2022年12月1日木曜日

フランスのバゲット ユネスコ無形文化遺産登録



 フランスのバゲットがユネスコの無形文化遺産に登録されました。なんだか,バゲットとは、あまりにあたりまえに存在しているものだけに、「だから、なに?」と思わないでもなく、正直、このユネスコの無形文化遺産というものが、どれだけの意味があるのだろうか?と思わないでもありませんが、マクロン大統領は、どうやら2018年から、このフランスのバゲットの無形文化遺産登録を切望していたそうで、4年来の悲願が達成したことになります。


 フランスにおいてのバゲットというものは、今さら、取り立てて仰々しく取り上げることでもないような気もするのですが、「無形文化遺産」は、「先祖から受け継がれ、子孫に受け継がれた生きた伝統や表現を取り上げている」と、ユネスコは説明しており、「これはグローバル化が進む中で、文化の多様性を維持するための重要な要素である」とその意味付けを確認しています。

 バゲットとひとくちに言っても、それは、バゲット特有の職人技術を持った、フランスでいうところの「バゲットトラディショナル」と呼ばれるバゲットについてのことで、小麦粉、塩、水、イーストという材料、バゲットをじっくりこね、長時間発酵させ、手作業で形を整えていく。使用する小麦粉や水の種類、周囲の気温などによって、地域ごとに風味が変わることもある中でのたしかな技法、職人芸でもあると強調しています。

 ユネスコにとって無形文化遺産とは、「伝統的、現代的、かつ同時に生きている」「包括的」「代表的」であると同時に、「コミュニティに根ざした」ものでなければならないという基準からすれば、まさしくバゲットはそれに該当すると思われます。

 フランス国立ブーランジェリー・パティスリー連合会会長は、この無形文化遺産登録により、「伝統的なバゲットがどのように作られ、フランスでどのような重要性を持っているかを皆に知ってもらうことができると同時にフランスにいる3万3千人のパン職人の「役割を強調する」ことにもなると語っており、現在、バゲット職人9,000人の欠員がある中、こうした銘板は若い人たちに、パン職人が素晴らしい職業であることを伝える役割も果たし、求人の役割を果たしてくれると期待しています。

 しかし、現実には、燃料費の高騰により、「来年のバゲットの値段はいくらになるのか?」などが話題にのぼり、小規模に経営している街のパン屋さんは、経営危機に瀕しており、たとえ、バゲットが無形文化遺産に登録されようと、その職人技術をふるい続けることができない、背に腹はかえられない状況に追い込まれているのが現実なのです。


バゲット ユネスコ無形文化遺産登録


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2022年11月30日水曜日

フランスを襲うコロナウィルス、細気管支炎、インフルエンザの呼吸器系トリプル感染症

  


 すでに11月の初旬に問題視されていた細気管支炎の流行による、特に小児科病棟の圧迫は、この約1ヶ月の間もとどまる様子をみせずに満床状態が続き、コロナウィルス感染も再び増加傾向に転じ、冬に向けての強いインフルエンザの流行も予想され、コロナウィルスだけではないこの三つの感染症が同時に蔓延することで、感染症専門家は再び警鐘を鳴らしはじめています。

 このような病気の組み合わせは「フランスでも前例がないことである」と感染症専門医は危機感を露にしています。

 パリ近郊のある病院では、先週末から記録している入院はすべて、呼吸器感染症に罹ったもので、この急性ウィルス性感染症の蔓延は、今年に入ってから過去最高レベルに達しており、すでに政府は11月上旬にホワイトプラン(深刻な保健衛生上の緊急事態を予測し、患者の急激な大量増加に備えるための例外的な措置)の採択を余儀なくされています。

 フランス公衆衛生局は、細気管支炎による入院が、3週連続で2歳以下の子供の救急外来受診後の入院の半数を占めていると報告しています。

 11月末には、この細気管支炎の流行のピークを過ぎるという医療関係者のこれまでの予想が裏切られるなか、コロナウィルス感染の増加(毎日、45,000人近い新規感染)がこれに覆いかぶさるかたちで襲い掛かっています。

