2022年1月21日金曜日

1月24日ワクチンパススタートと感染対策規制緩和の日程

  


 カステックス首相は、20日、ワクチンパスによる制限を1月24日からスタートすることを発表しました。これにより、ワクチン未接種者は、これまでヘルスパスでアクセスできていた場所には、入場できなくなります。

 しかし、ワクチンパス自体よりも、それと共に発表された他の制限解除の日程の方に注目が集まり、ワクチンパスによるワクチン未接種者への締め付け(締め出し)には、これまでさんざん議論が続けられてきたこともあるのか、同時に発表されたその他の規制解除の日程と内容に注目が集まりました。

 締め付けとともに、規制解除を発表するのは、前日のイギリス首相の「多くの感染対策に関わる規制を終了する」という発表も影響していると思われますが、同時にワクチンパスでの締め付け感を和らげる意向も感じられます。

 以前にマクロン大統領が、ロックダウンの延長とロックダウンを徐々に解除していく日程を同時に発表したことがありましたが、あの時と同じやり方です。

 1月24日にワクチンパスが施行され、その1週間後には、屋外でのマスク着用義務化とリモートワークの義務化が撤廃され、さらに、その2週間後には、ディスコ、カフェやバーでの立ち飲み、スタンディングコンサートが解禁される予定です。

 とはいえ、ワクチンパスというワクチン未接種者への締め付けと、正反対とも思える感染対策のための制限緩和という、一見、矛盾しているような対応策は、フランスでの感染者数は、ここ数日、40万人を超える状況でありながら、感染者の97.8%がオミクロン株による感染(2.2%がデルタ株による感染)に置き換わっていることが理由の一つに挙げられています。

 感染力は強くても、重症化するケースが低いこともあり、また、このオミクロン株がワクチン接種をしている人でさえ、感染するとはいえ、ワクチン接種者の場合は、4.5倍感染を回避し、25倍重症化を回避する効果があると説明しています。

 イギリスでの制限解除では、1日あたり未だ10万人以上の感染者が出ているものの、感染は減少傾向にあり、医療体制は、安定してきているためであるとしていますが、フランスの場合は、未だ、顕著な減少傾向は示しておらず、時期尚早であると不安の声も上がっていますが、フランス人が規制の緩和に反対するケースは一般的には考えづらく、今後、さらにワクチン接種を強化し、コロナとの共生に進んでいく方針だとみられます。

 ただ、屋外マスク義務化の解除や、リモートワークの義務化の解除とはいっても、実際に義務化が徹底しているわけでもなく、正直、大した変化があるという気はしません。先日、ランチをしにレストランに行ったら、店内は、ぎゅうぎゅう詰めの大混雑で、ヘルスパスのチェックはあったものの、食事の場ゆえ、マスクをしているのは、店員さんだけで、なんだか、これで屋外マスクの義務化してもなぁ・・と違和感を感じたのも確かです。

 つまり、多くの規制があるものの、現実のフランス人の生活は、すでにあまり規制されていないということです。

 政府はどちらかといえば、ワクチンパスに対する国民の反発を恐れていて、この発表の際にも、此の後に及んで、「これは、ワクチン接種の義務化ではない」などと言うのは、おさまりの悪い感じも拭えないのです。

 このワクチンパスと感染対策の規制緩和は、ワクチンパスによる効果をかなり楽観的にとらえている内容で、カステックス首相は、「ワクチンパスの導入が発表されて以来、100万人以上のフランス人が予防接種に踏み切った」と語っており、ワクチンパスが実際にスタートすれば、さらにこのワクチン接種率は上昇すると見込んでいるようです。

 そして、現時点でのワクチン未接種者への救済措置として、一定の条件のもとでワクチン接種の全スケジュールを取得する(現在から2月15日までに1回目の接種をする人は、1ヵ月後に2回目の接種をすること、その間に24時間以内の検査で陰性であることを証明することで仮ワクチンパスの恩恵を受けられるようにする)ことを提案し、ワクチン未接種者に手を差し伸べています。

 規制緩和で注意が逸されているものの、これは、あくまでも国民をワクチン接種に導くものであることがわかります。

 つまり、感染力が高いとはいえ、ワクチン接種をしていれば、かなり重症化を避けられる状態で、ワクチン接種率があがれば、もはや感染者数は問題にするべきではない考えられているということでもあります。

 しかし、現在蔓延しているウィルス(オミクロン株)に対しては、ある程度は許容できるものかもしれませんが、パンデミックは終わっておらず、ウィルスは常にそこにあり、変異を繰り返していることを考えれば、決して油断できるものではありません。

 とはいえ、長引くパンデミックを規制に縛られながら暮らし続けることは、これもまた、経済的にも精神的にも不可能なことであり、結果として、新規感染者数が毎日40万人を超える事態でも、このような決断に踏み切ったと思われます。

 ワクチンパス施行開始の宣言とともに、感染状況が改善し、特に病院での病床圧迫が恒久的に減少した場合、(集中治療室で数週間も新患が来なくなったり、医療逼迫が最低レベルまで下がったら)ワクチンパスは中断される可能性があるとも説明しています。

 このワクチン接種への追い込みと規制への緩和ムードに傾きつつあるフランス、ヨーロッパですが、日本の鎖国は、いつまで続くでしょうか?


