2022年8月15日月曜日

バイリンガルになった娘の就職

  

日本に行きたいがためにママに公文の宿題を毎日やらされていた頃の娘



 子供ができたとわかった時から、私はなぜか、お腹の中の子供は女の子だと思い込んでいて、産婦人科のお医者さんにエコーで診てもらった結果、「手足の長い女の子ですよ!」と言われて、「やっぱり!・・よかった!」と思いました。

 名前も、フランスにも日本にも、英語圏にもある名前にしようと前から決めていました。正直、私は名前はひらがなでもいいな・・と思っていたのですが、パパが「日本にはせっかく漢字があるんだから、漢字の名前をつけてあげなければ可哀想だ・・」などと言い出し、そうなると、今度は実家の母が「せっかく漢字にするなら、画数のいい字を選んだ方がいい・・」などと名前の画数の本などをわざわざ送ってきてくれたりしたので、検討の結果、かなり画数の多い難しい漢字を選ぶことになりました。

 しかし、私としては、フランスにも日本にも英語圏にもある名前ということで満足していて、将来、娘が国際人になってほしいという思いを込めてつけた名前でした。

 娘が生まれて(アフリカで)すぐにフランスに引っ越してきて、パパはフランス人で生活の基盤はフランスになることから、フランス語に関しては、あまり心配していませんでしたが、とにかく私は娘に日本語がしっかりできるようになってほしいと、彼女が生まれて以来、日本語を教えることに、とにかく一生懸命でした。

 パパがフランス人でママが日本人だったら、自動的にバイリンガルになるわけではないので、私はひたすら娘には日本語だけで話すようにしてきました。せっかくの環境、これを無駄にしてはいけないと思ってきましたが、それは、そんなに簡単なことではありませんでした。しかし、今から思うに私にしては、かなりしつこく日本語教育にはこだわってきました。

 私は単に彼女が日本語を話せるだけでなく、読み書きもしっかりできるようになってほしいと思っていたので、毎晩、寝る前には絵本を読み聞かせ、2歳になってすぐにフランスでの学校が始まる前に(日本語が面倒臭いと感じないように)、公文に通わせ始め、えんぴつの持ち方から公文の先生に教えていただきました。

 教えていただくことも、もちろんのことでしたが、その頃の娘にとってはフランスでは私以外の日本人と接する機会がなかったので、公文に通って、日本人との接点ができるということも大きな役割を果たしてくれていました。

 毎日毎日、学校から帰ると私は食事の支度をしながら公文の宿題を監督し、バタバタと毎日が過ぎていきました。娘が音を上げそうになっても、「公文をやらない子、日本語ができない子は日本には行けないよ・・」と日本行きをちらつかせて、続けさせてきました。

 小学校の頃には夏休みに短期間、日本の小学校の体験入学をさせていただいたこともありました。

 結局、公文は10歳まで続けましたが、その後、パパが亡くなって、私も仕事と、一人で学校の送り迎えとでいっぱいいっぱいで(フランスの場合、小学生まではどこに行くにも送り迎えが必要)、まずは学校が最優先と、公文は一時、諦めていましたが、日本語そのものは諦めたわけではなく、父や叔母などが日本から送ってくれる日本語のテレビ番組などは、常に家で流し続けてきました。

 彼女がバカロレアを取得する年齢になった頃、オプションの科目の一つを日本語にしたいと言い出した時、今度は天理のやっている日本語のクラスに通い始め、1〜2年は通ったでしょうか? その頃になると、彼女はもう自分で勉強ができるようになっていたので、私は、あまり口は出さずに、出すのはお金だけでした。

 その後、彼女は無事に高校を卒業し、プレパー、グランゼコールへと進み、グランゼコール在学中に日本の大学に留学する予定にしていましたが、パンデミックのために2度にわたってキャンセルになり、結局、日本への留学は叶いませんでした。

 そして、グランゼコールの卒業が決まって、さて就職となった時、しばらく彼女はいくつかの進路に迷っている様子で、この先、また次のエコールにという選択肢などもあったのですが、結局、彼女が選択したのは、イギリスの会社の日本支社という道でした。

 「日本には家もあり、住むところもあるし、留学できなかった分、仕事ができて、お金ももらえて、日本で生活するという体験もできて、よかったけど、なんで、この道を選んだの?」と聞いたら、「他の色々な就職先の中で、自分のやりたい仕事の中で、条件が一番よかったから・・」というのが彼女の解答でした。

