私は、日本で子育てをしたことがないので、正直、日本での子育てについては、よくわかりません。
しかし、埼玉県の自民党県議団により、子供だけでの留守番や外出を「置き去り」として禁ずる虐待禁止条例改正案というものが提出されたという話を聞いて、ちょっとギョッとしてしまいました。
対象年齢は小学校3年生までで、4年生から6年生は努力義務として、子供だけでの留守番や外出を禁止し、県民に対しては、禁止行為の通報を義務付けるというものです。
日本の場合は、多くの場合、小学生になれば、送り迎えもいらなくなるし、子育ても一段落という感じがあるような気がしていて、フランスでは、小学校を卒業するまでは、送り迎えをすることがふつうなので、日本はいいな・・などと思ったこともあります。
うちの場合は、小学校高学年になった時点で、リスクを負うのであれば、送り迎えもしなくてもよいということでしたが、リスクを負うのであれば・・などと言われれば、喉元にナイフをつきつけられているようなもので、そんなリスクを負うのはゴメンです。もしも、何かあったら、取り返しがつくものではないと思い、結局、小学生の間はずっと送り迎えをしていました。
そんな感じでもあるので、子供だけでの留守番や外出は、フランスでは、基本的にあまりないことだし、しかし、その代わりに、通常の学校の授業が終わった後には、希望者にはエチュード(宿題などを見てくれる時間)の時間があったり、これだけ多いバカンス期間なども、必ず地域ごとに子供を預かってくれる場所が設けられていて、様々なアクティビティをさせてくれたりする受け皿があります。
日常は、エチュードの時間は18時半までだったので、仕事を切り上げて、18時半までにお迎えに行くのは大変なことでしたが、それでも、このエチュードの時間には大変助けられたし、バカンス期間中の子供の居場所も、設けられていたので、一応、安心して、子供を預けることができていました。
基本的に児童保護については、かなり厳しい面もあるフランスでは、もし、この義務を怠っていれば、通報されることもあります。
一度、パリに引っ越してくる前に、ご近所の誰だかわかりませんが、嫌がらせに、「あの家は子供を学校に行かせていない!」などと、通報されて、児童保護機関の人が家にやってきたことがありましたが、こちらとしては、学校に問い合わせてもらえば、すぐにわかること、なんなら、学校以外にも公文やバレエなどのお稽古事の送り迎えもあって、目が回るほど忙しく、他の子よりも違う学びの場にも行かせている!と、憤慨し、そんな通報にひるむことはありませんでした。
しかし、夫が亡くなって、我が家が外国人の母子家庭として児童裁判所の監督下におかれてからは、目をつけられたら、下手をすると子供を取り上げられてしまうため、この子供の置き去りに関しては、それまで以上に神経質になり、18歳になるまでは、子供を一人にすることは、決してありませんでした。
娘も成人して、子育てを終わった今、日本よりも治安が数段悪いと思われるフランスでも、無事に子育てができたことは、ヤレヤレという気持ちもある一方、厳しい児童保護の法律があるとはいえ、これらの子供を預かってくれる受け皿があったことには、とても感謝しています。
埼玉県の事情はよく知りませんが、埼玉県の虐待防止条例改正案というものに対して、その条例の前に、埼玉県には、私がフランスで利用させてもらってきたような、子供を一人にしないための受け皿というものがあるのだろうか?と、現役で子育てをしている人々がちょっと気の毒になってしまいます。
これでは、女性に働くな!といっているようでもあり、また、子供を作るな!といっているようでもあり、子供を守るつもりがその家庭の生活そのものが成り立たなくなってしまう場合もあるのではないか?と、歪なものを感じます。
そして、県民に通報を義務付けるというのも、ただでさえ、周囲の監視の目がキツそうな日本で、他人を責める格好の材料となりかねないような気もします。
フランスでは義務と補償はセットのようなものところがあり、小さい子供を一人にしてはいけないという親の義務がありますが、それとセット補償?として、子供を預かってくれる場所が存在しています。
子供を一人にしないということは正論ではあるかもしれませんが、そのために、国が何かの受け皿を同時に用意しない限り、それは単に子育てを苦しめるものにしかならないと思うのです。
埼玉県虐待禁止条例改正案
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