2022年8月19日金曜日

パリ市内観光の新しい移動手段 トゥクトゥクには、ご注意ください

  


 パンデミック以前には、あまり見かけることのなかった人力車の現代版のようなトゥクトゥクがパリに急激に増加しています。

 先日、たまたま美味しいチーズ屋さんがあると聞いて、出かけて行ったら、残念なことにそのお店はバカンス中でお休みで、ふと気付くとエッフェル塔のわりと近くで、滅多にこのあたりには来ないのだから、久しぶりにエッフェル塔まで散歩してこようと思って、てくてく歩いて行ったのです。

 近辺は、比較的ゆったりした道で、緑も多く、きれいな街並みで、エッフェル塔など何十年ぶりだろう?と思いながら、歩いていました。

 すると、さすがに観光地だけあって、観光用と思われるインスタスポットができていたり、バトーパリジャン(セーヌ川の遊覧船)の停車場がきれいに整備されていたり、暑い中、行列している観光客に感心してみたりしていましたが、その中でもちょいちょい目にする緑の中をゆったりと走っている真っ赤なトゥクトゥクには、一際、目を惹かれました。




 なるほど、車の規制がうるさくなっている中、人力車(といっても電動自転車)とは、なかなかよい交通手段かも・・と思ったのですが、ちょうど私がバスを待っている間、「フェラーリ」の名前とロゴを使った真っ赤なトゥクトゥクが信号待ちで停まり、「ふふっ・・フェラーリね・・」とちょっと笑ってしまったのですが、そのフェラーリに貼ってあった値段表を見てびっくり!

 価格は行き先によって20ユーロから35ユーロになっていて、しかも、「一人当たり」と書いてあります。行き先もシャンゼリゼ、凱旋門、エッフェル塔、ギャラリーラファイエット、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オペラ座、バトームーシュ、オルセー美術館、コンコルド広場などが書いてあって、それぞれに価格設定がされています。

 だいたい出発地はエッフェル塔近辺(トロカデロ近辺)ではあるらしいのですが、もともと、そんなに広くないパリです。例えば、ルーブルからコンコルド広場を通って、シャンゼリゼを通って凱旋門まで行くというのは、まあ結構、距離はあるとはいえ、その一つ一つは、そんなに離れているわけでもなく、歩こうと思えば、歩けないこともありません。

 どうも、この値段の付け方、ちょっと、ちゃんと値段交渉をしないとめんどくさそうだし、だいたい、一人当たりこの値段だと、タクシーよりも高いのでは?と思ったのです。

 まあ、遊園地の乗り物のようにこのトゥクトゥクそのものを楽しみたいというなら別ですが、(しかし、それにしても高いと思うけど)可愛いからと気軽に乗ってしまうと、痛い目に遭いそうです。

 案の定、この異常に増加しているトゥクトゥクはパリ警視庁の警戒対象となっているようで、現在、このトゥクトゥクはパリにおよそ400台存在し、もちろん、正規に許可されたものも中にはあるものの、90%以上は違法のトゥクトゥクだそうで、詐欺まがいの値段設定で、観光客が法外な料金を請求されるという被害が続出しているそうです。

 私が見かけトゥクトゥクの値段を見ても、土地勘のない観光客にとったら、ここと、ここと、ここを通ったからなどと言われかねない場所と値段の設定で、1時間で2人で160ユーロ(約2万2千円)払わされたなどという被害も出てきて、(うっかり家族4人でなど乗ったら、大変なことになります!)パリ警視庁は、この違法トゥクトゥクは著しいパリのイメージダウンに繋がると、私服警官を動員して、検挙を始めています。

 言葉も通じにくく、土地勘もなく、通貨の感覚も希薄な観光客は、この手の悪質な業者?または詐欺師にとっては絶好のターゲットになることは目に見えているのです。今は、日本人の観光客はあまり見かけませんが、日本人観光客などさしずめ絶好のターゲットになりそうなので、パリに来られる方は十分、注意してください。

 本来ならば、トゥクトゥクなど、環境にもやさしい、絶好の移動手段になり得ると思うのですが、あっという間に、この詐欺まがいの輩が市場を埋め尽くすパリというのは、やっぱりかなりえげつないところのある街だな・・とも思うのです。

 フランス政府は、2024年のオリンピックに向けて観光客を増やすために、「パリが安全であること」をアピールし続けることを目標としている中、観光客が増えるにつれて、危険は増すばかりです。

 街の安全性にかけては、東京オリンピック招致の時の滝川クリステルの「東京は世界一安全な国で、落としたお金が昨年は3000万ドルも警察に届けられた・・」とスピーチしていたことを思い出しますが、パリでは、残念ながら、「落として届けられるどころか、お金は落とさなくとも取られる街」なのかもしれません。

