2021年8月31日火曜日

ヘルスパス 職場でのヘルスパス提示義務化に伴う職場内の摩擦

   


  フランスでは、今週から、ヘルスパスの提示義務が職域にまで求められるようになりました。つまり、同じ職場内で、従業員のヘルスパスをチェック・管理することが必要になったわけです。職務上以外のことで、人をチェックし合うというのは、あまり気持ちの良いものではありません。

 現在の段階では、全ての職場でというわけではなく、レストラン・カフェ、映画館、美術館などの文化・娯楽施設、スポーツ施設、一部のコマーシャルセンター・デパートなどの顧客に対してヘルスパスの提示が求められる場所においての人と接する部門で働く従業員に対してのものであり、フランスでは、約180万人がこれに該当します。

 現在、フランスのワクチン接種率は74.3%までに上昇していますから、そこまでの大問題には、発展しにくいとは思いますが、とはいえ、頑なにワクチン接種を拒否、ヘルスパスに反対する従業員を抱える企業では、少なからず、摩擦が生じています。

 元来、フランスは、労働者の権利が強く守られている国で、一旦、正規採用した場合の従業員の扱い、特に解雇に関しては、法律で強く守られており、今回のような、ヘルスパスが提示できない場合(=ワクチン接種拒否)は、給与が支払われない=解雇同然、というような図式のケースは、元来のフランスの労働者保護の観点から考えれば、かなり異例なことです。

 現在のところは、まだスタートしたばかりなので、たとえ、ヘルスパスの提示ができなかったとしても、他の部署への異動や、説得などの話し合いが持たれることが先決なので、そこまで深刻な事態は、浮上してきていません。

 しかし、国の決定とはいえ、顧客に対して行うヘルスパスのチェックと職場の中でお互いのヘルスパスをチェックし合うという図式は、職場全体の意志統一ができていない限り、職場内で不穏な空気を生み出します。

 と言っても、今回の場合は、経営者側もこれを遂行しない場合には、企業全体が営業停止になる恐れがあるため、これを回避することはできません。

 このような強制的な管理体制を敷くというのは、まことにフランスらしくない、フランス人には受け入れにくいことであるに違いありませんが、(それ故、7週間連続で反対デモも起こっている)すでに1年半以上も続いているパンデミックという異常事態ゆえ、フランス人とて、多くの人が受け入れざるを得ず、このヘルスパスに追い立てられるようにして、ここまでワクチン接種率も上がってきたのです。

 しかし、このワクチン接種の有無による不穏な対人関係は、企業内だけでなく、家族の中でも生まれ始めています。家族の集まりに際して、(誰かの誕生日パーティーや冠婚葬祭など)ワクチン接種をしていない者は参加してほしくないとか、それでも参加したい、家族に会いたいという摩擦で、家族関係にヒビが入ってしまった・・などというケースも少なくありません。

 もともと、コロナウィルスという病気は、人との接触を避けなければならないという残酷な側面を持つウィルスではありますが、ワクチンが誕生したことで、それが回避できると思いきや、そのことで、一層、凝縮した人間関係のいざこざが、また別の形で生じてしまうことに、やるせない気持ちになります。

 しかし、そこで、ちゃっかりした人もしっかり現れるのがフランスで、ワクチン接種を拒否している人が早々に医者に頼み込んで、ドクターストップ(Arrêt Maladie)の書類を書いてもらい、3ヶ月間の病気のための休職手続きをとってしまう人まで登場しています。

 医師の書いたドクターストップによる休職の場合、企業側は当人の病気についての詳しい事情について追求することはできず、この期間、少なくとも給与の半額は保障されます。つまり、ヘルスパスを提示できない場合に、無給になってしまうことを避けて、とりあえず、給与の半額が保障される方法をとるわけです。

 しかしながら、このヘルスパス提示義務の終わりが見えているわけではなく、永遠にドクターストップの書類をもらい続けて生活を続けることは不可能で、問題を先延ばしにしているに過ぎません。