 彼女の専攻は生命工学で、それを活かした仕事の中で、日本語ができるということが彼女のスキルの一つに加わって、彼女の新しい生活の一歩を踏み出せたことは、私にとっては、本当に何よりも嬉しい、感慨深いことでした。

 たしかに、彼女の言うとおり、ほとんどがリモートワークで、初任給としたら破格のお給料を頂き、かなり自由に時間も使えるかなり条件のよい職場のようです。

 彼女が日本語でリモートで、今や専門用語などを含めて、私でさえ理解不能な日本語まで使って仕事をしているのが聞こえてきて、「うわぁ〜!日本語で仕事してる!」と、小さい頃から必死で日本語を教えてきた母としては、うるうるしてしまいそうになりました。

 皮肉なことに、現在の仕事では英語と日本語のみで、フランス語を使うことのない生活のようですが、彼女にとって、やはり母国語はフランス語、フランス語を忘れることはないでしょう。バイリンガルのつもりがいつのまにか、トリリンガルです。

 日本には、日本独特の社会があるので、フランスで育ってきた彼女にとっては、理解し難い難しいこともあるでしょうが、そこは、ひとまず日本にある会社とはいえ、イギリスの会社ということで、いきなり日本の会社というよりはハードルが低いかもしれない・・とも思っています。

 とはいえ、日本支社ゆえ、一緒に仕事(といってもほとんどリモート)をしているのは、ほとんどが日本人。最初に日本に行って、「プレゼンが終わって、「お疲れ様でした・・」と言われた時は、なんて言ったらいいのかな? ほんとに疲れたんだけど・・」などと聞いてくる娘にホッコリしてしまいました。

 これまで私は娘に対しては使うことのなかった「お疲れ様でした・・」という日本独特の挨拶?など、これからまだまだ彼女が学んでいくことはあるでしょうし、このまま、ずっとこの仕事を続けるのかどうかもわかりませんが、とりあえず、私は彼女が日本語を活かした仕事に就くことができて、これまで私が頑張って、娘に日本語を教え続けてきたことが報われた気がして、とても嬉しく思っています。

 日本語というのは、どこでも通用する言語ではないにしても、とりあえず、自分のルーツの一つでもある日本という国でも生きていける術を持ってくれたことがとても嬉しいのです。

 私の両親はすでに他界しているので、そんな彼女を見てもらえなくて、残念ではありますが、周囲の私の親戚、叔父、叔母、従姉妹たちや私の友人たちも彼女を見守ってくれています。

 小さい時から、日本行きを餌?に日本語を教えて、日本に行くたびに、親戚に会うにも、友人に会うにもいつも一緒に連れて歩いていたので、親戚はもちろんのこと、私の友人たちも彼女が小さい時からよく知っているおばちゃんたちなのです。

 もう彼女が仕事を始めてから半年近く経ちますが、その間、出社したのは3回くらいだけということで、つい先日も2日半だけお休みをとって、2週間くらいパリに来ていました。

 リモートワークなので、パリに来ても、日本時間、イギリス時間に合わせさえすれば、仕事ができているのは、たしかに条件がいいといえば、いい仕事なのかもしれません。

 以前、私がイギリスに留学する時に、父が言語(英語)は目的ではなく、あくまで手段だ・・というようなことを言われたことを思い出しましたが、まさに彼女にとって、日本語は彼女にとっての大きな手段の一つとなったことをしみじみと感じています。

 

バイリンガル教育


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2022年8月14日日曜日

日本の未来はもう心配という段階ではなく、絶望的

  


 平常時には、見過ごしてしまいがちな国の在り方とか、政治などが、非常時になると浮き彫りになってくることをここ数年、特にパンデミック以来、ひしひしと感じています。

 ことにパンデミック以来、その現れ方は顕著で、私は日本人でありながら、フランスに住んでいることで、フランスと日本の国の対応を見続けてきました。

 フランスはパンデミックが始まる寸前まで、黄色いベスト運動で、国は大荒れで、黄色いベスト運動のデモもパンデミックのおかげで静まったようなところさえあり、もともとは、燃料税に端を発したデモに政府に対する不満が積み重なり、毎週のように土曜日になると起こるデモは、もう週末には、デモが起こる近隣などの店舗などは、まともに営業もできなくなるほどの騒ぎで、フランスはどうしようもないな・・と思っていました。

