2022年12月7日水曜日

カカオ、コーヒー、大豆・・EU加盟国 森林破壊製品輸入禁止に合意

 


 欧州議会は、1990年から2020年の間に、森林破壊によってEUの面積よりも大きな面積が失われており、欧州での製品の消費はこの損失の約10%に相当していることを指摘し、欧州議会と欧州連合(EU)加盟国政府は、森林破壊を引き起こしている製品のEUへの輸入を2023年には禁止することで合意に至りました。

 この協定は、カカオ、コーヒー、大豆、パーム油など、いくつかの製品を対象としています。木材、牛肉、ゴムも影響を受けますし、いくつかの関連素材(革、チョコレート、家具、紙、木炭など)も影響を受けます。これらの製品が2022年12月31日以降に森林破壊された土地に由来する場合、それらの輸入が禁止されると、国会は声明で述べています。森林全体へのダメージも考慮されます。

 これにより、輸入企業は、そのサプライチェーンに責任を持つことが義務付けられ、衛星写真と連動した作物の位置情報により、トレーサビリティ(その製品がいつ、どこで、誰によって作られたかを証明するために、原材料の調達から生産、消費、廃棄に至るまでを追跡可能にすること)を証明する必要があるのです。

 対象商品は、カカオ、コーヒー、大豆の他、パーム油、木材、牛肉、ゴムも対象であり、いくつかの関連資材(革、チョコレート、家具、印刷紙、炭など)についても対象になるようです。

 森林破壊と聞いて、カカオ、コーヒー、パーム油、木材、ゴムなどは想像がつくところではありますが、正直、大豆??というのは驚きでした。しかし、この大豆も欧州に輸入される大豆を栽培するための農産業によって大きく破壊されているとのことでした。

 日本人としては、味噌、醤油、豆腐などなど、必須の食材ゆえ、捨て置ける話ではありません。

 WWF(World Wildlife Fund)によると、ヨーロッパは中国に次ぐ、森林破壊者であると言われています。

 同様に、2年後には、欧州委員会は、他の製品(欧州議会が今すぐ対象とすることを望んだトウモロコシなど)、泥炭地など炭素貯蔵量と生物多様性に富む他の生態系、さらには金融部門(これも欧州議会からの強い要求)への範囲拡大の可能性を検討する義務を負っていると息巻いているようです。

 たしかに、放置できない問題ではあるし、このような規制ができたとて、網の目をかいくぐるように、輸入する業者はあとを絶たないとは思いますが、とりあえず、輸入が制限されることで、最初に頭をよぎるのは、また値上げです。

 そうでなくとも、インフレのためにすべてが値上がりしている中、また、値上がりする要因が加わることは、あまり喜ばしいニュースではありません。

 そうでなくとも、輸入品に関しては、欧州製品保護だか、安全性だかわかりませんが、個人的に送ってもらったりする荷物でさえも、受け取るだけで税金がかかる(しかも結構、高い)という事態で、まことに苦々しい思いをしています。

 とはいえ、森林破壊を放置しておいていいわけはなく、この試みがソフトに移行して、あまりショッキングな結果を生まないように、また、他の政治的な思惑がのっかることのないように公正に進んでいってくれればよいな・・と思います。

 いずれにしても、社会の発展とともに行き過ぎていたあらゆることを今は少しずつもどしていかなければならない時期なのかもしれません。


欧州 森林破壊製品輸入禁止


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2022年12月6日火曜日

登録者数1200万人のフランスの人気ユーチューバー 未成年者強姦で身柄拘束

 


 1200万人の登録者を持つフランス第3位の人気ユーチューバーであるノーマン(Norman Thavaud)が、複数の10代の少女や若い女性を巻き込んだ未成年者強姦の容疑でパリ検察庁に身柄を拘束されました。

 事の発端は、フランス第1位のユーチューバーSqueezieが「特定のユーチューバーが若い女性登録者の心理的脆弱性につけこんで性行為を強要する不適切行為を行っていること」を非難する内容のツイートをしたことがきっかけで、彼の名前が浮上し始めたことから始まりました。

