2023年9月22日金曜日

チャールズ国王のフランス訪問に見るフランスとイギリスの関係

  


 本来ならば、今年3月に予定されていたイギリス国王のフランス公式訪問は、年金改革問題のデモのために、繰り返し延期されていました。

 あの時点でも、本当にギリギリまで、最大限の警備体制をとっているので、問題ないと言っていたものの、チャールズ国王の公式訪問の際に訪問予定にされていたボルドー市庁舎の大扉が燃やされるという事態にまで発展し、マクロン大統領がチャールズ国王と直接電話会談し、ほぼドタキャンに近いかたちで、延期されたのでした。

 今回のチャールズ国王のフランス公式訪問は、即位後の初の海外公式訪問として、また、ブレグジット後、初のフランス訪問として、イギリスとフランスの外交の象徴として、位置付けられていたものが、フランスの社会情勢のために延期という、まことに縁起の悪い感じもしたものです。

 フランス人はイギリス王室の話題が大好きで、自国の王室は崩壊しているためもあるのか?なにかにつけて、スキャンダラスな話題も多いイギリス王室に、フランスのマスコミもまるで自国のことのように大騒ぎするのも不思議な感じがします。

 しかし、フランスでは、やはりエリザベス女王やダイアナ妃人気が高く、チャールズ国王がフランスを訪問したとて、そこまで盛り上がるものなのか?と思っていましたが、やはり、マスコミは熱狂的に報道し、また、フランス側の盛大な歓迎ぶりも手伝ってか、大きく扱われています。

 フランスに到着したチャールズ国王夫妻は、レッドカーペットで迎えられ、マクロン大統領夫妻がエスコートしながら、初日は凱旋門の無名戦士の墓を訪れ、シャンゼリゼを下り、150人以上の著名人が招かれたヴェルサイユ宮殿の鏡の間での晩餐会に出席しました。

 このような晩餐会には、比類ない抜群の美しい舞台となるヴェルサイユ宮殿、しかも鏡の間は、華麗なる晩餐会そのもので、この類の晩餐会の中でも、群を抜いて煌びやかな豪華さを演出します。晩餐会には、フランスのVIPだけでなく、ミックジャガーや俳優のヒュー・グラント、作家のケン・フォレットなども招かれていました。

 気になる晩餐会のメニューは、スターター、メインともに、ミシュランの三ツ星シェフの二人が担当し、ブルーロブスター、ブレス鶏の他、デザートにはピエールエルメが腕を振るい、イギリス国王にちなんだ30ヶ月もののコンテを含む3種類のチーズが選ばれ、ワインは1本800ユーロ以上という噂まで飛び交っています。

 このチャールズ国王の遇し方を見ていると、フランスがイギリスをどのように位置づけているのかが見えるような気がしますが、この豪華な晩餐会と同時に、訪問先で、親しくフランスの一般市民とも触れ合う姿が見られたり、上院議会でスピーチを含め、少なからず政治的と思われる発言をしたりと、開かれた新しい王室を演出しようとしている向きも見られました。

 このチャールズ国王のフランス訪問の日程は、イギリス王室とフランス側が当初に予定していたものと、大きくは変更がなかったそうですが、フランスは、超VIP待遇でお迎えすると同時に親しみのある王室アピールの意を汲んで、訪問先を選び、その場を盛り上げることに協力していたのだということがわかります。

 お二人ともがご高齢にもかかわらず、日程はぎっしりで、それこそピンからキリまで・・、シャネルの工房から、サンドニでフランスのオリンピック選手と、そしてブリジットマクロンとピンポンをするなど、概ね暖かい雰囲気を醸し出していました。

 マクロン大統領は晩餐会のスピーチで「チャールズ国王のフランス訪問は我が国の過去への賛辞であり、未来への保証であり、私たちはこれからも私たちの大陸の未来の一部を一緒に描き続ける」と述べ、チャールズ国王は、「21世紀の課題に対処できるよう、友好関係を再活性化するのは我々次第だ」とフランス語でスピーチしました。

 このチャールズ国王のフランス訪問が他の諸外国でどのように報道されているのかは、わかりませんが、ここぞとばかりに華やかなフランスをアピールしていると思われる向きもあり、また、同時に懸命にエリザベス女王とは違う王室アピールをしようとしているチャールズ国王に、お互いの親しい友好関係を示しつつも、それぞれの目的を遂行しているような感じも受けました。