 もちろん、正規のトゥクトゥクもあるので、それなら心配はないと思いますが、現在のところ、正規のトゥクトゥクに当たる可能性はかなり低そうで、なんとなく、可愛いし、外の風を身体に感じながら観光できるし、運転する人とも直に話せるので、逆に安心してしまうかもしれませんが、きちんと値段交渉をしてから乗らないと、後になってからとんでもない額を請求される可能性があるので、面倒な嫌な思いをしたくなければ、タクシーか、公共交通機関(バスかメトロ)を使うことをおススメします。


パリのトゥクトゥク


<関連記事>

「観光客が戻ってきたパリ 今年のスリ、ひったくりなどの犯罪のトレンド「観光客なりすまし」」

「パリの治安の悪化再び エッフェル塔近辺で暴力を伴った強盗事件で一晩で12人逮捕」

「パリで犯罪から身を守る方法は、まず、犯罪の手口を知ること」

「12月は犯罪が多いパリ パリのスリの生息地」

「ノエルに向けて治安の悪化するパリ」

2022年8月18日木曜日

猛暑の後は豪雨、洪水 パリの脆さを露呈する異常気象

  


 ここ数年は、毎年の年中行事のようになった夏の猛暑も、今年は5月から始まり、6月、7月、8月と数週間おきに続き、例年ならば、40℃に迫る暑さが訪れた翌日には、本当にここはパリなのか?と思うほどのスコールのような雨が降ったりして、スッと涼しくなる感じだったのに、今年の猛暑は、一瞬、気温が下がっても、長いこと雨はほとんど降らずに本当の日照り状態で、水不足が深刻になり、作物が育たなくなるだけでなく、原子力発電所の冷却のための川の水位の低下と温度の上昇で、電力供給にまで影響が出ていました。

 また、街中でも、パリの街中のあちこちにある、本来は青々としているはずの芝生が黄色くなって枯れ始め、シャンゼリゼの街路樹までが黄色くなりかけていました。

 最近、パリで流行りの造花によるカフェなどのデコレーションでさえも、日焼けして、色褪せるほどでした。

 それが、先日、猛暑の波が去ったと思ったら、今度は豪雨で、本当ならば、待ちに待った恵みの雨だったはずなのですが、90分間に40ミリ以上の記録的な大雨で、我が家の近辺では、なにやらガラス窓にカチカチ氷の粒があたっているのが聞こえていて、雹まで降っていました。

 90分間に40ミリの雨というのは、通常1カ月に降る量の70%をすべて合わせた量だそうです。

 パリの街路樹には落雷で倒れた木もあり、何よりも、この豪雨に、街中の水は捌けていかずに、あっという間にパリの街中の道路は川のような状態になり、車もウォータースライダーのように水飛沫をあげて走っていました。


 大きな駅は別として、パリ市内の小さなメトロの駅は、かなりシンプルな構造で、街中から続く階段をいくらも降りないところに駅があることが多いので、駅には容易に水が流れ込み、浸水状態になってしまうのです。


 パリ市内のメトロ10、12、6、9、4、8番線の複数の駅は閉鎖に、首都圏の中心部にある地下鉄のサンミッシェル駅では雨漏りのためにホームにまで水が及ぶ事態となりました。


 幸い?にも、現在のパリはパリの住民の多くがバカンスにでかけている時期で、一年中で最も人の少ない時期で、車も人も少ないため、そこまでの大騒動には発展しませんでしたが、これが人も車も多い時期だったら、大変なことになっていたと思います。

 何より、2年後に控えたパリオリンピックには、通常の数倍に人口も膨れ上がっているはずで、その間に、もしもこんなことが起こったら?フランスはオリンピックの際のこの異常気象対策をしているのだろうか?と疑問に思います。

 水捌けが悪いのは街中だけではなく、セーヌ川も大雨が続いたりすると、あっという間に川の水位が上がり、何本の橋の下を通過するバトームーシュなどの遊覧船が通れなくなったり、水が溢れたりするのをどうしていつまでも改善しないのか不思議ですが、ずっと改善されないままです。

 パリオリンピックでは、選手の入場パレードをセーヌ川で行うなどと言っているので、オリンピックのためになら、このような洪水対策も含めて万全の対策をとってくれるだろうと勝手に期待しています。

 しかし、地球温暖化対策をいくらとったとしても、急激な改善を期待できるものではなく、そもそも、この異常な暑さの中、なぜオリンピックを夏にするのか? もう少し誰もが過ごしやすい春や秋にすればいいのにと思います。

