「あなた程度の人は、リスクが高い人には、入らないわよ!」と言われていたので、当然、私などがワクチンができるようになるのは、ずっと先のことだと思って、ワクチンの申し込みなど考えてもいなかったのです。

 ところが、2月の末に、たまたま、いつも飲んでいる薬の処方箋を書いてもらうために、かかりつけのお医者さんに行ったところ、ちょうど、フランスでは、開業医でもワクチン接種が開始されることが決まった時期で、また、フランス政府もワクチン接種の遅れを巻き返すために必死で、ワクチン接種のできる人の括りをどんどん広げているタイミングと重なり、思いがけずに、お医者さんの方から、「ワクチンの予約をしますか? あなたも今、飲んでいる薬などの履歴もあるから、心臓疾患ありとして、申し込みができるようになった。どちらにしても、予約をしても、それなりに時間がかかるから、申し込みは早くしておいた方がいいわよ!」と言われて、予約をしたのでした。

 どちらにしても、セキュリテ・ソーシャル(国民健康保険)から許可が来るのは、3月半ば過ぎになるだろうからその頃、また連絡してみて・・と言われていたのです。

 そして、3月の半ばに一度、彼女の方から、「とにかくワクチンがなかなか届かないから、いつになるか、はっきりわからないけど、ワクチン接種を受けるかどうかの再確認を取っておきたい」と電話をもらいました。

 以前にワクチン接種の予約をした時に、ワクチンをするとしたら、アストラゼネカのワクチンであることを聞いていたので、その電話をもらった頃に、ちょうど、アストラゼネカのワクチンの副作用について、話題に上がっている血栓症を引き起こす問題について、「私は、以前、怪我をした時に、足に血栓ができたことがあるので、血栓症については、大丈夫なのでしょうか?」と質問したら、「あなたの以前の血栓症は、怪我による血栓症だったので、問題はないわよ!」と言ってくれたので、その時の怪我の際の経過も全て、彼女が見ていてくれていているので、彼女が言うなら、他の誰に言われるよりも私にとっては説得力があり、もしかしたら、普通の人よりも血栓症になる可能性が高いのでは?という私の不安は解消されました。

 しかし、その時の電話でも、彼女は、彼女自身が、ワクチンを無駄なく使い切るために、1本で10人分のスケジュールを組んでいるにも関わらず、それ以来、ワクチンが思うように届かないことに、憤りを感じている様子でした。

 それ以来、連絡がなかったので、ワクチンが届かないんだろうな・・と思っていました。

 以来、フランスの感染はどんどん悪化し、娘がパリに帰ってきたこともあり、私自身ももういい加減、感染に恐れ続ける生活に嫌気がさしてきたこともあり、早くワクチンをして、少しでもリスクを減らしたいと思うようになってきました。

 そこで、彼女に電話をしてみると、ちょうど彼女はお休みで、代理のお医者さんが出たので、「ワクチンが来ているかどうか聞きたかっただけだから・・」と言って、電話を切ろうとしたら、「ワクチンは、全然、届いていないよ、でも、日々、状況が変わるから、明日、もう一度、電話をしてみれば・・」と言われて、翌日、電話をしてみたところ、「明日、できるわよ!」という返事。

 思いがけずにたまたま手に入った1本のワクチンの10分の1に入ることができて、ワクチン接種ができることになったのです。前日は、やっぱりちょっと不安もあり、友人に電話して、「ワクチンどうした?」と聞いてみたら、彼女は、一週間前に済ませたとのこと。別にその後も何も変わりがないし、できるなら、早くやった方がいいよ!という彼女の言葉にも勇気をもらったのでした。

 ワクチン接種自体は、全くあっという間で、正直、「えっ??もう終わり?」と言うほど、痛みも何も感じず、その日の夜と翌日は、ドリプラン(パラセタモール)を飲んでね!と言われただけで、待合室で一応、5分くらい休んでから帰ってね・・と言われて、1回目のワクチンをしたという証明書をもらって帰って来ました。

