2024年1月14日日曜日

2024年 フランスは年間1億人以上の観光客を目指す

  


 フランスは世界一の観光客数を誇る観光大国で、昨年も堂々、観光客数第一位にの座を獲得したことをマクロン大統領は誇らしげに公表し、特に今年は、オリンピックを機にフランスの美しさ、素晴らしさを大々的にPRして、さらなる観光業界の飛躍を期待しています。

 ここ数年では、2019年に観光客数約9,000万人を記録して以来、パンデミックのために、ガックリと低下していましたが、2022年には、約9,300万人(INSEE発表)と2019年を上回る好調な盛り返しを見せ、2023年分はまだ、はっきりとしたデータが出ていませんが、それ以上の数字が見込めるのではないか?と見ています。

 2024年はオリンピック・パラリンピックを控えている年でもあり、マクロン大統領は声高らかに1億人以上の観光客を!と宣言しています。

 1億人と聞いて、まあ、なんとまた大仰なこと!と思ったのですが、オリンピック・パラリンピックでは1,600万人以上の観光客を見込んでいるために、昨年、一昨年の数字を維持できて、プラス1,600万人を加えれば、1億人は下らない計算になるので、あながち大風呂敷を広げたわけでもないようです。


 マクロン大統領は、自らのSNSでこのフランス観光をアピールする投稿をして、フランスの観光業界を一層盛り上げていくことを宣言しています。なんとも、目がチカチカするような映像ですが、心意気は理解できます。

 フランスの観光収入は決して侮れないもので、フランスの年間観光消費額は、約2,000億ユーロ(約31兆4,000億円)、GDPの 約7.5%以上を占め、その 3 分の 1 は海外からの観光客によるものと言われています。

 また、この隆盛をもって、フランス政府は、毎年1億人の観光客を呼ぶフランスの観光業界をフランスのダイナミズムを示すものであるとし、観光客を呼び込むだけでなく、多くの海外投資家に対しても、さらなる投資を呼び掛けています。

 年間1億人といえば、フランスの人口の 1.5倍相当にあたるので、これだけの人々が、フランスに来てお金を消費していってくれるということは、凄いことです。

 今年は、オリンピック・パラリンピックもあるだけでなく、大惨事で焼け落ちたノートルダム大聖堂の公開も再開されます。

 ここのところ、工事のために不便な思いをすることも多いのですが、フランスが人気のある国になって、多くの人が訪れてくれることは嬉しいことです。

 以前は、「パリなんて、行ったことあるし・・もういいかな・・」などと、言われてしまうことも多かったのですが、ここ数年でパリもずいぶん変わりました。一度来たことがある人でも、見どころはたくさんあるし、昔なら、「ここはフランスなんだからフランス語で話せ!」なんて言われている観光客を見かけたのも、うそみたいに、多くの人が英語でも話してくれるようになりました。

 日本からだと、時間もお金もかかると思いますが、どちらも余裕がある方はぜひ、パリに来てください!


観光大国フランス 観光客1億人


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2024年1月13日土曜日

大震災の後に思うこと・・

  


 元旦の日に起こった能登半島での地震は、その日には、フランスでもトップニュースで扱われたものの、その翌日の羽田空港での事故もあり、その後は、国内でのニュースが優先で、被害の規模は小さいとはいえ、さすがに国内のできごと、フランス北部パ・ド・カレでの洪水被害の報道などが中心になりました。

 それでも、当初はあまりに大きく扱われた日本での大震災のニュースにフランス人の知人などが、わざわざ電話をくれて、「あけましておめでとう」の電話かと思ったら、「日本ですごい地震があったみたいだけど、家族は大丈夫?」という話だったりもしました。

 こんなとき、フランス人はとっても優しいのです。全然、知らない人がジムなどで、「あなた日本人でしょ・・ご家族は無事だったの?」などと声をかけてくれたりもします。

 能登半島での地震についてのフランスでの大々的な報道は、ほんの最初の1~2日だけだったので、地震の被害の大きさだけでなく、「日本人は日頃から災害に備えているから、みんな落ち着いていて、素晴らしい!」というような報道のまま消え去っているので、その後、引き続き、日本のニュースにも目を通している私には、この大災害にもかかわらず、日本政府の対応には、ちょっと首を傾げてしまうことが多く、考えさせられました。