 この流行は南フランス、特にオクシタニー地方で最も強く、オー・ド・ピレネー県では人口10万人あたり740人以上と、フランスで最も高い発症率となっています。

 この流行の原因の一つには、10月に再開されたワクチン接種キャンペーンが想像以上に軌道に乗っていないこともありそうです。インフルエンザについても同様で、昨年同時期よりもインフルエンザのワクチン接種を受ける人は大幅に減少しています。

 昨年までは、マスクにより、インフルエンザなども回避できていた状況が、今年は一転して、すっかり通常モードにほぼ戻っていることもこの3つの感染症が同時に広まりつつある状況を招いています。

 そういう私も昨年末は、コロナウィルスが爆発的に増加していたこともあって、コロナウィルスはもちろんのこと、インフルエンザに感染して、体調を崩すことが怖くて、数年ぶりにインフルエンザのワクチン接種を受けたのに、今年は、もう少し様子を見てからにしようとあと伸ばしにしていました。

 感染症専門家は、今年の冬はこの三つのウィルスは、おそらく重なり合い、互いに追随しあうだろうと述べており、この三つの呼吸器系感染症による爆発的なカクテルができるための材料は十分すぎるほどに揃っていると警告しています。

 昨年、インフルエンザワクチン接種後に体調が悪かったこともあり、尻込みしていましたが、そろそろ折り合いを見て、インフルエンザのワクチン接種に行かなくては・・と思っています。


細気管支炎 コロナウィルス インフルエンザ 呼吸器系感染症


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2022年11月29日火曜日

中国のゼロコロナ政策反対のデモを天安門事件以来のターニングポイントと見ているフランス

   


 先週、在中国フランス大使館が「中国のゼロコロナ政策」を「不必要で過剰な制限である」とSNS上で批判したことが、中国国民の大きな賛同を得て盛り上がったことが話題となっていましたが、先週末は大規模なデモが中国各地で起こり、このデモは、政権を直接標的とした政治的な方向に進み始めており、フランスでは、習近平政権が揺らぎ始めたと注目しています。

 デモ隊の怒りに火をつけたのには、中国通信によると、中国北西部ウルムチの住宅で火災が発生し、10人が死亡、9人が負傷する致命的な事態となったことも原因の一つであり、地域がゼロコロナ政策のために封鎖されると、至るところに障壁が設置され、消防車までもが燃える建物に近づくことができなかったためでもあると言われています。

 この地域隔離や工場閉鎖など、もうそろそろパンデミックが始まって以来3年が経とうとしている今、あらゆる階層の人々が、あまりに厳しい隔離や検査にうんざりして鬱憤がたまりきっており、その爆発の仕方が半端ないものになっており、また、このデモに参加したのか、取材中だったのか、イギリスのBBCのジャーナリストが警察に暴力を受けながら逮捕されたりしたことも、イギリスも容認できないとしています。

 コロナは関係なくとも、四六時中、毎週のようにどこかでデモをやっているフランスにとって、デモをする権利というのは、尊重しすぎるほど尊重されているもので、それが暴徒化しないように、間近にするとちょっと引くぐらい、これでもかというほど、警察や憲兵隊がガードしてまで行うデモでも、警察側から暴力をもってデモを阻止することなど、もってのほかで、はたから見ても、自由の侵害は許せない!という気持ちになるのでしょう。

 フランスのデモが暴徒化した場合でも、重装備した警察官や憲兵隊も武器を使ったりすることは、よほどのことがないとありえないことで、せいぜい催涙ガスか、水を撒いて応戦する感じなのです。

 中国から比べたら、今から思い返せばフランスのロックダウンなど短かったわけで、最初の1カ月強はほぼ、外に誰も出られない完全なロックダウンでしたが、その後、少しずつ、外出できる時間も距離も広がり、営業できる種類の店舗も拡大し、様々な種類の規制がしばらく続いていたものの、そんな中でもデモは行われていて、私などは、逆に「へんなの・・」と思っていたくらいです。

 ロシアの言論統制にしても、今回の中国のゼロコロナ政策にしても、不自然なかたちで政府が国民を抑えつける体制は、全くフランスとは相容れない国であるのがわかります。

 それにしても、中国人のデモというのもなかなか迫力のあるもので、それを阻止しようとしている中国の警察の圧力のせいもあるかもしれませんが、例えば日本のデモなどの様子を映像で見たときに、フランスのデモを見慣れている私にとっては、「なんとおとなしい!これは本当にデモなのだろうか?」と思うのに比べて、中国のデモは、なかなか迫力のあるデモで、なかなか中国人、発火した場合はすごいパワーになりそうです。