 たまたましてみた電話で、私の病歴や体調を全て知ってくれている、かかりつけのお医者さんにワクチン接種してもらえたことは、やはり、大きな安心で、たとえ副作用が出たりしても、彼女なら的確に対応してくれるという信頼感があることは、不安を軽減してくれます。

 しかし、開業医でのワクチン接種が始まって、一ヶ月以上経って、これまでに彼女が接種できたのは、50人程度、私が接種を受けた日も10人のみ。明日の分のワクチンは届かないから、明日の予約はキャンセルするとのこと・・今回、私がワクチン接種ができたのは、本当にラッキーでした。

 なお、ワクチン接種は、一切、無料です。フランスでは、通常の診療等に関しては、一度、支払いをしてから後に国民健康保険から払い戻されるシステムになっていますが、コロナウィルスワクチン接種に関しては、最初から支払う必要はありません。

 2回目の接種は、1回目の接種をした時点で、自動的におおよその日にちが設定されるようになっており、私の場合は、6月4日以降と記載されています。

 また、証明書には、ワクチン接種のコードナンバーの他、セキュリテソーシャル(国民健康保険)のナンバー、ワクチン接種をした医者の名前と医師登録ナンバー、ワクチンの種類とワクチン自体のロットナンバー、ワクチンは左腕にした・・などが記載されています。

 今のところ、心配していた、腕の痛みや身体の倦怠感などの症状は、私には訪れておらず、一応、一つ重大なステップが進んだという安心感からか、やたらとお腹が空いて、その日の夜は、凄い勢いで食べてしまったくらいです。

 しかし、翌朝、目が覚めてみると、注射をした左腕の部分が打撲のような痛み、まあ、今のところ、大した痛みではなく、ドリプラン(パラセタモール)でおさまる程度でした。

 来週には、大量のワクチンが届くと報道されてはいますが、それが末端まで広まるには、もう少し時間がかかりそうです。今は、フランスでは、薬局でもワクチン接種ができるようになっていますが、ワクチン接種をしたい場合は、こまめに自分から、薬局なり、かかりつけのお医者さんなどに連絡を取ってみる方がいいかもしれません。(フランスの場合ですが・・)

 もう一回のワクチンを接種すれば、旅行にも行ける!日本にも行けるかもしれない!などと、次から次へとやりたいことが思い浮かんでくる、コロナウィルスから脱出できる希望的観測を早くも抱き始めた私です。

 しかし、フランスの感染状況は、今のところ、上昇を続けていて、現時点では、全く安心はできないのです。


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2021年4月2日金曜日

バカロレア(高校修了認証のフランスの国家試験)2年連続中止の影響

  


 フランスの学生、特に高校生にとっては、高校生活の最後に受験するバカロレア(高等学校修了認証のための国家試験)は、なかなかの大きなハードルで、このバカロレアの資格は、その後の進学先を始め、就職の際にも最低限?の資格として、一生ついてまわる重大な試験です。

 バカロレアの試験は、教科数も多く、主要科目に関しては、一科目のテストに要する時間も3時間程度と長時間にわたるために、バカロレアの試験には、一週間もかかり、その準備も大変で、その間の集中力を保つのも、緊張状態の続く一週間だけでも、大変なことです。

 フランスには、日本のような受験戦争はありませんが、娘の通っていた高校では、このバカロレアの長時間の試験に慣れるために、実際のバカロレアの試験の一年前ほどから、3時間テスト、4時間テストが定期的に行われ、バカロレアの試験に備えていました。

 そんなバカロレアの試験がこのパンデミックの影響で、衛生対策から、昨年も中止され、日常の成績を参考にバカロレアの点数がつけられることになり、苦しい試験から解放された受験生からは、発表とともに、「試験なしにバカロレア取得!」と喜ぶ受験生のツイートがフランスのトレンドに急上昇したのも、まだ遠くない記憶に残っています。

 そして今年も奇しくも、昨年と同じ時期にフランスでは、感染が再拡大し、3回目のロックダウンを迎え、2年連続でバカロレアの試験は、哲学や一部の口頭試験を除いて、中止されることになりました。