 今回の豪雨は、2年後のパリオリンピックには猛暑だけでなく、洪水のリスクも多いにあり得ることを予告してくれたようにも思います。


パリ豪雨被害 メトロの駅浸水


<関連記事>

「フランスの熱波 川の水温上昇のための冷却機能低下で原子力発電所が発電量削減」

「パリ市内、今日から冷房中に扉を閉めないお店は罰金150ユーロ」

「干ばつが引き起こす牛乳価格の高騰と品不足」

「パリ40℃の猛暑とパリの上空を覆う噴煙のベールの正体」

「フランスの猛暑というより40℃超えの酷暑とシャトールーの水道水に大腸菌で水道一時停止」

「フランス 5月の記録的な熱波」

2022年8月17日水曜日

日本の統一教会問題の一部始終は海外でも報道されている

   


 私は海外に住んでいるとはいえ、日本人なので、日本のニュースが気になるので、日本で起こっているニュースはネットなどでチェックするようにしていますが、最近の日本の統一教会問題については、探さなくともフランスでも報道されています。

 先日、ネットで統一教会会長の記者会見を見ましたが、考えてみれば、あの記者会見は日本外国特派員協会のもので、海外にその内容が報道されるのも当然のことです。外国特派員協会で行われる記者会見の内容が必ずしも海外での報道に繋がるとは限りませんが、この事件に関しては、安倍元総理大臣の襲撃事件に端を発しているだけあって、その報道のスタートはセンセーショナルで、しかもセクト(新興宗教)という海外においても、決して見過ごすことのできない問題でもあるため、報道は続けられているのです。

 この報道はフランスだけではなく、アメリカやイギリスなどでも拡散されていることは言うまでもありません。



 海外での報道では、忖度は働かない分、その書き方、報道の仕方には容赦がありません。

 例えば、フィガロ紙では、「日本における統一教会の驚異的な影響力」と題して、「数千人の統一教会信者の前で晴れ晴れとスピーチする衆議院副議長は、日本で非難を浴び続けている宗教団体の集会に参加したということで、当然、本来ならば、彼の政治生命は絶たれるはずだが、安倍晋三の下ではそのような付き合いは無害どころか、高く評価されていた・・」などと書かれています。

 そのうえ、日本政府は統一教会と閣僚、政務三役の関係については個人の政治活動に関するもので、調査を行う必要はないとする答弁書を閣議決定したそうですが、これだけ被害が顕著に挙げられている団体との繋がりについて、調査を行う必要がないとは、どういうことなのか? このまま、だんまりを続けて世間が忘れてくれる時を待ってごまかそうとしているのは、明白です。

 7月末に行われた共同通信の世論調査では反対が53%にまでになっているという国葬も世論を無視して行われようとしていることなども含めて、岸田内閣が支持率の急激な低下に押されて、9月に行われるはずだった閣僚の入れ替えを早めたものの、依然として不評をかっていることまで、これらの全ての様子は全世界で報道されており、詳らかにされています。

 政府が日本国民を甘く見ているのは明白ですが、正面から向き合おうとしない日本政府の姿勢には、世界からの目も冷たいものです。

 この日本政府が世界に向けて発信している日本のネガティブイメージは今後の日本の外交にも影響します。海外からしても、このような政府とまともな話をしようとは思わないでしょう。ましてやこれだけ問題のある新興宗教と関わりのある政府とは積極的には関わりたくないと思うのが自然でしょう。

 こんな状態で国葬をして、外交に繋げようとしても、通り一辺倒の挨拶をするだけの外交に終わります。

 今は一瞬で、世界中にニュースが駆け巡る時代です。日本の政府の人々は、海外のニュースをチェックしないのでしょうか? 海外からの見え方を日本政府は考えていないのでしょうか? 日本国民をバカにしている結果、日本が海外から冷たい目で見られています。これ以上、日本の恥をさらしてほしくありません。

 日本では、統一教会そのものの被害状況と政府との繋がりについて、これに対する政府の対応など、別々に扱わなければならない問題を混ぜてしまっている感がありますが、まずは、「安倍元総理殺害事件そのものについて(警備などの問題)」、「統一教会の実態について(被害状況)」、「政府との繋がり」、そして、何よりも「30年前に問題視されたにも関わらず、捜査が中断されたことについて」、別々に糾弾しなければなりません。

 擁護すべき国民の被害を見過ごすどころか、警察の捜査を止め、よりにもよって、その団体を利用し、また逆に利用されているなどあってはならないことです。国民の安全を守るための警察の機能を政府が止めてしまう政府など、もう正気の沙汰ではありません。