 とにかく、フランスでは、今回の中国のゼロコロナ政策反対デモは1989年の天安門事件以来の歴史的なムーブメントになるのではないか?と見ており、習近平政権が揺らぎ始めるきっかけになるのではないか?と見守っているのです。

 また、この中国での騒動については、今回は、国連も「平和的抗議の権利の尊重」を求め、「平和的に意見を表明しただけで恣意的に拘束されることがあってはならない」「国際的な人権法と基準に従ってデモに対応するよう求める」と警告を発しています。


中国ゼロコロナ政策反対デモ


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2022年11月28日月曜日

パリのメトロ・Navigoパス 2023年1月1日から値上げ

  


 すべての価格が上昇する中、仕方ないとは思うもの、パリのメトロのチケット・Navigoパスが大幅に値上げされるそうで、うんざりしています。

 現在1枚 1.90 ユーロのチケットは、2.10 ユーロになり、カルネと呼ばれる10枚綴りのチケットは、カードにチャージする場合だと16.90ユーロ(現行14.90ユーロ、つまり+2ユーロ)、紙のチケットでは、19.10ユーロ(現行16.90ユーロ、+2.2ユーロ)に値上がり、現行75.2ユーロ(月額)(約10,900円)のNavigoパスは84.10ユーロ(12,500円)になります。

 私は、通常はNavigoパスを使っていますが、毎年、確実に少しずつ値上がりしていることは承知していましたが、これまでに、一気に15ユーロ近くも値上がりしたことなどはなく、かなり衝撃的な値上がりです。

 日本に行ったときは、suicaなどにチャージして、あんまり地下鉄やバスなどの運賃をあまりちゃんと確認していないまま使っているので、知らないうちに、あっという間にチャージした分がなくなっているので、けっこう、交通費ってバカにならないなぁ・・と感じていました。

 日本は区間ごとに値段が違ったりもするので(パリの場合は1回1枚という感じ)、一概にどちらが高いのかはよくわかりませんが、東京メトロなどのクォリティーを考えると、日本は(といっても東京しかわかりませんが)、車両も駅もいつもピカピカで清潔で、おまけに時間にも正確で滅多にトラブルもストライキもなく、金額は日本の方が妥当な気もします。

 だいたい、パリの公共交通機関は、なんだかんだでトラブルが多く、急に電車が止まってしばらく動かなくなったり、駅などのエスカレーターが動いていなかったり、汚い駅もけっこうあり、そのうえ、定期的?にストライキ。

 また、ここ数年は、オリンピックを控えているためなのか、やたらと工事が多く、夜や週末は不通とか、なにかと不便な思いをさせられています。

 そんなに値上げしなければならないほど資金繰りに困っているなら、工事してくれなくてもいいし、やたらと新車にしてくれなくてもいいのに、オリンピックで海外に向けてもかっこつけたいのか、パリ市内は、メトロだけでなく、ここのところ、やたらとどこでも工事中なのです。

 環境問題を叫びながら、自家用車ではなく、公共交通機関を活用するように促しながら、その公共交通機関を大幅に値上げして、利用者の負担を増加させるのは、ナンセンスだと批判の声も多く上がっています。

 そのうえ、なぜこのタイミングなのかと思いますが、マクロン大統領はRATPのネットワークをパリだけではなくフランス国内の10都市に拡大する計画を発表。

 地方都市の交通機関については、わかりませんが、何もこの値上げのタイミングでさらにお金がかかりそうなことを同時に発表されるのも、どうにもモヤモヤするところです。

 Navigoパスについては、年間で購入すれば、1ヵ月分安くなるなど、工夫して節約することも可能ですし、観光でパリを訪れる方などには、5日間乗り放題のチケットなどもあるので、なんとか少しでも安上がりに済ませる方法もありそうです。

