「さよなら 日本の菅首相が試合を放棄」「日本の菅首相が彼の次の出発を発表する理由」「日本の菅首相自民党総裁を辞任」これらが、フランスでの菅首相退任に関する報道のタイトルでした。
そもそも、日本のニュースは、余程のことでない限り、フランスでは、大々的に報道されることはありませんが、さすがに首相退任のニュースは、大手新聞社では数社に及び、報道されていました。(テレビでの報道はほぼ無し)
新聞の報道では、彼は、「コロナウィルスとの戦いと選挙運動を両立することは不可能であるため、コロナウィルス対策に専念し、総裁選には出馬しない」と発表したと伝えています。
短い記者会見の内容に、各社、それに肉付けする形で、首相退任について説明していますが、その多くが、「パンデミック対応に失敗(ワクチン接種の遅れ、感染悪化、医療対応の不拡充などのコロナウィルス対応の失敗)と、大多数の国民の反対にも関わらず、オリンピック・パラリンピックを強行したことにより、記録的な不人気を更新し続けていた」などと伝えています。
「日本は6月以来、コロナウィルス感染の記録的な増加に苦しんでおり、現在、約2万件の新たな症例が発生している。日本政府は集団予防接種キャンペーンの開始に遅れをとり、今年の初めから非常事態宣言を繰り返し発令していましたが、これは、本質的に拘束力のない推奨事項に基づくもので、感染を封じ込める効果が低下する一方、締め付けられ続けている国民を深刻に疲れさせ始めている。」
「不人気記録の更新にも関わらず、当然のように総裁選に出馬すると思われていた菅首相の衝撃的な辞任の発表は、9月5日のパラリンピック閉会の2日前に行われ、47都道府県のうち、21地域で非常事態宣言下にある日本全体のコロナウィルス感染の指数関数的増加の危機的状況から国民の気を逸らす働きを果たした」となかなかの辛口の評もあります。
「これは自民党の舞台裏でひねりを加えた哀れなパワーゲーム(同盟、裏切りなど)でもある。」
「現在の日本には、医療崩壊の片鱗が見られる事例が続出しており、多くの感染者が、なかなか入院できずに自宅で死亡するケースが急増しており、これはワクチン接種の遅れを背景にワクチン供給の遅れ、スクリーニングの遅れが原因で、これらに対しての対策が充分に取れなかったことは、彼の失敗であった。」
「8年間、前任の安倍首相の右腕であった菅首相は、安倍首相の遺言執行者だった。」
・・とまあ、こんな感じの報道が多く見られます。
首相退陣のニュースは、その原因の追求から、日本の感染対策の失敗や、そのことにより、日本国民が現在、感染してもなかなか入院もできずに自宅療養を強いられている状況を知らしめるキャンペーンのようになってしまっている感が否めません。
しかし、どこか吹っ切れたような菅首相の表情は印象的ですが、首相という権限を失った後に、コロナウィルス対策に専念する・・というのも、どこか、理屈に合わない気もします。
在任中にコロナウィルス対策に専念して、成功していれば、総裁選を戦うことをせずとも自ずと結果は出てきていたであろうに・・と思うに、彼の退任の本当の理由は、他にあるような気もします。
菅首相退任
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