2022年6月8日水曜日

パリ18区警察官発砲事件が呼ぶ波紋 警察官発砲事件は今年2件目だった・・

   


 先週末にパリ18区で警察官の検問を拒否して逃走しようとした車に乗っていた乗客が射殺された事件について、少しずつその時の状況が浮上してきているとともに、事件以来、身柄を拘束されていたこの事件に関与していた3人の警察官が釈放されたという驚きのニュースが入ってきました。

 土曜日の午前10時45分頃、モンマルトルの丘のふもと、クリニャンクール通りとカスティーヌ通りの交差点で、シートベルト付着用で警察の取締中、車(プジョー207)に乗っていた4人が逃走。車はその後、警察官の乗っていた自転車に衝突、警察官1名が車にはねられ左手に傷を負い、右膝が腫れる程度の負傷を負いました。

 さらに車を止めるために警察官2人が車に向けて9発を発砲しています。

 運転手と助手席の女性は警察の銃撃で重症を負い、救急搬送されましたが、頭を撃たれた助手席の女性は死亡、背中を撃たれた運転手は重症を負いましたが、事故の翌日には集中治療室を出て、命に別状はない状態で容体は安定しているそうです。

 この車を運転していた男性は38歳、数々の違反行為によって運転免許が失効になり、新しい免許の取得も禁止されていたとのこと、また、5年間は武器の保持・携帯を禁止されている警察のマーク対象人物であったようです。

 この発砲事件の際には、車の後部には他に21歳の若い女性と37歳の男性が同乗していましたが、彼らに怪我はありませんでした。彼らの証言によると、この車を運転していた男性は、免許を持っていないため、警察の検問で止まることを拒否したと話しています。

 運転手同様、この2人のうち、少なくとも1人は警察がマークしている人物で、アルコールと大麻を摂取していたようです。

 こんな車に乗車していた人々の背景が見えてきたこともあってか、今後も捜査は続行するという前置きつきではありますが、警察官が現段階では起訴されることなく釈放されたのですが、当然、そのことに対して、「服従拒否を理由の射殺を正当化するのか! 警察は射殺を容認する集団アライアンスだ!」と反対の声があがっています。

 また、その反対の声に対して、警察を侮辱したとして、警察組合はこの発言をした政治家を告訴すると息巻いており、法務大臣も「警察や憲兵隊は尊敬に値します。彼らは勇敢で困難な仕事をし、どんな時も命をかけているのです。彼らを侮辱することは、統治を望む人たちの名誉を傷つけることになる。選挙戦の人質として利用することなく、調査を行わせてください!」と反論しています。

 たしかに、選挙を前にして、何か起こるごとに政治家の足の引っ張り合いのように、こきおろそうとするような発言が目立つ気来はあるのですが、圧倒的な公的権力を持つ警察の行き過ぎた行動を問題視することは、必要なことでもあり、逆に選挙戦の人質として、その発言を過小評価する逃げ口上のような気がしないでもありません。

 警察側の発表によれば、暴力のために負傷している警察官は1日あたり110人だそうで、治安の悪化、凶悪化とともに、「命を張って仕事をしている警察官にとっては、警察側も攻撃されることから身を守る術を取らざるを得ない場面もある」としています。

「ここはアメリカではない!拳銃の発砲は、慎重にすべきである」という意見は捨ておけない気がしますが、そこでアメリカを引き合いに出して語るのも、なかなかフランスっぽいな・・などと思います。

 しかし、私は、この事件で初めて知ったのですが、4月24日にもパリのポンヌフ通りで検問を強行突破した車の運転手と助手席の同乗者を銃撃して殺害するという同様の事件が起こっており、警察官は、「任意過失致死罪」で起訴されています。それから約1ヶ月半後にまた、同様のこの事件が起こっているのは、本当に嘆かわしいことです。

 治安が悪くなり、犯罪も凶悪化するから、警察の対応も強硬化し、過激になる悪循環です。しかし、過失とはいえ、逃走した運転手本人ではなく、同乗者の命が奪われている事実は深刻に受け止めるべきです。警察官が危険な任務に携わっていることは理解していますが、警察官の発砲を容認するようには、なってほしくありません。