 なにもかもが少しずつ値上げになっていますが、トータルにするとけっこうバカにならない金額で、ほんとうにウンザリです。


2023年パリメトロ値上げ


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2022年11月27日日曜日

在中国フランス大使館が中国のゼロコロナ政策を批判

  


 大使館は外地においても、その国の治外法権と言われますが、在中国フランス大使館が中国がいまだに取り続けている厳しい「ゼロコロナ」政策をソーシャルネットワークWeiboの公式アカウントに中国語でで公開された異例のメッセージの中で、「不必要で過剰な制限」であると厳しく批判したことが大きな反響を呼んでいるようです。

 いつまでも外国人を締め出して、鎖国状態をとり続けていた日本も、ようやく外国人を受け入れるようになり、それまでは、外国人をシャットアウトしている国として、世界地図の中で日本は中国と同じ色に塗りつぶされていて、「うわっ!中国と同じ扱いにされている!」と残念な気がした覚えもあります。

 しかし、実際には、中国国内の「ゼロコロナ政策」は、日本の比ではない厳しさで、患者が出るとすぐに監禁を課し、陽性反応が出た人をセンターに隔離し、公共の場に出るにはほぼ毎日PCR検査を義務付けるような、しかも、その強制的かつ時には暴力的にも見える拘束の仕方は、度々、フランスのメディアでも、その映像が流されていました。

 今回の在中国フランス大使館のメッセージは、「このゼロコロナ政策は不必要で過剰な制限であり、中国に存在するフランス企業に影響を与えるものであり、中仏間の貿易・投資を維持・発展させるためには、透明で予測可能かつ公正なビジネス環境が不可欠である」と訴えています。

 中国は、ゼロコロナ政策の緩和を発表し、特に中国到着時の検疫期間を短縮し、渡航を容易にするとしていますが、フランス大使館は、中国側の緩和措置は「期待に応えていない」と、中国側に「不必要で過剰な制限を排除する」ように求めているものです。

 このフランス大使館のSNSでのコメントの3日前に、中国政府はコロナウィルス感染者の急増を理由に、巨大なiPhone工場がある中国中部の都市、鄭州市のロックダウンを宣言したばかりでした。

 本来ならば、他国の政策に口を出すことは、あまり歓迎されるべきものではないとは思われますが、このメッセージに関しては、このゼロコロナ政策にうんざりしている中国の人々から広く歓迎され、あっという間に8万5000回以上「いいね!」が付き、1万件以上の好意的なコメントが寄せられ、大変な盛り上がりを見せているようです。

 「フランスは本当に革命の国だ!」と感謝する人や、「ありがとう、フランスがワールドカップで優勝することを願うよ!」「企業資本主義 を守ってくれてありがとう!」などの圧倒的に好意的なコメントが多いようですが、中には、「なぜフランス企業が中国のコロナ対策に口を挟むのか?」と、もっともといえば、もっともなコメントもあるようです。

 国ごとに対策が違うことも、致し方ないとはいえ、今ではほぼ普通の生活を送っている身としては、「ここまでやる必要があるのかな?」とは思いますが、どうせ、ここまでやるならば、なぜ、最初に武漢でウィルスがばら撒かれた最初の最初に、このような対処をしてくれなかったのだろうか?と、思ってしまいます。


在中国フランス大使館 SNS ゼロコロナ批判


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2022年11月26日土曜日

パリ市内のバス RATP(パリ交通公団)キセル乗車の取り締まり

 


 数ヶ月前だったと思いますが、バスを降りたところで、RATP(パリ交通公団)のコントロール(検札)の人が待ち構えていて、乗車券のチェックに遭ったことがあり、なるほど、降りたばかりの人を待ち構えていれば、逃げられないだろうな・・RATPもなかなか試行錯誤しているのだな・・コントロールも進化しているんだ・・と驚いたというか、感心したことがありました。

 バスにしてもメトロにしても、キセル乗車をあたりまえのようにしている人は、けっこういるもので、メトロの場合は平然と改札を飛び越えていったり、時には、あなたが改札を通る時に一緒に通らせてくださいと頼まれることさえあります。