 もっとも、この期間にヘルスパスの提示が必要のない転職先を探すという道もあるにはありますが・・。

 あくまでもワクチン接種は義務化したわけではないと言いながら、事実上の義務化のような状態に、「強制はできない・・しかし・・」といった曖昧な、どうにもおさまりが付きにくいモヤモヤした状況が生じています。

 そんな状況をよそに、政府側は、「フランスはヘルスパスの成功を収めた!」「他国の多くの国がフランスのヘルスパスに追随している!」と得意の自画自賛を始めています。

 たしかに、このヘルスパスがなければ、いつまでも、レストランやバー、その他の文化施設なども、閉鎖状態が続き、人々が現在のような、ほぼ日常に近いような生活を取り戻すことはできなかったかもしれないし、ここまでワクチン接種率が上がることもなかったかもしれません。

 とりあえずは、3日に1回、PCR検査を受け続ければ、ヘルスパスとして、使えるので、どうしてもヘルスパスを受け入れられない人々は、PCR検査をし続ける意外、他に道はありません。しかし、10月半ばにPCR検査が有料化すれば、それさえもあまり現実的な話ではなくなります。

 そして、実際に、経営者とヘルスパスを拒否する人々との間の話し合いが決裂し、解雇同然の状況になり始めた時、ヘルスパス反対、ワクチン接種をする人々がおとなしくそれを受け入れるのかどうかはわかりません。

 9月の半ばには、医療施設・高齢者施設勤務の従業員(医療従事者及び医療施設の職員)に対しては、ヘルスパスではなく、ワクチン接種の義務化の期限を迎えます。これは、PCR検査で乗り切ることはできません。

 フランスの感染状況は、少しずつとはいえ、減少傾向に向かい始め、概ね、フランスのヘルスパス政策は成功したかに見えていますが、万人が両手をあげてそれを歓迎しているわけではないのです。


職域によるヘルスパス提示の義務 フランス


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2021年8月30日月曜日

フランスに来てからの食生活の変化 


バゲットに分厚く切ったエシレバター とりあえず手っ取り早くて美味しいもの

 

 思い返してみれば、フランスに来てから、私の食生活はずいぶん変わったなぁ〜と思います。まぁ、変わったと言っても、フランスに来てからすでに随分、時が経っているので、子供ができたり、状況も違うので、一概に国が違うせいとも言い難いのですが・・。

 日本にいた頃は、外食も(と言っても、食べるというより、飲み歩いていただけだけですが・・)かなり頻繁で、しかも、数軒にわたって飲み歩いて、夜もかなり遅くなったりもしていたのですが、フランスに来てからは外食はめっきり減って、夜、遅くまで飲み歩くということもしなくなりました。

 まあ、子供がいたこともあるのですが、大体、フランスでは外食が高い上、治安も日本ほど良くないので、夜、遅くまで飲み歩くということも、なかなか躊躇われ、どちらかといえば、友達と飲んだりするなら、家で・・となることが多いのです。

 思えば、日本にいた頃は、自分で言うのも何なんですが、よく言えば? 私は、結構な酒豪で、(全然、よく言ってないかも・・)とにかく、よく、飲んでいました。あの頃は、飲み出せば、そんなに食べなくてもいい感じで、よく塩で飲めるなどと言いますが、まさに塩もいらないような感じでした。

 どんなに夜、遅くなっても、途中、記憶が曖昧なことがあっても、不思議なもので、しっかり家に帰っていて、朝、起きると自分のベッドで洋服を全て脱いで寝ていて、朝、起きると自分が脱いだ洋服がベッドの脇に脱いだままの形で置かれていて、しかも、ブラジャーまで丸い形のまま(ホックを外していないということ)捨て置かれていて、どうやって脱いだんだろう?と、一人で苦笑してしまうこともありました。

 まぁ、それだけ若かったということもあるのでしょうが、フランスでは外でそんなに飲むことはありません。実際に治安も良くないので、警戒心が働いて、そこまで飲む気にもなりません。

 食生活については、日本のように食べたいものが、いつでもどこでも簡単に買えるわけでもないので、何でも自分で作るようになりました。食べたいものが、どこでも手軽に気軽に買えないので、仕方ないのですが、こちらで手に入れることができる材料を工夫して作ることが楽しくなりました。