 何百年に一度、起こるかどうかというパンデミックという一大事に世界中は大変な影響を受けましたが、フランス人はほんと、どうしようもない・・と思うと同時に、フランス政府の対応の仕方は、満点とはいえないまでも、このおとなしく言ううことを聞かない国民を統制していくために必要なことは、かなりできていたのではないかと少し見直すところさえありました。

 ただちにロックダウンになった時は、焦りましたが、ロックダウンなど感染対策のために仕事ができない人々に対してはすぐに補償金が振り込まれましたし、その後のヘルスパス、ワクチンパス、ワクチン接種のオンライン予約や、いつでもどこでも検査が無料で受けられるシステムなど、フランスすごいな・・と、初めて思いました。

 一方、日本は、政府の対応はといえば、「国民の皆様のご理解とご協力」を求めることばかりで、日本である程度、感染が広がらなかったのは、ひとえに国民がまじめで自制心があったからで、対応の遅さ、ワクチン接種の遅さ、何重にも人出を介す予約のシステムなど、いつの間にか、日本はこんなに遅れをとっちゃったんだろうか?と遠く離れて見ていても、ちょっと愕然とさせられたのです。

 それでも秩序正しい国民に支えられて、日本は生き延びてきましたが、それから戦争が起こり、世界的なインフレは進み、そして、日本にとっては元総理大臣が襲撃されて死亡するという前代未聞の大事件が起こりました。

 それにつれて、統一教会問題や信仰宗教と政治の繋がりが浮き彫りになり、政治と、この反社のような宗教との関わりや警察やマスコミとの関係など、腐敗しきった政治の体制に、心配を通り越して、もう絶望的な気持ちです。

 日本は便利で清潔で、安全で、世界基準から行けば、格段に暮らしやすい国なので、現状は、なにかと気を紛らわして生きていけるかもしれませんが、これから10年〜15年以内くらいに死ねない人々にとっては、よほど、経済的に恵まれてでもいなければ、このままでは、悲惨な道を辿ることは明白です。

 統一教会との繋がりを指摘されて、国民の疑念を払拭するために組閣された新内閣にも、大した説明もないまま、相変わらず統一教会と繋がりが発覚している面々がならび、国民をバカにしているとしか思えない、当選回数順のご褒美人事のような高齢者が並びます。

 都合が悪くなると、沈黙するかわりにひたすら威圧的な態度でやり過ごす。

 もう現在の日本の政治を変えるには、少なくとも前面には出てこない御長老の政治家には、全てお引き取りいただくしかない気がします。

 政治家といえば、本来は激務なはず、歳をとれば、身体的にも頭脳的にも衰えがきて、世間の動静についていけなくなるのは、政治家とて同じです。ましてや反社と繋がりがあるなどといったら、一般社会では、抹殺されるかの如く扱われるのに、政治家ならばOKなどということは、あり得ないことです。

 政治家が介入すれば、警察や司法も手を出せなくなっているのが今の日本なのです。

 日本にも、40代、50代で優秀な人はいるのに、権力に胡座を書いている人々がいつまでも居座って、裏で采配を振るっている限り、割り込むことも不可能です。

 うちの親族には政治家はいませんが、世間的に結構な要職についている人もいて、もういい加減、引退したらいいのに・・などと思いますが、周囲に言わせれば、あの人脈はすごいらしいのよ・・などと言うのですが、はたから見れば、その古い人脈がいつまでも通用していること自体がおかしな社会です。

 日本の少子化問題一つをとってみても、本当に深刻な問題で、今の若者が将来、どれだけの高齢者を背負わなければならなくなるか?あり得ない現実がもうそこまで迫っているというのに、現状を変えようともせずに、いつまでも選挙にも行かずに文句だけ言っている若者もおかしいと思います。

 とにかく、今の日本の政治は、どう考えてもため息しか出ず、ため息ばかりで酸欠になりそうになります。

 こうなったら、フランスのようにデモとか暴動でも起きない限り、日本はどうにもならないのではないか・・と絶望的な気持ちなのです。


日本の政治

 

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2022年8月13日土曜日

不足していたはずのひまわりオイルがダブつき始めた・・

 