 フランスの報道で讃えてくれた災害時の日本人の対応の素晴らしさは、日本人が災害時にも冷静に対応できるという点が中心だったのですが、これは、コロナウィルス対応の時にも言えることで、日本がフランス(ヨーロッパ)のように、壊滅的な死者数を出さなかったのは、日本国民の常日頃からの衛生観念の高さ、つまり国の対策よりも国民のおかげだったのです。

 今回は、支援活動に現地に駆け付けた政治家をやたらと叩く声があがったり、支援物資がなかなか届かなかったり、もう早くも10日以上経つというのに、まだまだ避難所に入れなかったりするのに、救助活動が思うように進んでいない話を見かけるのには、やはり国が上手く機能していないのではないか?と思わずには、いられません。

 自分たちだけでできないならば、快く声をかけてくれている海外からの援助を受ければいいものの、それも断り、かといって、自分では迅速に被災者を救うことができず、できないだけでなく、それを隠そうしているようなところが見受けられるところも言葉がありません。

 特に原発の問題については、隠蔽など問題外、目をつぶっていれば、世界中に迷惑をかける結果になりかねません。

 今回の大地震は、立地的にも難しい場所であることもネックにはなっていると思うのですが、それにしても本気で取り組んでいるのか? もっと迅速でよいやり方ができたはずだ!と思わずにはいられません。

 こんなときに、またフランスと比べるのは、なんなのですが、フランスの場合は、災害や大事件が起こった場合は、すぐに内務大臣が現地にすっ飛んで行って、政府と緊密に連絡をとって、必要な対応を迅速に行います。

 フランスの場合は、災害もありますが、テロだったり、暴動だったりすることもあり、年がら年中、内務大臣は、国内、あちこちを飛び回っていて、「あの人、本当に大変だろうな・・」などと思います。率直にいって、フランスの政治家の行動を見ていると、「政治家って本当に大変なんだな・・」と感じます。

 また、来年に控えている大阪万博問題も、今後、どうするのかはわかりませんが、万博終了後には、すぐに取り壊してしまう建物にとんでもないお金と労働力を投入しようとしているという意味不明などではすまされない愚の骨頂。

 災害を機に中止すれば、世界も納得することなのに、被災者を、そして国民をないがしろにする日本という国を外から見ていても呆然とするばかりです。政府は国民のためにあるべきものが、まるで国民は政府のためにあるもののようです。

 海外に住んでいると、何か大災害や戦争などが起こったりしたときは、やっぱり、私は外国人なわけで、フランス人が優先されるだろうから、そんなときは、やっぱり自国である日本にいた方がいいのかな?と思ったりすることもあるのですが、こんな日本の様子を見ていると、なにかあっても国民を助けてくれない政府だったら、フランスにいた方がマシなのかもしれないかも・・などと思ったりもします。

 フランスが絶対的に優れているとは言いませんが、もはや政治家の動きを見ていると比較するのもおこがましい気がします。その他の国の政治家については、よくわかりませんが、現在の日本の政治家がダメなことだけは、わかります。


日本政府


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2024年1月12日金曜日

新首相となったガブリエル・アタル氏 SNS上のアンチコメントへの制裁要求 

 


 多くの人々が予想していたとはいえ、やはり、センセーショナルでもあった若いガブリエル・アタル氏の首相任命以来、X(旧Twitter)等のSNS上での彼に対する反ユダヤ主義と同性愛嫌悪の「アンチメッセージ」の波が押し寄せ、彼は、度を超える憎悪に満ちたメッセージに対して、警告を発していました。

 彼が同性愛者であることを公にしていることで、このようなことは、恐らく起こり得ることだとは思っていましたが、彼自身、結果的には半年ほどの教育大臣在任期間中には、学校でのいじめ・嫌がらせ問題にも、かなり、エネルギッシュに臨んでいましたし、このSNSによる誹謗中傷の威力とこれを根絶したいと取り組んでいたことは、記憶に新しいところでもあります。

 彼自身もインタビューの中で、15~16歳の頃にいじめの被害に遭っていたことを語っており、他人事ではなく、被害者に対して共感できる部分が大きかったのでしょう。国家レベルでこの問題に真摯に取り組もうとしていることは、いじめの加害者を授業中に逮捕するといった見せしめとも思われる強硬な制裁の手段をとったりしたことがあったことからもうかがえます。

 今回は、首相となった彼自身に降りかかったことで、そこまでしなくても?というのは、甘い考えで、この立場に立ったからこそ、アンチコメントを拡散したら、どうなるのか?ということをさらに大きく知らしめることができるかもしれません。