 何も作りたくなければ、最も手っ取り早くて確実に美味しいのは、バゲットとバター、チーズです。下手な外食をするよりも、確実に間違いなく美味しいので、バゲットやバター、チーズは、ものすごく食べることが多くなりました。

 それでもパリは、海外にしては、かなり日本やアジアの食品が手に入る場所ではあるのですが、それとて、それなりの場所に買い物に行かなければならないし、特に、このパンデミックの間などは、食料品の買い物とて、外出できる距離まで制限されていた時期もあったので、その何でも自分でどうにかして作るという作業がレベルアップしたような気がしています。

 手に入りづらい納豆やさんまなどがある時などは、もう納豆とご飯だけで、さんまを焼いただけで、もうこの上ない幸せを感じることができるのです。

 狭いベランダで日本のきゅうりやしそ、みつば、小ネギ、さやえんどう、ニラ、小蕪などを育てたり、自給自足とまでは行かないまでも、野菜を育てたりする楽しみも覚えました。

 あらためて考えると、日本にいた頃よりも、ずっと日本食を自分で作っていて、日本にいた頃よりも食べるようになっていることが、少々、妙な気がするというか、皮肉な気もします。

 お酒は、以前よりも量は減ったものの、ちゃんと飲んでいます。(ちゃんと飲んでますなんて、薬かよ?って感じだけど・・)

 私の育った家庭では、(もちろん、子供の頃は飲みませんでしたが・・)食事の時は、飲みながら・・という感じだったので、日本では、家では、まずはビール、そしてその後は食事に合ったお酒を飲んでいましたが、フランスでは、それこそ日本酒や焼酎などは、高価で、そうそう簡単には手に入りません。

 一時は、わりとどんな食事にも合う、ウォッカにハマり、買い物に行けば、小さかった娘がウォッカの置いてある場所に走っていって、大きな声で「ママ〜!!おっか!おっか!あったよ〜!」などと叫ぶのを止めるのに必死になったりしたこともありましたが、結局のところ、最近は、結局のところ、もっぱらワインに落ち着いています。

 フランスでは、やっぱり、ワインが一番、コスパが良いようです。それも、いかにも有名なワインではなく、安くて美味しいものを見つけるのがなかなかの楽しみになっています。最近は、フランスでは(特に若者の間では、)もっぱらビールやその他の水や炭酸で割って飲むアルコール類が代等してきているようですが、私は、もっぱらワインです。

 食生活に関しては、日本ほど満たされている国はないと思うのですが、たまに帰国すると限られた期間に狂ったように食べまくる私も、もしも、実際に日本で再び生活することがあったら、私は、どんな食生活を送るんだろうか? どこから手をつけたらいいかわからないほどの食品に戸惑いを感じるのではないか? とさえ思っています。

 いずれにせよ、食べること・お酒を飲むことが大好きな私、どこで暮らしていても、食生活が生活における大きな位置を占めていることに変わりはありません。


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2021年8月29日日曜日

ヘルスパス反対デモ7週目 地域ごとのワクチン接種率・デモ動員数・感染率は連動している

   


 このヘルスパス反対のデモは当分の間はなくなることはないでしょう。

 ヘルスパスの起用が発表されて以来、ヘルスパスの効力も適用範囲も徐々に拡大されている中、いよいよそれは、来週から、職域にまで(ヘルスパスの提示が求められる場所で働く主に人と接する職業に対してヘルスパスが求められる)及ぶことが決定しており、また、多くの人がバカンスから戻ってきた今、デモが止む理由はありません。

 この職域に及ぶヘルスパスの適用は、ヘルスパスの提示ができなければ、給与が支払われなくなるというかなり厳しいもので、事実上の解雇に近い強行なもので、ヘルスパス(ワクチン接種)反対の人にとっては、生活のかかった深刻な状況に陥ることになります。

 しかし、現在のフランスのワクチン接種率は74.3%にまでなり、ワクチン接種はしても、政府の強行なやり方に反抗している人という層を除けば、デモに参加しているのは、ワクチン未接種の残りの25%程度の人です。(とはいえ、16万人の結構な人出ではありますが・・先週よりも減ってはいます・・)