 ウクライナでの戦争が始まってしばらくして、ひまわりオイルがスーパーマーケットの棚から消え始めたのは、4月に入ってからのことでした。フランス人って、そんなにひまわりオイルを使ってたのかな??と思っていたら、ひまわりオイルだけでなく、他の食用オイルも消え始めました。

 結局、最後までいつも棚にあったのはオリーブオイルでしたが、これは、ヨーロッパ内での供給が比較的安定しているからなんだな・・と思っていました。

 特にそんなに使っているわけではなくとも、なくなるとなると、一応、買っておこうか・・と思うのが心情なのか、ぐんぐんと値上がりしたにもかかわらず、飛ぶように売れていくのですから、お店側としては、なんとしてでも仕入れて売りたいと思ったのもまた頷けます。

 スーパーマーケットの売り場の中央に、「どうだ!」と言わんばかりにひまわりオイル入りの段ボール箱が山積みにされ、「こんなにあるんだ・・」と驚かされたのが6月頃のこと、その頃はまだ、それでも売れていたのでしょうが、現在、ひまわりオイルはさっぱり売れなくなり、店舗側は大量のストックを抱えてしまったと言われています。

 しかし、ひまわりオイルに関しては、この騒動がきっかけとなり、ここ数ヶ月で、通常の数年分の売り上げを記録しています。これまでの在庫を一掃したと同時に値段がこれまでの約2倍になっても飛ぶようにうれたのですから、食用オイル業界は、いくら原価や輸送のための燃料費が上昇したとしても、まさか2倍の値段でさえも売れたわけで、ないないと言いつつ、実はバブルに沸いていたわけです。

 しかし、バブルであったならば、引き際も大事だったはずなのに、現在はダブつき状態。

 本来ならば売れるはずのない量を買い占めという現象のために、そもそも、もともとは一般家庭ではそれほどは消費されてもいないひまわりオイルはある程度、買いだめしたところで、それ以上は必要はなく、今やひまわりオイルは、ぱったり売れなくなったのです。

 これは2年前のサージカルマスクと同じ状態で、もともとマスクをする習慣のなかったフランスでは、一般的には、マスクの買い置きなどあるわけもなく、とにかくマスクが不足していて、輸入されるマスクがVIP扱いで警察に先導されて病院に運ばれるような状態で、いざ、ロックダウン解除の際には、マスクは異常な価格で販売されていて、当初はそれでさえ、なかなか買えない状態が続いていました。

 それがマスクが普及するにつれ、そして、感染も少し下火になりつつあり、ほとんどの人がマスクをしなくなり、マスクは今やフランスの薬局には山積みにされていて、スーパーマーケットにさえ、マスクが未だに積まれているのを見かけます。

 マスクの場合は、この需要と供給のバランスの変化がさらに著しく、現在はマスクなどする人はほとんどいないのですから、2年前から考えたら信じられないくらい値段が下がっていますが、それでも、売れません。

 私はこの期間、ひまわりオイルも食用オイルも、以前からの買い置きもあるし、この際、できるだけオイルは控えめにしておこうと、価格が上がって以降、買いませんでしたし、マスクに関しても、どういうわけだか、さすが日本人?家の中を探し回ったら、マスクのストックは少々あり、こうして値段が下がってくれるまで、不自由することもありませんでした。

 この不安定な時代、○○がない!と騒いでいても、なければないで、あるもので何とかしてみるか、あまりジタバタしないのが賢明だと今、再び肝に銘ずるのでした。

 もともとフランスでは手に入りにくい日本食材を使わずになんとか代用品で、日本食もどきのものを作ろうとする生活ゆえ、代用品利用の訓練は否応なしに積んでいます。

 今回は、戦争ではなく、干ばつ被害で牛乳が不足するかもと言われていると思ったら、今度はじゃがいも栽培に大きく影響が出ていると、早くもじゃがいも不足が懸念され始めました。

 なにも、じゃがいもがなくとも他に食べるものはたくさんあるわけで、むしろ、供給側から煽られているような気もするわけで、もう余程のものでも無い限り、何が不足しようとその時あるもので済ませよう・・たびたび振り回されるのはバカバカしい気がしてきました。


ひまわりオイル過剰ストック


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2022年8月12日金曜日

秋には、コロナウィルス第8波が来るのは確実 EUオミクロン対応新型バージョンワクチン確保

  