フランス1月24日ワクチンパス開始 感染対策規制緩和


<関連記事>

「コロナウィルス・ロックダウンの延長と徐々に解除していくことを同時に発表したマクロン大統領の真意」

「いつまでもフランスで感染がおさまらない理由を見た1日」

「「ワクチン接種拒否なら集中治療辞退を!」医療従事者の叫び」

「日本の鎖国延長についてのフランスの報道の中で気になったこと」

「IHU変異種とデルタクロン 新しい変異種の出現のニュースの信憑性」

「フランスの1日の新規感染者数46万人突破と子供の検査を放棄し始めた保護者」

「感染者隔離期間の緩和 フランスの新しい隔離のルール」

 



2022年1月20日木曜日

ヘルスパスの評価と自動的に有効期限切れになり失効するワクチンパス

  



 ワクチンパスが議会で多くの議論を呼び、自由剥奪の声が途絶えない一方で、ワクチンパスの兄貴分である「ヘルスパス」が今、評価され始めています。

 Conseil d'analyse Economique(CAE)(経済分析諮問委員会)が発表したOECDとブリューゲル研究所の協力による調査によると、ヘルスパスによって、フランスでは4,000人、ドイツでは、1,100人、イタリアでは1,300人が死亡せずに済んだとしています。

 この研究では、同じような状況にありながら、ヘルスパスの導入の時期、またヘルスパスの導入をしなかった国、フランス、イタリア、ドイツの3カ国を分析、比較しながら、「フランスに、もし、ヘルスパスがなければ、入院は30%増え、死亡者も4,000人以上増えていただろう」と分析しています。

 まず、フランスでは、ワクチン接種率の上昇が、ヘルスパスのシステムにかなり影響を与えたことは、明白であり、また、ロックダウン状態から、人々が外に出始めた時には、おっかなびっくりであった一部の国民もヘルスパスによってリスクの高いと言われる場所での社会的な交流を持つことへの恐怖心が薄れ(現在では、薄れすぎですが・・)、ワクチン接種率の上昇とヘルスパスによって経済活動が想像以上に回復し始め、60億ユーロの損失を逃れたと試算しています。

 直接的な影響は、国民が社会活動を行えるようになったことにありますが、もしも、ヘルスパスがなければ、ワクチン接種率は停滞したままで、医療体制は飽和状態を迎え、政府は再び、ロックダウン、外出禁止、特定の場所の閉鎖といった制限を課さざるを得なくなっていたであろうという見解です。

 これからヘルスパスはワクチンパスへと移行しますが、これは、ワクチン接種済みの人にとっては、アプリを入れ替える必要もなく、そのままワクチンパスとして使用できるようになるので、とりたてて何もする必要はありません。

 しかし、一方では、2回目のワクチン接種から7ヶ月後には、3回目のブースター接種をしない場合は、ワクチンパスは自動的に失効してしまいます。

 保健省の発表によると、先週末には、約56万人がヘルスパスを失ったと言われています。

 7ヶ月後という期間をうっかりしていると、知らないうちに失効していることがあり得るようです。慌てて、ブースター接種を受けに行っても、接種後、ワクチン接種が有効化されるまでは、7日間待たなければならず、1週間は、ワクチンパスが必要な場所にはアクセスできなくなってしまいます。

 また、2月15日からは、2回のワクチン接種から、ブースター接種までの最長期間が4ヶ月に変更になるので、ワクチン接種からワクチンが有効になる期間を考慮すれば、4ヶ月経過する少なくとも1週間前までにワクチン接種を受けなければ、レストランやカフェ、文化施設、娯楽施設、スポーツ施設などには、アクセスできない1週間以上を過ごすことになります。

 ひとまず、ヘルスパスからワクチンパスへ移行するタイミングで、ヘルスパスの効果は絶賛されていますが、ワクチンパスへの移行による効果については、現在では、ワクチンを接種していないフランス人はごく少数派のため、ワクチンパスの効果は、このごく少数派の人々にどの程度、響くのかは、未知数です。

 しかし、ヘルスパスの起用が発表になった時は、少なからず衝撃的な内容で、反発も多くありましたが、結果的に見れば、こうして絶賛され、大いに評価される結果となったわけですから、ワクチンパスもしばらく時間が経過しなければ、一体、どんな評価が下されるのかはわかりません。