 最後の最後まで、「学校は閉鎖しない」と、教育現場をかなりの重要な場として、死守し続けようとしていたフランス政府もコロナウィルスのために、ついに陥落、学校を閉鎖する(と言っても、通常のバカンス時期プラス2週間のリモート授業の導入ではありますが・・)ことになってしまいました。

 ただでさえ、ここ数年、フランスの学生の学力低下は問題になっており、昨年末に発表されたTIMMS(Trends in International Mathematics and Science Study)の調査結果によれば、フランスの学生は、以前と比較しても、特に理数系(数学、理科)の科目のレベルが著しく低下していることがわかり、ヨーロッパ諸国の中でも最低ランクに位置しており、フランスの教育関係者に衝撃を与えていました。

 そこへ来て、このパンデミックによる不安定な教育現場と昨年の約2ヶ月にわたる学校閉鎖(1回目のロックダウン)と今回の学校閉鎖。

 そのうえ、バカロレアが2年連続中止されるという現実は、フランスの学力低下問題に拍車をかけそうです。

 日常からの勉強はもちろんのことですが、やる気のある子供は、どんな状況においてもきっちりと積み重ねて勉強をしていきますが、そうではない場合は、試験があるから集中的に勉強するという機会が失われる上にさらに、学校閉鎖というダブルチョップ。

 このパンデミックは、間違いなく歴史上に残る大惨劇であり、コロナウィルスによる影響で、思い描いていた教育が受けられなかったり、就職の場が奪われてしまったりする人は、数え切れず、後世に渡り、「あの時は、・・」と語り継がれる出来事であると思いますが、日本で今もことあるごとに言われる「バブル世代」とか、「ゆとり世代」とかいう言葉のように、フランスでは、のちのち、この試験なしのバカロレアを通過した世代を「コロナ世代」「あ〜試験なしにバック(バカロレアのことをフランスではバックと呼びます)を取れた世代ね・・」などと言われるような気がしています。

 例年であれば、フランスでは、ほぼ、全ての高校生が受験するバカロレアという国家試験。

 一生ついて回るだけでなく、その点数によっては、(トレビアン、ビアン、アッセビアン(秀・優・良)と成績が表示される)思わぬ特典があったりもします。

 例えば、トレビアン(秀)を取った学生には、その年に銀行口座を新しく開く場合にボーナスとして、250ユーロもらえるという、一種の青田買いのようなサービスを提供している銀行もあったりして、広く活用されています。

 一部の学生を除いて、受験らしい受験のないフランスで、唯一、集中的に勉強する機会であるバカロレア、来年は、復活できますように・・。


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2021年4月1日木曜日

ついに最終手段の学校閉鎖を決行 これでフランスは、危機を脱することができるか? フランスの3回目の全国的なロックダウン

 

  Emmanuel Macron


 昨年の11月末の第2波のロックダウン解除の会見から実に、3ヶ月ぶりのマクロン大統領のスピーチでした。マクロン大統領が夜8時にスピーチをするために登場するということは、それなりに大きな決定の発表です。

 果たして、マクロン大統領の発表は、これまで、「あくまでも学校の閉鎖は最終手段」としてきたフランスにとって、苦渋の決断である4月3日からの学校閉鎖の発表でした。

 フランスでは、4月には、通常バカンスの混雑を避けるために、子供のバカンスは一週間ずつ、地域ごとに、ずらして設定されていますが(2週間)、そのバカンスの2週間を前後した1週間ずつをリモート授業に切り替えることで、約1ヶ月間、学校を閉鎖することを発表しました。

 子供が学校へ行かないことで、リモートワークに切り替えざるを得ない人口も見込まれています。リモートワークができない職種の人に関しては、子供を置き去りにできないために、その間の一時的な失業手当が支給されます。

 4月のイースターのバカンス時期に臨む前のタイミングということで、これに合わせて、これまで特に感染状態の深刻な19の地域で行われていた規制がフランス全土に渡ることになり、一定の種類の店舗の閉鎖に加えて、10㎞以上の移動禁止(特別な理由以外)の制限が敷かれ、地域を超える移動は、不可能になるため、イースターのバカンス中の国内旅行は、事実上、不可能になりました。