 特に、フランスユダヤ人学生同盟(UEJF)は、X(旧Twitter)に対して、「憎しみに満ちたツイートの投稿者全員に対する制裁」、「憎悪の主な推進者に対する厳重な懲役」、そして最後に「憎悪の投稿者に対する最終的に説得力のある罰金」を求めています。

 個人的にも、個人を憎悪する投稿などを見かけるだけでも不愉快になるし、どうして、そんなによく知りもしない他人を攻撃するのか? 理解できません。

 X(旧Twitter)はすでに、特に2023年10月7日に起きたイスラエルに対するハマス攻撃に関連した「違法コンテンツ」の公開に関して欧州委員会の調査を受けており、コンテンツのモデレーションと透明性に関する欧州の規則に違反した疑いがあるため、欧州委員会は12月18日から「正式な調査」を開始しています。

 これは、8月25日に施行されたデジタルサービスに関する欧州の新しい法律に基づいているもので、Xが穏健化の手段について欧州委員会に明快に対処できなかった場合、欧州連合(EU)での事業禁止に至る可能性があります。


アンチコメントに対する制裁


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2024年1月11日木曜日

フランスはマシンになってもお釣りの計算は苦手らしい・・

  


 たとえば、580円の買い物をするときに、1,080円出したら、500円玉一つ返してくれるのは、日本ではふつうなことなのですが、どうにも、フランスではそうはいかない場合が少なくありません。

 500円が戻ってくるのは、間違いないのですが、いきなり80円は返されたり、さもなくば、この元の金額に足していく感じで計算するので、どうにもそれ以上に細かい小銭で返されたりすることもあるのです。

 とはいえ、最近は、ほぼほぼ現金を使わなくなったので、あまり、そういう場面に直面することもなくなっていたので、とんと、そんなことも忘れていました。

 しかし、たまには、マルシェとか、あまりに少額の買い物の場合は、カードはNGだったりすることもあるので、現金も少しは持ち歩いてはいます。

 そんな時に、どういうわけだか、お釣りの金額はあっていても、これでもかというくらい細かい小銭でお釣りをくれることがあり、お財布の中で、邪魔に感じてしまい、今度は、どうにかして、この小銭を減らしたいと思うようになります。

 先日、この思いっきり細かい小銭返しをされて、ヤレヤレ・・と思っていて、「そうそうバゲットを買うときに、この細かい小銭を全部使ってしまおう!」と、いつもは、バゲット1本でさえもカードを使ってしまうところ、この小銭を消費しようと思っていました。

 最近、時々行くようになったパン屋さんには、近頃、多くのパン屋さんで取り扱うようになっている現金で支払う用のマシンが導入されていていました(衛生面も考慮してのことだと思います)。

 バゲットは1ユーロ30セントだったのですが、「カード?現金?」と聞かれたので「現金で・・」と答えました。その時に、ご丁寧に店員さんは、「30セントありますか?」と言ってくれたので、「これはこれは・・ずいぶんフランス人も進歩したな・・」と思いながら、小銭をかき集めて30セントと10ユーロ札を1枚、マシンに投入したのです。

 これでこの小銭は、当然、5ユーロ札1枚と2ユーロのコインが2枚返ってくると思った私が甘かった・・。

 これまで以上の小銭が戻ってきて、私は深くため息をつくことになりました。このマシンがどのような作りになっているのかはわかりませんが、マシンになってもお釣りの計算は苦手のようです。

 お釣りの金額が間違っているわけではないので、敢えて、注意をするのも面倒なので、そのまま、さらに増えた小銭をお財布にしまいながら、やっぱり、これからは現金を使うのはできるだけやめよう・・と思いました。

 結局、大量の小銭は、人が数えて受け取ってくれる別のお店で使いました。


お釣りの計算


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2024年1月10日水曜日

フランス新首相にガブリエル・アタル氏就任 史上最年少34歳の首相

  


 エリザベス・ボルヌ氏の首相辞任が伝えられていた日の段階で、次期首相は翌日、発表されるとのことでしたが、大方の予想では、彼が新首相に任命されるであろうとの予想でしたが、そのとおりになりました。

 若干34歳という若い首相は、フランスでは、以前37歳で首相になったローラン・ファビウスの記録を大幅に更新する若さです。しかも彼はどちらかといえば童顔で、歳よりも若く見えなくもありません。



