2022年12月9日金曜日

パリのクラック問題 子供の通学に警察官が同行しなければならない深刻な事態

  


 もはや、定期的に問題が浮上してくるたびに、深刻化している感が否めないパリのクラック(コカインの一種で比較的安価に出回っていることから貧乏人のドラッグとも呼ばれている)問題は、子供の学校の登下校に警察官が同行しなければならない異常な事態を迎えています。

 毎回、毎回、このクラック常用者の溜まり場を解散させて、そのたびに、これだけの逮捕者が出たとか、このクラックキャンプの移動先の住民が反対デモを起こしたりして、押し付け合いが起こり、ごたつくのですが、結局、しばらくすると、他の事件などに紛れて世間には、忘れられていく感じで、根本的に問題は解決しないままに、再び放置されてしまいます。

 それでも、警察が全く諦めているわけではなく、今回は、300人以上が住処にしていたパリ19区のフォルスヴァル広場にあったクラック常用者の溜まり場が内務相の命令によって解体され、10月5日以来、1000人以上(うち216人のディーラー)が逮捕されており、16ヶ所のクラックキッチン(クラック製造所)が閉鎖されています。

 にもかかわらず、これは、もぐら叩きのようなもので、こっちをつぶしても、また別の場所から湧いてくる、現状ではエンドレスな戦いのようでもあります。

 今回、問題となっているのは、18区の一部の地域での子供の通学路に数十名のクラック常用者が酩酊状態でうろついている状態に、彼らの間での抗争に子供が巻き込まれる危険や、子供が見るべきではないドラッグ中毒者の動向がさらされる危険など、ついには、警察官が子供の登下校に同行しなければならない事態に陥っています。

 そもそも、今の季節は、子供の登校時、朝8時頃はまだ薄暗く、しんとした街中を歩いていくのは、厳しいことで、家庭にもよりますが、小学生の場合はだいたい、親が送っていくのが普通なのですが、それでさえもなお、警察官の同行が必要というのは、よほどの事態であると言わざるを得ません。

 回り道をして、他の道を通ろうにも、環状線の近くで、今度は車が多く行き交う地域で他の選択肢がないようなところなのです。

 結局、クラック常用者の溜まり場は、パリの18区、19区、セーヌ・サンドニのあたりで、いつも、たらいまわしになっている感じで、この地域の治安が悪いのは、クラックに限ったことでもないのですが、このクラック問題は、押し付け合いでは解決しないので、根本的なしっかりとした治療を伴う収容施設がなければ、解決しないのではないかと思われます。

 一時は、このクラックのたまり場が、我が家からもそんなに遠くない場所に移動してくるという計画が浮上して、街を挙げての大騒動になり、夜通しで市議会が開かれ、強烈な反対運動のために、あっという間に立ち消えになったことがあって以来、どうにも他人事でもない気もしてきているのです。

 ただ、そもそも、彼らが選んでいる場所というのは、その手の誘いに乗りやすい人も多い、貧因層の多い、もともとが治安が悪い場所で、悪循環が絶ち切れない原因でもあります。

 パリは、現在、2024年のパリオリンピックに向けて、あちこちが工事中で、警察官の数を増やして、治安のよい安全なパリをアピールしたいと言っているのですが、クラック問題のような事態は、建設工事のように計画的には進まず、難航しているようです。

 この18区、19区に隣接するセーヌ・サンドニは、オリンピックのメインスタジアムになる場所でもあり、逆になぜ、こんなに治安の悪い場所をオリンピックのスタジアムに選んだのかとも思いますが、楽観的?に考えれば、この近辺の治安がオリンピックを機に改善してくれればよいのに・・とも思います。

 それにしても、貧因層の人々は、地域が危険だからといって他の場所に転居することもできず、その子供たちは、犯罪を目の当たりにしながら育ち、負のスパイラルから抜けることが難しい境遇で大人になることを思うと暗澹たる気持ちになります。

 パリ警察は、問題が起こるたびに、〇〇人逮捕したとか、24時間常駐し、安全を確保し、必要に応じての逮捕だけでなく立ち退きも行い、住民と地域住民に大いに感謝される目に見える存在を可能にしていると胸を張っているのをもどかしい思いで見ています。

 

パリのクラック問題


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