フランスでは、コロナウィルス感染がリバウンドし始めていることを受け、ジャン・カステックス首相が、3回目のブースター接種から3ヶ月以上経過している80歳以上の人々への4回目のワクチン接種を開始することを発表しました。
このコロナウィルス感染のリバウンドの現象は、フランスだけではなく、フィンランド、イギリス、オランダ、スイス、イタリア、ドイツなどの周囲のヨーロッパ諸国でも起こり始めている見過ごすことのできないものでもあります。
どの国も、程度の差はあるにせよ、感染対策を緩和しつつある中で、その結果が感染のリバウンドとしてあらわれているものと思われますが、第1波の際に壊滅的な被害を受けた謂わば前科者のヨーロッパとしては、十分に危惧すべき状況でもあります。
この「4回目のワクチン接種開始」のカステックス首相の発表も、先日、オリヴィエ・ヴェラン保健相がリバウンド状態にあることに警鐘を鳴らした発表と同様にどこか、しっくりこない中途半端な印象が拭えず、80歳以上という限定された年齢層向けとはいえ、同時に「マスク着用義務化の解除やワクチンパスポート解除は予定どおり行う」という、ともすると矛盾した内容を確認したうえでの発表であったことに、疑問を感じずにはいられません。
「最も重症化のリスクの高い弱い立場の人々を守りたい」と4回目のワクチン接種開始を説明していますが、そもそも、4回目のワクチン接種に関しては、これまでは、かなり慎重な態度をとっていたはず、最も早くに4回目のワクチン接種を開始したイスラエルの免疫学者も、その「有効性と安全性に関するデータ」が不足していることを認めており、「疑問点も多く、ちょっとした賭けであり、必ずしも推奨できるものでもない」と述べています。
それをワクチンパスポートや多くの場所でのマスク着用の義務化を撤廃しながら行うというのは、どうにも納得のいかないものです。しかも、もともと「ワクチンパスポートや多くの場所でのマスク着用の義務化などの制限撤廃」は、「流行の進行がなく、コロナウィルスによる集中治療室の患者数が1500人未満になった場合」という一定の条件を満たした場合という条件つきだったにもかかわらず、その条件を満たしていないにもかかわらず、撤廃に踏み切ったことも腑に落ちません。
思いもよらぬ形でウクライナでの戦争が勃発し、ロシアへの経済制裁のために、燃料費をはじめとする物価の急上昇や原子力発電所や核兵器への脅威からの国民の反発や動揺を考えて、少しでも国民のストレスを軽減するためであると思われますが、コロナウィルスは戦争の有無に関係なく感染を拡大させます。
最も弱い立場の人々を守るために、安全性が疑問視されている4回目のワクチン接種を開始することにするくらいなら、せめて、マスクぐらい義務化しておけばよいものの・・と思うのです。
戦争による混乱状態であることはわかりますが、この戦禍に再び、コロナウィルス感染が深刻に悪化すれば、さらなる混乱を引き起こすことは必須です。
これまでも、感染は最悪の状態を脱したとはいえ、今年に入ってからも、コロナウィルスによる死亡者数が100人を下回った日はほとんどないのです。
80歳以上に4回目のワクチン接種開始
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