 この豪華すぎる晩餐会には、一部、生活に貧窮している学生なども多いのに、こんなことが必要なのか?などという声がないではありませんが、多くのジャーナリストなどは、そこまで言う?と思うほど、チャールズ国王のフランス語を褒めちぎったり、大いに持ち上げるような発言に、微妙な気もしました。


チャールズ国王フランス訪問


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2023年9月21日木曜日

いじめ・嫌がらせをしていた14歳の少年 授業中に手錠をかけられ逮捕

  


 学校でのいじめ問題が深刻化し、新年度が始まる前に、「いじめ問題が確認された場合には、いじめられた被害者ではなく、加害者を退学、あるいは、転校させる」という措置をとるという国家レベルの法律を制定したフランスですが、事は、そんなに簡単に解決するわけもなく、新年度早々に、いじめを苦に自殺してしまった少年がいたことが報じられていました。

 実際には、いじめられている、嫌がらせを受けている側の子の方が学校から遠ざかる傾向があるのは、当然のこと、しかし、現在は、学校に来る来ないだけでは、いじめや嫌がらせがやむことはなく、SNS上での嫌がらせを続けて拡散する手段は、被害者をさらに追い詰めることになっているのが現状のようです。

 この新しい法律は、学校側の取るべき態度としての確固とした基準という意味では、有効ではありますが、実際に、9月早々に自殺してしまった子供の両親からの話では、何度も学校と話し合いを続けたが、充分な対策をとってはくれず、警察に訴えても、訴えを受け付けてもらえなかったなどという実情が暴かれ、この問題の道のりの長さを物語っているような気がしていました。

 ところが、今度は、パリ近郊の中学校で、いじめ、嫌がらせをしていたとされる少年が授業中に逮捕されたという衝撃的な事件が浮上してきています。

 この少年は、インスタグラム上でトランスジェンダーの少女にトランスフォビア的な発言や殺害の脅迫(かなり過激な内容)などを繰り返していた容疑で、いじめの被害者の少女の父親が通報し、かなり強く訴え出たことから、警察が動き出したと言われています。

 警察への拘留後、この少年は、容疑の事実を認めていますが、問題になっているのは、この警察が授業中に学校に押し寄せ、授業中に少年を逮捕するという、かなり強引なやり方です。

 この学校の責任者は、警察が介入することに同意していたとされていますが、授業中に突然、大勢の警察官が侵入してきて、容疑者の名前を呼び、「深刻な嫌がらせと殺害の脅迫で逮捕する」と述べ、少年の腕を掴み、手錠をかけたとクラスメイトの学生が証言しています。

 想像するだけでも、かなりの衝撃的な場面にその後は授業にならなかったと言われていますが、これは、ある種の見せしめ的な意味があったのではないか?と思うのです。この少年に対する容疑を考えれば、何も学校で、しかも授業中に逮捕する必要はなく、家におしかけてもよかったわけだし、また、登校時、下校時などのタイミングでもよかったはずなのです。

 それをわざわざ、授業中におしかけて、他の生徒の目の前で手錠をかけるようなことをするのは、多分に、嫌がらせをすれば、このような目に遭うという警告の意味があったとしか思えないのです。

 警察が学校に介入することに同意していたとはいえ、授業中に手錠をかけて逮捕するという具体的なことまでは把握していなかった模様で、学校側は警察に対し状況の説明を求めていると言われていますが、これには、なんと政府報道官が説明に応じており、「この逮捕は検察と教育チームの合意のもとに行われたものであり、これが私たちが嫌がらせの惨状に対処する方法であり、これが私たちが子供たちを守る方法でもある」と毅然とした態度で回答しています。

 いじめには、直接関与していないにしても、それを容認するという集団心理も加わる性質が多分にあると思われるため、かなり荒療治ではあるものの、これくらいの対応が必要なのではないかと思ってしまいます。

 また、今回のケースもそうですが、最近は、いじめの対象となるのは、同時にLGBT問題であるケースも多く、問題をさらに複雑にしています。


いじめ加害者少年 授業中に逮捕


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2023年9月20日水曜日

日本の失われた30年に思うこと

  


 最近、よく日本のメディアでは「失われた30年」という言葉をよく目にするようになった気がしますが、正直、この30年は、はからずも、私が日本を出て、海外生活を始めて現在に至るまでの期間とまるかぶりしていることに、複雑な思いがしています。