 パリ市警察庁と、そのBPF(家族保護機関)は数カ月前から、複数のシナリオを照合して捜査を開始し、少なくとも6人の被害者から事実確認を行っていたのでした。

 2020年夏、ケベック州のファンで事件当時16歳だった少女が、以前にSnapchatで送られてきた性的な内容の写真や動画を操作され、心理的コントロールを受けて、憧れてもいたこのユーチューバーの罠にはまってしまったと、Instagramで告発。

 その後、ノーマン絡みの、この少女と同じような体験をした若い女性30人ほどから連絡があったことを発表されています。被害者候補はすでに裁判所から事情聴取を受けており、ほぼ全員がレイプされた可能性があるとみられており、そのうち2人は事件当時、未成年でした。

 ノーマン("Norman fait des vidéos ")はフランスのユーチューバーの中でもインターネットとともに成長した第一世代の象徴といわれる存在で、シプリアン、ミスターV、ヒューゴ・トゥ・スールらと同様、日常生活のありふれた出来事をインターネットやYouTubeのコードに適応させたスケッチ・コメディである「ポッドキャスト」のパイオニアでもあります。

 10年以上の活動で、彼のチャンネルは約1200万人の登録者と27億回の再生回数を誇るまでに成長しました。

 1200万人の登録者を持つ彼は現在35歳、2017年からフランスのモデルでもあり、インフルエンサーでもある女性と交際中で、3歳の女の子がいます。

 インターネットの成長とともにトップにのしあがってきた彼が、ネットの威力を知らないわけはないのですが、彼の行状が隠しきれることであると思っていたのでしょうか?

 恋愛事情に関しては、かなり寛容なフランスではありますが、レイプや未成年をだまして・・ということになれば、問題は一変します。

 とりあえず、彼が拘束されるのは48時間ということですが、その後、彼がどのように釈明し、この告訴状と戦っていくのか、また、このような影響力のある人物が事件を起こした場合にフランス社会はどう対応していくのか? 

 なりゆきを、今後も、見届けたいと思っています。 

 日本だったら、このようなスキャンダルがあれば、抹殺されるか、当分の間、活動休止になることは必至ですが、とりあえず、この逮捕を受け、フランスで最も重要なYouTubeチャンネルを制作しているウェブディア(Webediaグループ)は、「ユーチューバーのNorman Thavaudとのコラボレーションを停止する」と発表しています。

 以前、マクロン大統領が人気ユーチューバーとコラボ企画をしたことがありましたが、彼じゃなくてよかった・・。


フランス人気ユーチューバー ノーマン逮捕


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2022年12月5日月曜日

フランスで最も有名な日本人留学生死去のフランスでの報道

 


 恐らく彼は、歴史上、フランスで最も有名な日本人留学生であったろうと思います。事件当時、まだフランスにはいなかった私も、彼のニュースは、日本でも報道されていた記憶が微かに残っている気がする程度ですが、その後もかつてそういう人がいたということは、たびたび報道されていたし、猟奇的な殺人事件が起こったりすると、必ず、比較対象として、挙げられてきたような気がします。

 それは、のちに本人や周囲によって書籍化されたり、映画化された「食人鬼 佐川君」の事件です。

 1981年6月、ソルボンヌ大学に在学中だった佐川君は、同級生であったオランダ人の女学生を自分のアパートに夕食に招き、そこで彼はライフルで彼女の後頭部を撃ち、レイプした後、彼女を切り刻み、3日間にわたって体のさまざまな部分を食べ、その写真を何枚も撮影しました。

 その後、彼は2つのスーツケースに彼女の遺体を入れて、ブローニュの森で処分しようとしましたが、目撃者による通報により、発見、逮捕されました。

 逮捕後、彼の自供によると、かねてから彼には、人肉食願望があり、「この子を食べる というのは、愛の表現であり、好きな人の存在を自分の中で感じたかった」と驚きの告白しています。