パリ警察官発砲事件


<関連記事>

「パリ18区で検問を拒否した車に警察官が発砲 1名死亡、1名重症 原因はシートベルト未着用」

「サッカー ヨーロッパチャンピオンリーグ決勝戦 試合よりも話題沸騰のスキャンダル」

「3日に1人の割合で起こっているフランスの警察官の自殺」

「防犯カメラで警察官の暴力が暴露されるフランス」

「グローバルセキュリティ法・全面書き直しとブラックブロック」


2022年6月7日火曜日

最近のフランスのケンタッキーフライドチキンはちょっと残念

  


 

 私は日本でも、フランスでも、あまりファストフードに行く習慣はありませんが、特に毛嫌いしているというわけでもなく、たまには、なんとなく食べたくなることもあります。

 フランスには、日本ほどアメリカのレストランチェーンのファストフードが多くはありませんが、それでもマクドナルドやスターバックスは、まあまあ、ふつうにあります。しかし、ケンタッキーフライドチキンやバーガーキングになると、その数はグッと少ない気がします。(どちらかというと郊外にあるイメージ)

 最近は、パリでもドーナツが流行し始めたと言われてはいますが、ダンキンドーナツやミスタードーナツはなく、セブンイレブン(これはファストフードというよりコンビニですが・・)やファミリーレストランもありません。

 一部には、フランスは自国の食文化を守るために、あまり外国の大規模なチェーン展開のレストランを入れないという話を聞いたことがありますが、実際のところ、理由は不明です。

 日本に一時帰国した際もあまり、ファストフードには行かない(他に食べたいものが多過ぎて、そこまで手が回らない)ので、現在の日本のマクドナルドやケンタッキーがどんなものなのかはわかりませんが、次から次へと日本ならではの新製品が出て、広告やツイッター、YouTubeなどで見ているだけですが、うわぁ〜美味しそう・・と海外から、羨ましく眺めています。

 しかし、マクドナルドにしても、ごくごく定番のハンバーガーやポテト、ビッグマックなどは、入れ替わる新製品とならんで、いつでも存在し、おそらくどこの国で食べても、それぞれの国の物価によって値段は違っても、ビッグマックはおおよそ同じものなはずです。

 ファストフードの中で、たまに食べたいと思うもののひとつは、私にとっては、ケンタッキーフライドチキンで、フランスに来たばかりの頃、まだパリ郊外の義姉夫婦の家の近所に住んでいた頃は、しょっちゅう、義姉の家に顔を出していて、その家の娘(夫の姪っ子)がKFC(カーエフセー)(フランスでは、ケンタッキーをカーエフセーと呼びます(KFC(ケーエフシー)のアルファベットのフランス語読み)でアルバイトをしており、彼女が時々、持ち帰ってきてくれるフライドチキンをご馳走になっては、なんだか、懐かしい気がしたものです。

 パリに引っ越してきてからは、近所にはKFCがないので、数少ないKFCの近くに行けば、滅多に買えないすぐに食べられるものとして、時々、買ってきてみたりしていたこともありました。その頃までは、たしかに、日本でも食べたことのあるケンタッキーフライドチキンだったのです。

 しかし、そんな機会もなく、しばらくケンタッキーフライドチキンを食べる機会もなく、数年が過ぎ、ある時、ひょんなところで、KFCを見かけて、喜んで入ってみたところ、なんとすっかりメニューが変わっており、いわゆる元祖ケンタッキーのオリジナルチキンが姿を消していたのです。

 あのケンタッキー独特のフレーバーも変わっていて、いわゆる、ドラムやリブ(あばら)、キール(胸肉)やサイ(おしり)の骨つきのチキンはなくなり、テンダーと呼ばれるささみの部分と、かろうじて骨つきは、ホットウィングというチキンだけになっています。

  