 つまり、国民の大半はワクチン接種を既に済ませているわけで、ヘルスパスが起用されることが決まった段階で、急激にワクチン接種が進んだだけでも、半ばヘルスパスは成功したとも言えます。

 ここ一週間ほどで、ほんの僅かではありますが、フランスの感染者数は減少傾向にあり、これもまた、ヘルスパス起用の効果が表れ始めたとも言われています。

 とはいえ、このヘルスパス反対のデモは、フランス全土にわたる大掛かりなもので、その動員数は、7週間の間に、地域的にも差が表れ始め、ワクチン接種率が低い地域ほど、デモの動員数が多いという当然ではありながらも、さらに感染の危険を増大するというさらに皮肉な結果を生み始めています。

 つまり、地域ごとによるワクチン接種率とデモの動員数、そして感染者数は、規則的に連動しているわけです。

 特にフランスの南東部では、ヘルスパスに対する反抗勢力が強く見られます。

 これは、単にワクチン接種だけではなく、格差社会における社会への反抗の側面もあります。これらの人々は既に植え付けられている価値観に支配されて、聞く耳を持たず、視点や思考を拡げることができません。

 しかし、政府側は、大半がワクチン接種を進めている現状に、もはやデモはあまり問題視はしておらず、はっきり言えば、「言いたい奴には言わせておけ」という状態で、オリヴィエ・ヴェラン保健相は「ヘルスパスの成功に直面して、抵抗は落ちている」と語り、それがまたデモ隊の反感を買っています。

 とはいえ、8月30日からはヘルスパスの効力が職域にまで拡張されるのに続いて、9月15日には、医療従事者のワクチン接種義務化による問題が再浮上するのは必須、10月には、PCR検査の有料化が待ち構えています。

 このままでいくと、この秋の感染状況も影響してくるとは思いますが、その全てが落ち着く、少なくとも10月末までは、このデモは続くと思われます。

 それにしても、土曜日の度にデモ、街中への外出も躊躇われるし、ましてや、デモ隊が行進する近隣の店舗、商業施設、レストランなどにとっては、とんでもない営業妨害です。

 レストランはともかく、多くの店舗が日曜日には営業しないフランスで、土曜日の営業妨害が続くのは、それこそ大変な損害です。ロックダウンによる閉店には、政府の補償金が支払われていましたが、デモのための補償金が支払われることはありません。

 言いたいこと、抗議したいことを訴える権利は認められるべきだとは思いますが、いいかげん、大概にしてもらいたいものです。


ヘルスパス反対デモ フランス


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2021年8月28日土曜日

来週から新年度の学校再開に向けて、学校で週60万回の唾液検査実施

   



 フランスの長い長い夏休みのバカンスももうすぐ終わり、来週、9月2日(木)からは、新年度が始まります。

 現在のフランスのワクチン接種率は、国全体で74.3%にまで上昇してきているものの、一番最後にワクチン接種が開始された12歳から17歳の年齢層に関しては、57%にとどまっています。

 科学評議会(Conseil Scientifique)は、現在のところ12歳以下の子供に対しては、ワクチン接種は行われていないため、他の年齢層の生徒達も併せて、新年度が始まれば、1日あたり、5万人の子どもたちの感染が起こるであろうとの懸念を示しています。

 しかし、フランス(本土)は、「新年度の開始を延期する理由はない。新年度の開始を延期することは、極端な場合にのみ取られるべき措置である」とし、新年度の学校開始は、従来からの予定どおりに9月2日(木)とすることを発表しました。

 感染状況が極度に悪化している一部の海外圏(グアドループ・レユニオン・ギアナ)については、当面の間、9月13日まで、新年度の授業再開が延期されることになりました。

 ジャン・ミッシェル・ブランケー教育相は、この新年度の開始について、各学校での厳重な衛生対策とともに、週60万件の学校での唾液検査を行うことを発表しています。



 ワクチン接種率が低い子供たちの間での感染から感染拡大が懸念される現在のデルタ変異種の対策として、学校を通常に近い形で再開するために、頻繁にテストを行う対策を取っています。

