フランスは、ヨーロッパ最大の麻薬消費国であることが、最近、頻繁に報じられるようになりましたが、麻薬の蔓延が特別なニュースにもならないくらいの現在では、麻薬よりもクラック(CRACK)と呼ばれるコカインの一種のドラッグの急速な拡大が問題となっています。
このクラックは比較的安価なことから、「貧乏人の薬」などとも揶揄され、低所得者やホームレスなど、生活が不安定で荒れがちの階層の人々にも、手に入りやすく、広まりやすかったこともあり、パリ北部(19区近辺)のスターリングラードの広場は、いつの間にか、このクラックの聖地?のような状態に陥り、このクラックの売買や常習者の溜まり場のようになり、スターリンクラックなど皮肉な呼び名をつけられたりしています。
このスターリンクラックには、このクラックを常用している人々が暴れて騒ぎを起こしたり、暴力的な行為に走ったり、女性を襲ったりと近隣住民は、穏やかな生活を脅かされ、悲鳴を挙げ続けていました。
もともとパリ北部とそこからちょっと外れたサン・ドニなどの地域は、治安の悪いことで有名で、このクラックが出現する以前から、暴力行為を伴う事件・犯罪が多発している地域でもあり、低所得層が多く、パンデミックにおいても、パリ近郊の中では、最も感染が悪化した地域でもありました。
今は、おそらく、日本からのツアーなどは、ほとんどないのだと思われますが、以前、普通に日本から多くの観光客がパリに訪れていた頃は、この近辺のホテルなども宿泊場所に入っていて、日本人の観光客のガイドをしていた人が、オプショナルツアーの代金などの大金を持っているところを狙われて、殴り殺された事件などもありました。
とにかく、もともとそのような治安の悪い地乗りもあって、違法薬物が広がり、根付きやすかった背景は容易に想像がつきます。
今回、フランス政府はこの状態を打開しようと、200人の警察官を動員し、この場所(エオール庭園やスターリングラード庭園)のクラック常用者を別の場所(ポルト・ド・ラ・ヴィレット)へ強制的に移動させる作戦を開始しました。
La Préfecture de Police est à la disposition de la mairie de Paris pour l’accompagner dans ses décisions futures en lien avec l’intérêt général. (2/2) https://t.co/eiP7TDjPZX
— Gérald DARMANIN (@GDarmanin) September 24, 2021
しかし、これは、単にクラック常用者を移動させ、分散させたに過ぎず、何の解決にもなっていないどころか、分散されたこれらの人々がさらにそれぞれ別の場所でクラックを拡散させることになりかねません。
この政府の措置は、あくまでも、ひとまず、住宅地・学校などのある地域から、クラック乗用車を遠ざける暫定的な措置にしかなっておらず、引き続き、彼らを施設に保護し、クラックと断絶させる手段を取らない限り、永久に彼らは永久に場所を移動し続けるだけで、最終的には、再び元の場所に戻ってくる可能性も捨てきれません。
また驚くことに、この大移動が行われたのは、金曜日の朝10時からで、この時間に約130名のクラック常用者がこの場所にいて移動させられたということは、一体、夜間はどのような状態であったのかと恐ろしくなるほどです。
この退去させられたクラック常用者も問題ではありますが、彼らは、所詮、末端の消費者で、それをばら撒いて懐を肥やしている人々こそ、根絶させなければならない問題です。また、これらの麻薬・ドラッグ販売が武装化され、銃などの武器も合わせて出回っていることも、さらに問題を深刻化させています。
2024年に開催が予定されているパリオリンピックの中心となるスタジアムは、現在、クラックの蔓延で問題になっている場所からそう遠くない場所にあります。
パリオリンピックの準備には、このクラック問題を解決するという実際のオリンピックとは、別の次元での問題解決も含まれています。
とりあえずは、パリに観光に来られる機会がある方は、パリのホテルは、この地域を避けるようにしたほうが賢明だと思われます。
クラック CRACK
<関連記事>
「いつからフランスは銃社会になったのか? アヴィニョン警察官射殺事件」
「マルセイユではパン・オ・ショコラを買うようにカラシニコフを買うことができる マルセイユ14歳少年銃殺事件」
「4夜連続、フランス・ディジョンでのチェチェンコミュニティの暴動」