 とにかく、あのケンタッキーのフレーバーでもなく、衣ばかりがやたらとぶ厚い、全くの別物・・日本では、マニアの人の間では、あのケンタッキーの味を自分で再現しようとしている人もいるというのに、オリジナルに近付けようとしているとも思えない全くの別物がオリジナルメニューとして、君臨しています。

 フランス人には、骨つき肉が食べにくいので嫌われたのかどうかは、わかりませんが、最近のフランスのケンタッキーフライドチキンには、ちょっと残念に思っているのです。


ケンタッキーフライドチキン KFCフランス


<関連記事>

「コマーシャルセンターの衰退」

「ファラフェル激戦区 パリ・マレ地区の美味しいファラフェルのレストラン2選」

「パンの国フランス・パリで大成功した日本のパン屋さん・ブーランジェリー AKI(アキ) Boulangerie AKI」

「フレンチパラドックス 先進国で意外と肥満の少ないフランス」

「フランスの貧乏大学生の質素な生活」



 

2022年6月6日月曜日

パリ18区で検問を拒否した車に警察官が発砲 1名死亡、1名重症 原因はシートベルト未着用

   



 先週末、パリ18区で3人の警察官が発砲し、車に乗っていた4人のうち2人に重症を負わせ病院に搬送され、そのうち1名が死亡するという事件が起こっています。

 警察関係者の発表によると、土曜日の午前中、パリ18区で3人の警察官が1台の乗用車を検問しようとしました。車には4人が乗っていましたが、そのうちの1人がシートベルトをしていなかったためです。警察官は車をチェックするために近づきましたが、運転手は検問を拒否して逃走しました。

 しかし、車は渋滞に巻き込まれ、自転車に乗った警察官が車に追いつき、車を停車させるように再度、呼びかけると車は警察官を振り切り再び車を発進させ、自転車に乗った警察官を転倒させてしまいました。

 その後、3人の警察官は車に向けて10発も発砲。現場の目撃者によると、弾丸は車のタイヤにも命中し、車は他の車に衝突しました。



 警察官の撃った弾丸は車のタイヤだけではなく、運転手の胴体、同乗者の一人の頭部に命中し、二人とも救急搬送されましたが、頭部を撃たれた同乗者は翌日、死亡しました。

 この事件が起こったのは、モンマルトルの丘のふもと、クリニャンクール通りとカスティーヌ通りの交差点で、特別に危険な場所というわけでもありません。

 情報によると、乗客の何人かは警察に知られている人物で、事件当時、アルコールや薬物を使用していたとも言われていますが、もともと、シートベルト未着用での検問からの逃走に拳銃を発砲するなど、あり得ないことです。

 車を止めるために拳銃を発砲した警察官の身柄は拘束され、この事件は、国家警察総監部(IGPN)に委託され、「公権力を持つ者の自発的な故殺(故殺未遂)、武器による意図的な暴力」で捜査が開始されています。

 私はフランス国内をあまり旅行することはありませんが、たまに地方に行って帰ってくると、パリには、いかに警察官が多いのかと、あらためてびっくりさせられることがあります。

 それだけ人も多く、治安も悪いということなのでしょうが、パリの警察官はその職務にもよりますが、かなりイカつい重装備で練り歩いています。時に駅や人の多い場所などで見かける憲兵隊などは、ふつうの拳銃ではなく、ライフルのような長い拳銃を携帯していますが、それがけっこう、あどけない顔をしている若い子だったりするのをどこかアンバランスなような気がして、「それ・・本物なんだよね・・」と思って眺めたりすることもあります。

 今回の事件は、そもそもの理由がシートベルトの未着用という到底、拳銃を発砲してまで止めなければならないこととは思えないだけに、このような警察官の行動には、空恐ろしいものを感じずにはいられません。

 市民を守るためにいるはずの警察官が市民を殺してしまった事件です。

 先日、サッカーのヨーロッパリーグの決勝戦の観客入場の際の混乱で、パリ警察が観客に向けて催涙ガスを容赦なく発射したことも大きな問題として周囲のヨーロッパの国々からも非難の声があがっていましたが、今回は、催涙ガスどころか拳銃・・。