 また、8月30日からは、ヘルスパス(2回のワクチン接種済の証明書、72時間以内のPCR検査陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)がないと働けなくなる職業には、主に人と接する職業が該当していますが、教師もまた、このヘルスパスが必要な職業の一つになっています。

 教育省がイプソス世論調査機関に調査を依頼した結果、現在のフランスの全国の教師のワクチン接種率は、89%(78%が2回接種済み、11%が接種過程(1回接種済または、接種予約済み)がワクチン接種済みであることがわかっています。

 現在のところは、教師はワクチン接種が義務化されている職業ではないとはいえ、ヘルスパスがないと働けなくなる職業であることには変わりなく、現在の段階で、ワクチン接種をしていない残りの11%の教師に関しては、当面の間は、PCR検査を週に2回受け続けることが必要になります。

 教育相は、今年の初めから政府が示している方針どおりに学校閉鎖は最終的な手段であるとし、これまでも完璧であったとは言えないものの、できる限りの対策をとりつつ、学校の授業を続けていることは、やはりフランスが誇るべきことの一つであると語っています。

 しかし、今後の感染状況によっては、新たな対策を講じていくとしています。

 学校の新年度の再開は、18ヶ月以上も続いているパンデミックに対して、逃げ続けるだけでなく、対策を講じて、立ち向かい、是が非でも日常生活を続けていくためのフランスの大きなハードルの一つでもあります。


学校再開 唾液検査


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2021年8月27日金曜日

海外から見ている日本のコロナウィルス対策について

   


 私は、日本人ゆえ、海外に住んでいても、いつも日本の状況は気になり、フランスのニュースとともに、日本のニュースも気にしながら、生活しています。

 ことに、パンデミックが始まってからは、日本とフランスを比較しながら、「こんなところはさすが日本だ!」とか、逆に、「フランスでもできていることが、どうして日本でできないんだろう?」とか思いながら、双方の国を見守っています。

 パンデミックが始まったばかりの昨年の段階では、日本はさすがに衛生的で、規律正しい生活をこれまでの日常から送ってきたこともあり、フランスやヨーロッパのような壊滅的な感染拡大には至らず、フランスのような完全なロックダウンもせずに、パンデミックを乗り切ってきました。

 しかし、パンデミックも長引くに連れ、日本には、オリンピックやパラリンピックという計り知れないハンディを背負い、一般の国民へのコロナ対応に加えて、オリンピック対応にも追われ、力もお金も分散され、国民への感染対策が疎かになってしまった結果が現在の日本の状況を招いているような気がしてなりません。

 オリンピック選手のためには、数日おきにPCR検査がなされていたというのに、未だ国民は高価な料金を支払わなければ検査ができないのも、なんで?おかしいなぁ〜と思います。しっかり検査ができていなければ、日本の感染者数は、実際には、もっと多いのではないか?と思ってしまいます。

 パンデミック当初から、徹底的な検査と隔離が叫ばれてきたのに、まずその根本的なところからして改善されていないのは疑問です。日本では抗体カクテル療法が拡大されていくようですが、その前の段階から、改善できることがありそうな気がします。

 特に最近の日本のニュースを見ていると、その現実が信じ難く、救急車でたらい回しになるとか、必要な人が入院治療を受けられないとか、こんなことが本当に日本で起こっているのだろうか?と、これが本当に日本なの?と信じ難い気持ちです。

 「救急車でのたらい回し」なるものは、フランスでは、病院の状況を統括して、救急車がコントロールされて、配置されるため、いくら医療が逼迫している事態の時でもたらい回しという状況は、起こりませんでした。

 昨年の医療が最も逼迫した時でさえ、いよいよ病院が満床になり、病院の廊下にまで病人に埋め尽くされた後には、病院の前にテントが張られ、野戦病院のようなものができ、地域によっては、病人をTGVや軍用機を使って移送したりしていましたので、ある程度以上の病状の人が入院できずにいるケースは少なかったと思います。

 しかし、それでも病床には限りがあり、呼吸器なども不足していたので、動物病院から呼吸器を運び込んだり、トリアージュを行わなければならない場面もありました。

 そして、何回かのロックダウンを繰り返し、ワクチン接種が進むに従って、ヘルスパスなるものを用いて、ワクチン接種済みの人は、ほぼ日常と変わりない生活がスタートしています。