 とはいえ、大多数のフランス国民は、ワクチン接種済みなので、大勢に影響はないと思われますが、それでも感染がおさまらなければ、結局は、残すところは、マスクや手洗いやソーシャルディスタンスなどの基本的な感染対策しかありません。


ヘルスパスの評価 ワクチンパス有効期限


<関連記事>

「フランスは、ヘルスパスがないと身動きが取れなくなる! 義務化という言葉を使わない事実上の義務化」

「マクロン大統領の発表がフランス人に与えた衝撃 ヘルスパスのトリセツ」

「通常の日常に戻れるのは2022年〜2023年 8月初旬には1日の感染者が5万人を超える恐れ」

「3回目のヘルスパス反対のデモ 参加者20万人超え」

「東京オリンピックの閉会式 パリではみんなが大熱狂だった!」

「フランス政府の何があっても押し通すチカラ」

 







2022年1月19日水曜日

フランスの1日の新規感染者数46万人突破と子供の検査を放棄し始めた保護者

 


 一昨日のニュースでは、いくつかの地域では、どうやら、感染が下降し始めたので、どうやらピークを越えたかもしれない・・とか、どこかのラボ(検査施設)では、おそらく1月13日がピークだったようだ・・などと言いつつも、全国的には、決して減少しているわけではなく、ただ、上昇が緩やかになってきている・・と感染のピークはいつか?という話ばかりしているような気がします。

 日曜日はラボも休みのところが多く、月曜日の数字はいつもかなり少なくなるのですが、それでも10万人超え、逆に、その分が若干のっかる感じで、火曜日の数字が少し多くなる傾向があるのですが、それにしても火曜日の1日の新規感染者数は、464,769人でした。

 先週は、だいたい1日の新規感染者数は、ずっと30万人前後だったので、いくら月曜日の分が多少のっかったとしても、いきなり46万人超えとは、ちょっと、いくらなんでも増え過ぎです。

 そう言われてみれば、思い当たらないこともなく、ここのところ、毎日のように感染者追跡アプリのアラート(感染者と近距離で接触しています・・ただちに検査し、ワクチン未接種者は隔離してください・・という通知)が入ります。

 アラートには感染者と接触したという日付が入っているのですが、日付が前後して通知されてくるので、検査したと思ったら、その前日の分のアラートがその翌日に来たりするので、もうなにがなんだかよくわからなくなってきましたが、外出した日は、もれなくアラートが入っているので、それだけ感染者が増加しているということなのでしょう。

 アラートの日付の一つに友人とランチをした日が入っていたので、一緒にランチをした友人にも一応連絡すると、彼女のところにもアラートが来ていたのに、気付いていなかった模様。「これが来たら、検査しなくちゃいけないのかな?」などと言うので、「だって、もし、感染していたら、他の人に感染させてしまうかもしれないでしょ!」と念を押すと、「あ〜そうか・・そうだよね・・」と、もはや、感染者接触のアラートにも少々、麻痺している感じ。

 検査に、そして検査することの意味に麻痺してきているのは、おそらく最も頻繁に検査をしているのは、小学生以下の子供たちとその保護者たちで、ただでさえ、感染者が多いなか、ワクチンという鎧を着ていない状態の子供たちには、感染者も多く、学校を継続するためにクラスメートに感染者が出た場合は、すぐに検査、その2日後、4日後に3回検査しなければならないのですから、大変な作業です。もしも、続けてクラスに感染者が出た場合は、毎日のように検査するハメになります。

 現在、子供の検査は、薬局や検査場などでの検査以外に、オートテスト(セルフテスト)のキットが無料で受け取れるようになっており、家で検査をして、検査の結果は、保護者が書面に書いて証明書を提出することができるようになっていますが、「感染例が多過ぎて、もういちいち子供の検査はしていられない。検査はしないで、とにかく学校に行かせる!」

 「毎日の検査は、頻度が多過ぎて、子供にとって苦痛すぎる・・検査時に子どもが痛がるので、何度も繰り返すとトラウマになる」というのです。気持ちはわからないではありませんが、これでは偽ヘルスパス(偽ワクチンパス)ならぬ偽の陰性証明書を親が子供に持たせることになります。

 また、他のケースでは、「偽の証明書を書いて、誤魔化すことはしない。しかし、検査に疲れてきたので、7日間学校に行かせず、検査はしない。」という親もいます。

 しかし、一方では、「ルールを守らない人が増えれば増えるほど、それが長引き、みんなが疲弊していくので、クラス内で感染者が出た場合は、しっかり検査を続けるべきだ!」と訴える人もいます。