 今週もフランスは熱波が襲ってきていて、1日、いや半日でも外を歩いてくると、もうヘロヘロな感じで、もうさすがにマスクどころではないし、マスクをしないでさえも、もう辛いような日差しで、それでも、たまにはメトロの中などではマスクをしている人がいないわけではないけれど、パリジャンはパリにいないし、パリにいる観光客は、それこそもうバカンス気分でコロナの影はほとんど見えなくなりました。

 フランスは6月末から7月にかけて第7波を迎えていましたが、その後、順調に感染者数は、減少し、一時は20万人近くもいた1日の新規感染者数も現在は3万人以下にまでになっています。

 現在のところ、「ウイルスの感染力は強くなっているが、危険性は低くなっている」というのが定説になっており、実際に、集中治療室の患者数も減少し、死亡者も減ってはいます。

 街の様子を見る限り、もうコロナなどなくなったような感のあるパリではありますが、しかし、ウィルスが消滅していない限り、気温の低下などから、再び感染が拡大する可能性はいつも抱えており、ウイルスが循環すればするほど、危険な突然変異が起こる可能性が高くなり、厚生相が「秋にはコロナの新しい波がやってくるのは、ほぼ確実である」と警告を発しています。

 もう一時の衝撃的な感染の広がりや死亡者で、数字には麻痺してはいますが、未だにフランスでは1日あたり、100人近くがコロナウィルスのために亡くなっています。やはり、これは尋常なことではありません。

 ところで、日本はどうなっているんだろう?と思って調べてみたら、びっくり!日本の1日の新規感染者数は20万人近くで1日の死亡者数は250人で、フランスよりも遥かに高くてびっくりしました。

 フランスも一時は大変なことになっていて、私は、今までに3〜4回くらい検査をしましたが、その度に陰性でした。しかし、もう2人に1人は感染しているくらいの勢いだった頃には、もしかしたら、検査をした時にはたまたま陰性だっただけで、もしかしたら、罹患したことがあったかもしれないとも思っています。

 多くの人がワクチンをしただけでなく、実際に罹患したことで、現在のフランスの状況が深刻化していないとしたら、それは、とても皮肉な結果です。

 フランスは、1回目のブースター接種までは、全国民に対して、かなり強硬な態度で進めていましたが、現在は、高齢者とリスクの高い人を中心に2回目のブースター接種を進めています。

 ほぼ確実に秋には次の波がやってくると第8波を待ち受けているフランス政府は、「欧州委員会が、アメリカ・ビオンテック社からオミクロン変種用に改良された新バージョンのモデルナワクチン1500万回分を追加で予約した」と発表しています。

 2020年から続くパンデミックで、その間、インフレ、戦争、異常気象など様々な問題が覆いかぶさっていますが、同時進行で解決していってもらわなくてはならない問題で、ますます政府にはしっかりしてもらわなければ・・、また、自分自身も情報を集めて、その時々で自分なりの対応を選択していかなければ・・と思うのです。


フランス秋には第8波 オミクロン対応モデルナ新バージョンワクチン


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2022年8月11日木曜日

パリ シャルルドゴール空港(CDG)でナイフを振り回した男 射殺

 


 今年の夏のシャルル・ド・ゴール空港は、さんざんなニュースばかりが続いています。

 夏のバカンスシーズンの始まりとともに、大規模なストライキにより、大幅なフライトチケットのキャンセル、また 、空港職員のストライキと、荷物積載のシステムダウンというトラブルが重なり数万個に及ぶロストバゲージ放置状態・・と、ろくなことがありません。

 だいたい、ただでさえ、ハイシーズンで高価格の時期に加えて、現在の航空運賃は、ちょっと洒落にならないほどの値上がりで、そのうえ、トラブルといえば、ちょっと許せない話なのですが、これでもかというほどにトラブルが続きます。

 今回は、シャルル・ド・ゴール空港のターミナル2Fで、朝、刃物を振り回した男に警察官が発砲、射殺という事件が起こっています。CDGの2Fといえば、私も利用する機会が少なくない場所で、(多くの日本行きのフライトは2Eか2Fのことが多い)ぞっとする話です。

 考えてみれば、飛行機に乗る場合は、チェックインしてから、通関する過程では、荷物チェックがありますが、空港自体に入るのには、荷物検査はありません。

 当日の朝に空港警備員と揉めていたホームレスとみられる男のもとに、国境警備隊の警察官(PAF)が応援にかけつけ、男は、一度、退避させられました。ところが、その後、男は警察官に対して攻撃的、脅迫的になり、国境警備隊の警官(PAF)に腹部を殴られ、逆上し、警察官を殴ろうとした後、自分のキャディからナイフを持って戻ってきたと言われています。