 日本は、ワクチン接種のスタートが遅かったわりには、さすがに巻き返しが早く、現在、54%(2回接種済は43%)までにワクチン接種率が上がっているようですが、いつまでも緊急事態宣言で全ての人が縛り付けられている様子にも疑問を感じます。

 フランスは、バカンスがスタートする時期にヘルスパスの起用が発表されたために、多くの人が急激にワクチン接種に走り、ワクチン接種率が上がりました。

 日本は特に若年層は、重症化しにくかったり、副反応を恐れてワクチン接種が進みにくいという話が伝わってきています。いつまでも、ワクチン接種をした人も、しない人も同じように制限された生活が続くならば、ワクチン接種をしないでおこうと思う気持ちもわからないではありません。

 ヘルスパスのようなものを起用しているのはフランスだけではありません。ワクチン接種をすれば、かなりの割合で重症化を避けることができるのは、すでに多くの国で実証済みなので、日本もヘルスパス同様のものを起用して、ワクチン接種をしたら、具体的に実際の生活が送りやすくなるというメリットを作るべきではないかと思います。

 ヘルスパスを起用するには、ある程度、ワクチン接種が進んでいなければ無理な話ではありますが、フランスがヘルスパスの起用を発表した段階のワクチン接種率は55%程度の時でした。

 自粛自粛で疲弊して、先の見えない気持ちになっている日本の人々に、ヘルスパスのようなものを起用して、これなら日常を取り戻すことができるという希望が持てるようにすることは、大切なことなのではないか?と思うのです。

 コロナ前までは、「日本では当たり前だったことがフランスでは、決して当たり前ではなかった・・フランスだから、仕方ない・・」と思うことが多かったのですが、ここへ来て、コロナ対応を見ていると、「フランスでは当たり前のように行われていることが、日本ではできていない」ことに、日本人として、現在の日本のコロナ対策の現状に唖然とさせられるようになってきたのです。

 日本ってこんな国ではなかったはずなのに・・と。


日本のコロナ対策 フランスのコロナ対策


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2021年8月26日木曜日

パリで食べられる世界一のピザ PEPPE PIZZERIA ピッツェリア・ペッペ

   

世界チャンピオンという名前の人気ピザ アップでどうぞ!


 パリで世界一のピザが食べられると聞いて、ビックリして、早速、そのピッツェリアに行ってみました。

 フランスでも、ピザと言えば、とてポピュラーな食べ物で、もともとチーズが大好きなフランス人がピザを嫌いなわけはありません。しかも、外食するにしても比較的安くて、若い子たちが安く外食を済ませるとしたら、ピザかケバブかマクドナルド・・そんな感じです。

 ウーバーイーツができる前も出前ができるのは、ピザか、中華がやっている日本食くらいで、それだけ気軽に食べられ、一般的に浸透しているメニューではあったのです。

 しかし、いくらピザがフランスでポピュラーだとはいえ、ピザといえば、何といってもご本家はイタリア、なのに、なぜ、世界一のピザがパリで??と、ちょっと不思議な気もしたのです。

 昨年、ピザの世界チャンピオン(2019-2020)であるナポリのシェフ、ジョセッぺ・クトラロがピッツェリア「PEPPE」をパリにオープンしたのでした。

 それはパリの20区というパリの中心部からは少し離れたところで、(といってもパリは狭いのでそんなに遠いわけではない)ペーラ・シェーズという有名な広大な墓地の裏手あたりのどちらかというと下町っぽい界隈にあるのですが、なぜかその「PEPPE」の一角だけは、イタリアの風景が切り取られて突如そこに現れるような独特な一画で、お店の正面には、階段を数段登ったところに、サンジェルマン・ド・シャロンヌ教会がそびえ、お店の店内から外を見ると、外のテラス席と教会と青い空が見えて、それはそれはか感動的な景色です。

 この格別のロケーションを教会を使って演出するあたりもなかなかのセンスです。

  

