2023年6月29日木曜日

燃え上がる警察への怒り 燃える炎は全国に飛び火

 


 警察官が服従拒否をした青年を射殺した事件に多くの人が怒りの感情を燃え上がらせ、本当にたくさんの車やバスが燃やされたりして、暴動のようになっています。

 事件の起こった当日の夜、事件現場となったナンテールの街は、手が付けられないほどに、多くの若者たちが街に出て車を燃やし、爆竹をばらまき、大荒れに荒れ、1,200人の警察官が出動する大騒動になりました。

 翌日のナンテールの街は厳戒態勢が敷かれ、前日に燃やされた車などの撤去作業とともに、2,000人の警察官が動員され、前日のような事態が起こることを警戒して、備えていましたが、この警戒体制が功を奏したのか、ナンテールでは、前日ほどの暴動には至りませんでした。

 しかし、この警察に対する怒りと抗議は、トゥールーズ、リヨン、リールなどなど、遠く離れた地域にまで飛び火し、それぞれの地で車が燃やされたり、ゴミ箱が燃やされたり、場所によっては、バスが燃やされたり、全国的な怒りに拡大しています。


 この青年を射殺した警察官(38歳男性)は、身柄を拘束されていますが、通常、24時間の拘束が48時間に延長されたそうです。しかし、この騒ぎでは、身の安全のためにも警察に拘束されていた方がよいのかもしれません。

 この事件を受けて、マクロン大統領もインタビューで、「若者の死を正当化できるものは何もない。言い訳ができるものではなく、許しがたい行為」と答えています。


 また、フランスの大人気サッカープレイヤーのムバッペ選手なども、この事件について、「僕のフランスが悲しい、受け入れがたい事件」とツイートしています。

 警察官が拳銃を発砲するのは、あくまでも非常手段の場合のみなはずで、撮影されていた複数の映像からは、一度、車を停車させて、押し問答している段階から、警察官は青年を拳銃で威嚇しています。

 青年が何らかの武器を携帯していたのならばともかくも、彼は武器を持ってはいませんでした。この車には、運転手の他、2名が同乗しており、1人は、逃走していますが、もう1人は事故後に身柄を拘束されているので、その際の警察官とのやり取りを間近で聞いていた目撃者でもありますが、この同乗者からの証言はかなり、重要な証言になりそうです。

 この事件への怒りがフランス全土に飛び火して、燃え上がるのも、治安の悪化により、警察との摩擦が増加していることもあるとは思いますが、射殺されるまでには至っていなくても、警察官の威圧的な態勢を多くの人々が体験したことがあるからだという人までいます。

 2022年には路上検問の際に服従しなかったために起きた警察官による射殺事件が13件も起こっていたことが明らかになりました。これは路上検問の際の服従拒否による射殺事件で、その他の事件は含まれていません。

 最初は服従拒否だけで射殺?と驚いていましたが、最近、時々、聞くな・・くらいに増えたような気がしていたのは、やっぱり異常なことです。

 この怒りを燃え上がらせ、車やバスを燃やして、ホンモノの炎を燃え上がらせる行為は間違っていると思いますが、警察官の拳銃の取り扱い方にも、明らかに問題はあると思います。

 せめて、100歩譲って、状況的に発砲が不可欠であったとしても、せめて発砲の際には、急所を外す訓練をするべきだと思います。

 これでは、死刑制度のある国を非難する一方で、裁判なしでの事実上の死刑を執行しているようなもの。しかも検問の際の服従拒否で・・。



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2023年6月28日水曜日

服従拒否で警察官発砲 17歳の青年死亡の後、警察官のウソがばれた・・

  

警察への抗議で街が荒れに荒れる様子


 ここ1~2年、警察官の発砲事件がすごく増えた気がします。警察官の発砲事件の全てが公になっているわけでもないと思うので、特にとりあげられているのは、被害者が死亡した場合の、それも一部のことだと思いますが、今回の事件は、特に発砲した警察官が虚偽の報告をあげていたことが、発覚してから、さらに騒ぎが大きくなっています。