 現場を目撃したAFPのカメラマンは、「背の高い男が警察に向かってナイフのようなものを振り回し、警察側からの警告が出たが、彼は警告を無視して前に出て、警官が発砲した」証言しています。発砲は1回だけだったようです。

 警察の発表によると、撃たれたのはマルティニークのフォール・ド・フランスの出身だという。テロ発言はしていないことから、彼の行為がテロ行為であったとは見られていません。

 パリの街中でも駅でも空港でも、なかなか立派な銃を携帯している警官を間近にみかけることは少なくなく、そばを通りかかっても、何気に、「これ、ほんものなんだよな・・」とチラ見することはあるものの、うっかり話しかけて、妙に誤解されたり不審に思われるのも怖いので、そのまま通り過ぎるのですが、幸いなことに、これが実際に発砲される場面には、これまで直に遭遇したことはありません。

 日本でも、警察官は銃を携帯していると思いますが、こちらの警察や憲兵隊の携帯している銃は、長さ50㎝はあると思われる、なかなかな迫力の銃です。(全ての警察官がこのサイズの銃を持っているわけではありませんが・・)

 最近、警察官の発砲事件の話を以前よりも頻繁に聞くようになった気がしますが、シャルル・ド・ゴールの空港、しかもターミナル2Fという、必ずしも無縁でもなさそうな場所、しかも空港といえば、屋内で人も多い空間での発砲といえば、周囲は騒然としたに違いありません。

 発砲されたのは1発だけで、1発が命中して、撃たれた男は死亡したということなので、周囲に被害は及んでいませんが、これが本当に発砲が必要な事態であったかどうかは、少々疑問でもあります。少なくとも、犯人の動きを止めるだけで、致命的な傷を負わさなければならなかったかどうかは検証する必要がある気がします。

 


 国家警察総監部(IGPN)は、この事件を「国家権力者による自発的過失致死」で、発砲した警察官に関する捜査と、もう一つは、射殺された男に関する「公権力者に対する殺人未遂」についての2つの捜査を開始しています。

 このホームレスの男性はフォール・ド・フランス(マルティニーク)生まれの32歳。フォール・ド・フランス(マルティニーク)生まれの32歳で、以前から定期的にこの辺りを歩いていたといわれています。この男が有色人種であったことも警察官の発砲に関係していることもないとも言えず、そうなると、また別の問題も生じてくる可能性もあります。

 警察官自身や公衆の安全を守るということは、彼ら(警察官)の仕事ではありますが、このケースで、発砲の必要があったのかどうかが詳しく検証される必要があります。

 治安の悪化もありますが、どうにも、以前よりも警察官が発砲するハードルが低くなっているような気がするところは、恐ろしいところです。

 フランスに死刑制度はありませんが、警察官が犯人を射殺することは、少なくないのです。

 まことに、どこもかしこも物騒なことです。


シャルルドゴール空港 発砲事件


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2022年8月10日水曜日

フランス人が日常のトラブルには寛容な不思議

  


 5年近くも工事していた近所の市営プールがリニューアルオープンして、まだ1ヶ月も経っていません。パンデミックで長い間、できるだけ歩くようには心がけていたものの、運動不足だった私は経年からの体力の衰えをひしひしと感じ、これからはせめて、週に1度か2度くらいは泳ぎに行こうとオープン以来、プールに通っていました。

 もともと歩くよりも泳ぐ方が楽な私、身体がほぐれる感じで全身に感じる心地よい疲れにこのところ、順調にプールに通っていました。

 この市営プール、以前は夏には職員がバカンスを取るために夏の間はクローズしてしまうプールだったのですが、さすがに長い工事期間を経てリニューアルした後は夏でもクローズにならないことで少しホッとしていましたが、営業時間は昼12時から14時、15時から19時というなんと、昼休みつきというクラッシック?なスタイルです。