店内から見た教会を背景にしたテラス席

 最初にサイトでこのお店を調べて、予約を取ろうとしたら(お昼の時間)、予約は来週以降の限られた時間しか空いておらず、「あらまぁ〜すごい人気なんだわ!」と半分、諦めかけていたのですが、ふと先日、あまりに天気がいいので、「どこかに行こう!そうだ!あのピザを食べに行こう!予約なくても大丈夫かもしれないし・・ダメならテイクアウトでもいいし・・」と、突然、思い立って、出かけてみたのでした。

 案の定、混んではいましたが、予約なしでも全然OKで、ヘルスパスチェックの後、わりとすんなり入れましたが、それほど広くもない厨房で、テイクアウトのお客さんなども結構いて、それぞれが、一人、5枚、10枚と買っていくので、テイクアウトの分のオーダーが溜まっているため、席にはすぐに入れてもピザがやってくるのには、少々時間がかかります。

 (しかし、これは昼の話で、夜の予約は数ヶ月先までいっぱいなのだそうです。)

 テラス席も良かったのですが、ピザを焼いている様子も見たかったので、店内の席に案内してもらうとピザ窯の周りの3人のイケメンのピザ職人たちが、ピザを窯の中に押し込む大きいヘラのような棒を巧みに使い、音楽に合わせてリズムを取りながら、楽しそうに絶え間なくピザを焼いている様子が見えて、飽きることがありません。

  


 店内のウェイターやウェイトレスも大変、感じがよく、よく気が付く人たちで、さすがに繁盛店は違うな・・と感心しました。

 メニューは、紙のもの(ちょっとクシャクシャになってたけど)とQRコードのものと両方があり、それぞれのテーブルにはアルコールジェルが置かれ、衛生対策もバッチリです。

 前菜は、アーティーチョークやカプレーゼ、サラダ、生ハムやサラミの盛り合わせ、ブルスケッタなど6種類、値段は8〜12ユーロ(1,000円〜1,500円程度)、ピザはマルゲリータなどの定番によくあるメニューの他、ゴルゴンゾーラのピザ、トリュフクリームのピザ、そしてチャンピオンを取ったという話題のピザなど13種類あり、12〜20ユーロ(1,500円〜2,600円程度)です。

 ドリンクは、ソフトドリンクで4ユーロから、ビール、ワイン、カクテル、まあまあ良心的な価格です。

   

前菜の生ハムとチーズの盛り合わせ

 私は、せっかくだから、世界一のピザを食べてみたいと思って、「世界チャンピオン(CAMPIONE DEL MONDO)を食べてみました。(右がチャンピオン・左がレジーナ)

 


 ナポリ風の生地の外側は見事に膨らんで、トッピングには、黄色いトマト、24ヶ月もののパルマ産の生ハム、プロヴォローネ(イタリア北部パダーナ高原などで生産されているセミハードタイプのチーズ)、水牛のモツァレラチーズ、ローストアーモンド(これもなかなか良かった!)、バジル、イチジクのジャムがちょっとだけアクセントにのせられていて、フワフワでいて、どこかもっちりとした感じがあるにもかかわらず、とても軽い生地が見事に焼き上げられていて、絶品!私の期待が裏切られることはありませんでした。

 とはいえ、大きなピザを一人で一枚、食べきれなくて、もったいないなぁ〜と思っていたら、持ち帰り用の箱をくれて、残りは無駄なく、お持ち帰りしてきたのでした。

 このお店はイタリアンとはいえ、ピッツェリアなので、他のパスタなどのメニューはありませんが、とかくイタリアンはハズレが多いと定評のパリでこれだけ美味しいピザが食べられるのには、大満足です。

    

世界チャンピオン ジョセッぺ・クトラロ


世界一のピザ(パリ) PEPPE ピッツェリア ペッペ


PEPPE PIZZERIA (ピッツェリア・ペッペ)

2Place Saint-Braise 75020 Paris

営業時間 (火〜日)12:00~14:30, 18:45~22:30 (月)夜のみ

メトロ 3号線 Porte de Bagnolet, 9号線 Porte de Montreuil, 2号線 Alexandre Dumas

PEPPE MENU



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2021年8月25日水曜日

フランス9月1日から3回目のワクチン接種開始

   