 フランスで暮らすようになって、30年は経っていませんが、その前にアフリカにいた期間などを加えると、ほぼほぼそれに近い年月が経っているわけで、海外にいるからこそ、外から見ている日本、たまに一時帰国する日本、フランスで見る日本のものなどが移り変っていることを感じることもあります。

 それでも、実際にこの間を私は日本で暮らしていたわけではないので、実感として感じているわけではないのですが、たまに見かけるニュースなどでも、よい意味でも悪い意味でも、ついついフランスと比べてしまう癖がついている気がします。

 そう考えてみれば、フランスに来たばかりの頃は、なんでフランスはこうなんだろう?と日本と比べて、腹立たしく怒ることが多く、「まあ、ここはフランスなんだから、仕方ない・・」と思っていたのですが、この30年近くの間に、日本のニュースなどを見るにつけ、また、フランスの様々な社会システムなどの変化に接するにつけ、「フランス人にできて、なぜ?日本人にできない?」と、逆に日本をもどかしく思うことが増えてきた気もします。

 何よりも、私自身がフランスの生活に順応してきたこともあるとは思うのですが、それにしても、最近は、日本の「失われた30年」などという話題に触れて、残念ながら、やっぱりそうだよな・・と思ってしまうのです。

 フランスに来たばかりの頃は、一年に一度、日本に帰るたびに、一年留守にするだけで、まるっきり、日本は景色が変わってしまう・・と驚かされるほど、新しいビルが建ったりしているのに比べて、パリって本当にいつまでたってもちっとも変わらない・・などと思ったりもしていたのですが、ある時期から、日本に一時帰国した折に、「えっ?こんなに年配の方が警備員とか、道路の交通整理などの仕事するようになったの?」などと驚かされるようになったのです。

 また、かつては、電気屋さんなどに行けば、日本人として、ちょっと誇らしくなるほどに日本製品が高価な値段でずら~っと並び、日本製品は、絶対的な信頼を勝ち得ているような感じがあったのですが、いつのまにか、電気屋さんで日本製品を見かけるのは、珍しいことになってしまったし、日本のものでフランスで注目されるのは、日本食か、マンガやアニメ、そしてユニクロくらいでしょうか? 

 日本で物議を醸しているマイナンバーカードや保険証などに関しても、フランスでは、いつの間にか、スムーズにIT化が進み、問題なく進化しています。まさにフランスにできることが、なんで日本では、そんなに揉めているのだろうか?と思ってしまいます。

 正直、フランスでは、日本のことは、よほどのことがない限り、細かいことはニュースにはならないし、そんなに真剣に話題にのぼることはありません。フランスにとっては、周囲のヨーロッパ諸国や、アメリカやロシアなどの方が差し迫った問題なのです。

 それでも、昨日もこちらのニュースで見かけたのは、日本の少子高齢化の問題で、日本は人口の29%が65歳以上で、10人に1人が80歳以上、経済を支え切れずに、900万人の高齢者が働いているなどと伝えています。

 政府に関しては、フランスだって、色々な問題はあるし、暴動にまで発展する事態も少なくありません。しかし、少なくとも、フランス政府には、フランスの将来のためにはどうしていくべきなのか? 特に教育や若者に対しての支援などを模索し、様々な試みをしていることが感じられるし、ある程度の信念が感じられます。

 それに比べて、現在の日本政府は、行き当たりばったりで、その場その場で周囲にいい顔をしつつ、すでに、ある程度、上り詰めた人々が利権を守るためにやっているとしか思えないことが多いような気がします。

 もう外から見ていても、ため息しか出ない感じで、以前は、老後は日本に帰ろうと言っていた日本人カップルなども、やっぱりやめた・・などと言っている人が増えているという話も聞きます。

 月日が経つのは早く、あっという間に時は過ぎていきますが、とはいえ、30年といえば、決して短くない時間です。

 しかし、今の日本の状態を見ていて、私は、母の病気のことを思い出します。母は、拡張型心筋症という病気で、発症から10年ほどで、亡くなりましたが、その後、母が亡くなった病院で後学のために、解剖を求められました。心臓病は遺伝という要因も多いに考えられるために、お母さまの病気について、深く解明することは家族にとっても必要だと言われて、解剖をお願いして、その結果を聞いて驚いたときのことを思い出すのです。