 「ルールを守らない人が増えれば増えるほど、それが長引き、みんなが疲弊していく」というのは、まさに子供の検査に限ったことではなく、大人の感染対策についてもまさに同じことが言えます。

 先週は、1日あたり30万人だった新規感染者数は、今週には、46万人まで増加してしまいました。ワクチン接種をしているから、ヘルスパスがあるから、ワクチンパスがあるから大丈夫という気の緩みがこの、ちょっと目を疑うような数字を叩き出しています。

 この数字のわりには、入院患者数や集中治療室の患者数は劇的には増加しておらず、このまま増加していけば、もはや集団免疫も夢ではなくなるかという気もしてきますが、一方で、感染が蔓延すれば、新しい変異種が登場する危険もあるわけで、やはり、検査と隔離は続けなければならず、基本的な感染対策は、しっかりと続けなければなりません。

 しかし、ここまでくると、数字の感覚が麻痺してきて、46万人って何人だったっけ?と思ってしまいそうになるほどで、もはや感染者数をカウントする意味はないのではないか?という声もありますが、やはり、全く薄れきっているフランス人の危機感をかろうじて保つためにも感染者数は知るべきではないかと思うのです。


フランス1日の新規感染者46万人突破


<関連記事>

「前代未聞の歴史的規模の学校の感染対策への教職員組合のデモとストライキ」

「2ヶ月以内にヨーロッパの半数以上が感染する フランスの1日の新規感染者数36万人突破」

「1日の新規感染者が30万人でも閉鎖しない学校の大混乱 来週には学校はストライキの予定」

「厳戒体制での学校の再開」

「6歳から10歳の子供の感染が激増しているフランス」




2022年1月18日火曜日

ワクチンパスポート施行とコロナウィルス感染証明書

   


 毎週のようにデモが起こり、反対の声は常にある中、フランスは国会でワクチンパスポート法案を採択、憲法評議会の承認を経て、今週末にもワクチンパスは施行されることになりました。

 ヘルスパスとアクセスできる場所は、基本的には変わらないものの、これまでヘルスパスでは、PCR検査・抗原検査の陰性証明書が使用できたものの、これが一切、通用しなくなります。

 このワクチンパスは、16歳以上の全国民に対して適用されることになります。ですから、ワクチン接種をしない限り、レストラン・カフェ、文化施設、娯楽施設、スポーツ施設、イベント会場へのアクセス、長距離電車やバス、(家族以外の相乗りなどの特定の交通手段も含まれる)、飛行機などの公共交通機関は利用できなくなります。

 また、偽ワクチンパスの流通を防ぐために、ワクチンパスのチェックには、ワクチンパス自体の整合性を確認することが必要な場合には、本人確認として、写真つきの公的書類(IDカードなど)を求めることが許されるようになりました。

 そして、偽のワクチン証明書に関する罰則が強化され、他人のワクチンパスを使用した場合、または、他人にワクチンパスを譲渡した場合は、現行の135ユーロから1,000ユーロの罰金になるとともに、偽のワクチンパスポートを不正に入手した場合(偽造、第三者からの借用を問わず)は、3年の禁固刑と45,000ユーロの罰金が課されることになり、複数の偽ワクチンパスポートを不正に所持した場合には、5年の禁固刑と75,000ユーロの罰金に引き上げられることになりました。

 しかし、このワクチンパスポートには、例外もあり、12歳から15歳の未成年に関しては、これまでどおり、ヘルスパスが(PCR・抗原検査の陰性証明書)がワクチンパスポートと同じ効力を持ちます。

 また、前回のワクチン接種から7ヶ月経ってもブースター注射を受けていない人について、有効期間を超えてからの予約しか取れなかった場合、あるいは、医療上の理由で3回目の接種ができていない人に関しては、仮のパスポートを受け取ることができますが、その間は、本来はワクチンパスが求められる施設にアクセスする場合には、PCR・抗原検査の陰性結果を提示する必要があります。

 また、ワクチンパスポートの代わりにコロナウィルス感染、回復証明書(6ヶ月間有効)(11日以上6ヶ月未満の感染)を提示することも可能ということになっているようです。

 このワクチンパスポート施行は、ワクチン未接種者に圧力をかけて、ワクチン接種に向かわせるためのものであることは言うまでもありませんが、感染した場合にどの程度の免疫ができているのか?ワクチン接種同様の効果?があるのならば、ワクチン未接種者でも感染していれば、6ヶ月間、ワクチンパス証明書はいらないということになります。

 ワクチン接種の有効な期間が短くなり、3ヶ月後にブースター接種が可能ということになっているのに(ワクチンパス自体は2回目のワクチン接種から7ヶ月以内にブースター接種をということになっています)、感染した者に関しては、6ヶ月間感染証明書が有効というのも疑問です。