 エリゼ宮での首相交代のセレモニー?で、どちらかといえば、年齢よりも老けて見えなくもないエリザベス・ボルヌ氏と並んでいる様子を見ると、親子?ともすると、孫?くらいの年齢差に見えなくもありません。

 彼が、2018年の国民教育・青少年大臣の国務長官として政府の中枢に登場したのは、若干28歳の時です。その後、政府報道官などを経て、首相に任命される前までは、昨年7月から国民教育・青少年大臣として、学校内でのアバヤ着用問題や、いじめ問題などに、かなりわかりやすい形で、どんどん新しい取り組みを進めていました。

 私が彼の存在を認識したのは、2020年、彼が政府報道官として公の場に立つことが増え始めた頃でしたが、当時は、「なんだか生意気そうな男の子だな・・」という印象でした。

 しかし、そのようにして、公の場に立つ機会が増えるにつれて、彼の言葉の力強さやエネルギッシュな姿勢、特に、その後、別の報道官に代わってから、逆に、「あら?彼の方が話が上手だったかも・・?」などと、私が言うのもおこがましいのですが、なんとなく、彼を見直すような感じを受けたのを覚えています。

 なんといっても、彼はマクロン学校の優秀な生徒と言われるほどの人物で、大統領の大筋を外れることはないところが、彼が首相に任命された大きな理由の一つでもあると言われていますが、一方では、彼は、現在、世論調査によると、フランスで最も人気のある政治家と言われており、マクロン大統領が今後の任期を遂行するために、彼の人気を取り込もうとしたという見方もされています。

 発信力、行動力も抜群で、力強く、エネルギッシュではありますが、若いだけあって、どこか危うさを感じないでもありませんが、とにかく若い人材が力強く国を動かしていく人材として登用されるフランスが日本人としては、非常に羨ましい気持ちです。

 また、彼は同性愛者であることを公表している政治家でもあり、先代の女性の首相登用に続いて、LGBT問題に対するマクロン大統領のアピールもあるかもしれないとも思うのです。

 これから新しい政権の人事(大臣級クラスの人事)が続々と発表されますが、間違いなく、彼のもとに続く大臣の面々は、間違いなくほぼ全員、彼よりも年長なはず。

 内心では、おもしろくない気持ちのある人もいるだろうし、嫉妬もあるかもしれません。

 しかし、若い人材が政府の中枢に入り、様々なことを学びながら、力強く将来のフランスを担う一人になってくれる機会が得られたことは喜ばしいことだし、日本も少しは、若い人材が活躍できる政治の場を築いてくれたらいいのに・・と思うのでした。


ガブリエル・アタル首相 34歳


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2024年1月9日火曜日

エリザベス・ボルヌ首相辞任 

  


 女性として2人目のフランスの首相に就任したエリザベス・ボルヌ氏の辞任が発表されました。年が明けて、内閣改造を目論んでいるとされていたマクロン大統領は首相を交代させるという噂はありましたが、現実のものとなりました。

 フランス初の女性首相エディット・クレソンはミッテラン政権のもと、それまでの数々の大臣経験や率直な発言が評価されて、1991年に首相に指名されましたが、首相になるや否や、性差別的な非難や物議を醸す発言で安定した地位は保つことができず、10ヶ月ほどで辞任に追い込まれています。

 特に、ABCニュースのインタビューで、「同性愛は「ラテン」よりも「アングロサクソン」の風習に近い」と説明したことは致命的で、同性愛を認めるフランソワ・ミッテラン大統領を飛び上がらせたという逸話に加えて、同インタビューの中で、「フランスには日本のような黄色いアリはいらない」と答えたという話も日本人としては看過できない話でもあります。

 それから約30年後にエリザベス・ボルヌは首相に就任したわけですが、これは、彼女自身の力はもちろんのことですが、女性を首相に据えてイメージアップを図りたかったマクロン大統領の思惑が作用していたように思います。

 フランスのエリートにありがちな恵まれた家庭環境とは言い難い境遇に育ち、非常に努力してのしあがってきた彼女は、いわゆる真面目な優等生タイプの印象でしたが、首相就任に際して、女性として首相に任命されたことをとても喜んでいました。しかし、当初はやはり風当りが強く、早々に辞任届を提出か?などという噂も流れましたが、結局のところ、彼女は20ヶ月間、首相というポストを務めました。

 その間の道はとても険しく、特に年金改革に際しては、大暴動を引き起こした49.3条を採決せずに、首相の権限において発令するという大変な任務を結局は乗り越え、今から思うと国会において、青筋をたてて、がなり立てる彼女の姿は忘れられません。