 心臓病は、わかりやすい病気ではないので、その辛さは周囲にはわかりにくいために、一体、どの程度、悪化しているのか、それこそ開けてみなければ、わからなかったわけですが、解剖の結果、母の心臓は、正常な状態の数倍にもなっていて、おそらく、健康な状態から、急にこの状態になったらば、窒息するような苦しみだっただろうとのことで、お母さまは、10年かけて、少しずつ悪化(心臓が肥大)していったので、苦しさにも少しずつ慣れておられたのだろう・・と聞いて、母の苦しさを理解できていなかったことを本当に心苦しく思ったものでした。

 今、失われた30年などと言われている日本も、まさに日本に住み、日本で生活していれば、それこそ、悪く言えば、苦しさに慣れてしまって、本当は窒息しそうな苦しみなのではないか?とも思うのです。

 しかし、実際には日本は依然として、フランスよりもはるかに優れている面もたくさんあるわけで、フランスでの日本のイメージは、決して悪くはないどころか、他のアジアの国とは一線を画している上質なイメージが根付いていることも事実で、特に歴史に根付いた日本の自然や文化には、憧憬の念があることは、日本にとっての大変な財産であり続けています。

 日本の文化遺産や、食文化、そして近代的な清潔な街、礼儀正しさ、そして、若者に人気のマンガやアニメなどは、少なくとも、日本がこの30年間に失わずにいたものには、しっかり注目していてくれることは、ありがたいことです。


失われた30年


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2023年9月19日火曜日

やっぱり美味しかったマドレーヌ Le Comptoir ル・コントワール Ritz Paris

  


 前々から、「ここのマドレーヌは美味しい・・」という噂は聞いていました。しかし、わざわざ出向くほどに、特にマドレーヌが好きというわけでもなく、「Ritz(リッツ)でしょ!そりゃ、美味しいでしょ!それなりのお値段だろうし・・」と思っていました。

 まあ、機会があればね・・くらいに思っていたのですが、たまたま、何なのか?市内が異常に警戒態勢が敷かれていて、通ろうと思っていた道が閉鎖されていて、迂回しなければならなかったりして、たまたま近くを通りかかることになり、「そういえば、あのマドレーヌのお店(実際には、別にマドレーヌだけのお店ではない)、この辺だったかも??」と思いついたら、まさに、その通り沿いだったので、お店を覗いてみることにしたのです。

 お店のウィンドーには、まさに山積みのマドレーヌのオブジェが飾られていて、あ~ここだここだ・・と思って店内に入ると、甘い香りが・・。

 そんなに広くはない店内ではありますが、一応、イートインができるスペースもあって、お菓子が並んでいるケースの前には、行列ができていました。(といっても、セドリック・グロレのようなお店の外まで行列ができて、延々と並ぶ・・というような行列ではありません)


 マドレーヌがお目当てのお客さんが多いとはいえ、それ以外のケーキもしっかり売れています。しかし、まさに、もう拝むという表現がふさわしいようなケーキのお値段は、1個16ユーロ(約2,500円)とか18ユーロ(約2,800円)、少し大きめのものだったりすると、20ユーロを超えるお値段・・もはや、なんだか、国が違うというか通貨が違うのかと勘違いして、金銭感覚がちょっと麻痺してしまうような感じ・・一緒に並んでいるマドレーヌ(1個3.5ユーロ)(約550円)が安く感じてしまうから、おかしなものです。


この写真だと大きく見えるけど、ふつうのケーキの大きさです


 そもそも、マドレーヌは、フランス人にとっては、ほんとうに身近なお菓子のひとつで、スーパーマーケットなどで袋入りで市販されているものでも相当な種類があり、大手のスーパーマーケットではそれぞれが自社ブランドの製品を出しているくらいポピュラーなお手軽なお菓子。そんな一般庶民(私も含めて)が食べるマドレーヌ一袋(5~6個入り)は、ここのマドレーヌ1個のお値段か、それ以下です。

 


 マドレーヌも色とりどり、ナチュール、ショコラ、レモン、キャラメル、フランボワーズ、ピスタッシュ(これだけ1個5ユーロ)、パッションフルーツなどがありますが、たかがマドレーヌに3.5ユーロはやっぱり高い・・。