 日本政府はこの統一教会問題が風化することを待っているようですが、この問題はきちんと解明されるまで忘れてはなりません。


統一教会問題 日本政府 海外報道


<関連記事>

「安倍晋三の神話は崩壊した」

「フランスの報道機関が指摘する安倍元総理と統一教会についての日本での報道と警察と政府、報道機関の歪み」

「統一教会はこんなところにもあった・・」

「安倍元首相の訃報に関する海外(フランス)の報道、反応」

「海外での新興宗教の勧誘」

2022年8月16日火曜日

日本に住むにあたっての手続き マイナンバーカードと住民票の不思議

   


 娘の就職にあたって、彼女は初めて日本に住むことになって、生活を始めるにあたっての様々な手続きが必要で、パンデミックのためにしばらく日本に行けずに放置してあった家のことも気になり、彼女が本格的に社会人としての生活をスタートさせる前に、最後に親として手伝ってあげられることがあるかもしれない、保証人などが必要な場面もあるかもしれない・・と手続きについて行きました。

 これまで幼少期から度々、日本には連れて行っていた娘ではありますが、日本に住むのは初めてのこと。住民票を入れたり、カードを作ったりと生活していく上で最低限やらなければならないことは、いくつかありました。

 私自身、日本から住民票は抜いたまま、もう20年以上が経過しているため、住民票を入れるということも、以前、どのようにしたのか?もうよく覚えていなかったし、家の名義は私になっていても、私自身の住民票は入っていないというイレギュラーな感じだったので、なにかとややこしいことがあるのではないかと心配でもありました。

 住民票を入れること自体は、何の問題もなく、スムーズにいきましたが、住民票を入れたと同時にマイナンバーカードを申請しますか?と言われて、私が日本に住んでいた頃にはなかったマイナンバーカード、私は勝手にフランスにあるIDカードと同じようなものだと思っていましたので、娘も当然のようにマイナンバーカードの申請をしてきました。

 これから他の手続きに度々、必要になる住民票の写しというものも、ついでにもらってくるつもりで、区役所の人に頼んだのですが、その際に「マイナンバーカードが記載されているものにしますか? それともマイナンバーカードが記載されていないものにしますか?」と尋ねられて、びっくりして聞き返すと、「提出先によっては、マイナンバーカードが入っていなければならないものもあるし、入っていてはいけないものもあるので・・」ということでした。

 個人情報の問題があるのかもしれませんが、日本のこのマイナンバーの位置付けがよくわからなくなる出来事でした。

 マイナンバーカードですから、当然、身分証明書になるものとは思われますが、マイナンバーカードは身分証明書になるのか?と検索したら、「保険証や運転免許証、パスポートなどと同様、身分証明書として通用します」と出てきて、かえってわからなくなりました。

 銀行や証券会社などではパスポートは身分証明書として通用しないからです。まあ、日本に住んで働いていれば、保険証もあるのですから、身分証明書に困ることはないのでよいのですが、だったら、公的書類にあえて記載したり、しなかったりするマイナンバーというものは何なんだろうか?と疑問に思った次第です。

 しかし、後日、彼女のもとには、思っても見なかった「20歳から、これまでの間の年金不払いの通知」が届いたようで、(本来は住民票が日本にない場合は支払いの義務はない)住民票を入れると年金事務所?(日本年金機構)に情報が行き、未払いがないかチェックされる仕組みになっていることがわかりました。

 しかし、住民票には、どこから転入したか(娘の場合はフランス)を記載されているにもかかわらず、このような請求がくるということはシンプルに個人の住民票が入ったということだけが通知されるわけで、(まあ海外からの転入は稀なケースゆえ、そのようなことまでチェックしないのかもしれないけど)そのような情報のどこからどこまでがマイナンバーカードに入っているのかが不思議です。

 まあこのような公的手続きはフランスにいても、何かとややこしいもので、どこにいても避けられないものですが、日本の区役所や年金事務所の人は親切で感じがよく、それだけでも救われる気持ちですが、その分、フランスはかなりの部分がネットで済むようになってきたのには、助かる気もします。

 日本のマイナンバーカードのサイトを見ると「デジタル庁」とど〜んと出てくるところが不安を駆り立てられますが・・日本のデジタル化にも期待したいところです。

 

マイナンバーカード 海外からの転入 住民票


<関連記事>

「バイリンガルになった娘の就職」

「海外在住邦人の日本での国民年金の支払いと受給について」

「海外在住者の日本での国民年金支払いについて私が勘違いしていたこと」

「日本のお金・銀行事情に驚いた!」

「日本で見たフランス人モード全開の娘」


2022年8月15日月曜日

バイリンガルになった娘の就職

  