 そうでなくとも、フランスには、毎日、30万人程度の新規感染者がいて、1月前半(1日から15日まで)だけでも、累計で4,153,835人の感染者がいます。

 こうなってくると、ワクチンパスポートを施行して、ワクチン未接種者を接種に向かわせるということが、なんだか虚しい気もしないではありませんが、現在のフランスは、初回接種から3回目のブースター接種を合わせて、毎日50万人程度がワクチン接種を受けているようで、かろうじて感染者よりは多い数字です。

 そもそも、ワクチン接種で感染を防げていたのはデルタ株までの話で、オミクロン株は、ワクチン接種だけでは感染は防ぎきれず、重症化は防げるとされていますが、この変異株の性質上、ワクチンパスの意味合いが、なんだかずれてきてしまっているような気がしています。

 ワクチンパスを持っているからといって、感染していないとは言いきれず、これまでワクチンで感染から守られている人のみがアクセスできる場所は、ある程度、安全であると思ってきましたが、必ずしもそうではないわけです。

 つまり、現在の状況では、感染そのものを避けることはできないが、感染しても重症化する可能性が低いという人だけがアクセスできる場所がワクチンパスによって、限定されるということです。

 そして、それらの場所にアクセスできなくなることから、ワクチン接種をする者が増えるという算段です。

 ヘルスパスが施行された時は、画期的なシステムで、感染のリスクが高いと思われる場所でも、少し安心して行けるようになり、感染者も一時、減少しましたが、今回、コロナウィルスの変異によって、そこまで決定的な手段とは思えない気がしてきました。

 とはいえ、少しでもワクチン接種が進んで重症化する人が減少すれば、それはよいことに違いありませんが、なんだか少し、期待はずれになってしまった気がしないではありません。

 必死にヘルスパス施行に向けて突き進んでいた間に、コロナウィルスの変異により、いつの間にか、少し状況は違ってしまいました。

 フランスでは、毎日のように、ピークはいつか?ピークはもうすぐ・・と、ひたすら感染がおさまるのを待っているようで、一部の地域では、感染者数が下がり始めたと言っていますが、ヘルスパスの施行によって、画期的な感染の減少を期待するには、まだまだ時間がかかりそうな気がしています。


フランスワクチンパスポート施行


<関連記事>

「ヘルスパスがワクチンパスになる!」

「2022年1月からのワクチンパスの内容」

「フランスの1日の新規感染者数27万人突破 怒りと焦りが見える政府陣営の怒りの発言の数々」

「フランスの1日の新規感染者数33万人突破 連日新記録更新とマクロン大統領の戦略」

「いつまでもフランスで感染がおさまらない理由を見た1日」





2022年1月17日月曜日

フランスで継続するアンチワクチンパスデモとジョコビッチの全豪オープンからの強制退去

   


 ワクチンパス施行を目前とするフランスでは、相変わらず、ワクチンパス反対のデモが続いています。とはいえ、前回のデモに比べると、デモ参加者は大幅に減少し、内務省の発表によると、前回の約105,200人に対して、今回は、約54,000人に減少しています。

 彼らのデモでの訴えは、「ワクチンパス反対」「ワクチン接種そのものに反対」「自由」「政府の強行策に反対」など、毎週のことで、掲げられているプラカードや訴えの内容は、ほぼ同様の内容です。

 しかし、今回のデモで気になったのは、そのプラカードの中に「ジョコビッチは私たちの旗手である!」というものが、混ざっていたことでした。

 このデモが行われた時点では、ジョコビッチの全豪オープンの出場可否に対する最終的な決定が出ていなかったため、これは、ジョコビッチが全豪オープンに出場することになれば、アンチワクチン論者を正当化するものになってしまうのではないか?と、オーストラリア裁判所の決定を不安な思いで、見守っていました。

 フランスのデモ隊にまで影響を及ぼすとは・・ジョコビッチ、恐るべし⁉︎です。

 フランスでも、テニス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ選手の一連のワクチン未接種での全豪オープン出場可否の騒ぎは、連日、報道されていたので、その影響力の大きさは、テニス界だけでなく、フランスで「アンチワクチン論者の旗手」として、まつりあげられるのは、当然といえば、当然だったかもしれません。

 しかし、今回のジョコビッチ選手のワクチン接種に関しての一連の報道では、「ワクチン未接種の発覚」から、彼のビザは、取り消し、その後、同選手の弁護団から異議申し立てがなされ、「彼自身が12月16日にコロナウィルス陽性であったこと」が申告されましたが、その直後に「隔離もせずに、公の場にマスクなしでマスコミに対するインタビューや公的イベントに参加していたことの発覚」そして、「ビザ申請書は、本人が記載したものではなかった」など、見苦しい応酬が続いて、最終決定は、オーストラリア裁判所の決定に委ねられていました。