 バスの場合は、一応、運転手がチェックすることもできるのですが、チケット、あるいは、Navigoと呼ばれる定期券のようなものを機械に通さなくても(通した時点で、チ〜ンと音がするので、チケットの場合はチケットの非有効化になり、Navigoの場合は有効なチケットを持っているという確認になっている)、運転手が乗客に無賃乗車を直接注意しているのを見たことはありませんが、代わりに「チケットを通してくださいという録音されたテープが流されることはあります。

 おそらく、無賃乗車を注意した場合に逆ギレされて、運転手に危険が及ぶことを考慮して運転手へ直接、攻撃が向かないためのことだと思います。

 そして、今日、バスに乗って、座ることができたので、座ってそのまま私はスマホを見て下を向いていたのですが、突然、私の目の前に仰々しい銀色のバッチ付きの手帳が提示され、何事かと顔をあげると、「チケットを見せてください」という検札の人が・・。

 これまでは、RATPの検札といえば、おなじみのペパーミントグリーンとブルーのRATPの制服やジャケットを着た人で、それも3〜4人の大所帯で、いかにも「検札でござい!」とばかりにやってくるのですが、今回は私服の女性二人組で、バスがある停留所を出発してすぐに前触れなしにいきなり現れたので、こちらもギョッとしたのです。

 やましいことがなくても突然、見慣れないバッチのようなものを見せられたら、ギョッとしてしまうのです。ましてや、私服、そのバッチでさえ見慣れないのですから、それがほんものんなのかどうかなどはわかりません。

 偽警察官の手帳を持っている詐欺などもいるという昨今、すべてに懐疑的な傾向を抱いてしまうことは、悲しいことです。

 しかし、検札用の機械を持って、私の持っているNavigoが有効なものであることをチェックすると、「ありがとうございました」とすぐに次の人へ・・。

 まあ、よく考えてみれば、狭いバスの中で、運転手も同乗している中で、偽物の検札が行われるとは考え難いのですが、制服を着ていないというだけで、こちらの方が、本物の検札なのだろうか?と思ってしまうのですから、制服の威力というものはスゴいものです。

 何人かチェックしていって、「意外とみんな、ちゃんと乗車券を持っているものだな・・と見るとはなしに、なんとなく気にしていると、やっぱり、キセル乗車をしている人がいたようで、「チケット出してください」「チケットは昨日、買ったのですが・・」などと、わけのわからない押し問答が続いたのち、結局、その女性は罰金を払わされることになり、身分証明書の提示を求められ、罰金切符を切られていました。

 その際に、「今すぐ払うなら、20ユーロ割引になります」と言われているのが聞こえて、「え??罰金に割引なんてあるの?うさんくさいな・・これって、本物の検札?」と思ったので、帰ってからRATPのサイトを見て調べたら、確かに、20日以内に支払うと20ユーロ減額されると書いてありました。

 RATP・パリのメトロ、バスの罰金は、チケットなし、あるいは第三者所有のNavigoを使用した場合は、50ユーロ、チケットの非有効化(Validé、チ〜ンとさせていない場合)は35ユーロの他、車内喫煙の場合は68ユーロと決められているようです。

 以前に、パリでの交通機関事情がよくわからない観光客がこの違反切符を切られたと嘆いていたのを聞いたことがあって、「パリにお金を落としてくれる観光客ではなく、もっと常習犯を捕まえればいいのに・・」と思ったことがありましたが、今は手法を変えながら、取り締まりを強化しているようです。

 しかし、今回、私が遭遇したこのRATPの検札隊は、黒っぽい服を着た中年の女性二人組で、言葉遣いもとても丁寧で、これまでの制服を着た、どちらかといえば、威圧的な感じの検札とは、まったく違って、とても感じのよい女性二人組でした。

 考えてみれば、キセル乗車をしているような人を相手にするのですから、パリでは、十分に身の危険もあり得る仕事、相手を怒らせないように丁寧で毅然とした態度で接することができる人を選んでいるのかもしれない・・と妙に納得をしたのでした。

 パリでは、これまで使用されていたいわゆる紙の切符というものが廃止されて、すべてカード化される方向にあり、すでに、切符が使用できない駅もあるので、ご注意ください。


パリ キセル乗車取り締まり


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2022年11月25日金曜日

パリの公立病院の救急治療室で起こった強姦事件

  