日本に行きたいがためにママに公文の宿題を毎日やらされていた頃の娘



 子供ができたとわかった時から、私はなぜか、お腹の中の子供は女の子だと思い込んでいて、産婦人科のお医者さんにエコーで診てもらった結果、「手足の長い女の子ですよ!」と言われて、「やっぱり!・・よかった!」と思いました。

 名前も、フランスにも日本にも、英語圏にもある名前にしようと前から決めていました。正直、私は名前はひらがなでもいいな・・と思っていたのですが、パパが「日本にはせっかく漢字があるんだから、漢字の名前をつけてあげなければ可哀想だ・・」などと言い出し、そうなると、今度は実家の母が「せっかく漢字にするなら、画数のいい字を選んだ方がいい・・」などと名前の画数の本などをわざわざ送ってきてくれたりしたので、検討の結果、かなり画数の多い難しい漢字を選ぶことになりました。

 しかし、私としては、フランスにも日本にも英語圏にもある名前ということで満足していて、将来、娘が国際人になってほしいという思いを込めてつけた名前でした。

 娘が生まれて(アフリカで)すぐにフランスに引っ越してきて、パパはフランス人で生活の基盤はフランスになることから、フランス語に関しては、あまり心配していませんでしたが、とにかく私は娘に日本語がしっかりできるようになってほしいと、彼女が生まれて以来、日本語を教えることに、とにかく一生懸命でした。

 パパがフランス人でママが日本人だったら、自動的にバイリンガルになるわけではないので、私はひたすら娘には日本語だけで話すようにしてきました。せっかくの環境、これを無駄にしてはいけないと思ってきましたが、それは、そんなに簡単なことではありませんでした。しかし、今から思うに私にしては、かなりしつこく日本語教育にはこだわってきました。

 私は単に彼女が日本語を話せるだけでなく、読み書きもしっかりできるようになってほしいと思っていたので、毎晩、寝る前には絵本を読み聞かせ、2歳になってすぐにフランスでの学校が始まる前に(日本語が面倒臭いと感じないように)、公文に通わせ始め、えんぴつの持ち方から公文の先生に教えていただきました。

 教えていただくことも、もちろんのことでしたが、その頃の娘にとってはフランスでは私以外の日本人と接する機会がなかったので、公文に通って、日本人との接点ができるということも大きな役割を果たしてくれていました。

 毎日毎日、学校から帰ると私は食事の支度をしながら公文の宿題を監督し、バタバタと毎日が過ぎていきました。娘が音を上げそうになっても、「公文をやらない子、日本語ができない子は日本には行けないよ・・」と日本行きをちらつかせて、続けさせてきました。

 小学校の頃には夏休みに短期間、日本の小学校の体験入学をさせていただいたこともありました。

 結局、公文は10歳まで続けましたが、その後、パパが亡くなって、私も仕事と、一人で学校の送り迎えとでいっぱいいっぱいで(フランスの場合、小学生まではどこに行くにも送り迎えが必要)、まずは学校が最優先と、公文は一時、諦めていましたが、日本語そのものは諦めたわけではなく、父や叔母などが日本から送ってくれる日本語のテレビ番組などは、常に家で流し続けてきました。

 彼女がバカロレアを取得する年齢になった頃、オプションの科目の一つを日本語にしたいと言い出した時、今度は天理のやっている日本語のクラスに通い始め、1〜2年は通ったでしょうか? その頃になると、彼女はもう自分で勉強ができるようになっていたので、私は、あまり口は出さずに、出すのはお金だけでした。

 その後、彼女は無事に高校を卒業し、プレパー、グランゼコールへと進み、グランゼコール在学中に日本の大学に留学する予定にしていましたが、パンデミックのために2度にわたってキャンセルになり、結局、日本への留学は叶いませんでした。

 そして、グランゼコールの卒業が決まって、さて就職となった時、しばらく彼女はいくつかの進路に迷っている様子で、この先、また次のエコールにという選択肢などもあったのですが、結局、彼女が選択したのは、イギリスの会社の日本支社という道でした。

 「日本には家もあり、住むところもあるし、留学できなかった分、仕事ができて、お金ももらえて、日本で生活するという体験もできて、よかったけど、なんで、この道を選んだの?」と聞いたら、「他の色々な就職先の中で、自分のやりたい仕事の中で、条件が一番よかったから・・」というのが彼女の解答でした。

 彼女の専攻は生命工学で、それを活かした仕事の中で、日本語ができるということが彼女のスキルの一つに加わって、彼女の新しい生活の一歩を踏み出せたことは、私にとっては、本当に何よりも嬉しい、感慨深いことでした。