 しかし、せっかく来たのだから、まあ、ちょっとくらい食べてみたいな・・まあ、まずは基本・・とオリジナル(ナチュール)のマドレーヌ一つだけを買って帰りました。

 そもそも、どうしても、「たかがマドレーヌ・・」という気分が私の中には、あるせいか、どんなに高級なマドレーヌと言ったって、たかがしれている・・と思っていたので、そんなに期待もしていなかったのです。

 でも、値段が値段の高級マドレーヌ、一度で食べてしまうのはもったいないとせこい考えを起こして、半分にして、ひとくちパクッと食べたときの意外な驚き!「えっ?ふつうのマドレーヌと全然ちがう!」。

 そもそも、こんなに高いマドレーヌを買っておいて、期待していないのもおかしい話なのですが、どうせ、大したことない・・と思っていたものが、一口食べて、予想を超えた時に感動することは、そんなにあることではありません。

 思わず、目を大きく開いて宙を見つめてしまう感じです。

 何より、生地がなめらかで、上質なことに疑いの余地はなく、軽くて、やさしい味の今まで食べたことのないマドレーヌでした。

 こうなってくると、他のものにも期待できそうで、細長いクロワッサンやパンオショコラなども買ってくればよかったと悔やまれ、後日、買いにいったときには、すでに売り切れ。



 仕方なく、ショコラとキャラメルのマドレーヌを買って帰りましたが、これらは、中にクリームが入っていて、また、そのクリームが甘すぎず、キャラメルの方などは、キャラメルとはいえ、爽やかな味わいのキャラメルでこれまた別の感動でした。





 頼めば、お土産用に箱詰めしてくれるので、日本へのお土産にすることも可能です。

 ホテル・リッツの方は、ちょっと入りづらい、敷居の高い感じがしないでもありませんが、こちらのパティスリーは、それほど臆することなく入れる感じです。

 まあ、ホテルリッツに泊まることを考えれば、その一辺を味わえるとしたら、まあまあ納得できないこともありませんが、それにしても、この高級スイーツの値段の高騰ぶり、そしてまた、これらが飛ぶように売れているのも不思議な現象だなとも思います。


Ritz Paris Le Comtoir  ル・コントワール 

38 Rue Cambon 75001 Paris 

8:00~19:00 日休


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2023年9月18日月曜日

言ってはいけない言葉

  


 夫が亡くなってしまったとき、突然のことだったし、まったく予想にさえしていなかったdできことに、みっともないことに、私は、少なからず取り乱し、落ち込み、途方に暮れて、あの頃のことは、思い出すのも怖いくらい、一日、一日をどう過ごしていたのか? はっきり思い出せないことと、やけに鮮明に覚えていることとが混ざりあっています。

 私は、胃に蓋がされたかのように、全く空腹というものを感じなくなり、食べられなくなり、眠れなくなりました。家中に何も変わらずそのままに残っている夫の洋服や靴、その他、買い物好きの彼が世界中で買い集めた奇妙な骨董品のようなものなどに囲まれて、ことあるごとに夫を思い出しては、涙があふれてくるのをとめられず、眠れない夜でありながら、このまま夜が明けなければいいのになどと思ったりもしました。

 私のそんな状態とは裏腹に、当時まだ10歳だった娘は、激しく感情を乱す様子もなく、葬儀が終わってすぐに、学校生活に戻り、私も仕事に復帰しました。

 夫のいない家にいるよりも職場や学校の空間にいた方が気が紛れて助かったということもありましたが、やはり、娘のことは、それはそれは心配で、学校に復帰した娘を迎えに行ったときは、再び、無事に学校生活に彼女が戻れたかどうか、どきどきして、先生に娘の様子を尋ねたりもしました。

 彼女の行っていた学校では、夫が亡くなってすぐに、病院から娘を迎えに行き、普段は保護者たりとも学校に立ち入れないところを事情を説明して学校に入れてもらい、彼女のいる教室に授業中にもかかわらず、急に入って行って娘を連れ帰ったこともあり、あっという間に夫の亡くなったことは学校中に知れ渡ることになり、その後は、学校のディレクトリスから直接電話をもらったり、葬儀が終わるまでの間、学校を休んでいた彼女に同級生のお友達のパパやママたちが子供を連れて、学校の授業に遅れないようにと、ノートを届けてくれたり、学校がお休みの水曜日には、自分たちの子供と一緒に預かってくれたりと、これからも学校生活が送れるように一致団結して助けてくれました。