 この昼休みのあることには、少々、苦々しい思いもあるのですが、まあ、夏、閉めないでくれるようになっただけでも、まだマシというものです。

 とにかく、今のところ全てが新しくなってキレイで気持ちよく、ここのところ、自分を奮い立たせてプール通いをしていたのですが、さて、今週も頑張るぞ!と出かけたところ、なんと、プールには、人手不足のために臨時休業のお知らせ・・8月の間、期日指定で、週1〜2日、お休みの日が指定されて張り紙がされていました。

 出かける前に、え〜と午後からの時間は何時からだったっけ?とサイトで営業時間を確認して、現在は開いているのを確認して出かけたのに、まさかの休みで、ムッとして帰ってきました。ちょうど、私と同様、プールの入り口で張り紙を見て、呆然としていた若い男性も「ズッ・・」と呟いて、帰っていきました。

 そして、その翌日、今日こそはやってるよな・・と意気揚々と出かけて、午後の時間帯に一番のりの勢いで出かけていき、さすがにこの暑い中、夏休みのバカンス中ということもあり、子供連れも多い中、プールの前には人だかりができていました。

 ところがオープンの時間になったら、何やら中から再び張り紙を貼る職員が・・「えっ??まさか、また休み??」と思いきや、その女性が貼り出したのは、「子供用プール閉鎖」の張り紙・・、周囲の子連れのお客さんからは、「4年以上も工事してたのに、また??」という声が聞こえてきたものの、関係ないお客さんは、なだれ込むようにプールへ・・。

 「すみません」とか、「ごめんなさい」でもなく、「冷房してるから、扉を開けっぱなしにはできないんだから!」、「いいわね!子供用のプールはクローズよ!」とがなりながら、職員の女性はプールの中に消えていきました。謝らずにまさかの逆ギレ・・最近はあまり見かけなくなったクラッシックなフランスの接客を久しぶりに見た思いでした。

 それでも、子供用のプールは私には関係はなく、さっさと私は淡々と泳ぎ始め、一応、1日のノルマにしている1キロを泳いで、さて、ゆっくりシャワーを浴びて、そろそろ帰ろうかな?・・と思っていたら、何やら、周囲のみんなも引き上げる様子。午後の営業時間が始まって、わずか30分ほどのことです。

 特に場内アナウンスがあるわけではなく、どうやって、知らされたのかはわからないのですが、とにかく、その日のプールは閉鎖になって、全員が追い出される様子で、皆がシャワーを浴びて、帰り支度を始めだしました。

 私としては、どちらにせよ、自分が泳ぐだけ泳いで、もうさっさと帰るつもりにしていたので、別によかったのですが、皆がしぶしぶとプールを追い出されて帰っていくのは、なんだか気の毒な感じでした。

 なぜ、急に営業時間帯に閉めることになったのか?と聞いても、フランスお得意の「プロブレム・テクニック、詳しいことは知らない」という回答。「明日はやっているの?」と聞いても、「わからない・・」と両方の手のひらを返して肩をすくめて首をかしげるフランス人お得意のジェスチャーでの回答。

 プールの出口では、その日の分のチケットの払い戻しの代わりに次回の分のチケットをくばっていたので、私ももらって帰ってきて、なんだか、一応、泳いだので、なんか得した気分でしたが、他の人々は、まだろくに泳いでもいないのに、帰らなければならないのに、さほど怒る様子もなく、おとなしく帰っていくのでした。

 以前から私が不思議に感じているのは、とかく自己主張が激しくて、黙って引き下がらないフランス人が、こと日常のこのようなトラブルに対しては、さほど腹を立てる様子もなく、おとなしく引き下がることで、職場などで、「日本人は黙って我慢するからダメなんだ・・」とかいって、焚き付けられたりもするのに、なぜ、日常のトラブルに対してはこんなにあっさりと引き下がるのだろうか?と思うのです。

 度々起こるストライキや、電車が止まって、急に線路の上を歩くハメになったりしても、猛烈に怒りだしそうなところ、案外、騒ぎにもならずに、それはそれと受け入れて、再び電車が動き出すのを待ったり、淡々と他の線に乗り換えていったりするのです。

 逆に我慢強いはずの日本人の方がとかくサービスなどに関しては、ほんの些細なことで、腹をたてて、クレームをつける人がいたりするので、フランス人が日常のトラブルに関しては、寛容なことが不思議です。

 どうにも、フランス人と日本人では腹を立てるポイントが違うようで、フランス人が日常に多発するトラブルにいちいち腹をたてないのは、まぁこんなもんだ・・という慣れもあるのか、また、逆に、「お客さまは神様」の本当に行き届いたサービスが日常の日本では、ほんのわずかなこともお客さまは許してくれないのかもしれません。