 たしかに、彼女の言うとおり、ほとんどがリモートワークで、初任給としたら破格のお給料を頂き、かなり自由に時間も使えるかなり条件のよい職場のようです。

 彼女が日本語でリモートで、今や専門用語などを含めて、私でさえ理解不能な日本語まで使って仕事をしているのが聞こえてきて、「うわぁ〜!日本語で仕事してる!」と、小さい頃から必死で日本語を教えてきた母としては、うるうるしてしまいそうになりました。

 皮肉なことに、現在の仕事では英語と日本語のみで、フランス語を使うことのない生活のようですが、彼女にとって、やはり母国語はフランス語、フランス語を忘れることはないでしょう。バイリンガルのつもりがいつのまにか、トリリンガルです。

 日本には、日本独特の社会があるので、フランスで育ってきた彼女にとっては、理解し難い難しいこともあるでしょうが、そこは、ひとまず日本にある会社とはいえ、イギリスの会社ということで、いきなり日本の会社というよりはハードルが低いかもしれない・・とも思っています。

 とはいえ、日本支社ゆえ、一緒に仕事(といってもほとんどリモート)をしているのは、ほとんどが日本人。最初に日本に行って、「プレゼンが終わって、「お疲れ様でした・・」と言われた時は、なんて言ったらいいのかな? ほんとに疲れたんだけど・・」などと聞いてくる娘にホッコリしてしまいました。

 これまで私は娘に対しては使うことのなかった「お疲れ様でした・・」という日本独特の挨拶?など、これからまだまだ彼女が学んでいくことはあるでしょうし、このまま、ずっとこの仕事を続けるのかどうかもわかりませんが、とりあえず、私は彼女が日本語を活かした仕事に就くことができて、これまで私が頑張って、娘に日本語を教え続けてきたことが報われた気がして、とても嬉しく思っています。

 日本語というのは、どこでも通用する言語ではないにしても、とりあえず、自分のルーツの一つでもある日本という国でも生きていける術を持ってくれたことがとても嬉しいのです。

 私の両親はすでに他界しているので、そんな彼女を見てもらえなくて、残念ではありますが、周囲の私の親戚、叔父、叔母、従姉妹たちや私の友人たちも彼女を見守ってくれています。

 小さい時から、日本行きを餌?に日本語を教えて、日本に行くたびに、親戚に会うにも、友人に会うにもいつも一緒に連れて歩いていたので、親戚はもちろんのこと、私の友人たちも彼女が小さい時からよく知っているおばちゃんたちなのです。

 もう彼女が仕事を始めてから半年近く経ちますが、その間、出社したのは3回くらいだけということで、つい先日も2日半だけお休みをとって、2週間くらいパリに来ていました。

 リモートワークなので、パリに来ても、日本時間、イギリス時間に合わせさえすれば、仕事ができているのは、たしかに条件がいいといえば、いい仕事なのかもしれません。

 以前、私がイギリスに留学する時に、父が言語(英語)は目的ではなく、あくまで手段だ・・というようなことを言われたことを思い出しましたが、まさに彼女にとって、日本語は彼女にとっての大きな手段の一つとなったことをしみじみと感じています。

 

バイリンガル教育


<関連記事>

「バイリンガル教育は簡単じゃないけど、頑張れば、その子の一生の財産になる」

「フランスの教育・学校・バイリンガル教育 ①」

「フランスの教育・学校・バイリンガル教育 ②」

「夏の帰国時の日本の学校への編入体験 バイリンガル教育の生体験」

「バイリンガルに育てる方法」

「バイリンガルのスイッチ」

「ハーフだって楽じゃない・・・ハーフの子」

「海外在住の日本人の子供には優秀な子が多い」

「バイリンガルになった娘の日本語 複数言語を使う生活」

「娘の卒業式」

「母の英語教育」


2022年8月14日日曜日

日本の未来はもう心配という段階ではなく、絶望的

  


 平常時には、見過ごしてしまいがちな国の在り方とか、政治などが、非常時になると浮き彫りになってくることをここ数年、特にパンデミック以来、ひしひしと感じています。

 ことにパンデミック以来、その現れ方は顕著で、私は日本人でありながら、フランスに住んでいることで、フランスと日本の国の対応を見続けてきました。

 フランスはパンデミックが始まる寸前まで、黄色いベスト運動で、国は大荒れで、黄色いベスト運動のデモもパンデミックのおかげで静まったようなところさえあり、もともとは、燃料税に端を発したデモに政府に対する不満が積み重なり、毎週のように土曜日になると起こるデモは、もう週末には、デモが起こる近隣などの店舗などは、まともに営業もできなくなるほどの騒ぎで、フランスはどうしようもないな・・と思っていました。