 しかし、人から助けてもらうばかりで、自分は他の人のために何もできないことは、それはそれで、辛いことでもありました。

 最初は特に、もう一日一日を過ごしていくことに必死で、夫の死後の煩わしい手続きに追われながら、精神的にも張りつめていて、また実際にも、これまで夫と手分けしてやっていた様々なことを一人でやってかなければならなくなったため、また、行く先々で、新しい生活環境に変わった事情を説明しなければならなかったりと、生活のリズムを取り戻していくのには、時間もかかりました。

 ことあるごとに涙を流していた私と違って、娘はそのようなことはなかったのが逆に心配なほどで、泣かない娘を心配して、ママ友に相談したりしたこともありました。

 しかし、それからしばらくして、ある日、娘が目に涙をいっぱいにためて、「かわいそうな子だと言われたくない・・」と私に打ち明けてくれたことがありました。

 彼女の言葉に私はハッとさせられて、そんな彼女の気持ちに胸が痛くなったことがありました。「かわいそうに・・」という言葉は、一見、人を傷つける言葉には聞こえないし、暴力的な言葉でもありません。また、ごくごく身内の本当に近い存在の人だったらば、いたわりの言葉にもなりうる言葉でもあるかもしれません。

 しかし、人々が何気に口にしかねない「かわいそうに・・」という言葉は、実は、けっこう人を傷つける言葉ではないかとその時に思いました。実際にかわいそうなことになっていても、かわいそうだと思われたくないのは心情です。

 でも、このことがあって、私は、より、しっかりしていかなければいけないと思ったし、彼女にこれまで以上の愛情を注がなければ・・、そして、今まで以上に色々な経験をさせてあげたいと思ったことも事実だし、また、彼女自身もそんなことを言われないように、彼女なりの努力をしてきたと思います。

 あれから、もう10年以上が経って、おそらく彼女のことをかわいそうだと思う人は、あんまりいないんじゃないかな?と思っています。


言葉 禁句


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2023年9月17日日曜日

欧州連合 TikTok へ3億 4,500万ユーロの罰金

  


 今年の7月の段階で、フランス上院調査委員会は4ヶ月間にわたる調査と専門家、研究者、学者、政治指導者、TikTok側のフランスの代表らとの約30回の公聴会を経て、ソーシャルネットワークの利用と個人データの利用に関する報告書の結論を発表し、TikTokに対して、年齢制限、時間制限、危険なコンテンツについて扱いなどについての要請を行っていることを明らかにしていました。

 この要請は、少なくとも21項目に及ぶもので、この段階で回答があったのは、その20%ほどで、残りの80%に対しては、なんら対策がとられていない状態ということで、一定の猶予期間を設けた後、2024年1月までに、これが改善されない場合はフランスは、TikTokに対して停止措置をとると発表していました。

 そして、その2024年1月を待たずして、問題は、フランスだけでなく、欧州連合全体が問題を追及し、欧州連合は、未成年者のプライバシーに関する欧州データ保護規則 (GDPR) に違反したとして、TikTokに対して、ヨーロッパで過去最高となる3億 4,500 万ユーロの罰金を課すことを発表しています。TikTokはこの罰金を3ヶ月以内に支払わなければならない・・と。

 以前のフランス上院調査委員会の調査の際にも非常に問題視されていたものでもありますが、この中国で誕生したSNSサービスのツールが中国当局との強力な連携の上に成り立つものであり、ユーザーに関する情報がアルゴリズムファイリングを通じて全て中国当局に収集されていることに対する懸念でもあります。

 欧州連合全体で1億3,400万人のユーザーを抱えているTikTokに回収されるデータ量は、膨大なものであり、特に未成年のユーザーも多く、今回の違反(罰金対象)とされているのは、親の TikTok アカウントをティーンエイジャーの TikTok アカウントにリンクできる「家族接続」モードに関連したものであると言われています。

 TikTok の広報は、「今回の決定、特に課せられる罰金の金額には同意しかねる」と異を唱え、次のステップを検討中であると回答しています。

 他の欧州連合の国々、ひとつひとつの対応はわかりませんが、少なくともTikTokは、この欧州全体の違反通告、罰金措置とともに、フランスからの改善要請と警告(年内までに改善されない場合は、フランス国内ではTikTokは停止)を受けているわけで、TikTok側が言っている次のステップは、どういうことなのかはわかりませんが、どちらに対しても、彼らがあっさりと要請を受け入れないことだけはたしかなようです。