 事件後の精神鑑定により、彼は心神喪失状態であったと判断され不起訴処分となり、しばらくパリの精神病院に入院後、日本へ帰国し、都内の精神病院に収容されました。日本の病院においても、彼の精神鑑定が行われ、日本では彼の心神喪失状態は認められず、精神障害ではなく、人格障害であったとされ、日本では刑事責任を問う方向で警察も動いていたものの、フランス側から、「不起訴処分となった事件の捜査資料の引き渡しはできない」という理由で、彼は刑事責任を追及されることから解放されました。

 フランスでは、彼はその後に日本でベストセラー作家となり、マスコミのスターになったとも伝えられ、彼の行為は世間に衝撃を与えたと同時に、ある種の病的な魅力を与えたともいわれています。

 しかし、先日、彼が事件から40年後に日本で死去したニュースがほぼすべての大手新聞社の紙上で報道されたことは、この事件がフランスでもどれだけ衝撃的な事件であったかを物語っています。

 先月、パリでアルジェリアからの移民であった女性が少女を殺害してスーツケースに遺体を入れて捨てた事件でフランス中が震撼とさせられ、同時に移民問題も持ち上がって大騒動になりましたが、思うに「佐川君事件」は、当時、それ以上の騒ぎになっていたに違いありません。

 事件が起こったのは、日本がバブル景気に沸く直前で、その時期にパリにいた日本人学生は、決して少なくなく、佐川君と同世代の日本人はけっこうパリにも多くいて、また、私の知る限り(知り合い)では、なかなか強烈なキャラクターの人も多いような気がするのですが、当時、彼らがどれだけ居辛い思いをしたかと、思わずにはいられないのです。

 差別的ともいえるかもしれませんが、移民としては、日本人は決して、問題視されたり、危険視されている国民ではないだけに、佐川君の事件は、「日本人が・・日本人なのに・・」として、余計に衝撃的であったに違いありません。

 彼の死去のニュースが流れるまで、私は、すっかり佐川君事件のことは忘れていましたが、毎日のように陰惨な事件が起こっているフランスにおいても、フランスのマスコが事件後40年経っても、彼が日本に帰っても、彼のことを忘れることはないほどの衝撃的な事件だったのです。


佐川君死去 食人鬼 日本人留学生


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2022年12月4日日曜日

フランス人はすぐにパニックになって騒ぎを大きくする

 



 この冬のエネルギー問題で、「停電の恐れあり・・」、「停電になる場合は・・」などという報道が増え、この冬の間、停電の可能性も現実味が帯びてきて、ヤレヤレ・・停電対策をしておかないと・・と、ぼんやりと考えていました。

 しかし、マクロン大統領がインタビューの中で、「パニックを起こさないで!」などと、訴えているのを見て、あらためて、フランス人はパニックを起こしかけているのか・・と気付きました。

 なにかと騒動を大きく騒ぎ立てるなあ・・と感じることの多いフランスですが、今回の停電計画も、すでに、「学校は休校にしなければならないのか?」とか、「急な休校になっても子供を迎えに行けるのか?」とか、「高齢者施設で暖房が切れるなんてことはありえない!」とか、騒ぎ始めているのです。

 そんな気配を察して、マクロン大統領が「パニックを起こさないで!」と言い始めたのでしょうが、それにはそれで、「パニックを起こさせているのは政府の方ではないか!」、「つい、この間もガソリン供給が絶たれた時に、パニックを起こすな慌てなくても大丈夫などと言っていたのに、大丈夫ではなかったではないか!!」などと怒る人まで出始めるのです。

 マクロン大統領曰く、「パニックを起こす意味はなく、政府があくまでも、極限状態に備えて準備するのはあたりまえのことだ」とごもっともな説明、「これらは、用意しなければならない架空のシナリオであり、政府が提示した計画に従って消費量を10%削減すれば回避できる」と断言しています。

 政府が提示している具体的な対応策は、暖房の温度を19℃に下げること、使用していない家電製品の電源を切ること、待機中の家電製品の使用をオフピーク時にシフトすることなどが挙げられています。

 ここにきて、グッと寒さが厳しくなってきたのも、騒ぎに加担している感じもします。

 古い話ではありますが、パニックといえば、日本で東日本大震災が起こったときに、多くのフランス人から、「日本人は、あんなに大変なことが起こっても、パニックを起こさず冷静で、避難所などでも、皆が譲り合っていてすごいわね・・フランスだったら、みんながパニックを起こして人々は争い合うことになるわよ・・」と言われたことを思い出します。