 逆に今の日本の統一教会と政治家の繋がりなどの問題を見ていると、フランスだったら、大変な暴動が起こるだろうと思われるのに、日本人はもっともっと怒っていい!と思うのに、暴動などは起こっていないのも、フランス人から見たら、それはそれで、不思議なことかもしれません。


フランスの日常トラブル 怒りのポイント


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2022年8月9日火曜日

干ばつが引き起こす牛乳価格の高騰と品不足

  


 今週から再び、気温の上昇が見込まれ、さらなる干ばつ被害が広がると見られているフランスでは、今度は、牛乳の価格の上昇および、品不足が心配されています。

 この夏の熱波以前からのウクライナ戦争により、牛の餌代が上がり、燃料費が2倍、肥料費が3倍になっている中、フランスの牛乳の価格はさほど上昇しないままに抑えられてきました。

 しかし、戦争によるインフレに加えて、この干ばつは、酪農家にとっては、ダブルチョップの災難で、全国農業組合連合会(FNSEA)は、今後の牛乳の生産と供給について警笛を鳴らしています。

 雨も降らず、草も枯れる。そして、青草がないということは、夏場はいつも外にいる牛の放牧地がないということです。ただでさえ高い飼料価格に悩まされ、牛を抱えている酪農家にとっては差し迫った危機の異常事態なのです。

 そのため、酪農家は現在、通常、冬に備えて蓄えている飼料を家畜に与えるハメになっており、2022年から2023年の冬の間、多くの農家が牛を養えるのかが懸念される事態となっているのです。

 牛乳だけでなく、バター、クリーム、チーズ、ヨーグルトなどなど、フランス人の食卓にとって、欠かせない乳製品の元となる牛乳価格が高騰したり、牛乳が不足するという事態は大変、深刻な事態で、すでにシードの輸入が滞って欠品が目立ち、価格が爆上がりしているマスタード不足どころではない危機が訪れることになってしまいます。

 現在、秋から冬にかけて牛に与えるはずの飼料や牧草を使用していまっているということは、秋には、多くの酪農家が家畜に与える食料が不足する可能性があるということなのです。2022年から2023年の冬の間、多くの農家が牛を養い続けることができるのかという問題は、かなり緊急な対処が必要な深刻な問題なのです。

 そのため、彼らは皆、経費を補い、セクターの存続を確保するために、価格の値上げを望んでいるのです。ミルクを作るには飼料が必要で、主に牧草とトウモロコシが必要ですが、今年はあまり育っていません。そのため、今年の秋から冬にかけて、牛を飼い続けることができなければ、牛乳が不足する恐れがあるのです。

 恒久的に牛を生産しつづけている酪農家にとって、母牛を失うと、3年間は子牛を生産する能力を失うことになるのです。この負のスパイラルを止めるためにも、酪農家は国の支援を求めています。つまり、今、なんとかしないとこの牛乳問題は少なくとも3年間は続くことになってしまうのです。

 フランスの牛乳価格は、他のヨーロッパの生産者、特にドイツやオランダの牛乳価格よりも20%安いと言われています。

 全国農業組合連合会(FNSEA)は、このフランスの低い牛乳価格の値上げを求めると同時に、国には、農家が飼料を購入できるような援助を受けられる災害基金があるはずだ・・と援助を求めています。

 パンデミック、戦争の影響から、燃料費の高騰から始まって、インフレ、あらゆるものの価格の上昇が続いていますが、フランス人にとってのガソリンともいうべく乳製品の値上がりは、それこそかなりの家庭での痛手になりそうです。

 こんな話が出始めたら、今度は牛乳の買い占めが始まりそうです。フランスで売られている牛乳の多くは、常温保存が可能なものが大部分を占めるため、ある程度の期間の買い置きが可能です。

 そういえば、今日、買い物に行った時、いつも私が買っている牛乳がなかったのは、もうすでに、買い占めが始まっているせいだったのかもしれません。私はそんなに乳製品をとる方ではありませんが、少なくとも、この状況で価格が上昇しないことは考えづらいと思うと、今のうちに少し買い置きしておこうか??などと思ってしまうのです。


牛乳価格高騰 牛乳不足 干ばつ


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