 何百年に一度、起こるかどうかというパンデミックという一大事に世界中は大変な影響を受けましたが、フランス人はほんと、どうしようもない・・と思うと同時に、フランス政府の対応の仕方は、満点とはいえないまでも、このおとなしく言ううことを聞かない国民を統制していくために必要なことは、かなりできていたのではないかと少し見直すところさえありました。

 ただちにロックダウンになった時は、焦りましたが、ロックダウンなど感染対策のために仕事ができない人々に対してはすぐに補償金が振り込まれましたし、その後のヘルスパス、ワクチンパス、ワクチン接種のオンライン予約や、いつでもどこでも検査が無料で受けられるシステムなど、フランスすごいな・・と、初めて思いました。

 一方、日本は、政府の対応はといえば、「国民の皆様のご理解とご協力」を求めることばかりで、日本である程度、感染が広がらなかったのは、ひとえに国民がまじめで自制心があったからで、対応の遅さ、ワクチン接種の遅さ、何重にも人出を介す予約のシステムなど、いつの間にか、日本はこんなに遅れをとっちゃったんだろうか?と遠く離れて見ていても、ちょっと愕然とさせられたのです。

 それでも秩序正しい国民に支えられて、日本は生き延びてきましたが、それから戦争が起こり、世界的なインフレは進み、そして、日本にとっては元総理大臣が襲撃されて死亡するという前代未聞の大事件が起こりました。

 それにつれて、統一教会問題や信仰宗教と政治の繋がりが浮き彫りになり、政治と、この反社のような宗教との関わりや警察やマスコミとの関係など、腐敗しきった政治の体制に、心配を通り越して、もう絶望的な気持ちです。

 日本は便利で清潔で、安全で、世界基準から行けば、格段に暮らしやすい国なので、現状は、なにかと気を紛らわして生きていけるかもしれませんが、これから10年〜15年以内くらいに死ねない人々にとっては、よほど、経済的に恵まれてでもいなければ、このままでは、悲惨な道を辿ることは明白です。

 統一教会との繋がりを指摘されて、国民の疑念を払拭するために組閣された新内閣にも、大した説明もないまま、相変わらず統一教会と繋がりが発覚している面々がならび、国民をバカにしているとしか思えない、当選回数順のご褒美人事のような高齢者が並びます。

 都合が悪くなると、沈黙するかわりにひたすら威圧的な態度でやり過ごす。

 もう現在の日本の政治を変えるには、少なくとも前面には出てこない御長老の政治家には、全てお引き取りいただくしかない気がします。

 政治家といえば、本来は激務なはず、歳をとれば、身体的にも頭脳的にも衰えがきて、世間の動静についていけなくなるのは、政治家とて同じです。ましてや反社と繋がりがあるなどといったら、一般社会では、抹殺されるかの如く扱われるのに、政治家ならばOKなどということは、あり得ないことです。

 政治家が介入すれば、警察や司法も手を出せなくなっているのが今の日本なのです。

 日本にも、40代、50代で優秀な人はいるのに、権力に胡座を書いている人々がいつまでも居座って、裏で采配を振るっている限り、割り込むことも不可能です。

 うちの親族には政治家はいませんが、世間的に結構な要職についている人もいて、もういい加減、引退したらいいのに・・などと思いますが、周囲に言わせれば、あの人脈はすごいらしいのよ・・などと言うのですが、はたから見れば、その古い人脈がいつまでも通用していること自体がおかしな社会です。

 日本の少子化問題一つをとってみても、本当に深刻な問題で、今の若者が将来、どれだけの高齢者を背負わなければならなくなるか?あり得ない現実がもうそこまで迫っているというのに、現状を変えようともせずに、いつまでも選挙にも行かずに文句だけ言っている若者もおかしいと思います。

 とにかく、今の日本の政治は、どう考えてもため息しか出ず、ため息ばかりで酸欠になりそうになります。

 こうなったら、フランスのようにデモとか暴動でも起きない限り、日本はどうにもならないのではないか・・と絶望的な気持ちなのです。


日本の政治

 

<関連記事>

「安倍晋三の神話は崩壊した」

「統一教会はこんなところにもあった・・」

「フランスの反セクト法は日本のオウム真理教事件を参考にして作られた」 

「海外からの入国者の濃厚接触者に対する行動制限について」

「フランスのニュース番組を見ていて思うこと フランスの政治家の話すチカラ」









2022年8月13日土曜日

不足していたはずのひまわりオイルがダブつき始めた・・

 