 公権力を持つ立場の一部の人の暴挙は、一般市民には止めようがありません。


パリ18区警察官発砲事件


<関連記事>

「サッカー ヨーロッパチャンピオンリーグ決勝戦 試合よりも話題沸騰のスキャンダル」

「自由の輸送団(Convoi de la liberté)への政府の大規模な警戒」

「パリ16区での日本人が首を絞められる強盗事件発生」

「3日に1人の割合で起こっているフランスの警察官の自殺」

「12月は犯罪が多いパリ パリのスリの生息地」

「マルセイユではパン・オ・ショコラを買うようにカラシニコフを買うことができる マルセイユ14歳少年銃殺事件」


2022年6月5日日曜日

マクロン大統領の「ロシアに恥をかかせるな」発言と山積みのひまわりオイル

  


 マクロン大統領がフランス地方紙のインタビューで、「私は、ロシアがウクライナ侵攻を開始したことで、プーチン大統領は、ロシア国民にとっても、自分自身にとっても、歴史的かつ根本的な間違いを犯したと思うし、本人にもそう伝えた」、さらに、「彼は孤立してしまったし、孤立も問題だが、そこから抜け出すことは、困難な道で、停戦に至り次第、外交的解決する道を残しておくために、ロシアに屈辱を与えてはいけない」と語りました。

 この発言は、「ロシアのウクライナ侵攻が歴史的な過ちである」というかなり明解な発言とともに、「侵略者に恥をかかせてはいけない」という現状況では、ともすると理解し難い発言が波紋を呼んでいます。

 マクロン大統領は、戦争開始前後から、おそらくどこの国の首脳よりもプーチン大統領と話をしてきたであろう人物で、これまで両者の会談の内容は、エリゼ宮や彼自身(マクロン大統領)、クレムリンからそれぞれに発表されてきましたが、それぞれの発表には、ところどころ食い違いがあり、また、具体的な詳細については報じられてきませんでした。

 マクロン大統領が彼を怒らせずに、自分自身も怒らずに会談を続けてきたのは、並々ならないストレスであったと思われますが、今回の「ロシアに屈辱を与えてはいけない」という発言は、プーチン大統領に対してのアピールだったような気がしています。

 しかしながら、このアピールは所詮はアピールでしかなく、プーチン大統領にとっては、この侵攻に失敗していることはとうにわかっていることにもかかわらず、落とし所が見つからず、中途半端に停戦することは、そのこと事態が屈辱で、両者の会談は、残念ながら、結局、噛み合っていないことがわかるような気がします。

 また、この発言に対して、ウクライナのドミトロー・クレバ外相は、「ロシアに恥をかかせないという声は、フランスや他の国に恥をかかせることにしかならない」「ロシアに恥をかかせることに集中したほうがいい」と猛反発しています。

 しかし、マクロン大統領は、このインタビューの中では、「ウクライナへの財政・軍事支援を強化する」、「ウクライナから穀物を輸出するためにあらゆることを行う」とも述べており、ウクライナへの支援は引き続き強化していくことを表明しているので、ウクライナとて、真っ向からフランスを否定することは不可能です。

 ウクライナからの輸出が滞っていることによる、この食糧危機問題は、私の身近なところでも目の当たりにしています。

 昨日、スーパーマーケットに買い物に行ったら、ここのところ、ガラガラだったオイル(特にひまわりオイル)と小麦粉が売り場の中央に「どうだ!」と言わんばかりに山積みにされていました。

 


 

 「えっ?」と思って、手に取ってみると、いつもは見かけないパッケージのひまわりオイルでウクライナ産のものでした。毎日のように戦場と化し、廃墟のようになっている「あのウクライナで作られたものなんだ・・」と思うだけで、なんとなく複雑な思いにかられたのですが、同時に驚いたのは、その値段、先週、申し訳程度に棚に並んでいた同じサイズのオイルが一週間で30セント値上がりしています。