 また、この危機を乗り越えるために、現在すでに満床状態の集中治療室を1万床まで増加させる計画です。しかし、元来のフランスの集中治療室は5,000床のところ、現在はコロナウィルス以外の患者も含めて7,700床まで拡張されており、(そのうちコロナウィルスによる患者のために現在5,072床)、これをさらに2,300床拡大するのは、そのための人員確保も含めて、容易なことではありません。

 しかし、昨年の同時期の第1波の感染拡大に比べての、大きな違いは、なんと言っても、ワクチンがあることで、この現在、感染拡大のスピードに間に合っていないワクチン接種も3月末には、70歳以上、4月半ばには、60歳以上、5月半ばには、50歳以上、6月半ばには、全国民対象にワクチン接種が可能になると発表しました。

 とはいえ、「ロックダウンしない」「学校閉鎖はしない」というフランス政府の方針は、ガタガタと崩れ始めました。この方針を変更しなければならない、最終手段を取らなくてはならないのは、苦渋の決断であったに違いありません。

 しかし、今回の学校閉鎖の発表も、「これまで、フランスは、他のヨーロッパの多くの国が学校閉鎖をしても、フランスは閉鎖せずに、また、規制もロックダウンという厳しい形を取らずにできるだけ、自由な生活を続けてきました。しかし、今は、我慢しなければならない時なのです」とマクロン大統領は語っています。

 とはいえ、国民の側は、少しでも自由な生活を続けて来れたとは、おそらくちっとも、思っていないでしょう。むしろ、これまで少しでも自由を与え続けてきたと恩着せがましく言われる筋合いはなく、きっちりとロックダウンせずにズルズルと感染拡大が続き、感染拡大がどうしようもない状態になって、さらに厳しい制限下の生活を余儀なくさせられることに憤りを感じている人は少なくありません。

 また、ワクチン接種に関しても、実際には、現在は、ワクチンの到着を全国の開業医が予約だけ受け付けて待ち続けている状態で、政府の予定どおりにこれが進むとは、信じ難い状態なのです。

 そして、学校は閉鎖されるものの、相変わらず10㎞以内の移動には、制限はなく、学校の授業のない学生も、仕事をリモートに切り替えている大人も週末には、一日中、出かけ放題の状態が続くわけで、6人以上の集まりが禁じられているとはいえ、これが守られるとは、どうにも思えず、今の病院の満床状態が、具体的には、学校閉鎖だけで、充分に減少するものかどうかは、甚だ疑問です。

 また、約1ヶ月の予定の学校閉鎖ですが、1ヶ月後、病床占拠率、感染率がどの程度まで下がったら、再開するという目安もなく、現在の集中治療室の44%が65歳以下の年齢層で占められていることを考えれば、一ヶ月後には、まだ、その年齢層のワクチン接種は、5月の段階では、ほとんど行われていない状況で、その年齢層のワクチンの効果を期待することもできないのです。

 そして、今回のマクロン大統領の発表の中には、「5月の中旬から、文化施設やスポーツ、レジャー、イベント、カフェ、レストラン(テラス席から)の段階的な再開のカレンダーを作成する」という内容も含まれていました。

 しかし、今回の学校閉鎖による効果の不確実さに加えて、5月中旬からのあらゆる施設の再開というあまりに楽観的な発表は、ますます、現実味を感じられない腑に落ちないものでした。

 実際に学校での感染は深刻化はしているものの、最終手段としていた学校を閉鎖することで、感染がおさまりきるものでもなく、逆に学校を閉鎖する前に、例えば、学校は閉鎖せずにキャンティーン(学校の食堂)だけを閉めて、週末だけロックダウンするとか、まだ、別の方法があったのではないか?と思ってしまうのでした。

 ちなみにマクロン大統領のこの発表直後、来週からの長距離移動規制の前に逃げ出したい人が殺到し、いつもどおりにTGVなどの列車の予約は、急増しましたが、急増したのは、列車の予約だけではなく、1日の新規感染者数も59,038人と6万人に迫る勢いで急増・・。

 あまりの急増ぶりに絶句です。

  



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