パンデミック以前には、あまり見かけることのなかった人力車の現代版のようなトゥクトゥクがパリに急激に増加しています。
先日、たまたま美味しいチーズ屋さんがあると聞いて、出かけて行ったら、残念なことにそのお店はバカンス中でお休みで、ふと気付くとエッフェル塔のわりと近くで、滅多にこのあたりには来ないのだから、久しぶりにエッフェル塔まで散歩してこようと思って、てくてく歩いて行ったのです。
近辺は、比較的ゆったりした道で、緑も多く、きれいな街並みで、エッフェル塔など何十年ぶりだろう?と思いながら、歩いていました。
すると、さすがに観光地だけあって、観光用と思われるインスタスポットができていたり、バトーパリジャン(セーヌ川の遊覧船)の停車場がきれいに整備されていたり、暑い中、行列している観光客に感心してみたりしていましたが、その中でもちょいちょい目にする緑の中をゆったりと走っている真っ赤なトゥクトゥクには、一際、目を惹かれました。
なるほど、車の規制がうるさくなっている中、人力車(といっても電動自転車)とは、なかなかよい交通手段かも・・と思ったのですが、ちょうど私がバスを待っている間、「フェラーリ」の名前とロゴを使った真っ赤なトゥクトゥクが信号待ちで停まり、「ふふっ・・フェラーリね・・」とちょっと笑ってしまったのですが、そのフェラーリに貼ってあった値段表を見てびっくり!
価格は行き先によって20ユーロから35ユーロになっていて、しかも、「一人当たり」と書いてあります。行き先もシャンゼリゼ、凱旋門、エッフェル塔、ギャラリーラファイエット、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オペラ座、バトームーシュ、オルセー美術館、コンコルド広場などが書いてあって、それぞれに価格設定がされています。
だいたい出発地はエッフェル塔近辺(トロカデロ近辺)ではあるらしいのですが、もともと、そんなに広くないパリです。例えば、ルーブルからコンコルド広場を通って、シャンゼリゼを通って凱旋門まで行くというのは、まあ結構、距離はあるとはいえ、その一つ一つは、そんなに離れているわけでもなく、歩こうと思えば、歩けないこともありません。
どうも、この値段の付け方、ちょっと、ちゃんと値段交渉をしないとめんどくさそうだし、だいたい、一人当たりこの値段だと、タクシーよりも高いのでは?と思ったのです。
まあ、遊園地の乗り物のようにこのトゥクトゥクそのものを楽しみたいというなら別ですが、(しかし、それにしても高いと思うけど)可愛いからと気軽に乗ってしまうと、痛い目に遭いそうです。
案の定、この異常に増加しているトゥクトゥクはパリ警視庁の警戒対象となっているようで、現在、このトゥクトゥクはパリにおよそ400台存在し、もちろん、正規に許可されたものも中にはあるものの、90%以上は違法のトゥクトゥクだそうで、詐欺まがいの値段設定で、観光客が法外な料金を請求されるという被害が続出しているそうです。
私が見かけトゥクトゥクの値段を見ても、土地勘のない観光客にとったら、ここと、ここと、ここを通ったからなどと言われかねない場所と値段の設定で、1時間で2人で160ユーロ(約2万2千円)払わされたなどという被害も出てきて、(うっかり家族4人でなど乗ったら、大変なことになります!)パリ警視庁は、この違法トゥクトゥクは著しいパリのイメージダウンに繋がると、私服警官を動員して、検挙を始めています。
言葉も通じにくく、土地勘もなく、通貨の感覚も希薄な観光客は、この手の悪質な業者?または詐欺師にとっては絶好のターゲットになることは目に見えているのです。今は、日本人の観光客はあまり見かけませんが、日本人観光客などさしずめ絶好のターゲットになりそうなので、パリに来られる方は十分、注意してください。
本来ならば、トゥクトゥクなど、環境にもやさしい、絶好の移動手段になり得ると思うのですが、あっという間に、この詐欺まがいの輩が市場を埋め尽くすパリというのは、やっぱりかなりえげつないところのある街だな・・とも思うのです。
フランス政府は、2024年のオリンピックに向けて観光客を増やすために、「パリが安全であること」をアピールし続けることを目標としている中、観光客が増えるにつれて、危険は増すばかりです。
街の安全性にかけては、東京オリンピック招致の時の滝川クリステルの「東京は世界一安全な国で、落としたお金が昨年は3000万ドルも警察に届けられた・・」とスピーチしていたことを思い出しますが、パリでは、残念ながら、「落として届けられるどころか、お金は落とさなくとも取られる街」なのかもしれません。
もちろん、正規のトゥクトゥクもあるので、それなら心配はないと思いますが、現在のところ、正規のトゥクトゥクに当たる可能性はかなり低そうで、なんとなく、可愛いし、外の風を身体に感じながら観光できるし、運転する人とも直に話せるので、逆に安心してしまうかもしれませんが、きちんと値段交渉をしてから乗らないと、後になってからとんでもない額を請求される可能性があるので、面倒な嫌な思いをしたくなければ、タクシーか、公共交通機関(バスかメトロ)を使うことをおススメします。
パリのトゥクトゥク
<関連記事>
「観光客が戻ってきたパリ 今年のスリ、ひったくりなどの犯罪のトレンド「観光客なりすまし」」
「パリの治安の悪化再び エッフェル塔近辺で暴力を伴った強盗事件で一晩で12人逮捕」