 事件は、午前8時半頃の通勤時間帯のナンテール(オー・ド・セーヌ県)(パリ近郊)RERナンテール・プリフェクチュール駅付近でおこりました。

 事件直後の警察の説明によれば、「車両確認のために2人の警察官が車を停車させたものの、彼は警察官の命令に従わずに無理に車を発車させ、警察官の1人が轢かれそうになったために、もう1人の警察官が発砲した」つまり、発砲時に車は警察官に突っ込もうとしていたと説明。

 また、「運転手は複数の交通違反を起こしている人物であった」ことを付け加えています。

 しかし、その後、すぐに、防犯カメラや、警察官が車両を停めている様子などの模様を撮影していた複数の動画がSNSで次々に拡散され、この警察の説明がウソであったことが明らかになって、騒ぎは一層、大きくなりました。


 動画を見ると、2人の警察官が黄色い車を停車させている様子が映っています。 警察官の1人はフロントガラスにもたれて立っており、ピストルで運転手を狙っています。 運転手が車を再発車させると、警察官は車両の側面の至近距離から発砲しています。車が発車するタイミングと銃声は、ほぼ同時で、2人の警察官はどう考えても、車に轢かれそうな位置に立ってはいません。

 銃声のタイミングからも、かなりの至近距離で運転手が撃たれていることは明白で、銃弾は青年の胸に的中していました。


 そうでなくとも、被害者の青年は未成年、警察官の発砲により殺されたとなれば、物議を醸すところ、警察官の報告が虚偽の報告であったという証拠?の映像があっという間に、拡散されて、「たしかに服従拒否は違法ではあるが、それは死刑に値するものではない!」とか、「警察はこうして、殺人を正当化してきたのか?」など、政治家まで巻き込んでの大論争を引き起こしています。

 そして、この事件を受けて、警察への抗議の声が高まり、ナンテールの街は、ゴミ箱が燃やされ、車が燃やされ、爆竹がなり、黒煙があがり、騒ぎは夜まで続きました。

 ナンテール検察庁は、被害者となった運転手に対しての公権力を持った人物への服従拒否と殺人未遂の疑いで捜査を開始、そして、発砲した警察官に対しては、公権力を有する人物による意図的な殺人事件として捜査を開始しました。

 また、当然のことながら、被害者家族の怒りは激しく、この被害者側の弁護士は、3件の告訴状を提出したことを発表しています。1件目は、「警察官による故意の殺人」、2件目は、「同僚(加害者警察官と行動していた警察官)に対する殺人共犯」、そして3件目は「公の文書における虚偽」の3件についてです。

 どんな事件においても、そもそもの罪だけよりも、ウソがばれた時の叩かれ様は、火に油を注ぐ勢いになるのは、自明の理です。


 しかし、このような騒ぎになって、警察への怒りで街のあちこちが燃え上がっているときも、やはり、警察官は、この車での服従拒否に使われた拳銃よりも、さらに大きい銃を構えて警備している様子には、何の救いも感じられないのです。


警察官発砲17歳青年死亡


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2023年6月27日火曜日

麻薬及び薬物使用に課せられる罰金65%が未回収の現状 徴収はその場で現金かカード払いへ

  

 

 マクロン大統領が仏紙のインタビューで、麻薬や薬物使用に対する罰金の回収率の低さを嘆き、「夏の終わりに向けて法令を整備しなおし、即時、現金かクレジットカードで支払うことを求めるように準備を開始している」と話したことが話題になっています。

 フランスはヨーロッパ最大の麻薬消費国と言われていますが、もはや、この麻薬が違法であるという認識がフランス人には薄いのではないかと思います。

 現在、これらの罰金に対して、実際に回収できているのは、わずか35%ほどなのだそうで、逆に言えば、65%の人は払っていないということになります。

 なかなかな割合です。

 なぜ、こんなことになっているのかというと、この罰金回収の手続きから、実際の徴収までの手続きが煩雑で、時間がかかり過ぎていることが原因の一端であると見られ、手続きを簡素化し、警察がその場で罰金を徴収する権限を持つということになります。