 また、つい最近、改正された移民法についても、かなり反発も多かった中、どうにか、取りまとめた感じで、どちらもフランスにとって、大変な決定を大統領の盾となって成し遂げてきた感じがあります。

 マクロン大統領は、彼女の辞任に際して、「私たちの国への奉仕におけるあなたの仕事は毎日模範的でした。 あなたは、国家女性の勇気、献身、決意をもって私たちのプロジェクトを実行してくれました。 心から感謝します」と敬意を表しています。

 現在、停滞気味のマクロン政権ではありますが、これからのフランスも大きな問題が山積みのうえ、オリンピック・パラリンピックという一大イベントも控え、ここで仕切り直しをして、新しい年に挑みたいというマクロン大統領の思惑が透けて見えて、とりあえずの大問題であった年金改革や移民法改正という最も困難な問題の影を引きずる彼女は、ここで終わりだったというなんだか損な役割を引き受けることになった彼女がなんだか少々気の毒だった気もします。

 しかし、辞任を発表した彼女の表情は、これまで見たこともないような晴れやかな表情で、解放された喜びに溢れているような笑顔であったことは、素直に「お疲れ様でした・・」と言ってあげたいホッとするような気持ちになるのでした。


エリザベス・ボルヌ首相辞任


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2024年1月8日月曜日

フードバウチャー配布の取りやめと値下げの約束

  

 

 フランスの経済・財務・産業・デジタル大臣は、マクロン大統領が大統領選挙中に約束した低所得者層へのフードバウチャーを取りやめることを発表しています。

 これまで、フランスはインフレ対応として、低所得者層に向けて、インフレ手当やエネルギーチケットなどを配布してきており、インフレ手当やエネルギーチケットの配布方法も少しずつ形や条件を変化させてきました。

 今回、取りやめになったフードバウチャーに関しては、マクロン大統領の選挙公約のようなものであったため、該当者の間では、昨年から今か今かと待たれており、年末になって、現在は、セーヌ・サン・ドニで試験的に該当者に毎月50ユーロを6ヶ月間配り、その効果を検討中というような話も伝わってきていましたが、2024年までは配布されないということだけは発表されていました。

 それが、年明け、経済・財務・産業・デジタル大臣が、テレビ番組「ディマンシュ・アン・ポリティク」でのインタビューに答える形で、マクロン大統領が選挙中に公約したフードバウチャーを取りやめることを発表しました。

 これまでこのフードバウチャーに関しては、インフレ危機のさなか、低所得世帯が食品価格の高騰にうまく対処できるようにするためとされ、同時に環境問題や国内製品需要を考慮するものでもあり、低所得者層が新鮮な地場産品を購入できるよう支援することを目的とした資金援助がなされてきました。

 数度にわたり、その方法や条件が見直されている間に、その制度の複雑さに直面し、低所得世帯を支援する食糧援助団体やフードバンクへの6,000万の基金などに切り替える方向に進め、フードバウチャーは正しいやり方ではないと指摘しています。

 同時に、彼は、2024年には一部の食品価格が下落することに自信を持っていると述べ、「特定の価格は確実に下落するだろう」と明言しています。

 そして、「私の責任は、できるだけ多くの製品の価格を下げることです。単に価格を安定させるだけでなく、バ​​ター、油、一部の肉などの価格を確実に引き下げることになります」と彼は断言しています。

 値下げはともかくとして、フードバウチャーのとりやめが、どんな反発を呼ぶかは、今のところわかりませんが、この大臣、話し方も整然としていて、明瞭簡潔で、威圧的な感じもなく、どこか上品で政治家らしいギラギラした感じがなくて、他の人が言ったら、大変なことになりそうなところをサラッと受け入れられてしまうようなところがあるように感じるのですが、聞く人が聞いたら、やっぱり怒り狂うのでしょうか?

 しかし、価格の引き下げ対象になっているのが、「バター、油、肉・・」と、あまり健康的ではない感じの食料が並んでいるのは、どうにもいただけない気もするのですが、考えてみれば、フランス人の食卓には、欠かせない食品が選ばれているとも思われます。

 いずれにしても、価格を引き下げてくれるというのは、良い話ではありますが、しかし、彼の説明には、「ただし、元の価格に戻るわけではない・・」という一言が付け加えられており、あんまり期待しないで様子を見たいと思います。


フードバウチャー


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