 隣に山積みにされていた小麦粉は、これまた普段、見かけないパッケージのもので、こちらは、ルーマニア産でした。

 こんな勢いで物価が高騰していくのは堪りませんが、この戦争が続く限り、このインフレが止まらないのは、明白です。

 自らが蒔いた種とはいえ、ロシアも屈辱的な撤退は絶対しないであろうし、ウクライナ側もこれまで多くの犠牲者を出してきてしまったからこそ、「すべての武器を受け取っていない限り、陣地を強化していない限り、ロシア軍をウクライナの国境からできる限り押し戻していない限り、停戦交渉する理由はない」とますます強硬な態度です。

 残念ながら、現時点では停戦協議にさえ進まない状況、パンデミック以来、来年には・・と思い続けてきたのが、まだまだ続きそうで、コロナも戦争もなかった平和だった時期が遠い昔のような気がしてきました。


ロシアに屈辱を与えるな マクロン大統領発言 ひまわりオイル


<関連記事>

「マクロン大統領、今度はドイツのショルツ首相と共にプーチン大統領との電話会談」

「カンヌ国際映画祭開幕セレモニー サプライズゲストはウクライナのゼレンスキー大統領」

「ロシアの戦勝記念日とマクロン大統領の「欧州政治共同体」提案」

「ロシアとオウム真理教 独裁者の暴走」

「約1ヶ月ぶりのマクロン大統領とプーチン大統領の電話会談」

「ウクライナに招待されているマクロン大統領 ジェノサイドという言葉」

「フランス共和国大統領のアジャンダ(議事日程)L'agenda du Président de la République」


 

 

2022年6月4日土曜日

フランスのコロナウィルス感染者数 再びリバウンド 新しい波がやってきた

 


 フランスの1日のコロナウィルス感染者数は、ここ1ヶ月半ほどの間は、毎週20%程度ずつ着実に減少してきました。気温の上昇もあるでしょうが、やれやれ、どうにか、これで少し感染もおさまってきた・・と思っていました。

 ところが、ここ1週間、感染の減少傾向がストップどころか、一転して増加傾向に転じ始めてしまいました。この過去1週間は、前の週と比べて、月曜日は+6%、火曜日は+10%、水曜日は+19%、今週木曜日は+20%と増加のペースが加速してきています。

 フランス公衆衛生局の疫学者は、「どうやら我々には、新しい波が戻ってきているようだ。死亡や入院などの深刻な影響を心配するのは時期尚早だとしても、感染が再開され始めていることは確かなことである」と発表しました。

 この感染の増加の原因を「ソーシャルディスタンスがとれていないこと」や、「アフリカ南部で確認され、ここ数週間ポルトガルで大流行しているBA4およびBA5と呼ばれる変異種の拡大」としています。

 彼は、「懸念しているのは」フランスだけでなく、「イギリス、ドイツ、スイスも同じようなレベルのリバウンドがある」と指摘しています。

 考えてみれば、これまで、感染の原因と思われる出来事から、だいたい2週間後に感染の増加が始まるということを繰り返してきたことを思えば、公共交通機関でのマスク着用義務化が撤廃されたのが、5月16日のこと、それから約2週間後が先週にあたり、この感染の再拡大の原因の一つには、このマスク着用義務の撤廃も挙げられるかもしれません。

 それまでも、公共交通機関以外では、ほとんどマスクをしていなかったフランス人ですが、この公共交通機関でのマスク着用義務撤廃を機に、さらにマスク率は減り、おまけに、これまでレストランや一般の店舗などでも入口や各テーブルに備えられていたアルコールジェルもほとんどなくなってしまいました。

 人によっては、もう他人がマスクをし続けているのが気に入らなくて、「いつまでも、マスクしてるな」モード全開の人もいます。

 私は、今でもメトロなどに乗る時には、未だにマスク着用を続け、レストランなどでもアルコールジェルがないので、逆に除菌シートを持ち歩くようになりました。私は心臓疾患があるとされているので、やはり感染は怖いのです。