 そうなったらなったで、この警察を装った詐欺師などが出没しそうな気もしますが、まずは、この罰金を支払わせるということを優先にするということだと思います。しかし、これには、当の取り締まりを行う警察官組合(SGP)(や裁判官)は納得していないという声もあがっています。

 フランス人はもともとルールを守らないという印象があります。罰金といえば、最近で思い浮かぶのは、パンデミックでマスク着用が義務化されたときのマスク不着用の場合の135ユーロの罰金135でしたが、これに関しては、あまり回収できなかったという話を聞かなかったので、必ずしも全ての人が罰金を支払わないというわけでもないのだとは思います。

 私には麻薬や薬物をやっている知り合いがいないので、それがどのような人々なのかはわかりませんが、おそらく、これらの人々の間では、「払わなくても逃げ切れる・・」というあたまがあるのではないかと思われます。実際に65%の人は払っていないのですから・・。

 また、この罰金についてのフランス政府のサイトを見てみると、最初に「薬物使用のリスクは?」というタイトルから、健康面の実害等が書いてあるのかと思いきや、「大麻、エクスタシー、コカイン、LSD... は犯罪です。法律で禁止されている行為であり、薬物の種類、量、加害者の犯罪歴などの状況に応じて異なる罰則が課せられ、懲役刑および罰金、または定額の罰金で処罰される場合があります」とあります。

 リスクは罰則、罰金というのも、なんだかしっくりこない気がしないでもありませんが、ダイレクトな感じもします。

 また、現行では、麻薬・薬物に対しての罰金は、定額200ユーロということになっており、15日以内に支払われた場合は、150ユーロ、逆に45日以内に支払われない場合は、450ユーロに増額されるとなっています。

 早く支払えば、減額され、滞納?すれば450ユーロに跳ね上がるということになっていても、支払われていないということは、これがあるから、早く払わなければ・・というふうにはなっておらず、ハナから支払うつもりがないということで、この減額、増額システムは、あまり機能していないことになります。

 だからこそ、取り逃がしのないように、その場で現金なり、クレジットカード払いででも取り立てができるようにするのでしょうが、すでにそのための決済端末5,000台は発注済なのだそうです。

 この罰金の取り立てについては、一部の政治家たちからは、「法廷の混雑」を回避する「麻薬使用犯罪に対するより効果的な対応」として賞賛されていますが、フランス薬物・薬物中毒監視局(OFDT)は「経済的ペナルティのこの力関係の増大は、個別の健康面での対策に損害を与えている」と複雑な見解も示しています。 

 マクロン大統領は、この話を「マルセイユ・アン・グランド」計画の一環としてマルセイユを訪問する前にこの計画を公にしています。(マルセイユでは、この罰金徴収率35%をさらに下回っている)

 マクロン大統領はこのインタビューの中で、「利用者がいる限り、麻薬密売を嘆くわけにはいかない」、「娯楽だと思って麻薬や薬物を使用する手段を持っている人々は、自分たちがネットワークを育て、麻薬密売を行っていることを理解する必要がある。結果的には密売組織との事実上の共謀だ」と述べています。

 

麻薬・薬物使用罰金 現金 クレジットカード払い


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2023年6月26日月曜日

ずっと食べてみたかったバター Au Bon Beurre オー・ボン・ブール

  


 「エシレバターを超える美味しいバター!」とか、「ボルディエなんて目じゃない!」とか、絶賛する人がいるバターがあって、美味しいものと言えば、食べてみたくなる私は、このバターをずっと探していました。

 そもそも、私は子供の頃はバターというものは、あまり好きではなく、特に嫌いと避けるほどでもないにせよ、パンを食べるときでも、「バターはあってもなくてもいいもの・・」くらいの存在でした。もっとも、私が子供の頃の日本のバターは、今から思えば、そんなに美味しいものでもなかったかもしれません。