 パリの治安の悪さは承知しているつもりでも、まさかの救急搬送された病院で強姦事件が起こるとは、まさに世も末としかいいようがありません。

 事件は10月末に起こっていたようですが、この強姦事件について、被害者の34歳の女性が「生命の危険に晒された」と病院を告訴したことから、この事件が公になりました。

 事件当日夜、セーヌ川沿いのバーで過ごしていた女性は気分が悪くなり、バーを後にして外へ出て、ふらついて転倒し、地面に頭を打ち付けてしまったようです。ここまでならば、酔っ払いの女性がふらついて転んで怪我をしたのですから、自業自得と思われても仕方ないことです。

 しかし、この女性は転倒後、反応がなく、頭に怪我を負っていたために、午前1時20分に救急隊によって救助され、パリ市内の公立病院に運ばれ、個室に収容されました。

 女性は気を失ったまま、病院の個室に寝かされていましたが、午前4時頃、暴行を加える加害者に与えられた痛みで目を覚まし、悲鳴をあげたために、看護師がかけつけたのを機に、犯人は病院から逃走しました。

 この犯人の犯行は、ある程度、計画的だったようで、現場での目撃者の証言によると、女性が最初に体調を崩したバーの近辺をうろついており、地面に倒れた女性を飢えた目をして、執拗に眺めていたと言われており、バーのオーナーは警備員の一人にこの男を追い出すように依頼したと証言しています。

 しかし、驚くことに、この男は、1時間後にアルコールで昏睡したふりをして、救急車を呼んで、救急隊はこの男を彼女と同じ病院に搬送し、歩けないと言いながら、看護師に車椅子に乗せられて、被害者の病室と同じ廊下沿いの部屋に連れていかれました。

 容疑者はまんまと被害者のいる病院に潜り込んだのです。

 看護婦が立ち去ると、この容疑者は部屋を出て、個室から個室へと移動して彼女を探し回り、途中で看護師に遮られていましたが、結局、彼は看護師の目を縫って、犯行に及んでしまったのです。

 しかし、その後、被害者が驚いて悲鳴をあげたことによりかけつけた看護師に見つかり、逃走したのです。

 病院は直ちに警察に通報し、容疑者は、逃走する際に盗んだ被害者のクレジットカードで1時間後に食料品の買い物をしたところで逮捕されました。

 逮捕後、警察の留置場で行われた検査の結果、容疑者からはアルコールは検出されなかったかわりに、大麻とコカインの陽性反応が出たと言われています。

 この容疑者は非正規滞在者(不法移民)で22歳のヨルダン人であると名乗っているそうですが、彼は窃盗、盗品受け取り、薬物使用などで何度も逮捕されており、IDをいくつも(少なくとも13の身分を持つ)持ちながら、違法滞在を続けてきたようで、2020年に未成年者を強姦した容疑をかけられていたものの、事件は未解決のまま放置されたと言われています。

 容疑者の供述によると、2019年にフランスに不法入国し、すでに3回のフランス領土からの退去命令(OQTF)を受けており、最後のものは、昨年7月であったものの、この3つのOQTFは、それぞれ別のIDで発行されたもので、追跡されていなかったようで、昨年9月からは、亡命申請を行ったため、追放の可能性が保留されていたということです。

 この事件は、単なる強姦事件には留まらず、病院の安全管理に対する問題や不法移民の退去命令(OQTF)の管理の難しさなども含まれており、多くの問題を投げかけています。

 もちろん、一番、罪があるのは、この不法滞在の容疑者であるには違いありませんが、普通、病院に搬送されれば、ひとまず安心するのが普通で、病院でこのような危険な目に遭うとは思いもよらないことです。

 被害者の女性の弁護士は彼女は強姦されたという事実とともに、安全なはずの病院でこのような被害に遭ったという二重のトラウマを抱えてしまったと訴えています。

 ただでさえ、人手不足の病院で、病院内で看護師が警察の警戒のような役割まで果たさなければならないことには、閉口してしまいますが、現在のところ、Assistance publique - hôpital de Paris (AP-HP) (パリ公立病院)は、この病院の救命救急で患者が暴行を受けたことを確認しただけで、捜査が現在進行中の件についてはコメントしないとしています。


パリ公立病院 救急治療室強姦事件 不法移民 OQTF


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