 そうなのです。フランス人は自分たちがパニックに弱いということを知っているのです。

 計画停電する可能性も、アプリを入れておけば、あらかじめ、自分の住んでいる地域がいつ停電するかもわかるようになっていて、それも2時間は超えないようにすると言っているのだから、ある程度、備えていれば、そんなに騒ぐ必要もないと思うのですが、これで黙っていないのがフランス人です。

 言わせてもらえば、例えば、ある日、停電して、学校が休校になったとしても、学校が休校になることなど、1年に何回もあるストライキで慣れているはず、そんなに珍しいことでもありません。

 電車だって、メトロだって、電気がふんだんに使えるときであっても、ストライキでろくに動かないことは、日常茶飯事なのです。

 むしろ、これらのストライキに対して、比較的、寛容であまり怒って騒がないことの方が私にとっては、不思議なくらいです。

 コロナウィルスが出始めた頃にも、このわけのわからないウィルスに怯えて、パニックを起こして、その恐怖と怒りが、アジア人に向けられ(中国で発生したということから)、アジア人狩りなる動きが生まれたこともありました。

 未曾有の事態にパニックを起こすのは、往々にして誰にもあり得ることですが、こうして、前もって知らせて準備してくれているのですから、無駄に騒ぐのは疲れるだけだから、ある程度、備えて、あとは耐えるしかないと思っている私は、やっぱり日本人なのだなぁ・・と思っているのです。


フランス人とパニック


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2022年12月3日土曜日

フランス人は傘をささない フランスに来てから増えた「まぁ、いいか・・」

 


 昨日はお天気の悪い一日で、日が短くなったうえに、日中もなんだか薄暗くて嫌な季節だな~と思いながら、夕方、急用ができて、でかけるハメになりました。午後4時頃でしたが、外は寒そうだし、帰ってくる頃にはもう真っ暗だな・・と思いながら、家を出ると、なんと雨・・。

 一度、出てしまったので、今さら家に傘を取りに帰るのも面倒だな・・と思って、そのまますぐに来たバスに乗ってしまったのです。

 言い訳をさせてもらえば、家の中から外を見ても誰も傘をさしていないし、霧雨のような雨だったので、家の中から雨は見えず、うっかり雨は降っていないものと思ってしまったのです。

 今日、出かけた場所は、初めて行くところだったので、Google mapを頼りにバスで15分、そこから徒歩で7分といいう微妙な距離で、まあ、途中で雨もやむだろうし・・と、たかをくくっていたのです。

 バスを降りると、雨は霧雨ながら、けっこうな雨になっていて、私は傘を取りに帰らなかったことを少々、後悔したのですが、時すでに遅し・・で、仕方なく結構な霧雨の中を足早に歩くことになりました。

 しかし、周囲を見渡してみても、傘をさしているのは、30%程度で、皆、雨に濡れながらコートについているフードをかぶって歩いています。それはごくごく普通の感じで、「あ~降られちゃったよ・・」と足早に逃げ去る感じでもありません。

 これ、日本だったら、100%の人が傘をさしているレベルの雨なのにな・・と思いながら、やはりフランス人は傘をささないんだな・・と私は今さらのようにあらためて思っていました。

 もともと、ざーざーと雨が降ることはあまりなく、少し雨が降っても、少し待っていればすぐにやんでしまう気候によるものもあると思いますが、身なりを身綺麗に、清潔に保つという感覚が薄いこともあるかもしれません。

 雨に濡れちゃったね・・と慌ててタオルにくるまるなどということもなく、パッパと水滴を払って、自然乾燥を待つ感じです。

 そんなわけで、フランス人はフード付きのコートやパーカーを着ている人も多いような気もします。

 そういえば、娘が小学校低学年の頃だったと思いますが、危険だからという理由で、学校に傘を持っていくのは禁止で、子供を学校に送っていったら、子供の傘は親が持ち帰らなければならず、危険なものなら、危険のないように使うことを学んでいかなければいけないのに・・と思ったのを覚えていますが、そもそも、フランス人にとって傘は大した問題ではないのです。