 それが、バターが美味しいと思うようになったのは、やはりフランスに来てからのことで、もっとも簡単に美味しいものを・・と思えば、焼き立てのバゲットにエシレバターでもあれば、なかなか満足してしまうほどに、私の中でバターの位置づけは確実にランクアップしました。

 とはいっても、今でも、我が家ではそんなに大量にバターを消費する家ではありませんが、やはり、パンを食べるときには、バターは不可欠になりました。スーパーマーケットに行けば、バターだけでも、かなりのスペースをとっているフランスでは、ごくごくふつうのスーパーでも、常時、数十種類のバターがあります。


ぜ~んぶ、バター


 私はふだんは、このたくさんのバターを食べ比べする・・というほどの情熱はなく、日本でも有名なエシレバターの他にボルディエなども試してみましたが、結局、私にはエシレバターの方が私の好みにはあっているので、これまで、わざわざ別のものに手を出すことはしてきませんでした。

 もっとも、エシレバターは少々、高いので、お料理用には、もう少しお手軽価格のものを使っていますが、そもそも私はあまりバターを使うお料理というものをしないので、そんなには減りません。

 それでも、「このバターを一度食べたら、もう他のバターは食べられない!」などという話を聞けば、「ぜひ、機会があれば一度は食べてみたい!」と思っていたのが、「Au Bon Beuure(オー・ボン・ブール)」というバターで、パリの街を歩いていて、乳製品を扱っているお店があれば、必ず覗いて、そのバターをずっと探していました。

 ラファイエットグルメに行けば、あるかな?と思いつつも、あるかないかもわからないバターだけのために、わざわざラファイエットグルメに行くのもためらわれ、まあ、偶然、見つけたら、嬉しいくらいの感じで、このところずっと、気にかけていたところ、思いがけずに家からわりと近いマルシェにあったのです!




 「灯台下暗しとはまさにこれだわ!」と思いつつも、探して歩いた果てにようやく見つけた喜びは大きく、その日はバゲットもふつうのバゲットではなく、バゲットトラディショナルを買って帰り、このバターをお迎えしました。

 包みを開けると、ふわっと香るバターの香り、色はふつうのバターよりも黄色くて、牛の形のスタンプ?がバターの中央におされています。まず、バターの端っこをちょこっと削って、口に含むと、「味が濃厚・・」というよりも、「とにかく味が濃い・・」ドゥミ・セルという有塩の方を選んだので、すごく細かい塩の粒が時々、舌に触りますが、とても、まろやかで、なめらかです。



 エシレバターがさっぱり感じられるくらい、これは、なかなか濃厚ですが、決して、しつこい感じにならないところが不思議で後味もすっきりしています。

 このバターは、生バターで、長期間の保存ができないので、賞味期限内に食べられるだろうか?と思っていましたが、どうやら、恐ろしいことに、全く問題なさそうです。

 「バターの小さな塊を口に含んで味わいたい・・」、「バターのかけらを口に入れると思わず目を閉じて味わいたくなる」、バターを塗るというよりも「食べたいバター」です。

 これには、圧倒的にバゲットやハード系のパンが合うと思いますが、おかげで、買ってきたバゲットトラディショナルもあっという間になくなり、家にあった食パンを焼いて、このバターをつけて食べたところ、これとて、まずいはずはありません。

 健康のためには、あまりバターはよろしくないと思いつつ、また、危険なものを見つけてしまい、あんなに、あちこち探していたのに、よりによって、このバターを売っていたのが、家の近所のマルシェだったとは・・まるで、これからもこのバターを買うように運命づけられていた?と、嬉しいような、後ろめたいような複雑な気持ちです。

 しかし、美味しいものに出会うことは楽しいことです。

 美味しいものといえば、あっという間に火がつく日本、このバターはどうかな?と思ったら、なんと、楽天やアマゾンでも買えるようです(高いけど・・)。

 すごいな日本の市場!