 ウクライナでの戦争が始まってしばらくして、ひまわりオイルがスーパーマーケットの棚から消え始めたのは、4月に入ってからのことでした。フランス人って、そんなにひまわりオイルを使ってたのかな??と思っていたら、ひまわりオイルだけでなく、他の食用オイルも消え始めました。

 結局、最後までいつも棚にあったのはオリーブオイルでしたが、これは、ヨーロッパ内での供給が比較的安定しているからなんだな・・と思っていました。

 特にそんなに使っているわけではなくとも、なくなるとなると、一応、買っておこうか・・と思うのが心情なのか、ぐんぐんと値上がりしたにもかかわらず、飛ぶように売れていくのですから、お店側としては、なんとしてでも仕入れて売りたいと思ったのもまた頷けます。

 スーパーマーケットの売り場の中央に、「どうだ!」と言わんばかりにひまわりオイル入りの段ボール箱が山積みにされ、「こんなにあるんだ・・」と驚かされたのが6月頃のこと、その頃はまだ、それでも売れていたのでしょうが、現在、ひまわりオイルはさっぱり売れなくなり、店舗側は大量のストックを抱えてしまったと言われています。

 しかし、ひまわりオイルに関しては、この騒動がきっかけとなり、ここ数ヶ月で、通常の数年分の売り上げを記録しています。これまでの在庫を一掃したと同時に値段がこれまでの約2倍になっても飛ぶようにうれたのですから、食用オイル業界は、いくら原価や輸送のための燃料費が上昇したとしても、まさか2倍の値段でさえも売れたわけで、ないないと言いつつ、実はバブルに沸いていたわけです。

 しかし、バブルであったならば、引き際も大事だったはずなのに、現在はダブつき状態。

 本来ならば売れるはずのない量を買い占めという現象のために、そもそも、もともとは一般家庭ではそれほどは消費されてもいないひまわりオイルはある程度、買いだめしたところで、それ以上は必要はなく、今やひまわりオイルは、ぱったり売れなくなったのです。

 これは2年前のサージカルマスクと同じ状態で、もともとマスクをする習慣のなかったフランスでは、一般的には、マスクの買い置きなどあるわけもなく、とにかくマスクが不足していて、輸入されるマスクがVIP扱いで警察に先導されて病院に運ばれるような状態で、いざ、ロックダウン解除の際には、マスクは異常な価格で販売されていて、当初はそれでさえ、なかなか買えない状態が続いていました。

 それがマスクが普及するにつれ、そして、感染も少し下火になりつつあり、ほとんどの人がマスクをしなくなり、マスクは今やフランスの薬局には山積みにされていて、スーパーマーケットにさえ、マスクが未だに積まれているのを見かけます。

 マスクの場合は、この需要と供給のバランスの変化がさらに著しく、現在はマスクなどする人はほとんどいないのですから、2年前から考えたら信じられないくらい値段が下がっていますが、それでも、売れません。

 私はこの期間、ひまわりオイルも食用オイルも、以前からの買い置きもあるし、この際、できるだけオイルは控えめにしておこうと、価格が上がって以降、買いませんでしたし、マスクに関しても、どういうわけだか、さすが日本人?家の中を探し回ったら、マスクのストックは少々あり、こうして値段が下がってくれるまで、不自由することもありませんでした。

 この不安定な時代、○○がない!と騒いでいても、なければないで、あるもので何とかしてみるか、あまりジタバタしないのが賢明だと今、再び肝に銘ずるのでした。

 もともとフランスでは手に入りにくい日本食材を使わずになんとか代用品で、日本食もどきのものを作ろうとする生活ゆえ、代用品利用の訓練は否応なしに積んでいます。

 今回は、戦争ではなく、干ばつ被害で牛乳が不足するかもと言われていると思ったら、今度はじゃがいも栽培に大きく影響が出ていると、早くもじゃがいも不足が懸念され始めました。

 なにも、じゃがいもがなくとも他に食べるものはたくさんあるわけで、むしろ、供給側から煽られているような気もするわけで、もう余程のものでも無い限り、何が不足しようとその時あるもので済ませよう・・たびたび振り回されるのはバカバカしい気がしてきました。


ひまわりオイル過剰ストック


<関連記事>

「加速するインフレ 食用オイルが棚から消えた」

「マクロン大統領の「ロシアに恥をかかせるな」発言と山積みのひまわりオイル」

「ガソリン、電気、食用オイルの次は、トイレットペーパーの価格が爆上がり」

「ひまわりオイルの次はマスタードがない! フランスのマスタード不足」

「干ばつが引き起こす牛乳価格の高騰と品不足」

「現地の食材で作る日本食」