 世界ランキング1位のトップアスリートである彼は、彼自身の健康管理についての強い信念をもっていることは、理解できますが、どの選手も同じ条件をクリアして参加している大会に、たとえ、彼が世界ランキング1位であろうとも、例外を認めることは、あり得ないことだと思っていました。

 スポーツマンシップという言葉が適当かどうかはわかりませんが、大会が定めた(大会開催国が定めた)ルールを個人的な理由で守らないというのは、テニスのトッププレイヤーとしては、ガッカリさせられるものでした。

 彼が信念をもって行なっていることなら、姑息なごまかしをせずに、なぜ、堂々とワクチン未接種を公表しなかったのか?と思ってしまいます。

 結局、オーストラリア裁判所は、「オーストラリア社会に健康上のリスクをもたらす可能性がある」という理由で、ビザの撤回を支持する判決」を下しました。

 この決定は、彼自身のウィルス感染のリスクよりも、この世界ランキング1位のジョコビッチの入国、大会出場が「反ワクチン感情を助長すること」や「国民の不安を増大させること」などの社会的な影響を考慮してのものであったことは、言うまでもありません。

 正直、フランスのアンチワクチン論者は、助長されかかっていました。

 オーストラリアは、パンデミック開始以来、感染拡大に対して世界で最も厳しいとされる規制を敷いてきた国の一つでもあります。この事実をジョコビッチが知らなかったはずはなく、ましてや大勢のスタッフを引き連れている彼の周囲の人々もどう考えていたのか?疑問は残ります。

 また、パンデミック以来、テニスの世界大会はいくつも行われてきたにも関わらず、選手のワクチン接種に関するチェックをしてこなかったのかも疑問です。

 次のメジャー大会は3月にインディアンウェルズ(3月10日~20日)とマイアミ(3月23日~4月3日)で開催されるマスターズ1000です。アメリカへの入国には、やむを得ない理由がない限り、完全なワクチン接種のパスポートが必要です。

 フランスにおいても全仏オープンは、まだ先ですが、ワクチンパスポートの施行が始まれば、当然、テニスの試合会場などでは、ワクチンパスポートなしでは、入場できなくなります。

 これで彼がワクチン未接種者であることは、全世界の周知の事実になり、今後の彼の行く先には、大きな壁が立ち塞がることになりました。

 今回のオーストラリアの決定で、どんなタイトルを持つ権力者であっても例外は認められないとされたことは、少なくともアンチワクチン論者を助長させることにはならなかっただけでも正しい決定であったと思っています。

 そもそも、ウィルスは、国籍も権力も地位も差別することはありませんから。


ジョコビッチオーストラリア退去


<関連記事>

「フランスのアンチワクチン・アンチヘルスパス論者の言い分」

「「ワクチン接種拒否なら集中治療辞退を!」医療従事者の叫び」

「新規感染者1万6千人超えのフランス 全仏オープン・ローランギャロス2020は継続されるか?」

「大坂なおみ 全仏オープン(ローランギャロス)トーナメント撤退発表」

「リオネル・メッシ パリサンジェルマンへ移籍のパリフィーバー」



 




2022年1月16日日曜日

いつまでもフランスで感染がおさまらない理由を見た1日

  


 先週末にパリ郊外で会合があり、この感染が蔓延するさなかに、嫌だなと思いつつ、「リモートにすることはできないのですか?」と聞いてみたのですが、「リモートは不可能」と却下され、渋々、参加してきたのです。

 もともとその会合は、1月5日の予定だったのですが、それが感染対策を考慮して延期され、結局のところ、その時点よりも悪化している状況で開催、これ以上、待っても感染はおさまらないという判断なのでしょうか?

 そもそも会合というのは、実際に顔を突き合わせて話し合いができれば、それに越したことはないのですが、実際に行ってみると、どうしてもそれが必要なのかは、甚だ疑問で、しかも、昼食会までもを挟んでの丸一日。

 そして、参加している人々は、もちろんマスクを着用しているものの、マスクをしっかりしている人ばかりではなく、咳をするたびに、なぜかマスクをずらす人や、話に熱がこもってくると、マスクを外してしまう人などもいて、その度に私は、苦々しい思いをしながら、マスクの上からそっと小さな布を覆うのでした。

 マスクを外して、思いっきり席をしたり、大きな声になれば、マスクがより邪魔になるのは、道理ではありますが、実際は、真逆のことをしていることに彼らは気づいていないのです。この話が過熱してきて、マスクをついずらして話をしたりするのは、政治家などにもよく見られる光景です。

 大した内容でもないことに昼食会まで挟んでの会合、百歩譲って、会合をするとしても、さっさと話を進めれば、半日で済むものをダラダラと時間をかけることにも、まるで感染対策に対する対応を感じられません。

 感染対策といえば、入口にマスクとアルコールジェルが置いてあることくらい。感染対策のつもりなのか、どういうわけかトイレのいくつかが閉鎖されていることは不思議なことでした。(手を洗いたいのに、トイレが閉鎖とは・・)

 こんな感じでリモートワークがあまり行われないものなのかとフランスの感染悪化の一端を見た思いでした。

 そして、帰り道、普段は、ほとんど乗ることがないパリ郊外線に乗ると午後5時前、まだ、ラッシュアワーではないから、それでもまだマシだな・・と思っていると、そこはかとないアンモニア臭が漂ってくるではありませんか?