Au Bon Beurre オー・ボン・ブール


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2023年6月25日日曜日

パリ オリンピック組織委員会本部に汚職疑惑で警察の強制捜査にAFA(汚職防止国家機関)の存在

  

 

 パリ オリンピック開催まで、あと1年余りと近付いてきた今、フランス国家警察がパリオリンピック組織委員会本部に強制捜査に入ったというニュースはなかなかおだやかではありません。

 捜査関係者がAFP(Agence France Presse)に伝えた話によると、検察(PNF)は進行中の2件の別々の捜査に関連して家宅捜索を許可、強制捜査対象はオリンピック組織委員会本部とオリンピック建設現場担当部署だということです。

 検察報道官によると、この捜査は、「違法な利益相反、公的資金の悪用、賄賂」に関するもので、すでに最初の捜査は2017年に始まっています。

 これはオリンピック組織委員会の前身のオリンピック招致委員会の段階からオリンピックに関する有力な意思決定者の署名が入った一連の契約書に端を発しており、すでに今回の強制捜査に入るまでに昨年から極秘裏に捜査が進んでおり、今回は、警察の中でも、その財務部隊であるBRDE(金融警察)が担当しています。

 ということは、お金絡みのなんらかの不正の疑いがかなり濃厚であるということで、スポーツ、オリンピックにまつわる汚職は例外なくついて回る話のようです。

 フランスには、AFA(L’Agence française anticorruption)という汚職防止のための国家機関(2016年制定の法律により制定)が存在しており、企業、政府、地方自治体が実施する汚職防止コンプライアンスメカニズムの現実と有効性を検証できる管理権限を持ち、以前存在していた中央汚職防止局(SCPC)に代わり、その権限が強化されています。

 今回のオリンピック組織委員会の強制捜査についても、このAFAが「信義に影響を与えるリスク」と「利益相反」に関する2つの報告書を提出したことから、検察~金融警察が動いたようです。

 AFA(汚職防止国家機関)によれば、「オリンピックのための買収手続きの一部に、不適切な点があり、正しく管理・監督されていない潜在的な利益相反が随所に存在している」と指摘しています。

 オリンピックのみならず、フランスのスポーツ連盟は、このところスキャンダル続きで、フランス国家オリンピック・スポーツ委員会会長は内部論争?を理由に今年5月に辞任、ランスサッカー連盟の会長は、セクハラおよびパワハラの告発を受けて2月に辞任、元スポーツ大臣でフランスのラグビー監督も、汚職で有罪判決を受け、1月にフランスラグビー連盟会長の職を辞任しています。

 オリンピックが始まる前から金融警察が強制捜査・・とは、始まる前からなに?と思ってしまいそうでもありますが、実のところは、オリンピックは大会が始まる前から大きなお金が動き、その一つ一つに利権が存在するのですから、当然といえば、当然のこと、少なくとも、警察が機能しているという意味においては、健全といえば、健全なのかもしれません。

 しかし、このBRDE(金融警察)というのは、一度、たまたま出くわしたことがありますが、ふつうの警察官とは緊張感が違って、突入に際しては、かなりの大人数のうえ、ライフルを持った警察官まで混ざっていて、威圧感がハンパありません。

 日本にもフランスのAFA(汚職防止国家機関)のような機関があり、それが機能していれば、摘発すべきところは、たくさんありそうなのに・・と思います。


パリ オリンピック組織委員会強制捜査


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2023年6月24日土曜日

ガス爆発事故現場は想像以上に悲惨だった・・

 


 たまたま近くに用があって、「そういえば、あの爆発事故はこの辺りだった!」と思い立って、野次馬根性で事故現場をのぞきに行きました。爆発事故のあった辺りはパンテオンからも遠くなく、近くには、リュクサンブール公園や多くの有名な大学や高等教育機関もある高台の、パリらしい優雅な街並みの中にあります。

 事故からまだ日が経っておらず、事故現場の周囲はかなり広い範囲が立ち入り禁止になっており、ごくごく周辺の住民以外は入ることはできません。



 しかし、パリらしい入り組んだ小路の向こうには、爆発現場となった見るも無残な建物の残骸と焼けただれた壁が見え、あらためて、今回の爆発事故がいかに暴力的なものであったかが、直に目にしてみると、かなり衝撃的です。