 フランスは、予定していた9月15日からの3回目のワクチン接種を9月1日から受け付けることを発表しました。

 3回目の追加ワクチン接種の該当者は、65歳以上の高齢者と重症化及び死亡のリスクを高める併存疾患のある全ての人としています。

 Haute Autorité de Santé(HAS)(高等保健機構)は、3回目のワクチン接種について、「現在、フランスで蔓延しているデルタ変異種に関連する症候性形態に対する保護機能が時間の経過とともに低下し、不充分になると考えられるため」と説明しています。

 HASは、この説明に、すべてのワクチン、特にデルタ変異種に対する有効性の経時的な低下を示唆するいくつかの研究を提示しています。

 ビオンテック・ファイザーワクチン接種が2回済んでいるにも関わらず、8月13日の段階で特定された622例の重症化例の3分の2は、1つ以上の併存疾患に苦しむ人々で、そのうちの107名の死亡者のうち、72%が85歳以上であったことがわかっています。

 これらの研究結果により、3回目のワクチン接種を限定して優先接種していく方針を固めたのです。 

 この3回目の接種条件は、年齢や併存疾患に加えて、アストラゼネカ、ファイザー、またはモデルナの2回のワクチン接種後6か月が経過していることが付け加えられています。このため、現在の段階では、少なくとも3月の段階で2回のワクチン接種を済ませている人に限られているため、急激に3回目のワクチン接種が進むことは考えにくく、時間の経過とともに、徐々に行われていくものと思われます。

 まず最初にワクチン接種を開始した高齢者施設や介護施設において、この3回目のワクチン接種キャンペーンが開始されます。

 しかし、それは義務ではなく(もともと2回のワクチン接種も義務ではないが・・)、ヘルスパスの効力に影響はありません。

 そもそも2回のワクチン接種でさえも、渋々、受け入れざるを得ない気持ちだった人にとって、これでひと安心と思っていたところに、2回のワクチン接種では効果は十分ではなく、もう1回必要だというのですから、一体、どれだけワクチン接種を受け続けなければないのか?と追加の3回目のワクチンに対しては現段階では懐疑的な人も少なくありません。

 また、今回の該当者に関しては、これから秋から冬にかけての季節には、例年はインフルエンザワクチン接種を推奨されている人々でもあり、2種類のワクチンを同時に接種する危険を危惧する人も多いのですが、この2種類のワクチン接種は、たとえ時期が重なっても危険はないとしています。

 逆に、コロナウィルスワクチンに関しては、6ヶ月を経過すると有効性が低下し始めることを強調し、特に高齢者や併存疾患を抱える人々に対しては、3回目のワクチン接種を推奨しています。

 現在、フランスのワクチン接種率は、72.3%、国全体の感染を抑えていくには、まず、この2回のワクチン接種率を上げていくことも同時に進めていかなければなりませんが、現在のフランスのワクチンのストックは、その両方をこなしていくに十分な量を備えています。

 しかし、世界的には、まだ1回のワクチン接種もできていない人々も多く、WHO(世界保健機構)は、後進国にワクチンを譲るように呼びかけていますが、ヨーロッパでは、フランスの他、イギリス、ドイツ、ベルギー、スウェーデン、ハンガリーなどの国々が同時に3回目のワクチン接種を開始することを発表しています。

 私自身、心臓疾患があるため、恐らく、この併存疾患を持つ人というカテゴリーに入ると思うのですが、私が2回目のワクチン接種が終了したのは、6月5日、少なくとも12月までは、次のワクチン接種を受けることはできないので、少し様子を見て、かかりつけのお医者さんと相談して、考えようと思っています。

 しかし、これから定期的にワクチン接種を続けなければならないとしたら、なかなか気が思いことです。フランスは、ヘルスパスが適用されることになって以来、急激にワクチン接種が進み、ある程度、ワクチン接種が進んでいけば、ヘルスパスなども必要ない世界がやってくるのではないか?などと思っていた矢先にこの3回目のワクチン接種の話です。

 まだまだパンデミックは終わらないようです。


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