 BA4およびBA5と呼ばれる変異種が理由などとも言われていますが、今回の感染のリバウンドは、明らかに感染対策の緩みが原因だと私は思うのです。公共交通機関のマスク着用ぐらい、まだ残してもよかったのに・・とつくづく思います。せっかく彼らもかなり従順にそこのところは守っていたのですから・・。

 逆にマスクや手洗いなどの基本的なことで、かなり、感染を防ぐことができていたと考えることもできます。

 このリバウンドを前にして、フランス公衆衛生局は「ワクチンは重症型に効くことが分かっています。しかし、残念ながら、私たちは、感染から十分に保護されていないのです。このままでは秋から冬にかけて、再び感染が急激に拡大する可能性がある」と述べると同時に、「今ならまだ間に合う、3回目、あるいは、2回目のブースター接種を行えば、深刻な病院圧迫の事態は避けられる」と断言しています。

 感染者数が増えれば、自ずと感染する可能性も高まるわけで、たとえ重症化しなくとも、思わぬ後遺症に苦しめられることもあります。また、例えば入国に際して陰性証明書を求める国(日本など)に行きたい場合は、感染していたら行けなくなってしまうわけで、やはり、できる限りの注意は続けなくてはなりません。

 この感染状況のリバウンドの報告に、私も再び気を引き締めなおすつもりです。

 そうでなくとも、そろそろ夏のバカンスシーズンに入り、フランスは開放感に包まれ、感染拡大の要素は揃っています。感染が再び増加し続けて、気温の下がる秋〜冬を迎えれば、また、昨年までと同じ道を辿ります。

 私たちは、もう何度も繰り返しているこの感染の波に慣れすぎてしまっているのです。もう今度が第何波なのかさえも思い出せません。


フランス コロナウィルス感染リバウンド 


<関連記事>

「公共交通機関でのマスク義務化も解除へ フランスのコロナウィルスに対する規制撤廃」

「日本の友人と話が噛み合わなくなってきた・・日本とフランスの感染対策観念とマスクの効用」

「馴染みの運転手さんがコロナで人生がすっかり変わってしまったという話」

「フランス人に花粉症が増えた」

「大統領選挙フィーバーで見たノーマスクにビズーのフランスの日常の復活」

2022年6月3日金曜日

まだまだハードルが高い日本行き JALは運行なのに、ANAは欠航のパリー羽田便

  


 在仏の友人が日本行きの飛行機が急にキャンセルになったと、慌てています。日本に行くとなったら、それなりの期間の休暇もとらなくてはならないし、平常時でさえ、航空券以外にもいろいろと準備することがあるのに、急なキャンセルには、本当に面食らいます。

 私も今年の3月に日本に一時帰国していたので、その際にも再三、予約していたチケットがキャンセルになったり、変更になったり、その上、サイトのアクセスができなくなったりしていて、電話するしかなく、電話が繋がるまでうんざりするほど、電話をし続けたことを思い出します。

 調べてみると、いつの間にか、ANAのパリからの直行便はとりあえず6月30日まで欠航となっていて、しかも、欧州路線の欠航はパリだけではなく、ミュンヘン、デュッセルドルフ、ウィーンが全て欠航になっています。その上、なぜか、デュッセルドルフ便は、なぜか欠航の予定が2022年10月29日までとなっています。

 しかし、欧州路線全てが欠航というわけではなく、ロンドン便は週3日、フランクフルト便は週5日、ブリュッセル便は週2日運行しているようです。

 ですから、パリからの直行便がキャンセルになったとしても、経由便に変更することは可能なのでしょうが、そこは黙っていれば、バッサリキャンセルのままになってしまいます。

 これだけの欧州路線が欠航になれば、欠航になった分の予約をその他の欧州路線と組み合わせて経由便の予約を入れていくのは、大変なことです。

 前回の私の一時帰国の際も行きに2回、帰りに1回キャンセルになり、特に日本からの帰りの便を取り直すのが本当に大変でした。電話を何回、かけ続けたかもわかりませんが、それでも私はまだ運が良かったようで、帰りの羽田→ロンドン→パリの経由便は、私は、ロンドンでの待ち時間が2時間程度で済みましたが、偶然、隣に乗り合わせた日本人の女性は、同じパリまで行くのに、ロンドンでの待ち時間が8時間近くだということで、仰天してしまいました。