 ほぼ、隙間なく立ち並んでいる建物の中にぽっかり空間ができていて、周囲の建物の補強と事故現場に設けられているバリアとが、事故からまだ1日半くらいしかたっていないのに、こんなに出来上がっていることに、驚かされます。しかし、このような補強工事を行ってはいるものの隣接している建物の倒壊の危険は残っているそうです。

 現在のところ、原因はガス漏れという説が強く、地域のガスは全て止められているそうで、さぞかし不便なこととは思いますが、この現場を見れば、この二の舞になることを考えれば、苦情も出そうにありません。

 日常的には、フランスの工事は遅くて、時間がかかり、工事現場などに貼られている施工期間などはあまりあてになるものではなく、たいていは期日どおりに仕上がらないことがふつうなのに、さすがにこのような危機的状況の場合は、昼夜を通して工事が続けられているのか、1日でこれだけ進んだの?と驚きです。

 負傷者数は事故当日には、37名と報じられていましたが、2日経った現在では、負傷者は54名に増えており、また依然として行方不明とされている女性が1人存在しています。彼女はこの爆発事故現場の中にあったアメリカン・アカデミーの教師だそうで、事故が起こった時間にその建物にいたことが確認されていますが、彼女は2日経った現在も発見されていません。

 瓦礫の山を取り除く作業は想像以上に難航している模様で、大変、不謹慎な疑問ではありますが、建物をこれだけ崩壊させる現場に人がいた場合、人間というものはかたちを留めているものなのかなどとも考えてしまいます。

 聞くと見るとは大違いというか、映像で見ていた事故現場も、実際に目の当たりにしてみると、その衝撃度はかなり違います。

 事故の起こったパリ5区の市庁舎には、被災者の精神的なケアーサポートセンターに加えて、被災者の宿泊施設の手配、具体的な法的側面や保険の手続きなどにも寄り添って支援していくことを呼び掛けています。


近所のレストランには来週月曜日には再開しますとの張り紙


 当然のことながら、ごくごく近隣の店舗、レストラン、カフェ等も当面、とりあえず、今週いっぱいは休業とのことで、これもまた大きな損害です。

 現場には、私のような野次馬がけっこうやってきていて、ちょっとあり得ない惨事に皆、呆然としています。

 現場に通じる道は数本あるとはいえ、それほど大通りに面している場所でもなく、これだけの建物が一瞬の爆発により崩壊してしまうということが、どれだけの混乱状態であったか?また、付近の人々がどんなパニック状態で避難したか? それが、どんな恐怖であったのか?を現場を見て、あらためて、痛感させられました。

 まだまだ復興どころか、現場検証すら、手をつけられる状態ではなく、いかに昼夜を徹して作業を行ったとしても、この17世紀後半に建てられたという建物はもと通りになるということはないし、この旧建が立ち並ぶ界隈にどのような建物を建て直すのかは、常に美しいパリの建物を残し、パリの景観を保ち続けることを大事にしているパリ市としても、周辺の建物とのバランスをとって、どんな建物を建てるのかは注目したいです。


パリ5区ガス爆発


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2023年6月23日金曜日

ヨーロッパの地球温暖化は世界の他の地域の2倍の速さで進んでいる

 


 年々、夏の暑さが厳しくなっていることは、身をもって感じています。しかも、夏のような猛暑が始まる時期も、年々、早まってきて5月の後半から6月にかけて、もう真夏並みの気温の上昇が見られ、また、秋が訪れたと思ったら、また夏日になったり、おのずと、暑い期間が長くなっています。(冬もまた気温は高く、昨年は20日連続の10℃超えという暖冬で150年ぶりの記録を更新しています)

 以前は、日本への一時帰国は子供の学校の休みに合わせてということになり、しかも、娘が小学生の頃は、日本の小学校に短期間でも体験入学させたくて、フランスの学校がお休みになってから、日本の学校の夏休みに入るまでのわずかなタイミングを狙っていくことになり、その時期は、日本もちょうど梅雨明けするかしないかの最悪のタイミング(梅雨があけない場合は雨で、梅雨あけした場合は夏の暑さが爆発する時期)、しかも、航空券は一年で一番高い季節と、この時期の日本行きは最悪のタイミングでした。