 そういえば、パリのメトロの駅などは、以前は、こういう匂いがよくしてきたものですが、パンデミック以来、駅や車内は清潔になり、久しく嗅いでいない匂いでしたが、どうやら、パンデミック当初には、見かけた、あの清潔に駅や車内を消毒している人もみかけなくなり、すっかり緊張感がなくなっています。

 挙句の果てには、電車の車内でのアンモニア臭とは・・郊外線といえども、パリからそう遠い長距離路線ではありません。

 おまけに、近くの席にすわっている男性数名が、車内でピーナッツを食べながら、ビールを飲んで楽しそうに話しているのには、さらに驚きでした。本来ならば、一言、言いたいところですが、こんな時、酔っ払い相手に注意をして、逆ギレされても怖いので、黙ってそっと席を移りました。

 パリで日常を取り戻すということは、このように不衛生で、無秩序である日常が戻ってくることでもあるのです。

 こんな光景を目の当たりにすると、「日本だったら、みんながきちんとマスクしているし、どこもかしこも衛生的で、ましてや電車の車内でアンモニア臭なんて、あり得ないだろうな・・」と思うと、「もう日本に帰りたいかも・・」とちらっと思ってしまうのです。

 日頃は、行かない場所に行くと、たちまち見えるフランスの現状に、これでは、毎日感染者が30万人いても仕方ないな・・と思った1日でした。


フランス人の衛生観念と無秩序と危機感の欠如


<関連記事>

「フランス(ヨーロッパ)でコロナウィルスが広まる理由」

「コロナウィルス対応 日本人の真面目さ、辛抱強さ、モラルの高さ、衛生観念はやっぱり凄いなと思う」

「フランス人は、マスクさえしていればいいと思っている・・フランスで感染が拡大する理由」

「フランスでワクチン接種が進んでも感染拡大が止まらない理由」

「ヨーロッパが再び感染の震源地になる 2月までにさらに50万人の犠牲者が出る恐れ」

「2ヶ月以内にヨーロッパの半数以上が感染する フランスの1日の新規感染者数36万人突破」









 

2022年1月15日土曜日

前代未聞の歴史的規模の学校の感染対策への教職員組合のデモとストライキ

 

  


  IFOP(L'Institut Francaise d'Opinion Publique・フランスの世論調査会社)の調査によると、66%のフランス人(フランス人の約3分の2)がパンデミック発生当初から学校をできる限り閉鎖しなかった行政の選択は正しかったと支持していると発表しています。

 ところが、現在の感染爆発状態のフランスでは、学校を閉鎖しないことには賛同しているものの、学校を継続するための感染対策としての週数回にわたる検査に次ぐ検査、そして隔離、クラス内で感染者が出るたびに、また検査。

 そして感染した教員の代理要員の手配等々、学校の授業を維持するための感染対策のための業務は煩雑を極め、それを繰り返す学校は、「筆舌に尽くし難い大混乱」と悲鳴をあげ、ストライキ・デモを決行するに至りました。

 この全国の教職員組合のデモには、77,500人が参加し、小学校最大の教職員組合であるSNUipp-FSUは、75%がストライキを行なったと報告しています。

 感染対策に振り回される煩雑すぎる作業の繰り返しに加えて、ワクチン接種があまり進んでいない小学生以下の学校教員には、感染のリスクも大きく、また、この煩雑さは、学校教員だけでなく、子供の検査・隔離の繰り返しには、保護者をも巻き込んでいるために、もはや周知の事実で多くの人がこれを認めるところ。

 「このままの状態を続けることはできない」「昨年のようにクラスに1人でも感染者が出た場合は学級閉鎖にするというルールに戻してほしい」「教員の安全を確保してほしい」などの要求をかかげて、デモ・ストライキを決行したのです。

 日常から、学校のストライキは少なくないフランスですが、今回ばかりは、FCPE(Fédération des Conseil de parents d'élève=フランスの代表的な保護者団体)でさえも、ストライキの呼びかけに署名し、保護者にも教師とともに政府の運営に抗議するよう呼びかけられました。この抗議は、全国自治父兄会連合も支持しています。