 そういえば、日本にはよくある公共施設の傘置き場というものも、そういえば見かけた覚えもなく、フランス人は傘を持っているとしても、たいてい折りたたみ傘のことが多く、また、それさえも慣れていないせいか、折りたたみ傘のたたみ方もよく言えば頓着ないたたみ方で、見ているこちらの方が恐縮するような感じがすることも少なくありません。

 だからといって、傘がいらないのかというと、そういうわけでもないのか、一度、バスにお気に入りの折りたたみ傘を置き忘れたことに気が付いて、すぐにそのバスをおっかけて、バスを止めてまで折りたたみ傘を取り戻しにバスに乗り込んだら、ちゃっかり知らない人が自分のバッグに入れようとしているところを取り返したことがありました。まあ、置き忘れた私が悪いのですが、盗られなくても、ちょっとでも手を離したら、たちまち無くなる国なのだと再確認しました。

 日本にいたころは、私は傘が好きで、けっこうたっぷりしたサイズのいい値段の傘を買っていたのですが、どういうわけか、傘というものには、気に入っているものから失くすという法則があるようで、手元に残っている傘は、もう2本しかありません。

 それでさえも、フランスに来てからというものすっかり使わなくなり、よくて百均で買ってきた折りたたみの傘、それさえも持たずに少々の雨なら、「まぁ、いいか・・」と傘も持ち歩かなくなりました。

 考えてみれば、フランスに来てから、傘に限らず、この「まぁ、いいか・・」が増えたような気がします。


フランス人と傘


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2022年12月2日金曜日

電力供給会社が開始する計画停電の予行演習

 


 ここ数日、日に日に寒さが厳しくなっている気がする今日この頃、秋冬口の季節の服装の変わり目の速さに驚く頃とは違い、みるみる空気も冷たくなり、街行く人も明らかに着ぶくれし始めたことに逆に驚く感じで、いつも、みんなこんなに膨れてたかな?と思うほど、ダウンジャケットやマフラーなどで明らかに皆が着込んでいる気がします。

 秋の始まり頃に今年の冬の節電モードが叫ばれ、マクロン大統領まで、スマートにスーツの下にタートルネックを着て節電アピールをしていましたが、今年の冬は、とても、そんなスマートには越せそうもありません。

 オフィスなどでも暖房の設定温度が下げられているために、例年ならば、コートの下はそれほど厚着しなくてもすんでいたのに、今年はそういうわけにもいかずに防寒しなければならないために、こんな着膨れ現象が起こっているのではないか?とも思われます。

 そんな中、1月には、停電かもしれない・・と言われていた話がより現実的を帯びてきました。

 エネルギー供給事業者と送電事業者(Enedis社とRTE社)は、この冬の間に起こりうる停電に備えて、計画停電の全国規模の大規模な予行演習を実施する準備を進めていることを発表しています。

 そもそもこの電力不足は、フランスにある56の原子力発電所のうちの30がなんらかの理由で休止中ということから起こっていることで、なぜ、こんな状態のままで放置されていたのか、残念なところではあります。

 この予行演習には、各地域が参加し、全国規模の卓上演習の形で行われる予定で、具体的には、発電不足や天候によって描画が変化する地図を使ってシミュレーションを行うものです。

 考えてみれば、計画停電というのは大変なことで、一般の家庭はもちろんのこと、病院、や公共施設や公共交通機関、工場など、電力供給が不可欠な場所だけを都合よく調整して電力の供給を一時的に切ることは至難の業です。

 特に人口も多く、これらの施設も多いイル・ド・フランス(パリを中心とした地域)などは、数多く点在する病院だけを考えても、難易度はより高いすが、すでにイル・ド・フランスでは、パリとその近郊で切断可能なセクターの最大数を特定しているそうです。

 停電を免れるのは、保護されたインフラの近くの送電線から電力を得ている世帯だけです。また、地域医療機関が最新の情報を提供することで、在宅の入院患者も救われることになりますが、混乱は必須です。