 娘が小学生だった頃は、逆にフランスの夏は楽勝な感じで、エアコンなしでも全然、乗り切れる感じで、けっこう暑い日があっても、それは数日から、せいぜい1週間程度のことで、それ以外は、夏で暑くなるとはいえ、湿度がないので、日陰に入ればすっと涼しかったり、また、夏のバカンス期間はむしろ、パリの住民がパリからいなくなるため、街中も空いていて、こんな時に日本に行くなんて、なんてバカらしいんだろう・・と思っていました。

 あっという間に過ぎてしまった、この15年くらいを考えると、いったい、いつからこんなにパリの夏が暑くなってしまったんだろうか?と思うと、その変化がかなり急速であったことを思い知らされます。

 最近の世界気象機関(国連の機関)とコペルニクス・ネットワーク(欧州連合の地球観測プログラム)の発表によると、「1980 年代以降、ヨーロッパ大陸では地球温暖化が世界の他の地域の 2 倍の速さで進んでいる」とのことで、わかってはいたものの、あらためて、特にヨーロッパが世界の他の地域の2倍の速さで・・などと言われると、脅威と恐怖を感じます。

 昨年は、6月の段階で、フランス国内で40℃を超える地域が出たり、今年も6月というのに30℃超えの日が10日以上も続く異常な暑さで、6月からこれでは、7月、8月は一体、どうなってしまうんだろうか?と不安がよぎります。

 もう夏に日本に行かなくなって、ずいぶん経つので、長いこと日本の夏を経験していませんが、日本の場合は暑さとともに、飛行機を降りた瞬間に感じる、呼吸を一瞬ためらうような湿度の高さがあります。その代わりにというのもなんですが、日本は清潔でどこに行っても冷房完備で、パリのように「やった!冷房車にあたった!」なんていうこともなく、全線、全車両、冷房完備です。

 フランスの場合、暑くなってくると、問題は暑さだけでなく、たちまち「臭い」の問題も発生してくるわけで、先日も家のアパートのエレベーターに乗ったら、強烈な体臭の人が乗ってきて、「ボンジュール!」と明るく挨拶しつつも、あまりに強烈な臭いが衝撃的で軽いめまいがしたほどです。

 また、地域によっては、街中でさえも臭いが酷い地域もあり、先日、たまたまそんな地域を通って、これは大変な場所だ・・街中の空気中に臭いが漂うというのはただ事ではないわけで、(もちろん、パリ市内といっても場所によりますが・・)以前、弟がパリに来た時に、街中がDUTY FREE SHOPの匂いがする(香水の匂いということらしい・・)と言っていたのを思い出し、香水の匂いの方がどれだけマシか?などと1人思いながら、なんともいえない臭いの中を耐えながら歩いたのでした。

 そもそもフランスで香水が発達したのは、体臭がきついため・・などという話も聞いたことがあるような気がしますが、最近は、香水を使用する人も減ったのかな?などとも思います。

 今では子供の学校のお休みも関係なくなったので、日本に行こうと思えばいつでも構わないのですが、パリも夏が暑くなったからといって、さすがに夏の間を選ぶ理由はまるでなく、航空券に関して言えば、相変わらず高いどころか、以前と比べたら、それこそ2倍近いので、いくら冷房完備とはいえ、日本に行く気にはならないのです。

 しかし、ヨーロッパ大陸の温暖化は、やはり深刻なようで、この暑さが干ばつ、山火事等の災害を引き起こし、昨年は、16,365人が熱波のために死亡しているそうです。

 とはいえ、フランス人は太陽が大好きで、ビーチでもなく、パラソルもない街中の炎天下のテラス席でも食事を楽しめる人々で、私が感じているほどには、この暑さにもへこたれていないような気もします。


ヨーロッパの地球温暖化は世界基準の2倍


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