 日本の水際対策が少し緩和されて、日本到着後の空港でのPCR検査はなくなりましたが、依然として、出発前72時間前の検査の陰性証明書は義務付けられたままで、飛行機がとれていても、もし、この検査で陽性になれば、問答無用に日本行きは不可能になってしまいます。

 その場合は、自らチケットはキャンセル、または変更しなければなりません。

 今回のANAの欧州路線の欠航はウクライナの戦争の影響のようですが、同じところに行くのに、JAL(パリ⇄羽田便)は6月中は週5日、今のところ、7月からは毎日運行の予定になっています。同じ場所に行くのにANAは欠航、JALは運行なのは、どうしてなのでしょうか?

 どちらにしても、現在の状況を考えると、予約したチケットがキャンセル・変更になることは、十分に考えられるので、旅行会社のサイトなどを通さずに直接、航空会社からチケットを購入した方が無難です。

 変更、返金などの場合は、旅行会社などを通すと返金にも時間がかかり、余計に話がややこしくなります。

 これらの変更・返金などの手続きは、本来ならば、サイトでも可能なはずなのですが、私の場合は、変更された便にロンドン→パリの分が抜けており、結局、電話をするハメになりました。前回の私のチケットは、JALでしたが、延々と電話をかけ続け(延々とお話中になる)、ようやく繋がって、ロンドンからの便を探してもらい、待ち時間があまり長くないものを探してくださいと粘りに粘り、ようやく、なんとか納得できる経由便に変更してもらいました。

 先方からすれば、忙しいところ、さぞかし、しつこくて嫌な客だと思われたかもしれませんが、ここで引き下がらないのは、フランスでの暮らしから培った「言うことは言う」「簡単には引き下がらない」精神。ただでさえ、迂回ルートで長距離フライトでキツいのに、これ以上、異常な待ち時間を過ごすのは、耐え難い苦痛です。

 しかし、まあ、無事に変更できたところで、私はひと安心したのですが、娘に直行便が経由便になったのに、料金は一緒なの?(普通なら経由便の方が安い)と言われて、あ〜そうだった・・さすが、フランスで育っただけのことはある娘には、まだまだ敵わないことを思い知らされたのでした。

 いずれにせよ、チケットがキャンセルになったり、変更になったりするリスクもなかなか高く、そのうえ、72時間前の検査で陽性になるリスク・・まだまだ、日本行きはハードルが高いのです。


航空券キャンセル 変更 パリー羽田便欠航


<関連記事>

「パリから日本行きの直行便キャンセル 国際郵便も届かない」

「ちょっとひと段落と思ったら、もう帰国の心配 帰国便欠航」

「パリーロンドン経由日本行きの超長距離フライトの今」

「コロナ禍と戦時下の一時帰国 長いフライトの後の羽田空港での書類チェックとコロナ検査」

「機内模様から垣間見えた国民性と感染対策・衛生観念」



2022年6月2日木曜日

ルーブル美術館 モナリザ襲撃 モナリザは結構災難に遭っている

  


 世界で最も有名な絵画の一つと言われるパリのルーブル美術館にあるレオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザは、恐らく、ルーブル美術館を訪れる人なら、誰でも見る絵画だと思います。

 正直、私が初めてモナリザを見たのは、ずいぶんと昔だったと思いますが、「えっ?こんなに小さいの?」というのが第一印象でした。しかも、モナリザの絵はガラスケースに入れられ、さらに、絵の周辺には、ロープが貼られ、絵に近づくことはできません。