 ECOWATT(エコワット)のアプリはもはや必須アイテムで、停電(計画停電を含む)が発生する場合、3日前にエコワットシグナル(赤色)が発令されます。その後、影響を受ける地域のリストが発表され、前日の午後5時には、フランスの送配電網を管理するEnedisとRTEのウェブサイトで住所を入力することで、停電の影響を受けるかどうかを正確に知ることができます。

 地域全体が切り捨てられることはなく、少数派の部分だけが切り捨てられ、同じ人が2度と該当することはない計画です。電力切断は2時間以内、午前8時から午後1時、午後6時から午後8時の消費量の多い時間帯に実施する予定になっています。

 各県は、当該地域の消費量を38%まで削減する負荷削減計画を提示するよう求められているそうです。省庁間の危機管理ユニットは、クリスマス期間中に6〜10回の負荷削減オペレーションが必要になるという仮説のもとに計画中とのこと。この計画により、600万人に影響を与えることになると言われています。

 この停電の話、どんどん具体的になっていくとともに、現実味を帯びてきていますが、2時間以内であらかじめ予定されていれば、なんとか乗り切れそうな気もしますが、ことごとく、予定通りに事が運ばないフランス、何重にも準備する必要があるかもしれません。

 今、外に出れば、街中は、ノエルのイルミネーションがどこもキラキラ輝いていますが、そんなに節電が必要なら、このイルミネーションは全廃してしまったらどうか?と思いますが、おそらくフランスはそういうことはしないんだろうな・・と美しいイルミネーションが今年は少々、恨めしい気もしないでもありません。


計画停電の予行演習


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2022年12月1日木曜日

フランスのバゲット ユネスコ無形文化遺産登録



 フランスのバゲットがユネスコの無形文化遺産に登録されました。なんだか,バゲットとは、あまりにあたりまえに存在しているものだけに、「だから、なに?」と思わないでもなく、正直、このユネスコの無形文化遺産というものが、どれだけの意味があるのだろうか?と思わないでもありませんが、マクロン大統領は、どうやら2018年から、このフランスのバゲットの無形文化遺産登録を切望していたそうで、4年来の悲願が達成したことになります。


 フランスにおいてのバゲットというものは、今さら、取り立てて仰々しく取り上げることでもないような気もするのですが、「無形文化遺産」は、「先祖から受け継がれ、子孫に受け継がれた生きた伝統や表現を取り上げている」と、ユネスコは説明しており、「これはグローバル化が進む中で、文化の多様性を維持するための重要な要素である」とその意味付けを確認しています。

 バゲットとひとくちに言っても、それは、バゲット特有の職人技術を持った、フランスでいうところの「バゲットトラディショナル」と呼ばれるバゲットについてのことで、小麦粉、塩、水、イーストという材料、バゲットをじっくりこね、長時間発酵させ、手作業で形を整えていく。使用する小麦粉や水の種類、周囲の気温などによって、地域ごとに風味が変わることもある中でのたしかな技法、職人芸でもあると強調しています。

 ユネスコにとって無形文化遺産とは、「伝統的、現代的、かつ同時に生きている」「包括的」「代表的」であると同時に、「コミュニティに根ざした」ものでなければならないという基準からすれば、まさしくバゲットはそれに該当すると思われます。

 フランス国立ブーランジェリー・パティスリー連合会会長は、この無形文化遺産登録により、「伝統的なバゲットがどのように作られ、フランスでどのような重要性を持っているかを皆に知ってもらうことができると同時にフランスにいる3万3千人のパン職人の「役割を強調する」ことにもなると語っており、現在、バゲット職人9,000人の欠員がある中、こうした銘板は若い人たちに、パン職人が素晴らしい職業であることを伝える役割も果たし、求人の役割を果たしてくれると期待しています。

 しかし、現実には、燃料費の高騰により、「来年のバゲットの値段はいくらになるのか?」などが話題にのぼり、小規模に経営している街のパン屋さんは、経営危機に瀕しており、たとえ、バゲットが無形文化遺産に登録されようと、その職人技術をふるい続けることができない、背に腹はかえられない状況に追い込まれているのが現実なのです。


バゲット ユネスコ無形文化遺産登録


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