 このように、今回の教職員組合のデモやストライキは、日常的な学校のストライキとは、原動力を異にする大きな世論に支えられたデモでもあったのです。

 学校を閉鎖しないためにとっている感染対策のために、ストライキで学校が閉鎖してしまう状況では、元も子もない話。政府がこれを捨て置くことはできないのは、当然の結果でした。

 また、このデモ・ストライキの予定が発表された後に「教師がウィルスに対抗してストライキを起こす」とストライキの決行を非難した、教育相ジャン・ミッシェル・ブランカー氏の発言が炎上し、教育相の辞任を求める声までも叫ばれる大騒ぎに発展しました。

 その日の夜には、ジャン・ミッシェル・ブランカー教育相は、緊急記者会見を行い、教職員組合と政府の会談の結果、「学校(特に幼稚園の先生)に500万枚のFFP2マスクを配布すること」、「今後、教職員労働組合、保健省、教育省との間で2週間に一度は会議を開催し、感染対策についての調整を話し合うこと」を発表しました。

 この発表に対して、FFP2マスクの学校への配布は、良しとしても、検査と隔離、学級閉鎖などについての措置の変更には、触れられていないために、納得がいかないという意見の人も少なくないようではありますが、私は、この一連の動きを見ていて、デモやストライキも時には、必要なものだとフランスに来て以来、初めて思いました。

 デモやストライキは、フランスの文化の一つであるといってもよいほど、日常からフランスでは、デモやストライキが絶えることはありません。パンデミック以前にも、黄色いベスト運動やら、年金問題などなど、毎週土曜日(通常は土曜日)に行われるデモは、途切れることはありません。

 パンデミックが始まってからも、マスク義務化反対だのヘルスパス反対、ワクチンパス反対など、デモは途切れることはなく、いい加減、なにかあれば、すぐにデモ・ストライキに発展するフランスには、正直、うんざりすることも少なくありませんでした。

 しかし、今回は、教職員のデモということで、顔ぶれも印象も違い、この感染爆発の中で、学校を継続するために必死に戦っている人々の叫びは理解できるもので、また、今回のデモによって、すぐに全ての要求が通ったわけではありませんが、FFP2マスクは500万枚も教員向けに配布されることになり、現場の意見を聞き、話し合う機会を持つという政府の歩み寄りを勝ち取ったのです。

 先日、マクロン大統領が、ワクチン未接種者に対して、「彼らを本当に怒らせたい!」といった発言が物議を醸しましたが、彼らを怒らせたいということは、彼らに真剣に考えてほしいということに他ならないと思うのです。マクロン大統領は、まさに彼らを怒らせることによって、彼らに闘いを挑んでいるのです。

 今回の学校の感染対策に関しては、教師を怒らせようと思ってしたことではありませんが、結果的に大きな怒りが爆発し、政府に闘いを挑んだ形になりました。

 政府も国民も常に戦闘体制・・そんな感じです。

 フランス人にとっては、デモやストライキはお家芸のようなもので、お手のもの、声を上げることに躊躇いはなく、彼らは自己主張すること、異議を唱えることに慣れており、子供の頃から、そのような教育を受けていますから、この流れはフランス人にとっては、特別なことではありません。

 あまりに日常化しているデモやストライキはどうかとも思いますが、今回のように、本当に深刻な状況の中、子供の将来を考えている双方が、世論を巻き込みながら、政府が国民の意見に歩み寄る態度をもたらすことは、意味のあることではなかったかと初めてフランスのデモも悪いことばかりではないと思った次第です。

 日本にもデモがないわけではありませんが、フランスのデモを見慣れていると、「これ?本当にデモなの?」と思ってしまうくらいびっくりするくらいお行儀が良いです。

 日本には、デモという形が適しているのかどうかはわかりませんが、今の日本政府の行政には、声を上げることが、たくさんあるのではないか?と思うことがあります。

 海外にいると、「日本人は黙って我慢するからダメなんだ・・」と言われることがありますが、日本人は国内の政治に関しても、黙って我慢ばかりしていてはダメなのではないか? 日本国民はもっと怒ってよいのではないか?と今回のフランスの学校のデモ・ストライキを見ていて思ったのでした。


フランス教職員組合歴史的ストライキ・デモ


<関連記事>

「1日の新規感染者が30万人でも閉鎖しない学校の大混乱 来週には学校はストライキの予定」


「フランスの1日の新規感染者数27万人突破 怒りと焦りが見える政府陣営の怒りの発言の数々」


「フランスは、いつも誰かが何かを訴え、戦っている フランスは、デモの国」


「娘の人生を変えたストライキ」


「日本人は、黙って我慢すると思われている」


「フランスで日常が戻るとすかさず始まるのはストライキ」


「理解できないストライキの続行」