 と同時にこのような問題があるたびに、日本人の私としては、フランスや欧州全体がこれだけ警戒しているTikTokというツールに対して、日本はなんらかの対策をとっているのだろうか?と少々心配になります。

 彼らが収集しているデータは、ヨーロッパからだけというわけではなく、どこの国からも同様に収集しているわけで、日本だけが例外ということはないのです。

 TikTokが未成年者のデータの処理を理由に罰金を課せられたのは、これが初めてではなく、 2019年にアメリカで570万ドル、2021年にオランダで75万ユーロ、イギリスで昨年4月に1,270万ポンドの罰金を課せられています。

 つまり、この程度の罰金では、まったく懲りずにいるということなのです。


TikTok 罰金


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2023年9月16日土曜日

新年度の始まりとともに、急激に増加しているコロナウィルス感染

  


 フランス公衆衛生局は、ここ1週間で急激にコロナウィルス感染者が増加していることを警告しています。

 もう、また~~?と言いたくなるところですが、救急医療が処置したコロナウィルス患者数は、8月最終週からの1週間では、3,488件、9月に入り、4日から11日の間に4,067件に増加しました。その前まではわずか7%増でしたが、1週間で17%増となり、その後は22%増と3週間連続で上昇傾向が続いています。

 この傾向は、学校に戻って最初の 1 週間の子供たちに特に顕著にみられる傾向であり、大人ではわずか 12% であったのに対し、子供では 58% 増加しています。過去の感染の経過を参考にするならば、子供が学校で感染してきたウィルスが家庭内に広まり、今度は大人に感染が拡大し始めるというこれまでの実績を考えれば、これからさらに2週間後くらいになると、本格的に感染が拡大してしまうことになりかねません。

 これにつれて、救急外来の受診も増加しており、救急患者の数は30%増と堅調に?増加しており、救急患者の約3分の1が入院措置になっているそうです。

 ただし、体調を崩して救急外来に訪れる人々の多くは、もはやコロナウィルスを疑うことはなく、風邪をひいた・・と言ってやってくるそうで、たいていの場合はドリプラン(パラセタモール)を飲んで、2~3日安静にしていればよい程度のもので、このような人々のことを、一部ではコビデットと呼んでいるそうです。

 しかし、今回の感染拡大も依然として、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人々にとっては、深刻なケースに陥る危険があり、フランス公衆衛生局は、10月17日から予定していたワクチン接種キャンペーンを10月2日に前倒しすることを発表しています。

 今年のワクチン接種には、欧州規制当局によって承認された新変異種XBB.1.5 対応のファイザーの新しい適応ワクチンが使用される模様です。

 また、フランス公衆衛生局は感染後重症化リスクの高い人に関しては特に症状が出た場合は早期の検査を推奨しています。 なぜなら、早期の段階ならば、感染が悪化しないための抗ウイルス薬(ファイザー社のパックスロビッド)を処方できる可能性があるからということです。

 喉元過ぎれば・・ではありませんが、すっかり、日常生活に戻っている今、ワクチン接種をするかどうかは、これまですでに数度にわたり、ワクチン接種をしてきた時と違って、なんとなく、またさらに続けて大丈夫だろうか?という抵抗もあり、また、差し迫って、危険を感じていないことから、さらにハードルが上がったような気もします。

 研究によると、欧州では、ほぼ全人口が感染歴があることが示されており、また、感染によって、ある程度は免疫を獲得し、守られていると考えることもでき、また、同時にファイザーとモデルナのメッセンジャーRNAワクチンには、特に若い男性において心筋炎(心筋の炎症)のリスクがあることが報告されていることから、無差別にワクチン接種を行うことは避け、フランス、ドイツ、イギリスでは、リスクのあるグループにのみ毎年追加免疫を行うことを推奨するという体制を固めつつあると言われています。

 気温が下がってくるとウィルスが活発になることから、秋以降は感染が増加することは、必須なのでしょうが、とりあえずは、こまめに手を洗うこと、うがいをすることなどの日本人ならば、決して特別ではない地道なことが大事かな?くらいに思っています。

 どのみち、ワクチン接種キャンペーンは10月以降、ワクチン接種に関しては、かかりつけのお医者さんとも相談して、決めようと思います。


コロナウィルス感染急増


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