 そして、そのうえ、なんといってもモナリザのある部屋はいつも凄い人で大混雑。これでは、絵を見にいくのか、人を見にいくのかわからない感じがしたものです。

 しかし、昨年、パンデミックのために美術館なども長い間閉鎖されていて、観光客もまだほとんどパリに戻っていない時期に、今なら!そう今しかない!と思い立って、ガラガラのルーブル美術館を堪能してきました。

 あれから、1年近く経って、パリに観光客も少しずつ戻り始めたと思ったら、なんとモナリザが襲撃されたというニュースが流れ、その場に居合わせた観光客が一斉にSNSで発信し、あっという間に世界中に拡散されました。

 犯人は、きれい?にメイクをほどこし、ウィッグをつけて老婦人に扮装して車椅子に乗って絵に近づき犯行に及びましたが、これは、ルーブル美術館が障害者に対してとっている、移動に支障のある人々が収蔵品の主要作品をはっきりと見ることができるように車椅子などが絵画に近付けるシステムを利用したもので、この男は、車椅子でモナリザに近づいたところで、急に立ち上がってモナリザが覆われているガラスを壊そうとしましたが、これには失敗(モナリザは防弾ガラスで守られている)。

 壊せなかったガラスにケーキを投げつけ、ガラスはクリームでグチャグチャ、最後に赤いバラを散らすという奇行に走りました。

 すぐに男は取り押さえられましたが、それでもかなりの興奮状態のまま、周囲に「地球を破壊している人々よ!全ての芸術家たちよ!地球について考えよ!」と叫びながら、連行されていきました。

 地球環境保護について訴えるにしてもかなりの奇行、この男は文化財損壊未遂の疑いで逮捕され、警察の精神科施設に収容されました。

 その時の模様は、その場にいた来場者の映像を見ると、そのクリームで汚された(ガラスケースが)モナリザはもとより、そのクリームに汚されたモナリザの写真、映像を撮るために、周囲は一斉に携帯を掲げているのもなかなか妙な光景で、その場の美術館員が「撮影やめてください!」と叫んでいます。


 それはそれでなかなかカオスな光景ですが、モナリザは無事でした。

 しかし、これだけの有名な絵画ともなると、モナリザは、これまでにも結構、災難に遭ってきており、1911年には盗難に遭い、1956年には銃撃されて絵の一部が破損(それ以来、防弾ガラス入り)、1974年には赤いペンキのスプレーで襲撃され、2009年にはマグカップを投げつけられています。

 フランスにとって、この国宝級の絵画は、1518年にレオナルド・ダ・ヴィンチがフランチェスコ1世に贈って以来、この絵画はフランス国家の所有物となっていますが、意外なことに、このモナリザの絵画は、「国家が保険である・・国が所有する作品については国が保険者となる・・」というわかるようなわからないような理由で、厳密には保険に加入していないのだそうです。

 「モナリザ(フランス語では、Joconde(ジョコンド)と呼ばれています」は1797年からルーヴル美術館に所蔵されており、これまでほとんど貸し出されることはありませんでした。モナリザの最後の旅は1974年東京です。

 そういえば、モナリザが日本に来た!と騒いでいたことがあったのを記憶していますが、日本に来たモナリザは、これまたすごい人で、私は見にいきませんでした。

 現在では、ほとんど貸し出されることがないと言われるモナリザの最後の旅が日本であったことがなんか、ちょっと嬉しい気もしています。

 しかし、逆に考えてみれば、モナリザが貸出中には、ルーブルに来た人がモナリザを見られないことになるわけで、やはり、モナリザはルーブルというあの美術館の建物自体が芸術品のような空間にあってこそでもあり、モナリザには、安全にルーブルに居続けてもらいたいと思うのです。


モナリザ襲撃時件


<関連記事>

「ガラガラのルーブル美術館なんて今だけ! 一人ぼっちのミロのヴィーナス」

「フランス政府が若者に発行したカルチャーパスがMANGAパスになった!」

「ユニクロ パリ・リヴォリ店オープン ルーブル美術館・日本文化とのコラボ」

「パリで一番、美しいスターバックス Starbucks Boulevard des Capucines」

「香取慎吾 ルーブル美術館 パリ個展」